304 / 436
第七章
296:ウォーリーが慕われる理由
しおりを挟む
ユニヴァースが出ていったのを確認すると、ウォーリーが急にくだけた口調でミヤハラに通信越しに話しかけてきた。
「まったく、相変わらずマイペースな親父さんだな。それにしてもアイネス先生といい、ユニヴァースの親父さんといい、ここのところ俺への用事が多いな」
アイネスはともかくユニヴァースは直接関係ないだろう、とミヤハラは思ったが、敢えてそれを口に出すことはしない。
「ユニヴァースさんがOP社の味方をしている、という懸念が我々のところにもあるのですが」
ミヤハラの言葉にウォーリーは手を振って答える。
「それはないだろう。いくらハドリとはいえ、あの親父さんを使いこなせるとは思えないからな。性格が極端すぎる」
完全に自分のことを棚に上げているな、とミヤハラは思う。それがウォーリーの魅力でもあるのだが、振り回される方にはそれなりの苦労があるのだ。勿論口に出して本人に指摘することはしないが。
ウォーリー同様、ミヤハラにもOP社がユニヴァースを使いこなせるとは思えない。
後ろから銃や刃物を突き付けて脅迫したところで、自身を曲げるような人物ではないような気がするのだ。
仮にそのような形で脅迫されたとしても、的外れな答えをして周囲を呆れさせかねない。
(まあ、あり得ない話だな……)
ミヤハラはユニヴァースがOP社の味方をしているという懸念をあっさりと捨て去ったのだった。
画面からはウォーリーの言葉が聞こえている。
「ミヤハラはあの親父さんが無事にここに来ていることを警戒しているのだろうが、その心配はなさそうだ。さっき、エリックから報告があったのだが、あの親父さんを取り込もうとして逃げられた、という会話がOP社であったらしいからな」
ウォーリーがさらっと重要なことを言ってのけた。
調査が済んでいるのなら問題ないだろう、とミヤハラもウォーリーの見解を支持した。
エリックから報告があったということは、彼がOP社のネットワークに侵入して情報を得たのだろう。それならば情報の信頼性は高いからだ。
ウォーリーは引き続いてメディット、すなわちアイネスからの連絡についてミヤハラに質問した。
昨日アイネスからの連絡を受けて、ミヤハラがメディットに出向いた。
遠く離れたインデストに滞在しているウォーリーがメディットに出向くのは不可能であったし、メディットとの間にはOP社に感知されない秘密の通信経路もないからだ。
ウォーリーにはアイネスから連絡があったことだけを伝えていたから、ウォーリーはその内容を知りたがった。
アイネスは精密検査のためにウォーリーの来院を求めていた。
ウォーリーの症状について、治療のためいくつか検査したいことがあるようだ。
ミヤハラはアイネスの言葉をそのまま伝えた。
「ふーん、そういうことか。まあ、今回のゴタゴタが治まったら行くと伝えておいてくれ。どうもOP社の動きが不穏なので、今は動くことができん」
ウォーリーがそう答えると、ミヤハラはそれ以上話を続けることをせずに、通信を切った。
ミヤハラもユニヴァースほどではないが、夜が早い。
ユニヴァースから入手した情報の整理、ウォーリーからもたらされたOP社の動向などの調査は他のメンバーに任せて、ミヤハラは事務所を後にした。
ジンからOP社治安改革センターを追放してから、ミヤハラは妻の実家の隣に家を借りて、家族と暮らしている。「タブーなきエンジニア集団」の事務所から徒歩で一〇分ほどの場所である。
ミヤハラが住む場所を探していることを知り、ウォーリーが半ば強引に家を借りてしまったのである。
「子供や奥さんのためには、父親が家に居た方がいいだろう」
と主張して、ミヤハラが知らないところで勝手に手を回したのだ。
ミヤハラもジンに戻った時点で家族を呼び寄せようと思っていたので、ウォーリーの提案に乗ることにした。単に自分で別の物件を探すのが面倒だったから、という理由もある。
一見無神経に見えて、ウォーリーは意外とこのような部分には気を遣っている。
ウォーリーは家族のことを問われると、「自分には父親の代わりに爺さんがいただけだからな。婆さんは印象がない」とだけ答える。
自身に家族に関する記憶があまりないからなのか、部下の家族のイベントはよく覚えていて、そういう日には仕事よりもそちらを優先するように手を回している。
そうした面もウォーリーが部下やその家族に支持される理由なのかもしれない。
「まったく、相変わらずマイペースな親父さんだな。それにしてもアイネス先生といい、ユニヴァースの親父さんといい、ここのところ俺への用事が多いな」
アイネスはともかくユニヴァースは直接関係ないだろう、とミヤハラは思ったが、敢えてそれを口に出すことはしない。
「ユニヴァースさんがOP社の味方をしている、という懸念が我々のところにもあるのですが」
ミヤハラの言葉にウォーリーは手を振って答える。
「それはないだろう。いくらハドリとはいえ、あの親父さんを使いこなせるとは思えないからな。性格が極端すぎる」
完全に自分のことを棚に上げているな、とミヤハラは思う。それがウォーリーの魅力でもあるのだが、振り回される方にはそれなりの苦労があるのだ。勿論口に出して本人に指摘することはしないが。
ウォーリー同様、ミヤハラにもOP社がユニヴァースを使いこなせるとは思えない。
後ろから銃や刃物を突き付けて脅迫したところで、自身を曲げるような人物ではないような気がするのだ。
仮にそのような形で脅迫されたとしても、的外れな答えをして周囲を呆れさせかねない。
(まあ、あり得ない話だな……)
ミヤハラはユニヴァースがOP社の味方をしているという懸念をあっさりと捨て去ったのだった。
画面からはウォーリーの言葉が聞こえている。
「ミヤハラはあの親父さんが無事にここに来ていることを警戒しているのだろうが、その心配はなさそうだ。さっき、エリックから報告があったのだが、あの親父さんを取り込もうとして逃げられた、という会話がOP社であったらしいからな」
ウォーリーがさらっと重要なことを言ってのけた。
調査が済んでいるのなら問題ないだろう、とミヤハラもウォーリーの見解を支持した。
エリックから報告があったということは、彼がOP社のネットワークに侵入して情報を得たのだろう。それならば情報の信頼性は高いからだ。
ウォーリーは引き続いてメディット、すなわちアイネスからの連絡についてミヤハラに質問した。
昨日アイネスからの連絡を受けて、ミヤハラがメディットに出向いた。
遠く離れたインデストに滞在しているウォーリーがメディットに出向くのは不可能であったし、メディットとの間にはOP社に感知されない秘密の通信経路もないからだ。
ウォーリーにはアイネスから連絡があったことだけを伝えていたから、ウォーリーはその内容を知りたがった。
アイネスは精密検査のためにウォーリーの来院を求めていた。
ウォーリーの症状について、治療のためいくつか検査したいことがあるようだ。
ミヤハラはアイネスの言葉をそのまま伝えた。
「ふーん、そういうことか。まあ、今回のゴタゴタが治まったら行くと伝えておいてくれ。どうもOP社の動きが不穏なので、今は動くことができん」
ウォーリーがそう答えると、ミヤハラはそれ以上話を続けることをせずに、通信を切った。
ミヤハラもユニヴァースほどではないが、夜が早い。
ユニヴァースから入手した情報の整理、ウォーリーからもたらされたOP社の動向などの調査は他のメンバーに任せて、ミヤハラは事務所を後にした。
ジンからOP社治安改革センターを追放してから、ミヤハラは妻の実家の隣に家を借りて、家族と暮らしている。「タブーなきエンジニア集団」の事務所から徒歩で一〇分ほどの場所である。
ミヤハラが住む場所を探していることを知り、ウォーリーが半ば強引に家を借りてしまったのである。
「子供や奥さんのためには、父親が家に居た方がいいだろう」
と主張して、ミヤハラが知らないところで勝手に手を回したのだ。
ミヤハラもジンに戻った時点で家族を呼び寄せようと思っていたので、ウォーリーの提案に乗ることにした。単に自分で別の物件を探すのが面倒だったから、という理由もある。
一見無神経に見えて、ウォーリーは意外とこのような部分には気を遣っている。
ウォーリーは家族のことを問われると、「自分には父親の代わりに爺さんがいただけだからな。婆さんは印象がない」とだけ答える。
自身に家族に関する記憶があまりないからなのか、部下の家族のイベントはよく覚えていて、そういう日には仕事よりもそちらを優先するように手を回している。
そうした面もウォーリーが部下やその家族に支持される理由なのかもしれない。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
NPCが俺の嫁~リアルに連れ帰る為に攻略す~
ゆる弥
SF
親友に誘われたVRMMOゲーム現天獄《げんてんごく》というゲームの中で俺は運命の人を見つける。
それは現地人(NPC)だった。
その子にいい所を見せるべく活躍し、そして最終目標はゲームクリアの報酬による願い事をなんでも一つ叶えてくれるというもの。
「人が作ったVR空間のNPCと結婚なんて出来るわけねーだろ!?」
「誰が不可能だと決めたんだ!? 俺はネムさんと結婚すると決めた!」
こんなヤバいやつの話。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます!
平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。
『事実は小説よりも奇なり』
この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに……
歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。
過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い
【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形
【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人
【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある
【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)
―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――
EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ――
とある別の歴史を歩んだ世界。
その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。
第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる――
大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。
そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。
そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。
そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。
そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。
果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。
未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する――
注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。
注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。
注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。
注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。
注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。
VRMMOで遊んでみた記録
緑窓六角祭
SF
私は普通の女子高生であんまりゲームをしないタイプだけど、遠くに行った友達といっしょに遊べるということで、VRRMMOを始めることになった。そんな不慣れな少女の記録。
※カクヨム・アルファポリス重複投稿
Night Sky
九十九光
SF
20XX年、世界人口の96%が超能力ユニゾンを持っている世界。この物語は、一人の少年が、笑顔、幸せを追求する物語。すべてのボカロPに感謝。モバスペBOOKとの二重投稿。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる