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第四章 Bグループの少年と夏休み
第六話 調達1
しおりを挟む「ハナ、お茶飲むでしょ?」
「うん」
「古橋さんは?」
「あ、はい、お願いします」
「はーい」
二人からの返事を聞いて雪奈が部屋に備え付けの急須とポットでお茶を煎れ始める。
今は練習から帰ってきて、着替えを終えたところである。
「あー、部屋に戻ってきた時も思ったけど、着替えたらドッと疲れてきたね」
恵梨花がはしたなくテーブルにもたれながら言うと、雪奈は同意するように頷き、古橋は苦笑を浮かべた。
「そうね。今もお茶煎れようとしてるだけなのに、腕がちょっとプルプルしてるし」
「二人とも普段運動してないんですよね? なのに、あれだけの時間動いていたら無理も無いですよ」
そのもっともな言葉に、恵梨花と雪奈はため息を吐いた。
「やっぱり明日は筋肉痛かな」
「でしょうねえ、亮さんも言っていたし――はい、どうぞ」
雪奈が煎れてくれたお茶を受け取り、一口飲んでホッとする三人。
「それにしても……桜木くんって、とんでもないですね」
古橋がしみじみと口にすると、恵梨花は雪奈と一緒に苦笑を浮かべた。
「私もある程度は知ってるつもりだったんですけど、あそこまでとは知らなくて……」
「そうね。まさか、目隠しして男の子全員を相手にして無傷だなんて……」
「それもそうですけど、あの底無しのスタミナもすごいです」
「ああ……」
藤本姉妹の声が揃った。
確かに恵梨花も亮が息を切らしたところなんて録に見たことは無く、それは普段から運動しているからだと思っていたが、今日見た亮のスタミナはそんな次元の話では無かったのだと認識させられた。
「……まあ、亮くんだしね……」
「そうね、亮さんだものね……」
姉妹揃って遠い目をしてそんなことを言うのを見た古橋が噴き出した。
「あっはは、見た目もそうですけど二人って姉妹なだけあってやっぱり似てますね」
その言葉に恵梨花と雪奈は顔を見合わせて苦笑する。
「ええ、よく言われます」
「そうね。ハナが高校に入る頃に背丈も殆ど変わらなくなってからは特にね」
「ね。私なんて後ろ姿でしょっ中、ユキ姉に間違われるから、髪染めたし」
「あ、恵梨花ちゃんが髪染めてるのはそういう理由だったんだ」
「そうなんです。家族まで間違え始めたから、もう思い切って」
「家族まで……」
「ええ、そうなんです」
「……でも、お兄ちゃんだけは間違えたこと無かったのよね……」
雪奈が頬に手を当ててなんとも言えない表情で言うと、古橋は口数少なく答えた。
「あ、あのお兄さん……」
朝に見た純貴のシスコンぶりを思い出したのだろう。なんともコメントに困った顔をしている。
「気にしなくていいですよ、兄がシスコンなのは誰が見ても明らかですし」
「そうね。人前では少しでも取り繕ってくれたらと思う時もあるけど……」
もう二人にとっては諦めの境地である。
「あ、はは……」
古橋が引き攣ったように笑った時だ。
開いた窓から何か騒がしい声が聴こえてきて、三人揃って顔を見合わせる。
「何かあったのかな?」
「そうね、騒がしいわね」
「私、ちょっと様子見てきますね」
そう言って、古橋が立ち上がったところで、部屋にドンドンとこれまた騒がしくノックの音が響く。
「はい、どうぞ?」
古橋が答えると、ガチャリと扉が開かれ、肩で息をした真央が慌てたように入ってきた。
「恵梨花!!」
「ど、どうしたの、真央ちゃん……?」
今日ですっかり打ち解けたと思えた真央の血相を変えた様子に恵梨花は目を丸くする。
「た、大変! 桜木くんが――!」
「りょ、亮くんが、どうしたの? 今はランニングしてるはずで……まさか、怪我でも――!?」
そんな想像をしてしまって慌てて立ち上がったが、すぐに思い直す。
「――そんな訳ないか。どうしたの?」
亮が走りに行って、怪我をすることがどうにも想像できなかった。
落ち着いて聞き返せば、真央はどう言ったらいいのかと口をまごつかせ――
「えっと、えっと、桜木くんが……猪をお持ち帰り……」
どこか抜けた声で言ったのである。
それを聞いた恵梨花は一瞬何を言ってるのかと意味がわからずポカンとし、雪奈と、古橋と顔を見合わせてから首を傾げた。
「……はい?」
「ちょ、ちょっと通してー……」
同じように話を聞いたのか、部員達がゾロゾロと集まっている中、恵梨花達が真央に導かれてやってきたのは、民宿の脇にある屋根だけの納屋みたいなところであった。
その中でもっとも人が密集している場所へ恵梨花が進んでいくと、地面にデンと大きな猪が横たわっているのが目に入った。
「わ、わあ……」
「まあ……」
「うっそ……」
恵梨花、雪奈、古橋が引き攣った頬で驚きの声を出した。
そんな中、猪を挟んで亮と民宿で働いている男性が和気藹々と話している。
「いやー、こいつは100キロは超えてるな、脂もたっぷり乗って……兄ちゃん、よく一人で運んでこれたな」
「はっは、後の楽しみを考えたらどうってことねえよ。それよか解体頼んでいいか、おっちゃん?」
「ああ、任せときな。慣れたもんよ」
「助かる。さっき言った通り、簡単にだけど血抜きはしてるから。あと、肉以外の部位全部と肉も少し持っていってくれていいから」
「おお、そうかい? じゃあ、遠慮なくもらってくからな」
「ああ。あ、夕飯前までには片付きそうかな、おっちゃん?」
「簡単なブロックに分けるぐらいなら余裕だな」
「よっし、じゃあ頼んだぜ、おっちゃん」
「おう、任せときなあ。役所への届けも後でやっといてやるよ」
亮はそこで話を終えて、こちらへ振り返り、呆然と大きな猪の死体に目が釘付けになっていた恵梨花に気づいた。
「おお、恵梨花、ちょうどよかった」
そう言って上機嫌そうにニコニコと寄って来た亮に、恵梨花は顔を上げた。
「りょ、亮くん……?」
思考が状況の理解に追いつかず、恵梨花はそんな風に返した。
「ああ。いやー、ラッキーだったぜ。走ってる時に、脇からあの猪が俺の目の前に出てきてな」
「う、うん……」
「つっても、出てくる前から察しはついてたんだけどな、ガサガサ音立ててたのに気づいてたから」
カラカラと笑う亮に、恵梨花はただ頷くしか出来ない。
「うん……」
「それですかさず追いかけて蹴り――っウオッホン!! じゃなくて、あの猪、俺見て驚いたのか間抜けにも木にぶつかってな、そのまま首折って死んじまったんだよ」
亮がいつもの誤魔化し笑いを浮かべているところからして、恐らく言葉通りでは無いのだろう。
「へ、へえ……? け、怪我してないんだよね?」
「おう。俺が猪とぶつかる訳ねえだろ?」
「……だよね」
「それでそのまま捨て置くのも勿体ないから持ち帰ったんだが――そういう訳で恵梨花、あの猪の肉で何か作ってくれねえか?」
亮が朗らかな笑顔で言ってきた言葉を耳にして、恵梨花はあんぐりと口を開いた。
そして再び猪に目を移す。
「あ、あ、あの猪……?」
「? ああ」
恵梨花もわかっている。だが、理解が追い付かないのだ。
恵梨花が今まで調理してきた肉というのは、パックにラッピングされているもので、間違っても生前の姿がわかるような肉ではない。
それが先ほどまで動いて生きていたのだとわかる生き物の死体から『肉』になるということに考えが追いつかないのだ。
「あー、もしかして猪肉扱ったことねえか?」
だが、亮が頭を掻きながら困ったように聞いてくるその言葉の中で、『猪肉』という――食材の単語に、料理人の娘としての恵梨花の頭が回転を始める。
「あ、私は扱ったことないけど、でもわかると思うよ……お母さんに聞いても間違いないと思うし」
その言葉に亮はそれはもう見事なほどに破顔した。
「そうか! じゃあ、おっちゃんの解体が終わったらそれで晩飯頼んでいいか?」
「猪肉……ジビエ……うん、任せて!」
亮が猪を捕まえたとか、猪が間抜けな死に方をしたのではなく実は亮が仕留めたのだろうとか、これから解体が始まるだとか、そういったことはもう恵梨花の頭には無かった。
今あるのは一つ、初めて扱う猪肉をどう調理するかで頭がいっぱいになり、ワクワクしていたのだ。
(やっぱりすぐ思いつくのは猪鍋だけど……この暑い日にするのもね……)
そうやって悩み考え始める恵梨花は部員達が少し引いた目で見ていることに気づかなかった。
「ああ、藤本さんが桜木に毒されている……」
「なんてこった……」
「桜木のせいだな……」
「やっぱり付き合ってると非常識なとこも似てくるっていうのか……?」
「……寧ろ、だからこそ桜木と付き合えた(・・・)ような気がしなくもないような……」
「! ……お前、その言い方は……」
「……あー、うん、そうだな。俺も今気づいた」
「……いや、まあ、実際、桜木って、とんでもないやつだってわかったしな……」
「……だな」
「なあ、そろそろ誰か突っ込まねえの」
「……俺は突っ込まないぞ」
「ああ、大食いの桜木の目の前で都合よく猪が間抜けな死に方をするなんて偶然があるかなんて、俺は突っ込まないぞ」
「……スマホで見たら一応、勝手に猪狩るのダメらしいからな……」
「いらん情報を寄越すな」
「いや、すまん」
「……しかし、でけえな猪って、俺もっと小さいのかと思ってたんだけど」
「俺が見たことあるのはもっと小さかったな……」
「あんなの目の前に出て来たら俺普通にビビって腰抜かす自信あるんだけど」
「俺も」
「同じく」
「……普通は猟銃や罠とかで仕留めるんだよな……?」
「……まあ、普通はそうだろうな」
「……」
「……ランニング中に出くわしたってことは、やっぱり素手……だよな」
「さっき、あいつポロッと蹴りがどうのこうの言ってたよな」
「百キロ越えの猪を蹴りで、か……」
「いや、引くわー」
「……」
「……俺達、一時期あいつに喧嘩売るような真似してなかったっけ……」
「俺にそんな記憶はもう無い」
「やめろよ、考えないようにしてたってのに」
「すまん」
「……俺達、よく無事だったな……」
「ほんそれだわ……」
◇◆◇◆◇◆◇
「っはー……」
風呂に浸かって亮の口から気の抜けた声が漏れる。
本当なら入浴の時間は食後の筈であったが、猪を抱えて持ち帰ったことで野生動物の匂いがこれでもかと体に移ったために、お先に入らせてもらうことにしたのだ。この後、食事が控えてることから誰からも不満の声は上がらなかった。
(しっかし、ラッキーだったな……)
ランニングを十往復終えて、まだ時間があったためにあと五往復ほど走るかと思った矢先のことだった。
ガサゴソと森の方から動物の音が聴こえてきて、注視ししてたら猪が出て来て亮と目が合ったのだ。
そして野生に生きる猪は流石と言うべきか、瞬時に亮との力の差を本能で感じたようでビクッとしてからすぐさま逃走を試みたのである。
だが、猪を見た瞬間に過去に仕留めて食った猪の肉の味を思い出した亮は、空腹だったのも拍車をかけて、もう目の前の猪を食うことしか考えられず、迷うことなく、躊躇いもなく回り込んで猪の首を蹴り上げたのである。
それによって頸椎が折れて絶命した猪を、近くの小川まで運んで手刀で喉を切り裂き、軽く血抜きをしてからルンルン気分で持ち帰ったのである――猪が逃走したのは力の差を感じたからというよりも、食材としか見られてないことに気づいたからかもしれない。
(恵梨花に任せたら間違いねえだろうし……)
これで今日は美味いことがわかり切っている猪肉料理を腹一杯食べれるのだから。
改めて夕食を楽しみに湯に浸かる亮は、そこでチラッと目を横に向けた。
「いい加減、突っ込むが何でおっさんまで入ってんだよ」
そう、今風呂に入っているのは亮だけでなく、何故か郷田もだ。
亮が念入りに体を洗っていると、郷田も入ってきて手早く汗を流して、亮よりも早く浴槽に入って目を閉じ、湯に身を委ねだしたのだ。
「んん? いいではないか、お前も入っているのだから」
「いや、おっさん部員達には食後に風呂入れって言ってたよな? だってのに、部の主将であるおっさんがそれ破ってどうすんだよ」
そんな亮のもっともな指摘に、郷田はクスリとしたように笑みを漏らした。
「なんだよ」
「いや、お前にしては細かいことを言ってきたなと思ってな」
「……俺が細かいこと言うのはおかしいかよ」
「そうではないが、な。どうにもイメージと合わん気がしてな」
そう言って再び笑い声を漏らす郷田に亮は眉を寄せてから、ため息を吐いた。
「こっちとしちゃ、一番風呂を一人で堪能出来るかと思ってたらおっさんがいきなり来るしよ、台無しじゃねえか」
亮が愚痴ると郷田はキョトンとしてから苦笑気味に声を漏らした。
「くっく……そういうことか。それは失礼した」
「まったくだ……で、何か用か?」
他に誰も入って来ない辺り、二人きりで話がしたいのだろう。
「うむ……まずは、ゴールドクラッシャーの件についてだな……朝の話から、お前のことなんだな?」
「その話かよ……俺から名乗ったことはねえがな」
「ふむ、聞き方を間違えたようだな。シルバーを潰したのはお前なんだな……?」
「……俺一人でって訳でもねえがな」
「ふむ?」
「連中を一人も逃したく無かったんでな、家の道場のやつを二人連れて行った」
「なるほど……それでも三人で、か」
感心したような呆れたような声を出す郷田に、亮はため息を吐いた。
「なんだ? ワザワザ時間無視して風呂に入ってきたのはそんな話のためか?」
「いや……いや、そうでもないか。それを聞きたかったことと、もう一つ――」
そこで郷田は体を亮に向けて、頭を下げた。
「ユキさんは……察してるかもしれないが、俺にとっては初恋の人というだけでなく、昔から世話にもなっている幼馴染みであり、大事な人でな……救ってくれて感謝する」
そのための二人っきりでの話かと、亮は再びため息を吐いた。
「そういうことか……けど――」
「ああ、わかってる。当時、関わりのなかったお前にとって、ユキさんは結果的にお前に救われただけなのだろう。だが、それでもユキさんがお前に救われたのには変わらない。本当に――感謝する。ありがとう」
真摯な声で告げられ、亮は頭をガシガシと掻いた。
「わかったって……頭上げろよ、おっさん」
「うむ」
頭を上げてから郷田は体の向きを戻して、再び浴槽の壁にもたれると、スッキリしたように言い始めた。
「ユキさんが最近、以前より明るく、そしてより美しくなったと町内では評判でな……何があったのかと思っていたが、今日で全て合点がいった」
「……ちょっと、おっさんとこの町内、恵梨花達三姉妹について注目し過ぎじゃねえか?」
「何を言う。あれだけ美しく可愛い三姉妹なんだぞ」
凄むように放たれた郷田のその言葉に、亮は二の句がつけなかった。
「だけでなく、母親のおばさんもありえないほど若く美人だ」
「確かに」
それには同意するしかなかった。何せ初対面の時、亮は恵梨花の姉と勘違いしてしまったほどだ。
「だから町内には、雪月花の三人だけでなく、おばさんのファンクラブまであるほどだ」
「ちょっと待て」
「言いたいことはわかる……だが結婚していようと、憧れてしまうのは仕方のないことなのだろう」
遠い目をして言う郷田に、亮はこれ以上突っ込むのをやめることにする。
「……時に、桜木。ユキさんは随分とその……」
言いにくそうに言葉を募る郷田に対し、亮は藪蛇になりかねないため口を閉ざす。
「まあ、無理もないとは思う。危ういところをお前に救われたという過去があるのだし……しかしだな、しかしだな、桜木」
郷田が恨めしいような、何かに堪えるような目を向けてくる中で、亮は湯でパチャパチャと顔を洗う。
「慕ってくれてるのをいいことに、ハナちゃんと二股はいかんぞ、二股は……!」
「……」
「おい、聞いているのか、桜木!? 桜木!!」
何も答えないでいると、肩を掴まれガクガクと揺さぶられる。
「あー、わかってるって。第一、ユキは俺にそんなこと言ったことねえし、俺もそうなろうなんて思っちゃいねえよ」
「本当だな……!?」
「ああ、本当だって」
げんなりしながら返すと、郷田は亮から手を離した。
「……信じるからな」
「おう……第一、恵梨花でいっぱいいっぱいだっての」
付き合って二ヶ月と短いが、一緒にいる時間はそこそこ多い方だろう。それでも心臓を撃たれるような衝撃をしょっちゅう味合わされる時があるぐらいだ。
「……そうだな」
「おう」
それで納得したのか、郷田は静かになった。
そして暫し湯を堪能し、そろそろ出ようかと考えたところで郷田が言った。
「合宿だが、参加してくれたことに改めて礼を言う」
「ああ、恵梨花とユキを鍛えるいい機会にもなったし、構わねえよ」
「うむ……それがあるから、どれだけ指導に時間を割いてくれるか多少不安だったが、あれほど体を張ってくれると思わんでな……感謝する。部員達にはいい刺激になっただろう――もちろん、俺もだ」
思いも寄らないほど真っ直ぐに感謝を述べてくるものだから、亮は少々居座りが悪くなった。
「……道場じゃ普段から教えてるんでな。あれぐらい何でもねえよ」
「……大したもの、だな」
感慨深く吐かれた言葉に亮は苦笑する。
「まあ、明日からも同じ調子で見てやるから安心しな」
「うむ……頼む」
「……ああ、でもこの合宿中、他の連中以上に気張らねえと、おっさん抜かれるかもしんねえぞ」
「……む?」
目をパチパチとさせる郷田に、亮はからかい混じりに言った。
「この合宿の間に、おっさんより伸びるやつがいないとは限らねえだろ?」
郷田は思いもしなかったようにキョトンとした。
「それは……」
「俺の剣の腕じゃ、おっさん相手だと教えれることに限りがある……まあ合宿中に、今日言った課題を達成できるようになるんだな」
そう言うと、亮は立ち上がって浴槽から出る。
「――お先に」
そう言って入り口に向かいながら手を振った亮は、振り返らずとも背後にいる郷田の闘志がメラメラと燃え上がったのがわかった。
「……しかし、すごい身体だな、桜木のやつ……あちこちに、あれは何の傷跡だ……?」
亮がいなくなった浴室で、郷田の呆れたような感嘆したような声が響いたのであった。
◇◆◇◆◇◆◇
「……この明らかに牛肉じゃないっぽい肉は……」
「……いや、言わずもがな、だろ」
「さっきまであんなに立派な猪だったのに……」
「言うなよ。思い出さないようにしてるのに」
「あ、すまん」
「……でも、こうして見ると普通に食材だな」
「そりゃな」
「俺、猪肉って初めてだから、実はけっこう楽しみ」
「あ、俺も」
「俺も」
「あと、聞いて驚けよ。数が数だから切ったのは誰かわからんが、焼いた後にかけるこのソースは藤本さんが作ったもんだぞ」
「――っ!?」
「そうよ。つまり、これは藤本さんの手作り料理と言える!!」
「お、おお――っ!!」
「やべ、今日一テンション上がったわ」
「藤本さんの手料理ってだけで、いくらでもいけるぞ、俺は」
「いや、藤本さんは料理上手って有名だ。これは期待できるぞ」
「お、いただきますするぞ」
「――いただきます!!」
「おー久しぶりだけど、やっぱり美味いな、猪」
亮が塩胡椒だけで味付けしたシンプルな猪肉のステーキをムッシャムッシャと食べて満足そうに笑っている。
「そう。亮くんのは厚めに切ったんだけど、大丈夫だった……?」
普段の亮の食べる姿から、薄めの肉よりも厚目の肉の方が目を輝かせていたように見えたため、亮に出す分は他より少し厚めに、そして大きな塊にしている。お裾分けとして部員達に出した分は普通にミニステーキのサイズである。
何となく亮は大きな肉の塊を噛みちぎるのが好きなように思ったからだ。
その予想は当たって、亮は厚めのステーキに齧り付いて難なく噛みちぎってニコニコしている。
ホッとして恵梨花も塩胡椒だけで味付けした猪肉を食べてみる。
見た目とは裏腹に脂っこくなく、そして豚肉よりも味が濃厚で思っていた以上に美味しい。
「んーっ、猪肉ってこんなに美味しいんだ」
調理出来る時間が時間だったために、今晩は下処理と切り分け、そして焼いた後に乗せるソースを作ったのみだ。
切り分けには当然、姉や女子部員も手伝った。
「本当に、美味しいわね」
雪奈も一口食べて目を丸くしている。
亮、恵梨花、雪奈が食べたのを見て、同じテーブルについていた古橋が恐る恐るといったように一口頬張った。
「……! 本当だ、美味しい!」
口に手を当て、目をまん丸にしている。
「なんか癖があるように聞いてたんだけど、そうでも無いんですね」
古橋が首を傾げると、雪奈が言った。
「それはハナがちゃんと下処理したからですね」
「へー! 恵梨花ちゃんって本当に料理上手なのね」
「あはは、ありがとうございます」
礼を言いながら恵梨花は亮専用のプレートにどんどん肉を乗せていく。
普通なら一つのテーブルに一枚のホットプレートだが、ここには二枚ある。
そうしないと、亮の食べるスピードにとても間に合わないため特別に用意してもらったのだ。
現に、最初に焼けた分は亮がすごい勢いで食べて、もう無くなってしまっている。
それを見て古橋が恐れ慄いている。
「……さ、桜木くん、食べるスピード半端ないわね」
「……ゴク、普通だと思いますが」
口の中のものを飲み込んでから亮が言うと、恵梨花と雪奈が同時に口を開いた。
「そんな訳ないでしょ」
「何言ってるんですか、亮さん」
二人から反対されて亮はバツが悪くなったのか、顔を隠すように丼飯をかき込んだ。
それが空になると、すかさず雪奈が丼を受け取ってお櫃からご飯をよそう。
それもしたいとこであったが、今日の恵梨花は肉を焼く係である。
「……至れり尽せり……?」
今では家でよくあるこの流れを見て、古橋が訝しげにボソッと呟いた。
「亮さん、猪のお肉はよく食べられてるんですか?」
雪奈がふいに尋ねると、亮は首を捻った。
「よく、ってほどでもねえな。山に合宿とかキャンプ行った時ぐらいだな」
「山に合宿やキャンプに行った時……」
それぐらいと言った亮であるが、それは言い替えれば山に行った時はよく食べているということで、それはつまり――
「そ、それって、山に行った時は捕まえて食べてるってこと……?」
古橋が思い切ったように聞くと、亮は「あ」という顔をした。
「えーっと……あっはっは――」
亮は笑って誤魔化した。
この一連を耳にした者は全員察した。
「そ、それよか、恵梨花。次はそのソースかけてくれ」
「あ、うん」
恵梨花は追求などせず、焼いているステーキの上にソースをかけた。
途端にソースの香りがプレートから拡がる。
ソースは飴色になるまで炒めた玉ねぎがベースのオニオンソースである。醤油とバター、みりんも混ざっていて、実に香ばしい。
「はい、どうぞ」
「おお――……美味っ!?」
亮がガツガツとまたすごい勢いで食べ始める。
「お、美味しい……え、何これ」
同じくソースがけしたミニステーキを食べた古橋が呆然としている。
「はあ……ハナにはまだまだ敵わないわね」
雪奈が苦笑している。
「……そうかな? ユキ姉と私ってそんなに差無いと思うけどな?」
確かに恵梨花の方が料理の腕は上かもしれないが、その差はそう大きなものでないと思っている。
「ううん。ここ最近は特にそう思うわ……そう、亮さんにお弁当作り始めてからかしらね」
「あー……」
そう言われたらそうかもしれない。
何せ亮の食べる量が量だ。
「ふふ、量がというだけの話じゃないわよ?」
恵梨花の考えていることを読んだように雪奈が言うと、恵梨花は頬が赤くなるのを自覚した。
母が常々言っているが料理は手順の上に、誰に食べてもらうかということと、美味しく食べてもらうことを意識して作るのが大事だと。
そのことを指しているのだろう。
「ふふ……でも、お肉がいっぱい確保出来て良かったわね。あれだけあったら亮さんもこの合宿の間は乗り切れるんじゃない?」
話題を変えるように雪奈がそう言うと、恵梨花は頷こうとした途中で動きを止めて真剣な顔になる。
「……ハナ?」
「うん……私もそう思ったんだけど、もしかしたらギリギリかもしれない」
「……ほ、本当に? あんなに大きかったのに……?」
引き攣りそうな顔の雪奈に、恵梨花は頷いた。
「大きく見えてもお肉の部分って、やっぱり限られてるし、それに部員の人達にもお裾分けしてるし、何より――」
言いながら恵梨花は、亮用にと用意していたお肉を乗せたお皿に目をやると、雪奈も一緒に目を向ける。
「……三キロはあったお肉が……」
もう殆んど無いのだ。その上、亮の食べる勢いがまるで衰えない。
予想はしていた。午前からずっと亮は一度も満腹になっていなかったことから。
「そ、そう……それに皆んなで食べてるものね……」
そう、このテーブルだけ食べるのもなんだからと部員達にもお肉を食べてもらっていいかと恵梨花が聞いたら、亮は渋る様子もなく頷いてくれたのだ。慣れない肉だから大量という訳ではないが、周りの反応を見るに、けっこうな人数が美味しく食べれたようだ。
しかも全員が体育会系である。
そして意外にも百キロ越えの猪からは四十キロほどしか肉はなかったのである。
明日からのことを考えると、どうにも心許ない量に思える。
「……なるほど」
話を聞いた雪奈が難しい顔になると、古橋が躊躇いがちに言った。
「えーっと、恵梨花ちゃん。何も私達の分まで考えなくても、桜木くんがとってきた猪なんだし、桜木くん優先に考えても誰も文句ないと思うわよ……?」
「そうかもしれませんが……それでも足りるのかな、という問題なんですよね」
「え……」
何せ合宿はあと三日ある。猪一頭の肉は亮の胃袋を考えると、どうにも少ないように思えて仕方ない。
「……お母さんが余ったら持って帰って来てって言ってたけど、これは無理かなあ……」
料理教室を開いてるだけあってジビエにも興味津々な母には、残念な結果に終わりそうだと伝えるしかないかなと恵梨花は嘆息したのであった。
「やっべ、猪肉めっちゃ美味かったんだけど」
「そう? 私匂いけっこう気になったんだけど」
「そうか? 気になるか?」
「気になるやつはそこそこいたな」
「でも、ソースかけたらすっごく美味しかったし」
「それな!」
「あれな!」
「藤本さんが作ったソース……つまり、藤本さんの手料理……」
「焼いたの俺達だけどな」
「言うなや」
「いや、でも藤本さん補正抜きにしても美味かった……」
「なあ……ちょっと、量物足りなかったけど」
「それは仕方ない、桜木が捕まえた猪だし」
「仕留めたの間違いだろ」
「いや、本人は死体を拾ったと言ってるんだ。間違えるな」
「……」
「だな……」
「てか、桜木が食った量!」
「それな」
「しかも、藤本さんがずっと焼いてたしよ」
「その上、ご飯のおかわりはずっとお姉さんが……」
「くそっ……」
「超羨ましい……」
「あっはは、あれは至れり尽くせりだったよね」
「しかもそれが自然体っぽかったし」
「てか慣れてる感じだったのが」
「……それだけ、桜木は藤本さんの家に行ってるってことか……!」
「だけじゃなく、飯の世話になってるってことだろ……」
「……なんだよ、あいつ。滅茶苦茶ちゃっかりしてるじゃないか」
「なあ、外堀も完全に埋めた感じするよな」
「あんな飄々としといて……」
「意外にやるよね、桜木くんって」
「本当に」
恨み骨髄な男子部員とは対照的に女子達は微笑ましそうだった。
◇◆◇◆◇◆◇
「はー、なんか久しぶりに満腹になった気分」
当てられた部屋で、畳の上に寝転がった亮が満足気な声を出して腹をさすっている。
「……いや、あれだけ食って満腹にならなかったらそっちの方が恐ろしいぞ」
同室になった野村が呆れたように言うと、同じく同室の田中が頷いた。
「てか、あれだけ食って腹が出てるように見えないのが不思議で仕方ないんだけど?」
「……そういや、亮の腹が膨らんでるとこなんて見たことないな」
これまた同じく同室で同中の将志が、中学時代のことを思い出しながら言った。
家の焼き肉屋でこれでもかと亮は食っていたが、いつも苦しそうになんてならずケロッとして歩いて帰っていったのを思い出す。
「んなこと言われてもな? これが俺には普通なんだし」
「普通ってなんなんだろ……」
田中が遠い目をしている。よくわかる。
この部屋では同じ二年生四人で使うことになった。
亮がこの部屋なのは、将志の友人だからだ。
「……腹が落ち着いたんなら、折角だから四人でトランプでもするか?」
将志が提案すると、三人共顔を上げる。
「俺は構わねえよ」
亮が答えると、野村と田中が顔を見合わせた。
「……トランプまで異常に強いとか無いよな?」
「……身体能力に身を任せてのイカサマなら、されたら気づかないかもな」
どこか警戒している様子の二人に将志は苦笑する。
「流石にそんなことないから――無いよな、亮?」
「なんでトランプでそんな必死にイカサマしなくちゃならねえんだよ」
呆れたように亮が答えると、野村と田中は嘘が無いと見たのか、体の向きを変える。
「よし、じゃあ、やろうぜ」
そして、始めは軽くババ抜きでもと、将志はカードを配り、それぞれダブついてるのを捨てて、向かい合う。
「……なあ、桜木、ちょっと聞きたいんだけど」
田中のカードを抜きながら野村が声を上げると、亮は「何だ?」と目を向ける。
「お前、藤本さんのお姉さんとどういう関係だ……?」
「それな、本当それ」
田中が勢いよく乗ってきて、亮は嫌そうに眉を曲げると少し考えてから答えた。
「……彼女のお姉さん、だな」
正解ではあるだろう。
「それはわかってるから」
「そう。お姉さんって、どう見てもお前のこと――」
田中が核心的なことを言おうとすると、亮は声を被せた。
「――俺の彼女は恵梨花一人だ。これで答えになってるだろ」
どこか不機嫌そうなのを見て、野村と田中はヒヤッとしたような顔になって、コクコクと頷いた。
「お、おう」
「わ、わかった」
そして少しの間、口数少なくババ抜きに集中し、ババ抜きも終わり、他のゲームをしてそこそこ盛り上がってきた中で、田中が窺うように口を開いた。
「なあ、桜木、ちょっと聞きたいんだけど……」
すると亮はやはりというか、うんざりしたような顔になった。
「なんなんだ、さっきから」
「いや、ちょっと……男として、高二男子として、どうしても聞きたいっていうか……」
将志は何となく察して、同じく察した様子の野村と目で頷き合った。
「……何だ」
どことなく嫌な予感を覚えたような亮が問い返すと、田中はどこかソワソワとしながら聞いた。
「ふ、藤本さんとはどこまでいったんだ……?」
部屋が一瞬で静まり返る。
将志と野村はよくぞ聞いたと田中へ賞賛の目を向けた。
「お、お前な……」
亮はわずかに頬を赤くして、呆れた声を出した。
(お、照れてるな、これはけっこう珍しいぞ……)
将志の中で、亮はいつも飄々としているから、今の反応は非常に面白い。
「いや、いいじゃんか。あれだけ可愛い子と付き合ってるんだから――で、ど、どうなんだ?」
田中が気持ちゲスい顔で詰めよると、亮は目を泳がせた。
「あー……映画なら行ったぞ」
その答えに、将志、野村は噴き出した。
「りょ、亮が逃げてる!」
「桜木も、こういうとこは普通なんだな」
「いやいや、桜木くん、わかってるだろ? そういうことじゃないんだってー」
調子に乗り始めた田中がますますゲスい顔になって亮に問い詰める。
「て、てめえら――」
亮が眉をピクピクと揺らすのを見て、将志は一転して焦った。
(やば、調子乗った)
亮の場合だと、軽く小突かれただけで大ダメージとなってしまう。
過去に亮を怒らせてデコピンを受けた時は暫く額が腫れていたぐらいだ。
「お、おい、田中……」
止めようと声をかけたところで、誰かのスマホが鳴り始める。
「俺のだな」
亮がテーブルの上からスマホをとって眺めると、トランプを置いて立ち上がった。
「明日の仕込みが終わったらしいから、恵梨花のとこ行ってくるわ」
トランプとこの部屋に未練はないとアッサリとした態度だった。
「え、それって女子の部屋に行くってことか!?」
田中が絶望したように聞くと、亮はニヤっとしてからそれはもう清々しい笑顔で答えたのである。
「おう。ユキもいるらしい、じゃあな」
そう言って、亮はこちらに爽やかな顔を向け、手を振って部屋を出て行った。
それを見届けた田中がドンッと畳を叩いた。
「ちくしょう――っ!!」
更に項垂れ、男泣きに濡れた声で叫んだ。
「う、羨ましい――っ!!」
魂の、咆哮であった。
***********************************************
励みになるので、感想いただけると嬉しいです!
男の子だからね、気になっちゃうけど、田中は非常に危ないとこに立とうとしていたことに気づいてなかった。
ある意味スマホが鳴って一番得してるのは田中でもある
このまま夜の話をするか、朝に場面転換して練習始めるか悩み中……
Twitter(↓)にて、亮と猪、対面の瞬間を軽く流します。
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<追記>
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