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第二章

気づき

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 ルードヴィッヒに言われて気がついた。

 なぜ、自分はこんなことをしているのかと。

 今日まで復讐を原動力にひたすら突き進んで来たが、初めてそれに疑問を持った。

 ――今、自分のやっていることは、果たして自分にとって何の利益になるのだろうか?




 そもそも生きているかどうかわからない王子を探すことに、何の意味があるのだろうか?

 たとえ生きていたとしても、王子が自国に戻ることを拒否したら?

 エリスのやっていることは、非常に不確実なことだ。

 エリスはルードヴィッヒに求婚された。

 もし、ルードヴィッヒの求婚を受け入れ、結婚すれば、王妃になれる。しかも、大国の王妃だ。

 そして、散り散りになっている家族を呼び寄せることもできる。

 当初とは違う予定になってしまうが、エリスにとっては、目的をほぼ達成したことになる。

 しかも、求婚してきた相手は、エリスも思いを寄せていたルードヴィッヒである。これ以上の条件はない。




「いきなり他国の王妃になれと言っても不安だろう。だが、君がこの学園で、男でも逃げ出してしまうような数々の苦難を見事乗り越えて来た――なんて芯の強い女性だろうと思った。妻としても王妃としても、君以上にふさわしい女性はいない」

 ――喜んで。

 心の中では即答だった。

「少しお時間をいただけませんか」

 あえて即答を避けた。自分が浮かれてしまっているのはわかっていた。だから一旦、冷静になる必要があった。  

「もちろんだ。いきなり婚約者だの王妃だの言われて、君も面食らっただろう。こちらこそ悪かったね」




 お互い意識してしまったせいだろうか、学校までの帰り道は、二人とも言葉少なだった。

「また明日生徒会室で……」

「はい……」

 そう言葉を交わして二人は別れた。

 なんとなく気まずい気がして、まともにクロードの顔が見られなかった。

「今日は疲れたから、早く休みたいのだけれど……」

「お体の具合でも?」

「べ、別にそういうわけではなくて……歩き回ったから疲れただけ!」

 後ろめたさからか、語尾のところで声が裏返ってしまった。

「そうですか、わかりました」

 クロードは何か勘付いただろうか? ルードヴィッヒと結婚することになれば、いつかはクロードにも知られることになる。

 その〈いつか〉まで、どうやって過ごすべきかエリスは悩んだ。
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