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三月一九日(水)
保護対象の保有者、気質保護員になるには
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一一時半ちょっと前に穏円さんから連絡が入った。
明日か明後日に今作っているゲームのテストプレイを手伝ってほしいそうだ。
ということは、完成の見込みが立ったということなのだろう。
明日は部屋に電気関係の工事が入るとやらで予定が読みにくいから明後日なら、と答えた。
穏円さんは他の仲間と連絡を取って予定を調整してくれたようで、しばらくしてから明後日に知人宅でテストプレイとなった。
ゲームの完成が近いということで、穏円さんも機嫌が良さそうだ。
今回はどうやったら保護対象の保有者や気質保護員になれるかの話をする予定だったと思う。
まずは保護対象になる方法から話すことにする。
保護対象になるには希少気質の保有者でなければならない。
保有者かどうかは指定医療機関で検査を受ければいい。
血液検査なので血を抜かれるらしいのだけど、検査そのものは三〇分くらいで終わるそうだ。
検査にかかる費用は医療機関によって差があるので、調べてもらえればいいと思う。
自費で人間ドックを受けるよりはかなり安いはずだ。
検査で保有者と認められ、年齢要件を満たせば保護対象への応募資格が得られる。
保有者の資格は一生有効なので保護対象への応募は募集があればいつでも可能だ。
過去に保護対象の募集は三度行われている。
初回は一昨年の春で人数は二〇〇名だった。
このときの年齢要件は一八歳以上三九歳までだった。
子孫を残すことを前提に募集したからだったのだろう。
ちなみに穏円さんはこの回に応募して保護対象となった。
二〇〇名の募集に対して、枠は全部埋まりきらなかったので応募した保有者全員が保護対象になった。
実は第二回以降も同様で、募集枠が埋まったことは一度もない。
第二回からは対象年齢の上限を五九歳まで引き上げたのだが、応募をためらう人がまだまだ多い、というのが実情なのだろう。
現在、保有者の割合は全人口の八パーセント程度と推定されている。
年齢制限があったとしても少なくともその三分の一以上は応募資格を持っているだろうから、保有者に対する応募者の割合は桁違いに小さそうだ。
実は自分も保有者かどうかの検査を受けようと考えたことがある。
今の会社に入って、気質保護員の試験を受けた直後のことだ。
思ったより試験の出来が悪く、合格が厳しいのではないかと感じていた。
検査を申し込もうかと迷っていたところに合格通知が届き、気質保護員となってしまった。
気質保護員になったので、保護対象になる必要がなくなってしまい検査も受けなかった。
余談だけど保護対象に一度なってしまうと一生そのまま、と思っている人も少なくないんじゃないかな?
でも、これは違う。
保護対象は本人の意思でいつでも辞めることができる。
辞めた後でも、その後の募集に応募できる権利は残るので、復帰の道はある。
今まで辞めた人は何人かいるけど復帰した人はまだいないから、あまり知られていないのだけど。
保護対象についてはこのくらいかな。
今度は気質保護員についてだ。
こっちは国家資格で、指定された試験に合格しなければならない。
一八歳以上で保護事業に参加している企業や団体と雇用関係にあるか、一年以内に雇用関係となることが見込まれる者。
受験に必要な条件はこれだけだ。
試験は筆記試験で、一般常識、カウンセリング概論、希少気質保護関連法規、希少気質保護実務(これは主に書類の書き方を問うものだ)の四科目だ。
希少気質保護実務だけが記述式で、後の三科目はマークシートになる。
四科目の合計が満点の六割以上で、かつ三割五分未満の点数の科目がなければ合格だ。
ちなみに自分が受験したときは希少気質保護実務が非常に難しくて、これで落ちるんじゃないかと思っていた。
蓋を開けたら合格していたし、合格率もいつもよりちょっと低い程度だった。
自分が受けた回は何らかの得点調整が入ったかもしれない。
ちなみに試験は年二回、合格率は大体二割くらいだ。
試験に合格した後、国から委託された機関が主催する二ヶ月の研修を受けると、晴れて気質保護員となる。
研修は最初の二週間が講義で、後は五、六人のチームを組んでケーススタディを行う。
このケーススタディに登場する保有者はかなり問題のある人ばかりだったけど、あれはかなり極端な例だったのだと思う。
気質保護員の資格は有効期限が三年なので、三年ごとに更新が必要だ。
更新に必要なのは一定時間以上の実務と、必要な研修を受けること。
実務は普通に仕事をしていれば達成できるけど、研修が結構多いのが難点だ。
そろそろ昼になるので、食事にしようと思う。
穏円さんから本日四度目の連絡が入った。
普段より多いのは、明後日の予定を調整してもらったからだ。
穏円さんは外に食べに行くらしい。
自分は家で自炊だ。
自宅で仕事をするときで外食するのは、朝に外に出なかった日くらいだ。
地元の東妙木駅周辺はうちと反対側が繁華街で、飲食店もそちら側に集中している。
なので外食すると行き帰りだけでニ〇分以上かかるのだけど、それだとちょっと時間がもったいない。
簡単に麺類で食事を済ませた後は、ちょっと休憩。
その間に保護対象や気質保護員がどうやって生計を立てているかについて説明しようか。
興味がある人も少なくないと思うのだよね。
保護対象の保有者には、国から管理会社を通してお金が支払われる。
これは保護対象として生きることに対して支払われるものだ。
金額は法律で決まっているが、ここで具体的な数字を出すのはやめておく。
ざっくりしたイメージだと大手企業で管理職になりたての人くらいの額だと思う。
ここから税金や社会保険料を支払うのは普通の勤め人と同じだ。
自分のような気質保護員も保護対象の保有者と似たような感じだ。
希少気質保護の事業を行う会社には、担当する保有者一人につきいくら、というように国からお金が支払われる。
このお金から気質保護員の給料や、保護にかかる経費などを支払うというしくみだ。
気質保護員になってから、前の会社と比べて年収が四割くらい増えたから驚いた。
知り合いからは「前がちょっと低かったんじゃないか?」と言われたので、そうなのかもしれない。
保有者や気質保護員についてはいろいろ言われることもあるけど、個人的にはあったほうがいいと思う制度だ。
穏円さんはともかく保有者にはこういう制度がないと生きにくい人が少なくないのではないかと思うからだ。
自分はこの制度のおかげでほとんど失業を経ることなく今の仕事を得ることができているから、その分のバイアスがかかっているのかもしれないのだけど。
さて、昼休みもそろそろ終わりだ。
午後は来週の研修のテキストを読むことにする。
この研修ではグループディスカッションがあるのだけど、ディスカッションへの参加率が低いと受講認定がもらえないらしい。
会社の先輩が体調不良のときに研修に参加して、受講認定がもらえなかったと話していた。
頭がぼーっとして議論についていけなかったのだそうだ。
また、その先輩からテキストはしっかり読み込んでおいた方がいいと忠告されたので、素直に忠告に従っておくことにする。
一二〇ページくらいあるから、明日もテキスト読みに充てた方がいいかな?
明日か明後日に今作っているゲームのテストプレイを手伝ってほしいそうだ。
ということは、完成の見込みが立ったということなのだろう。
明日は部屋に電気関係の工事が入るとやらで予定が読みにくいから明後日なら、と答えた。
穏円さんは他の仲間と連絡を取って予定を調整してくれたようで、しばらくしてから明後日に知人宅でテストプレイとなった。
ゲームの完成が近いということで、穏円さんも機嫌が良さそうだ。
今回はどうやったら保護対象の保有者や気質保護員になれるかの話をする予定だったと思う。
まずは保護対象になる方法から話すことにする。
保護対象になるには希少気質の保有者でなければならない。
保有者かどうかは指定医療機関で検査を受ければいい。
血液検査なので血を抜かれるらしいのだけど、検査そのものは三〇分くらいで終わるそうだ。
検査にかかる費用は医療機関によって差があるので、調べてもらえればいいと思う。
自費で人間ドックを受けるよりはかなり安いはずだ。
検査で保有者と認められ、年齢要件を満たせば保護対象への応募資格が得られる。
保有者の資格は一生有効なので保護対象への応募は募集があればいつでも可能だ。
過去に保護対象の募集は三度行われている。
初回は一昨年の春で人数は二〇〇名だった。
このときの年齢要件は一八歳以上三九歳までだった。
子孫を残すことを前提に募集したからだったのだろう。
ちなみに穏円さんはこの回に応募して保護対象となった。
二〇〇名の募集に対して、枠は全部埋まりきらなかったので応募した保有者全員が保護対象になった。
実は第二回以降も同様で、募集枠が埋まったことは一度もない。
第二回からは対象年齢の上限を五九歳まで引き上げたのだが、応募をためらう人がまだまだ多い、というのが実情なのだろう。
現在、保有者の割合は全人口の八パーセント程度と推定されている。
年齢制限があったとしても少なくともその三分の一以上は応募資格を持っているだろうから、保有者に対する応募者の割合は桁違いに小さそうだ。
実は自分も保有者かどうかの検査を受けようと考えたことがある。
今の会社に入って、気質保護員の試験を受けた直後のことだ。
思ったより試験の出来が悪く、合格が厳しいのではないかと感じていた。
検査を申し込もうかと迷っていたところに合格通知が届き、気質保護員となってしまった。
気質保護員になったので、保護対象になる必要がなくなってしまい検査も受けなかった。
余談だけど保護対象に一度なってしまうと一生そのまま、と思っている人も少なくないんじゃないかな?
でも、これは違う。
保護対象は本人の意思でいつでも辞めることができる。
辞めた後でも、その後の募集に応募できる権利は残るので、復帰の道はある。
今まで辞めた人は何人かいるけど復帰した人はまだいないから、あまり知られていないのだけど。
保護対象についてはこのくらいかな。
今度は気質保護員についてだ。
こっちは国家資格で、指定された試験に合格しなければならない。
一八歳以上で保護事業に参加している企業や団体と雇用関係にあるか、一年以内に雇用関係となることが見込まれる者。
受験に必要な条件はこれだけだ。
試験は筆記試験で、一般常識、カウンセリング概論、希少気質保護関連法規、希少気質保護実務(これは主に書類の書き方を問うものだ)の四科目だ。
希少気質保護実務だけが記述式で、後の三科目はマークシートになる。
四科目の合計が満点の六割以上で、かつ三割五分未満の点数の科目がなければ合格だ。
ちなみに自分が受験したときは希少気質保護実務が非常に難しくて、これで落ちるんじゃないかと思っていた。
蓋を開けたら合格していたし、合格率もいつもよりちょっと低い程度だった。
自分が受けた回は何らかの得点調整が入ったかもしれない。
ちなみに試験は年二回、合格率は大体二割くらいだ。
試験に合格した後、国から委託された機関が主催する二ヶ月の研修を受けると、晴れて気質保護員となる。
研修は最初の二週間が講義で、後は五、六人のチームを組んでケーススタディを行う。
このケーススタディに登場する保有者はかなり問題のある人ばかりだったけど、あれはかなり極端な例だったのだと思う。
気質保護員の資格は有効期限が三年なので、三年ごとに更新が必要だ。
更新に必要なのは一定時間以上の実務と、必要な研修を受けること。
実務は普通に仕事をしていれば達成できるけど、研修が結構多いのが難点だ。
そろそろ昼になるので、食事にしようと思う。
穏円さんから本日四度目の連絡が入った。
普段より多いのは、明後日の予定を調整してもらったからだ。
穏円さんは外に食べに行くらしい。
自分は家で自炊だ。
自宅で仕事をするときで外食するのは、朝に外に出なかった日くらいだ。
地元の東妙木駅周辺はうちと反対側が繁華街で、飲食店もそちら側に集中している。
なので外食すると行き帰りだけでニ〇分以上かかるのだけど、それだとちょっと時間がもったいない。
簡単に麺類で食事を済ませた後は、ちょっと休憩。
その間に保護対象や気質保護員がどうやって生計を立てているかについて説明しようか。
興味がある人も少なくないと思うのだよね。
保護対象の保有者には、国から管理会社を通してお金が支払われる。
これは保護対象として生きることに対して支払われるものだ。
金額は法律で決まっているが、ここで具体的な数字を出すのはやめておく。
ざっくりしたイメージだと大手企業で管理職になりたての人くらいの額だと思う。
ここから税金や社会保険料を支払うのは普通の勤め人と同じだ。
自分のような気質保護員も保護対象の保有者と似たような感じだ。
希少気質保護の事業を行う会社には、担当する保有者一人につきいくら、というように国からお金が支払われる。
このお金から気質保護員の給料や、保護にかかる経費などを支払うというしくみだ。
気質保護員になってから、前の会社と比べて年収が四割くらい増えたから驚いた。
知り合いからは「前がちょっと低かったんじゃないか?」と言われたので、そうなのかもしれない。
保有者や気質保護員についてはいろいろ言われることもあるけど、個人的にはあったほうがいいと思う制度だ。
穏円さんはともかく保有者にはこういう制度がないと生きにくい人が少なくないのではないかと思うからだ。
自分はこの制度のおかげでほとんど失業を経ることなく今の仕事を得ることができているから、その分のバイアスがかかっているのかもしれないのだけど。
さて、昼休みもそろそろ終わりだ。
午後は来週の研修のテキストを読むことにする。
この研修ではグループディスカッションがあるのだけど、ディスカッションへの参加率が低いと受講認定がもらえないらしい。
会社の先輩が体調不良のときに研修に参加して、受講認定がもらえなかったと話していた。
頭がぼーっとして議論についていけなかったのだそうだ。
また、その先輩からテキストはしっかり読み込んでおいた方がいいと忠告されたので、素直に忠告に従っておくことにする。
一二〇ページくらいあるから、明日もテキスト読みに充てた方がいいかな?
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