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第一章

破滅への入り口

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 この国において、王位継承権を持つのは、王族の男子のみである。

 現在、王位継承権を持つ者は、エドワードのみである。もし、エドワードに子どもが生まれなかったら、王家の血が途絶えることになる。

 そして、王位継承権を持つには、ただ男子であるというだけでは足りない。嫡出子であることが必要である。

 国王がもう既に正妻を得ていた場合、妾の子を養子とすることもできるが、国王が未婚のときに生まれた子どもは、たとえ男子であっても、王位継承権を認められない。

 エドワードとエリスが結婚していない状況で、ジャンヌの妊娠が発覚した。せめてエドワードとエリスの婚約披露パーティーが終わっていれば、エドワードとエリスをジャンヌの出産前に結婚させ、ジャンヌの子をエリスの養子にすることも可能であっただろう。

 ところが、ジャンヌの妊娠は、エリスにとって最悪のタイミングで発覚した。



「今朝、ジャンヌが体調不良を訴えた」

 エドワードは、訥々と語り始めた。

「それで……医者に診せたら、妊娠が発覚した」

(どうして! どうして、よりにもよって今日なのよ……)

 エリスは幼い頃から、将来の王妃になるべく、周囲の過剰ともいえる期待に応え続けた。厳しい教育を受け、エリス自身も血をにじむような努力をし、やっと婚約までたどり着いたのだ。

 それなのに……数か月前にいきなり現れたジャンヌに、あっさりとエドワードを奪われた。『妊娠』という最も卑怯な手を使われて。

 エリスの努力は水泡と帰した。エドワードと結婚できず、王妃になれない自分に存在価値などない。これからエリスはどうすればいいのか。

 

 今晩、婚約披露パーティーは予定通り行われるそうだ。

 ただし、エドワードの隣にいるのはエリスではない。娼婦ジャンヌことマクレーン子爵家令嬢――さすがに娼婦を未来の国王の正妻として迎えるわけには行かず、急遽、ジャンヌはマクレーン子爵家の養女となった。

 いくら王家と親戚関係を築くことのできるチャンスとはいえ、ジャンヌの素性から、ジャンヌの身元を引き受けようという貴族は皆無であった――マクレーン子爵家を除いて。

 ジャンヌを養女にしたことで、マクレーン子爵は特例で、子爵から伯爵になることが決まった。
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