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とある遅刻魔の末路
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永山千賀子は、コールセンターを運営する部署に務める会社員である。
そして、超がつくほどの遅刻魔の上に仕事もできない問題社員でもあった。
永山の上司の稲城は、そんな永山のために毎朝モーニングコールをかけているが、残念ながら、今のところその効果は全くと言っていいほど出ていない。
今朝も鍵当番であるにもかかわらず、三十分を超える大遅刻をやらかし、クライアントに多大なる迷惑をかけた。
さらには、最近異動して来たばかりの新参者の綾瀬に、
「永山さん、遅刻しないでください!」
と、アルバイトのオペレーターが大勢いる前で、大声で注意された。
しかし、稲城や綾瀬が何か注意してきても、永山は「うっとうしい」としか思わず、不遜な態度を取り続け、さらなる顰蹙を買っていた。
そんな永山であるが、仕事ができないことの自覚はないものの、遅刻が多いことの自覚はあり、稲城や綾瀬にうるさく言われるのを不快に思っていた。
翌朝。昨日、あれだけのことがあったのに、永山はまた寝坊した。
慌てて支度を終え、玄関のドアを開けると、永山は会社の非常扉の前に立っていた。
まだ夢でも見ているのかと思い、そのままオフィスに向かい、ドアを開けると、鍵当番で早出していた綾瀬と目が合った。
「今日の鍵当番も永山さんでしたっけ?」
驚いた様子で綾瀬が声をかけてきた。
永山が時計を見ると、午前八時を少し過ぎていた。永山が自宅を出てから、ほとんど時間が経過していないことになる。
慌ててパソコンを立ち上げ、日付を確認すると、日付には間違いがないことがわかった。
永山は再び非常扉の前に立ち、扉を開けてみた。すると、そこは先ほどまでいた永山の自宅であった。
どういうわけだか、永山の自宅と会社はつながってしまったらしい。
永山が非常扉の前に突っ立ったまま考え事をしていると、非常扉が開き、非常階段を昇ってきた稲城と出くわした。
稲城も綾瀬同様、永山がこの時間帯に出勤していることに驚きを隠せないでいた。
そんな稲城を尻目に、永山は稲城を押しのけるようにして非常扉の外に出ると、いつもの階段の踊り場であった。
その後永山は、何度も非常扉を出たり入ったりして、ある結論にたどり着いた。
どうやら永山が自宅を思い浮かべると、自宅と会社がつながるようであった。
そこで永山は、これを最大限に利用した。
毎日の通勤はもちろんのこと、休日にも使用し、日に何度も使用することもあった。
そのおかげか、永山の遅刻はなくなり、稲城や綾瀬に注意をされる回数も減った。
永山がそんな生活を数か月間続けていたある日、鏡に写る自分の姿を見て、白髪が目立って増えていることに気がついた。
まだ三十代前半である永山は、老化現象によるものだとは思わず、ストレスによる白髪だろうと考えた。
それに、永山にはストレスの原因に心当たりがあった。そう、稲城である。
その稲城も、もうすぐ異動で出ていくのだから、稲城さえいなくなれば、自然と白髪もなくなるだろうと軽く考えていた。
しかし、稲城がいなくなっても、永山の白髪はなくならなかった。それどころか、ますます増えていったのだ。
さらに、白髪が増えるのと比例するかのように、まるで老化現象かと思われるような症状が体のあちこちに現われるようになってきた。
幸いと言うべきか、永山は、もともと「見た目年齢六十歳」と言われるくらいの老け顔の上に、たるみ切った中年太り体型だったため、見た目的にはそれほど大きな変化は見られず、白髪を染めて人目を誤魔化し続けた。
この日、永山は無断欠勤をした。
永山は自宅で息を引き取っていた。
死因は老衰だったという。
「ワープ空間の工事は終わったか?」
「それが……手違いがあったようで……」
「何があった?」
「二十一世紀の人間が勝手に使ってしまいまして……」
「そうか。で、どうなった」
「死亡しました。死因は老衰とのことです」
「それは怪我の功名だったな。人体に影響が出るのであれば、この計画は中止にした方が良さそうだ。報告書を頼む」
そして、超がつくほどの遅刻魔の上に仕事もできない問題社員でもあった。
永山の上司の稲城は、そんな永山のために毎朝モーニングコールをかけているが、残念ながら、今のところその効果は全くと言っていいほど出ていない。
今朝も鍵当番であるにもかかわらず、三十分を超える大遅刻をやらかし、クライアントに多大なる迷惑をかけた。
さらには、最近異動して来たばかりの新参者の綾瀬に、
「永山さん、遅刻しないでください!」
と、アルバイトのオペレーターが大勢いる前で、大声で注意された。
しかし、稲城や綾瀬が何か注意してきても、永山は「うっとうしい」としか思わず、不遜な態度を取り続け、さらなる顰蹙を買っていた。
そんな永山であるが、仕事ができないことの自覚はないものの、遅刻が多いことの自覚はあり、稲城や綾瀬にうるさく言われるのを不快に思っていた。
翌朝。昨日、あれだけのことがあったのに、永山はまた寝坊した。
慌てて支度を終え、玄関のドアを開けると、永山は会社の非常扉の前に立っていた。
まだ夢でも見ているのかと思い、そのままオフィスに向かい、ドアを開けると、鍵当番で早出していた綾瀬と目が合った。
「今日の鍵当番も永山さんでしたっけ?」
驚いた様子で綾瀬が声をかけてきた。
永山が時計を見ると、午前八時を少し過ぎていた。永山が自宅を出てから、ほとんど時間が経過していないことになる。
慌ててパソコンを立ち上げ、日付を確認すると、日付には間違いがないことがわかった。
永山は再び非常扉の前に立ち、扉を開けてみた。すると、そこは先ほどまでいた永山の自宅であった。
どういうわけだか、永山の自宅と会社はつながってしまったらしい。
永山が非常扉の前に突っ立ったまま考え事をしていると、非常扉が開き、非常階段を昇ってきた稲城と出くわした。
稲城も綾瀬同様、永山がこの時間帯に出勤していることに驚きを隠せないでいた。
そんな稲城を尻目に、永山は稲城を押しのけるようにして非常扉の外に出ると、いつもの階段の踊り場であった。
その後永山は、何度も非常扉を出たり入ったりして、ある結論にたどり着いた。
どうやら永山が自宅を思い浮かべると、自宅と会社がつながるようであった。
そこで永山は、これを最大限に利用した。
毎日の通勤はもちろんのこと、休日にも使用し、日に何度も使用することもあった。
そのおかげか、永山の遅刻はなくなり、稲城や綾瀬に注意をされる回数も減った。
永山がそんな生活を数か月間続けていたある日、鏡に写る自分の姿を見て、白髪が目立って増えていることに気がついた。
まだ三十代前半である永山は、老化現象によるものだとは思わず、ストレスによる白髪だろうと考えた。
それに、永山にはストレスの原因に心当たりがあった。そう、稲城である。
その稲城も、もうすぐ異動で出ていくのだから、稲城さえいなくなれば、自然と白髪もなくなるだろうと軽く考えていた。
しかし、稲城がいなくなっても、永山の白髪はなくならなかった。それどころか、ますます増えていったのだ。
さらに、白髪が増えるのと比例するかのように、まるで老化現象かと思われるような症状が体のあちこちに現われるようになってきた。
幸いと言うべきか、永山は、もともと「見た目年齢六十歳」と言われるくらいの老け顔の上に、たるみ切った中年太り体型だったため、見た目的にはそれほど大きな変化は見られず、白髪を染めて人目を誤魔化し続けた。
この日、永山は無断欠勤をした。
永山は自宅で息を引き取っていた。
死因は老衰だったという。
「ワープ空間の工事は終わったか?」
「それが……手違いがあったようで……」
「何があった?」
「二十一世紀の人間が勝手に使ってしまいまして……」
「そうか。で、どうなった」
「死亡しました。死因は老衰とのことです」
「それは怪我の功名だったな。人体に影響が出るのであれば、この計画は中止にした方が良さそうだ。報告書を頼む」
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