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バルバトスの鎧を求めて

かつて最強と呼ばれ今では伝説と謳われている退魔師 頼光

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 オレは何かの気配を感じて目が覚める。オレはどうやらいつの間にか眠っていたようだ。
この廃村に何者かが近づいてくるのを感じる。いやこの感じは体の奥底から来るような感覚、近づいているのはオレたち同じ魔族。

「清姫おきろ。何者かがこの廃村に向かってきているぞ」

「う~ん、何ですか。朝にはまだ早いですよ。おやすみなさい」

そう言って清姫は毛布に絡まり寝ようとする。オレは毛布を奪い取り起きろと叫ぶ。清姫の体が少し浮いたと思うと目がちゃんと覚めて一度周りを確認してから悲鳴を上げてオレにアッパーカットを食らわせ、オレは宙を舞った。

「あ、ごめんなさい。でもあなたがいけないんですよ起きたらあなたのフルフェイス型の兜をつけてわたくしの目の前にいたせいで襲われたと思ってしまったんですもの」

オレは起き上がり警戒態勢を取り清姫にも周りを警戒するよう呼びかける。

「オレのことはいいから警戒態勢に入ってくれ」

「なぜですの。同族なら警戒する必要は・・・、近づいてくるおはからは殺気を感じますわね。確かに警戒態勢を取った方がよろしいかと」

 清姫も警戒態勢に移行して窓近くに身を潜めて外を見る。オレは暖炉の灯を消してドアの近くに行き相手が突入してくるのを警戒する。

 少しずつだが近づいてくるのを感じる。相手も同じ魔族なら隠れることは無意味かもしれないがしないよりはましかもしれん。
それにしても清姫が悲鳴を上げたのにこちらに来る速さが変わらないということはどういう事だ?
魔族化したとき耳がなくなって聞こえなくなったか、退化して聞き取りずらくなったか、それとも獲物の居場所が分かり、はやる気持ちを抑えているのか、何はともあれこうやって迎撃の心構えができただけでも良しとするか。

 気配はドンドンと近づいてくる。そして、気配はオレと壁一枚挟んだところで止まった。

「そこに隠れているのは分かっておる。それに壁一枚挟んでいるとはいえ、人の血の匂いがする。もしや貴様たち人を食ったのか?」

「オレたちには食人衝動はない。もし、人の血の匂いがするのなら、人間たちから身を守るため人間を殺したから匂うんだ」

「ほうほうさようか、声の主は初めて人を殺したと見える。もう一人は既に何人も人を殺した経験があるとお見受けする」

 こいつはやばい、声を聴いただけでオレがあの時の戦闘で初めて人間を殺したことに気づきやがった!清姫が人を殺しているのはたぶん追手の奴らとの交戦によって殺害したに違いないけど、まだ会ったこともないのにそんなことが分かるのか!?

「何、年を取り拙者ほどにもなればこのぐらい気配でわかるようになる。だから恥じることはない。自衛のためなら是非もないが、本当にそうなのかは拙者にはわからん。そして、拙者の経験則ではこういうのは切り結んだが方が早い。というわけで拙者に切られろ!妖!」

は?こいつ何を言っているんだ。切り結んだ方が早い、それってつまり、やばい!ここから離れ無いと。

オレはすぐさま壁から離れて臨戦態勢を取る。そこでドアの近く壁に一閃が走り、少し間が入ってから壁が崩れ始める。
もしあのままいたらオレの首は飛んでいただろう。
それどころか刀で壁を切るなんてどんだけすごい技量の持ち主だよ!?あり得ないだろ。ここは逃げるに限る。

「清姫!逃げろこいつはオレたちでは相手にならない!」

「こちらを破って外に出ます!」

オレと清姫はすぐにこの相手には勝てないと思い逃げるように外に出る。そのまま廃村の外にでようとするが、相手の方が速く回り込まれてしまった。

「なっ!?」

「縮地!まさか、これ程の使い手なんて!」

さっきは相手を見ずその技量によりすぐに逃げ出してしまったが、こいつ男か。そんなことはどうでもいい。
この廃村の出入り口は一つしかない。そして逃げる方向にこの男が縮地で回り込まれたために完全に逃げ道を塞がれてしまった。
逃げれないならここで倒すしか、勝てるかどうかはさておき、倒さなければこちらが殺される。
オレと清姫は武器を構えて相手と対峙する。それすぐ近くでオレたち以外の気配を二人ほど感じたが今はこいつらにかまっている暇はない。

「よろしい。勝てないとわかりすぐに逃げようとしたのは誉めてやろう。竜人の娘よ。だが、もう一人の者は自らの力に自信が無いのか知らぬが、すぐに逃げるという選択は拙者の前では御法度だぞ。そういう者は無性に斬りたくなる」

「それじゃあ、彼女は見逃してくれないか」

「それはできない相談だ。おぬしの仲間なら斬るだけよ。斬らせたくないならば、おぬしたちが拙者に勝てばいいそれだけの話よ」

相手は話し終えると縮地でオレに接近して刀を振り下ろす。寸前のところでこれを回避して、足払いをかける。だが、相手はこれを上に軽く飛んで回避してまた刀を振るう。今度はこれを受ける。
この時、相手は戦いに飢えたいや強敵に出会えたことに対しての嬉しそうな顔だった。
鍔迫り合い状態になる。だが、こちらは態勢が悪い為に少しずつ地面へと押され始めている。
そこへ清姫が薙刀を振るう。相手はこれをいとも簡単に回避して少し距離を取る。だが、こいつには縮地がある。距離が少し空いた程度では無いと変わらない。
それにさっきから相手のプレッシャーがすごく。少し交戦しただけで物凄く動いたような錯覚にとらわれ冷汗が止まらない。
相手はオレのノーザンライト・リッパーを見て感嘆の声を上げる。

「ほう、貴様の短剣、なかなかの業物と見た。まさか、拙者の滅鬼丸を受けても切れず、それでいて刃こぼれ一つないとは、貴様の腕が良いのか、それともこれを作った者が良かったのか、さてどちらかな」

どちらもオレなんだけどノーザンライト・リッパーをほめてくれたことは打ったものとしてうれしいものだな。

「こいつをほめてくれてありがとさん。ノーザンライト・リッパーを打ったのはオレだ」

「そうか、それほどの業物を打つ技量を持ちながら、拙者の剣を受けるほどの技量を持つ者が拙者の前に現れようとはいやはや長生きしてみるものだ」

長生きねぇ。いったい何年生きているか知らないが、今のオレたちはあんたに殺されようとしているんだ。長くいたからなんだっていうんだ。
そこで清姫が口を開く。

「もしかしてあなた様は浅木家の者なのですか?」

「浅木家?」

「遥か昔、ヤマブキに存在した退魔師一族ですわ。そこにいた頼光様が確か滅鬼丸という退魔刀を所持していた。伝わっていますの」

「ざっとどのくらい前?」

「五百から六百年前だった。とおもいますわ」

五百から六百年前にいた魔族いやヤマブキ風に言うなら妖、それが今、目の前にいる人物、全くとんでもないなぁ、魔族になると姿かたちが変わるだけではなく寿命まで変わるのか。伸びるか縮むかは分からないが。
今よく見ると、相手は人型で姿は変わっていないが右目の周辺と右肩から手の先にかけて真っ黒になっている。

「よく知っている。竜人の娘よ。確かに拙者は浅木の者で合っている。それとこの滅鬼丸を持っている拙者はかつて最強の退魔師と言われた。浅木頼光で合っているぞ。そこまで知っているということはどこかの良家の娘さんか」

相手の名は浅木頼光、遥か昔、最強と呼ばれた退魔師、現在はミイラ取りがミイラになったといわんばかりに魔族になった人物。後世に名を残すほどの強さとオレたちは対峙していることになる。
勝てるかと聞かれると今の交戦でこのままでは負けるのは必定、何かしら逆転の一手を出さなければ勝てない。
頼光はこちらをは凌ぐ技量をもっている。この技量差のせいでこちらは攻撃がしても反撃で簡単にやられる。逃げようにも、縮地でこちらの行く先に先回りできる。こうなったら鎧の性能を頼りって突っ込んで行くしか勝ち目がないか。

「私の名は清姫、ヤマブキ創始から代々続く旧家、桔梗家に名を連ねた者です」

清姫のフルネームは桔梗清姫と言うのか

「ほう桔梗家の者か、なら拙者のことは家族から聞かされていよう。だから薙刀か。桔梗家の者は代々薙刀が得意だったからな。同じヤマブキ出身者とはいえ竜人になってしまえば妖と変わらんよ。
馬鹿どもは龍の血を飲めば不老不死になるという幻想を求めておぬしに群がるであろう。そうなる前に切り伏せてやった方がおぬしのためになろう」

最後の一言共にプレッシャーが一段と強くなる。清姫に至っては足を振るえさせている。それでも清姫は気丈にも言い返す。

「私はまだ死ねません!まだ生きていたい。まだたくさんやりたいことあるのです!だからまだ死ねません!」

「ならば拙者を倒して前へ進むがいい」

「そうさせていただきます!」

清姫は足を前へと踏み出して、頼光へと攻撃を仕掛ける。

「清姫、これは挑発だ!」

オレが止める間もなく清姫は頼光に迫る。後を追うようにしてオレも攻撃に参加する。
頼光は清姫の薙刀による連続突きをいとも簡単に回避して反撃に移る。そこでオレがノーザンライト・リッパーを投げ、頼光はこれも回避する。だが清姫に対して反撃を阻止することに成功する。
残りはあと一本、相手の強さを考えると回収している暇はない。このまま、飛び込む!

「でやああぁぁぁぁぁ!」

スラスターを吹かしまくって相手に狙いをつけさせるな!頼光の予想を裏切り続けオレの思考を読ませるな!
一気に攻める!オレと頼光の技量の差は歴然としている。
頼光に勝つには技量以外のところで勝つしかない!オレに有って頼光にない物それはバックパックにあるスラスターだ!
スラスターのおかげで頼光との技量差を埋められているだが、それも時間の問題だ!ある程度過ぎれば頼光の技量なら対処できるようになるだろう。勝負を決めるなら今の内だ!
オレは頼光を何度も斬りつける。しかし、頼光は見事なまでに回避し、時には圧倒的な技量をもってを攻撃を受け流す。

「初めてだ。こんな戦いをする者は、だがおぬしの太刀筋、完全に見切った!」

頼光はそう言い今度はオレの機動に合わせて刀を振るう。これはすぐに急減速して直撃を免れる。が、刀がガントレットをかすめ、かすめたところは傷ができるのではなく切り裂かれていた。

「バカな!こうもあっさりとこの鎧を切り裂くなんて!」

「どうやら手ごたえありと見ていいようだ。せいやぁ!」

今度はうって変わってオレは頼光から猛攻を受ける。スラスターを駆使して何とか避け、時には受け流す。オレは完全に防御することに手一杯になる。

「私のことを忘れておりませんか!」

清姫が頼光に攻撃を仕掛けるが軽くあしらわれて蹴り飛ばされる。さらに清姫の得物である薙刀がバラバラにされてしまった。

彼女のおかげで頼光にオレの切り札を切るための隙ができた。

大地の息吹感じろ!星の鼓動に耳を貸せ!世界が定めた枠組みを超えろ!

「こやつ!まさか!」

「神気合一!」

踏みしめていた大地は割れ、体の奥底から力が溢れてくる。バックパックは変形し、スラスターノズルは二個から四個に増え、背中にマウントしていたビームサーベルが抜けるようになり、兜のマスク部分が左右に割れて隠れ、ゴーグルは上へと上がったことにより素顔が露出した。

「さっきまでとは何かが違う。神気合一、よもやその年でそのような妙技を身に着けていようとは、拙者の心もたぎるというもの。見せてもらおうか、神気合一の力とやらを!」

オレはビームサーベルを抜き、頼光に突っ込む!

「バカかなのかおぬし!そのようなただの筒では拙者は倒せん!さっきの短剣で来るが・・・何!?それは!!!」

ビームサーベルに力を通して刀身を発生させる。たった一度の奇襲これで倒せれば良し、できなければ神気合一で圧倒するだけだ!
ビームサーベルを振るう。これは寸前のところで回避される。頼光は反撃に出ようとする。オレはそれを許さず、頼光に猛攻を加える。

「まさか!このような光の剣を持ったものと出会えようとは!だが!負けん!」

頼光は回避に専念しがらも反撃を加えてくる。圧倒的な力の差があっても圧倒的な技量の差によってゼロにされている。
それからは一進一退の攻防が続く。オレの攻撃回数は多いが回避に専念されているために当てることができない。
頼光はこちらの隙をつき、的確に攻撃してもオレは寸前のところでかわす。これを何でも繰り返される。オレはこのままでは埒が明かないと考えた。
オレは頼光の攻撃をスラスターを吹かし大ジャンプしてかわして、残りのノーザンライト・リッパーを投げる。頼光はこれを刀で払う。これにより頼光に隙ができる。オレはその隙をつきスラスターを吹かして空中で加速をつけて斬る。
オレは頼光を狙わず、頼光の刀、滅鬼丸を狙いビームサーベルを振り下ろす。頼光も自分を狙った攻撃ではないために反応が遅れ、滅鬼丸に吸い込まれるようビームサーベルが滅鬼丸を一刀両断した。

「何ぃ!?」

「これでこの戦いも終わりだ!」

頼光は驚きの声を上げ、オレは頼光に最後の一撃をいれようとする。そこで頼光が、

「参った!」

オレは頼光を斬る寸前でビームサーベルを止め、頼光が言った言葉を理解しようとする。

「何て言った?」

「拙者は参ったといった。おぬしの勝ちで拙者の負けだ。これからはおぬしに従おう」

どうやら本当に降参する意思があるらしい。ならオレの答えは決まっている。

「オレたちと共に来てくれ。頼光」

「拙者の力、存分に振るってくれようぞ」

そして、オレはビームサーベルがしまい。神気合一を解いてそれから倒れた。

「な!?」

「フリージア様!?」

「速く家の中に運ぶぞ!」

オレは朽ちていない家の中へと運ばれていった。










「ようこそ。いらっしゃいました。我々はあなた方を歓迎させていただきます」

そこには神父と対面する人たちがいた。

「そのようなことを聞くためにここに寄ったのではない。神父要件を早く言いなさい」

若い男の一人が神父を急かす。

「わかりました。実はここに魔族が現れたのです」

「なんだと!魔族がここに現れただと!この国の兵は何をしていたのだ!」

「何分、魔族はこう言っていまして」

神父はここに居る者たちに魔族との会話した内容を話す。この内容には驚かずにいられなかったもよう。神の像を使い空間転移はこの者たちも知らなかったもよう。

「そのようなことが」

「一応、他の者に本当なのか調べてもらっている最中でございます」

「わかった。このことは教皇様ちちにもお伝えしておきます」

「ありがとうございます。魔族は現在ここの地図を盗み、この村から出ていきサザンカの森に入ったという目撃情報があります。もしかしたら森を抜けた先の廃村にいる可能性があります」

「わかりました。その魔族、勇者の名に懸けて打倒して見せましょう」

「ありがとうございます!勇者様!」

神父は勇者アリスの手を取り感謝の言葉を述べ。勇者アリス一行にフリージア討伐を依頼した。
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