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第一章
5:三人のミッション
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「ただ、兄さんを探すのは僕の個人的なことだから、ロビーやモリタを巻き込むのはちょっと……」
セスが遠慮がちに上目遣いでロビーの顔色を窺った。
セスの兄に関する手掛かりはかなり少ない。
手持ちの情報で兄にたどり着くには相当な時間と手間がかかることが容易に予想できる。資金が必要になるかも知れない。
自分のためにそれだけの負担をロビーやモリタに強いるのはセスとしても気が引ける。
その一方でロビーなら、という期待もセスにはある。
ロビーは義理堅いというか、困っている身内を放っておけない性質だ。
なんだかんだ言いながらも常に気遣われていることはセスには容易に感じ取れたし、兄探しのことも気には留めてくれている。
負担にならない範囲で協力してほしいという気持ちもセスにはある。
「なに、遠慮するなって。仲間が困っているんだからお互い様だっての。ほら、モリタも金なんてせこいこと言わずに、セスに協力する!」
セスの予想通り、ロビーは協力を申し出てくれた。
モリタを巻き込もうとしているのはいつものことだ。
セス相手のときはともかくモリタに対してロビーは容赦がない。
「……わかったよ。費用は出世払いってことで」
モリタも渋々ながら協力を承知した。
「……懲りてねーな、お前」
ロビーが呆れてみせたが、これもいつものことだ。
セス達はハモネスの中央駅にたどり着き、ホームへ降りるエレベータに乗り込む。
エレベータを降りて進むと、一人のスーツ姿の小柄な男が歩いてきた。
男がセスに気づき、近づいてセスの顔を睨みつける。男の身体は小柄だったがその視線は鋭く、相手をひれ伏させる何かがあった。
「あ、すみません」
セスが思わず頭を下げる。
「足元が悪いからな、気をつけろよ」
背の低い男はそう言うと、階段で改札へと上がっていった。
「ふぅ、おっかなそうな人だったね。視線だけで焼け死ぬかと思った……」
セスが息をつきながら言う。
「……確か、あの小さい人、OP社の社長じゃないか?」
男の正体に最初に気づいたのはモリタだった。
「確かに。会社紹介の映像で少しだけ出ていたね」
セスの記憶の中にも、その顔はかすかに残っていた。
OP社の社長、エイチ・ハドリの顔は、その企業の知名度と比較すると著しく知られていない。彼はメディアの前には姿をほとんど現さないのだ。
ただ、セス達は職業学校での就職セミナーの中で、OP社の会社紹介の映像を見たことがあった。その中で、ハドリの姿が映っていたのを職業学校の教官が小声で教えてくれたのだった。
ハドリの姿が映っていたのはほんの数秒だった。しかし、闘犬を連想させる鋭い眼光、据わった首、小柄ながら背筋の伸びた堂々とした姿勢は学生達に強烈なインパクトを与えていたのだった。
一方、ハドリは階段を上りながら、誰にも聞こえないような小声でつぶやいていたのだった。
(あの車椅子の奴、どこかで見たことのある顔だ……)
ハドリは改札を出た後、物陰に隠れて携帯端末を取り出した。
携帯端末とは情報処理、通信などを一台で行う名刺サイズの端末で、エクザロームでは広く普及している。
セス達はハドリの動きに気づくことはなく、ホームの先へと進んでいった。
セスが遠慮がちに上目遣いでロビーの顔色を窺った。
セスの兄に関する手掛かりはかなり少ない。
手持ちの情報で兄にたどり着くには相当な時間と手間がかかることが容易に予想できる。資金が必要になるかも知れない。
自分のためにそれだけの負担をロビーやモリタに強いるのはセスとしても気が引ける。
その一方でロビーなら、という期待もセスにはある。
ロビーは義理堅いというか、困っている身内を放っておけない性質だ。
なんだかんだ言いながらも常に気遣われていることはセスには容易に感じ取れたし、兄探しのことも気には留めてくれている。
負担にならない範囲で協力してほしいという気持ちもセスにはある。
「なに、遠慮するなって。仲間が困っているんだからお互い様だっての。ほら、モリタも金なんてせこいこと言わずに、セスに協力する!」
セスの予想通り、ロビーは協力を申し出てくれた。
モリタを巻き込もうとしているのはいつものことだ。
セス相手のときはともかくモリタに対してロビーは容赦がない。
「……わかったよ。費用は出世払いってことで」
モリタも渋々ながら協力を承知した。
「……懲りてねーな、お前」
ロビーが呆れてみせたが、これもいつものことだ。
セス達はハモネスの中央駅にたどり着き、ホームへ降りるエレベータに乗り込む。
エレベータを降りて進むと、一人のスーツ姿の小柄な男が歩いてきた。
男がセスに気づき、近づいてセスの顔を睨みつける。男の身体は小柄だったがその視線は鋭く、相手をひれ伏させる何かがあった。
「あ、すみません」
セスが思わず頭を下げる。
「足元が悪いからな、気をつけろよ」
背の低い男はそう言うと、階段で改札へと上がっていった。
「ふぅ、おっかなそうな人だったね。視線だけで焼け死ぬかと思った……」
セスが息をつきながら言う。
「……確か、あの小さい人、OP社の社長じゃないか?」
男の正体に最初に気づいたのはモリタだった。
「確かに。会社紹介の映像で少しだけ出ていたね」
セスの記憶の中にも、その顔はかすかに残っていた。
OP社の社長、エイチ・ハドリの顔は、その企業の知名度と比較すると著しく知られていない。彼はメディアの前には姿をほとんど現さないのだ。
ただ、セス達は職業学校での就職セミナーの中で、OP社の会社紹介の映像を見たことがあった。その中で、ハドリの姿が映っていたのを職業学校の教官が小声で教えてくれたのだった。
ハドリの姿が映っていたのはほんの数秒だった。しかし、闘犬を連想させる鋭い眼光、据わった首、小柄ながら背筋の伸びた堂々とした姿勢は学生達に強烈なインパクトを与えていたのだった。
一方、ハドリは階段を上りながら、誰にも聞こえないような小声でつぶやいていたのだった。
(あの車椅子の奴、どこかで見たことのある顔だ……)
ハドリは改札を出た後、物陰に隠れて携帯端末を取り出した。
携帯端末とは情報処理、通信などを一台で行う名刺サイズの端末で、エクザロームでは広く普及している。
セス達はハドリの動きに気づくことはなく、ホームの先へと進んでいった。
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