24 / 65
第二章
筆記試験
しおりを挟む
教室と思われる室内には、この学校の教師らしき男性が一人だけいた。
「アーサー君ですね」
「はい」
「どうぞこちらにおかけください」
エリスは指定された机に着席した。
「早速ですが、本日の予定を簡単に説明します。まず最初にこの教室で筆記試験を受けてもらいます。次に場所を移動して実技試験。そして最後が面接です。合否につきましては、本日中に発表いたしますので、待合室でそのままお待ちください」
「はい、わかりました」
「何か質問はありますか?」
「いえ、特にありません」
「よろしい。質問がなければ、筆記試験を始めましょう」
教師は、エリスの机に裏返しの状態の問題用紙と解答用紙を置いた。
「私が合図をしたら、解答を始めてください」
教師の試験開始の合図とともに、エリスは問題用紙を表にし、最初のページから最後のページまでざっと目を通してみた。
(これは、どういうことなの?)
エリスの指先は、驚きのあまり、ペンが持てないほど小刻みに震えていた。
(落ち着きなさい、私!)
先ほどから震えが止まらない指先を、エリスはもう片方の手で必死に押さえた。
指先の震えがやっとおさまったところで、エリスは深呼吸して問題を解き始めた。
(すごい……クロードがやってくれた試験対策そのものじゃない!)
問題文の言い回しや数字の違い等はあるものの、全ての問題は、クロードと勉強してきた内容に酷似していた。
エリスは、クロードがあんなに満点にこだわっていた理由がわかったような気がした。これだけ完璧な試験対策ができるのだから、満点を取らせる自信があるのも当然のことだろう。
試験問題を全問解き終わり、全問最初から最後まで解き直しをしても、十分すぎるくらいの時間が余ってしまっていた。
(クロードって、一体何者なのかしら?)
あんなに編入試験のことで緊張していたエリスであったが、クロードの試験対策のおかげで、今ではすっかりリラックスし、試験以外のことを考える余裕まで出てきていた。
(そう言えば、私、三か月もクロードと一緒にいたのに、クロードのこと、何も知らない……。まあ、私に聞かれたとしても、自分のことをペラペラとしゃべるような人じゃないだろうけど)
「まだ試験時間は残っていますが、もう提出できるようなら終わりにして構いませんよ」
エリスが暇そうにしている様子を見て、教師が声をかけてきた。
「アーサー君ですね」
「はい」
「どうぞこちらにおかけください」
エリスは指定された机に着席した。
「早速ですが、本日の予定を簡単に説明します。まず最初にこの教室で筆記試験を受けてもらいます。次に場所を移動して実技試験。そして最後が面接です。合否につきましては、本日中に発表いたしますので、待合室でそのままお待ちください」
「はい、わかりました」
「何か質問はありますか?」
「いえ、特にありません」
「よろしい。質問がなければ、筆記試験を始めましょう」
教師は、エリスの机に裏返しの状態の問題用紙と解答用紙を置いた。
「私が合図をしたら、解答を始めてください」
教師の試験開始の合図とともに、エリスは問題用紙を表にし、最初のページから最後のページまでざっと目を通してみた。
(これは、どういうことなの?)
エリスの指先は、驚きのあまり、ペンが持てないほど小刻みに震えていた。
(落ち着きなさい、私!)
先ほどから震えが止まらない指先を、エリスはもう片方の手で必死に押さえた。
指先の震えがやっとおさまったところで、エリスは深呼吸して問題を解き始めた。
(すごい……クロードがやってくれた試験対策そのものじゃない!)
問題文の言い回しや数字の違い等はあるものの、全ての問題は、クロードと勉強してきた内容に酷似していた。
エリスは、クロードがあんなに満点にこだわっていた理由がわかったような気がした。これだけ完璧な試験対策ができるのだから、満点を取らせる自信があるのも当然のことだろう。
試験問題を全問解き終わり、全問最初から最後まで解き直しをしても、十分すぎるくらいの時間が余ってしまっていた。
(クロードって、一体何者なのかしら?)
あんなに編入試験のことで緊張していたエリスであったが、クロードの試験対策のおかげで、今ではすっかりリラックスし、試験以外のことを考える余裕まで出てきていた。
(そう言えば、私、三か月もクロードと一緒にいたのに、クロードのこと、何も知らない……。まあ、私に聞かれたとしても、自分のことをペラペラとしゃべるような人じゃないだろうけど)
「まだ試験時間は残っていますが、もう提出できるようなら終わりにして構いませんよ」
エリスが暇そうにしている様子を見て、教師が声をかけてきた。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
前前世は大聖女、前世は地球人、今世は隠居女 〜元聖女は平穏を望む〜
セン
ファンタジー
日々、仕事に終われるくたびれアラサーOL 相羽 聖羅(あいば せいら)は仕事帰りにトラックに引かれそうな子供を庇い事故死してしまう。
次に目が覚めた時、目の前には涙目の可愛い幼女がいた。そしてセイラは思い出す。前前世は異世界の大聖女だったことを…。
再び復活した邪神に立ち向かうべく、勇者と共に戦います!(聖女としてでなく魔道具職人として)
冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~
日之影ソラ
ファンタジー
タイトル統一しました!
小説家になろうにて先行公開中
https://ncode.syosetu.com/n5925iz/
残虐非道の鬼女王。若くして女王になったアリエルは、自国を導き反映させるため、あらゆる手段を尽くした。時に非道とも言える手段を使ったことから、一部の人間からは情の通じない王として恐れられている。しかし彼女のおかげで王国は繁栄し、王国の人々に支持されていた。
だが、そんな彼女の内心は、女王になんてなりたくなかったと嘆いている。前世では一般人だった彼女は、ぐーたらと自由に生きることが夢だった。そんな夢は叶わず、人々に求められるまま女王として振る舞う。
そんなある日、目が覚めると彼女は少女になっていた。
実の姉が魔女と結託し、アリエルを陥れようとしたのだ。女王の地位を奪われたアリエルは復讐を決意……なーんてするわけもなく!
ちょうどいい機会だし、このままセカンドライフを送ろう!
彼女はむしろ喜んだ。
運命の選択が見えるのですが、どちらを選べば幸せになれますか? ~私の人生はバッドエンド率99.99%らしいです~
日之影ソラ
恋愛
第六王女として生を受けたアイリスには運命の選択肢が見える。選んだ選択肢で未来が大きく変わり、最悪の場合は死へ繋がってしまうのだが……彼女は何度も選択を間違え、死んではやり直してを繰り返していた。
女神様曰く、彼女の先祖が大罪を犯したせいで末代まで呪われてしまっているらしい。その呪いによって彼女の未来は、99.99%がバッドエンドに設定されていた。
婚約破棄、暗殺、病気、仲たがい。
あらゆる不幸が彼女を襲う。
果たしてアイリスは幸福な未来にたどり着けるのか?
選択肢を見る力を駆使して運命を切り開け!
優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~
日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。
もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。
そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。
誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか?
そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。
別れた婚約者が「俺のこと、まだ好きなんだろう?」と復縁せまってきて気持ち悪いんですが
リオール
恋愛
婚約破棄して別れたはずなのに、なぜか元婚約者に復縁迫られてるんですけど!?
※ご都合主義展開
※全7話
欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします
ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、
王太子からは拒絶されてしまった。
欲情しない?
ならば白い結婚で。
同伴公務も拒否します。
だけど王太子が何故か付き纏い出す。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~
日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。
そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。
優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。
しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。
本との事さ
九情承太郎
エッセイ・ノンフィクション
この本を読んだ時の記憶を、記しておこうと思う。
俺の人生を変えるような本との出会いや、本屋そのものの記憶も含めて。
※カクヨムでも投稿しています。
表紙は、画像生成AIで出力したイラストです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる