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第三章
111:動かぬ手足と動く仲間
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ハドリ率いるOP社は、次のような策で「タブーなきエンジニア集団」に当たろうとしていた。
まず、風力エネルギー研究所で「タブーなきエンジニア集団」が非合法の部品を納入し、OP社の治安改革活動を妨害しようとしている、という報道を行った。
そのタイミングで、近くの治安改革センターの職員とセキュリティ・センターのメンバーで構成された四〇〇名の部隊で風力エネルギー研究所を包囲するとともに、OP社の息のかかった職員に命じて建物に放火させた。
その後消火と称して部隊を突入させ、「タブーなきエンジニア集団」のメンバーを建物の中に閉じ込めるとともに非合法の部品を捜索した。
非合法の部品が納入されていることは、息のかかった職員の情報からOP社も予め把握しており、それを容易に発見できた。
発見された非合法の部品は外に持ち出され、「タブーなきエンジニア集団」の不正の証拠として、予め集められていたマスコミ向けに提示された。
風力エネルギー研究所に突入した部隊はウォーリー達を上のフロアへと追い詰めた。
追い詰めたのは、予め仕掛けてあった建物解体用の爆薬に点火し、建物ごと「タブーなきエンジニア集団」のメンバーを葬り去るためである。
そして、この爆破を「追い詰められた犯罪者達によるテロ行為」としてマスコミに報道させると同時に、ポータル・シティの大部分の地域に戒厳令を敷き、この後のOP社の活動を円滑に行う準備を整える。
並行して、「タブーなきエンジニア集団」の本拠地を包囲し、捜査と称してトップのウォーリーの身柄を確保する。
こちらはECN社から招集した三千名と、OP社のセキュリティ・センター及びパトロール・チームの混成部隊五〇〇名の三五〇〇名で当たる。
本拠地に詰めている「タブーなきエンジニア集団」のメンバーは多くて百数十名であったから、包囲する人数としては十分なはずだった。
しかし、この計画の実行においていくつかの誤算があった。
最初の誤算は、ウォーリーが「タブーなきエンジニア集団」の本拠地に残留せずに、現場に出たことである。
いくらウォーリーが現場好きとはいえ、たかが中規模案件の点検作業のために代表自らが赴く可能性は低いと見ていたのだ。
また、ウォーリーを見つけたことで功を焦った風力エネルギー研究所へ派遣した部隊が中途半端にウォーリーを拘束しようとして失敗し、警戒心を抱かせたことはハドリにとっては痛手だった。
ウォーリーを見つけた時点で有無を言わさず身柄を拘束するか、中の部隊を犠牲にして建物ごと葬り去れば済んだことだった。
警戒されたことと、余計な時間を使ったことで、ウォーリー達の逃亡を許してしまった。今となっては後の祭りでしかない。
更に「タブーなきエンジニア集団」の本拠地に踏み込んだ部隊の失態は目を覆うばかりだった。
ウォーリーが不在である以上、ウォーリーに代わる幹部の身柄を拘束すればよかったのだが、ECN社から招集した部隊が足を引っ張った。
ハドリもECN社から招集した部隊が足を引っ張る可能性を考慮して、いくつかの対策を考えていた。
まず、OP社から派遣した部隊の一部に銃火器などの武器を携帯させた一方で、ECN社から招集した部隊には武器を携帯させなかった。
「タブーなきエンジニア集団」の多くのメンバーはECN社の元社員だ。元同僚を拘束するのをよしとしない者が出ることは十分に予想されたから、これらを押さえつけるために武器を持った自社の社員を配置したのだ。
また、ECN社の者はこうした事態に慣れていないことも承知していたから、OP社は最低限の訓練を実施した。これにより最低限、ECN社から招集した部隊も現場で使えるだろうと思われた。
実際「タブーなきエンジニア集団」の本拠地を包囲するまでは問題がなかった。
しかし、中に突入する際、ECN社のメンバーの一部がもたついたため、急がせようと銃を威嚇発砲した者がいた。
発砲によりECN社から招集した部隊がパニックに陥った。
戦闘慣れしていない上に、銃声を近くで聞くということがなかった者が多かったからだ。
パニックに陥った者達は、その場で立ちすくんだり、現場から逃げ出そうとしたりしてしまった。
あろうことか、自分の生命が危険と感じたのか、OP社の者から銃を奪い、乱射する者まで出てしまう始末だった。
OP社の者の多くは、この混乱を銃火器を使って脅すことで沈静化しようとしたが、かえって騒ぎを大きくする結果となった。
結局、混乱を静めるためにOP社は近くの治安改革センターすべてから職員を召集して対処せざるを得なかった。
四時間後にどうにか混乱は収まったものの、拘束されたのは「タブーなきエンジニア集団」のメンバーと誤認されたECN社の社員ばかりで、肝心のメンバーは誰一人として身柄を確保できなかったのである。
更に、銃火器の使用によりECN社とOP社の従業員に百数十名の負傷者を出す結果となった。
幸い奇跡的に死者は出なかったものの、OP社としては大失態としか言いようのない事態である。
この混乱のおかげでウォーリーやミヤハラなども、ほぼノーチェックの状態で逃亡することができたのである。
一方、「タブーなきエンジニア集団」の対応に見るべき点があったのも事実であった。
ウォーリーは本部から指揮系統が失われるのを嫌がったので、必ず副代表のミヤハラを本部事務所に残留させていた。
地味ながらもミヤハラはピンチに強い上司として部下に慕われていたから、この事態でも本部事務所に残っていたメンバーは混乱することなくミヤハラの指示に従った。
エリックの機転は更に評価されるべきであろう。OP社の過去のやり方から、迅速に風力エネルギー研究所の建物からの退避を決断したおかげで、ウォーリーたちは無事だったのである。
まず、風力エネルギー研究所で「タブーなきエンジニア集団」が非合法の部品を納入し、OP社の治安改革活動を妨害しようとしている、という報道を行った。
そのタイミングで、近くの治安改革センターの職員とセキュリティ・センターのメンバーで構成された四〇〇名の部隊で風力エネルギー研究所を包囲するとともに、OP社の息のかかった職員に命じて建物に放火させた。
その後消火と称して部隊を突入させ、「タブーなきエンジニア集団」のメンバーを建物の中に閉じ込めるとともに非合法の部品を捜索した。
非合法の部品が納入されていることは、息のかかった職員の情報からOP社も予め把握しており、それを容易に発見できた。
発見された非合法の部品は外に持ち出され、「タブーなきエンジニア集団」の不正の証拠として、予め集められていたマスコミ向けに提示された。
風力エネルギー研究所に突入した部隊はウォーリー達を上のフロアへと追い詰めた。
追い詰めたのは、予め仕掛けてあった建物解体用の爆薬に点火し、建物ごと「タブーなきエンジニア集団」のメンバーを葬り去るためである。
そして、この爆破を「追い詰められた犯罪者達によるテロ行為」としてマスコミに報道させると同時に、ポータル・シティの大部分の地域に戒厳令を敷き、この後のOP社の活動を円滑に行う準備を整える。
並行して、「タブーなきエンジニア集団」の本拠地を包囲し、捜査と称してトップのウォーリーの身柄を確保する。
こちらはECN社から招集した三千名と、OP社のセキュリティ・センター及びパトロール・チームの混成部隊五〇〇名の三五〇〇名で当たる。
本拠地に詰めている「タブーなきエンジニア集団」のメンバーは多くて百数十名であったから、包囲する人数としては十分なはずだった。
しかし、この計画の実行においていくつかの誤算があった。
最初の誤算は、ウォーリーが「タブーなきエンジニア集団」の本拠地に残留せずに、現場に出たことである。
いくらウォーリーが現場好きとはいえ、たかが中規模案件の点検作業のために代表自らが赴く可能性は低いと見ていたのだ。
また、ウォーリーを見つけたことで功を焦った風力エネルギー研究所へ派遣した部隊が中途半端にウォーリーを拘束しようとして失敗し、警戒心を抱かせたことはハドリにとっては痛手だった。
ウォーリーを見つけた時点で有無を言わさず身柄を拘束するか、中の部隊を犠牲にして建物ごと葬り去れば済んだことだった。
警戒されたことと、余計な時間を使ったことで、ウォーリー達の逃亡を許してしまった。今となっては後の祭りでしかない。
更に「タブーなきエンジニア集団」の本拠地に踏み込んだ部隊の失態は目を覆うばかりだった。
ウォーリーが不在である以上、ウォーリーに代わる幹部の身柄を拘束すればよかったのだが、ECN社から招集した部隊が足を引っ張った。
ハドリもECN社から招集した部隊が足を引っ張る可能性を考慮して、いくつかの対策を考えていた。
まず、OP社から派遣した部隊の一部に銃火器などの武器を携帯させた一方で、ECN社から招集した部隊には武器を携帯させなかった。
「タブーなきエンジニア集団」の多くのメンバーはECN社の元社員だ。元同僚を拘束するのをよしとしない者が出ることは十分に予想されたから、これらを押さえつけるために武器を持った自社の社員を配置したのだ。
また、ECN社の者はこうした事態に慣れていないことも承知していたから、OP社は最低限の訓練を実施した。これにより最低限、ECN社から招集した部隊も現場で使えるだろうと思われた。
実際「タブーなきエンジニア集団」の本拠地を包囲するまでは問題がなかった。
しかし、中に突入する際、ECN社のメンバーの一部がもたついたため、急がせようと銃を威嚇発砲した者がいた。
発砲によりECN社から招集した部隊がパニックに陥った。
戦闘慣れしていない上に、銃声を近くで聞くということがなかった者が多かったからだ。
パニックに陥った者達は、その場で立ちすくんだり、現場から逃げ出そうとしたりしてしまった。
あろうことか、自分の生命が危険と感じたのか、OP社の者から銃を奪い、乱射する者まで出てしまう始末だった。
OP社の者の多くは、この混乱を銃火器を使って脅すことで沈静化しようとしたが、かえって騒ぎを大きくする結果となった。
結局、混乱を静めるためにOP社は近くの治安改革センターすべてから職員を召集して対処せざるを得なかった。
四時間後にどうにか混乱は収まったものの、拘束されたのは「タブーなきエンジニア集団」のメンバーと誤認されたECN社の社員ばかりで、肝心のメンバーは誰一人として身柄を確保できなかったのである。
更に、銃火器の使用によりECN社とOP社の従業員に百数十名の負傷者を出す結果となった。
幸い奇跡的に死者は出なかったものの、OP社としては大失態としか言いようのない事態である。
この混乱のおかげでウォーリーやミヤハラなども、ほぼノーチェックの状態で逃亡することができたのである。
一方、「タブーなきエンジニア集団」の対応に見るべき点があったのも事実であった。
ウォーリーは本部から指揮系統が失われるのを嫌がったので、必ず副代表のミヤハラを本部事務所に残留させていた。
地味ながらもミヤハラはピンチに強い上司として部下に慕われていたから、この事態でも本部事務所に残っていたメンバーは混乱することなくミヤハラの指示に従った。
エリックの機転は更に評価されるべきであろう。OP社の過去のやり方から、迅速に風力エネルギー研究所の建物からの退避を決断したおかげで、ウォーリーたちは無事だったのである。
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