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ドランクール遺跡

古代文字の部屋

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 魔法大戦の話を終えた3人は1番奥の部屋に入った。見上げるとそこは壁一面に古代文字が刻まれている。

 今回の学者たちの使命はこの古代文字の解読なのだとエレナは告げ、早速エレナは作業に取りかかりだした。

 そしてそのままエレナはかれこれもう3時間はぶっ通しで解読作業に当たっている。

「……レイ、暇だ」

 ソウルはそんなエレナを見守りながらしゃがみ込む。

「まぁまぁ」

 そんなソウルを見下ろしながらレイは相変わらずケラケラと笑う。

「でも、エレナ本当にすごいね」

「すごい?」

「みなよ。ぶっ通しで解読を続けてるのに、全く集中力が切れてない」

 そう言ってレイは辺りを見渡す。

 他の学者たちは疲弊し明らかに集中力を欠いたり休息する者が出る中、エレナはその集中力を欠くことなくただ黙々と作業に取り組んでいた。

「やっぱり、すごいやつなんだな」

「8歳で考古学者になっただけはあるよね」

 レイの言う通り、8歳で考古学者になるだけはある。本当に優秀なんだなぁとソウルはエレナを見守りながら思う。そんな彼女の横顔はソウルにはとてもかっこいいものに見えた。

「レイ、絶対エレナを護衛し切ろうな」

「うん、そうだね」

 エレナの敵は外部ではなく内部にいると考えた方がいい。特にあのヨーゼフとかいう奴は要注意だろう。

 そんな話をしていた時だった。

「よぉ」

 洞窟前でソウルを殴りつけたリーゼント頭が目の前に現れた。

「先程はお腹を押さえていたようだが、お腹の調子はいかがかな?」

 そう言ってリーゼント頭はゲスな笑いを見せる。

「てめぇ……!」

「おぉ、こわいこわい。流石はあの小娘の護衛だな。お前のおつむもガキ並ってか」

 リーゼント頭がそう言うと取り巻きの2人もゲラゲラと笑い出した。


「小娘ごときがこんな遺跡に来るなどおこがましいにも程がある。とっとと帰っておままごとにでも興じていればいいものを。お偉いさま方に色目でも使ったんじゃないか?」


 その言葉にソウルはカチンときた。

 確かにエレナは年端のいかない少女かもしれない。だが、あの歳で考古学者として認められた彼女の努力は並のものではなかったはずだ。

 それは誰にも否定されるべきものでは無い。むしろ誇らしいことのはずなのだ。それをこんな風に言われるなんて納得がいかない。

 ソウルは握りこぶしを作り殴りかかろうとした。その時だった。




「そういう君達の護衛対象はどうなんだい?マイケル……だったかな?」




 背後から声が飛んでくる。


「あの歳になってもろくな成果を出せていないじゃないか。その上年端のいかない女の子をいたぶる根性の根っこまで腐ったクズっていうおまけ付きさ」


 レイだった。笑顔で告げるその姿が逆に恐ろしい。しかも目が笑っていない。

「て、てめぇ……」

 優男だったレイの変貌にマイケルは動揺する。

 シュンッ

 瞬きの間にレイの姿が消えたかと思うと腰の細剣を抜き、リーゼント頭の喉元へと突き立てていた。

 その動きはソウルにも見えないほど素早かった。


「まだ、僕達に用があるかい?」


 レイがぬらりと顔を上げると、剣先がギラリと光を放ち、マイケルのことを威圧する。

「い、いや……」

 その威圧感にマイケルはたじたじになってしまう。

「き、今日はこれぐらいにしといてやる……」

 そしてマイケルは捨て台詞を残してどこかへ行ってしまった。

「レイ……お前……」

 そんな相棒の姿にソウルは冷や汗をかく。

「あはは、ソウル」

 そしてレイは爽やかな笑顔のまま告げる。


「僕だって、腹が立ってるんだよ」


 そう言ってレイは剣を鞘にしまうのだった。

ーーーーーーー

 冷静になったシーナは調査隊の野営に戻ってきた。

 だがすでにそこに3人の姿はない。もう遺跡の中へと行ってしまったのだろう。シーナはどうすればいいか分からず途方に暮れる。

「おい!」

 すると後ろから突然声をかけられた。振り返ると、そこにはカスパルが立っていた。

「なぜ、お前は1人ここにいる」

「……」

 カスパルの荘厳な迫力にあてられて、シーナは目を逸らしてしまう。

「いいか」

 何かを察したカスパルはシーナを諭すように告げる。


「お前は【ジャガーノート】かもしれん。色々とややこしい事情もあるんだろう。だがな、お前はお前の意思で騎士になることを選んだ。違うか?」


「……」

 確かに、それはそうだ。

「ならば、騎士としてお前がやらなければならないことはなんだ?ここで拗ねることか?違うだろう」

 カスパルはなおも黙り込んでいるシーナの目をまっすぐに見つめる。


「迷うことも、立ち止まることもあって構わん。だが、自分のやらねばならぬ事をやれ!それができれば他のことは後からどうとでもできる!」


「……そんな、簡単なものじゃ」

 シーナは顔を隠しながら呟く。その姿はまるで言い訳をする子どものようだった。

「それも全てお前次第だ。逃げずにしっかりと向き合え。それが騎士のあるべき姿だからな!」

 そう言うとカスパルはどこかへと歩き去っていく。

「今回は多めに見てやるが、次任務を投げ出したら国へ強制送還するぞ!覚悟しておけ!!」

 そう言って手を振るカスパルを見つめながらシーナはため息をつくのだった。
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