上 下
2 / 18

なんか報奨金の金額が・・・?

しおりを挟む
 とりあえず今後のことについてはまた考えないといけない。指の再生治療の金額を考えると、今の貯金全部使っても足りないからな。

 報奨金などの手続きはかなり自動化されており、魔物の査定は係の人がするんだが、そのあとの手続きはすべて自動である。査定の後に渡されたプレートと登録証を装置に入れると、階位に合わせて実績ポイントが登録され、報酬額が支払われることになる。
 この装置はかなり昔にいた天才発明家が開発したもので、主要な都市にはすべて置かれている。世界中の冒険者のデータの登録や集計が自動で行うことができるようにしたものらしい。これができる前は受付で随時対応していたらしく、集計にも時間がかかっていたようだ。


 換金の時にはメニューが2つあり、一つは通常通り報酬を受けて実績ポイントをためるもの、もう一つは実績ポイントがつかないが、その分報酬額を多くしてくれるというものだ。この場合、報酬額は2倍となるのでお金がないときにはこっちを選択することが多いが、多くの冒険者はギリギリの生活をしてでもポイントをためる方を選んでいる。
 もちろんお金を貯めてゆっくりと階位をあげていこうとする奴らもいるがかなりの少数派であり、他の奴らにからかわれることが多い。

 今回はさすがに治療のためにお金も貯めないといけないのでポイントを諦めるしかないだろう。ただなぜか前ほど上の階位に上がるための欲望が感じられないのはすでに諦めてしまったせいなんだろうか?腕など大きな怪我を負うとやはり階位をあげるのが難しくなるのか、あまり上昇志向がなくなるという話を聞いたことがある。


 ボタンを押そうと思ったが、そのボタンの下のカバーが外れかけていた。壊れかけているのかと思い、係の人を呼ぶとすぐにやってきた。

「またカバーが外れちまってるな。ネジがいかれたんだろう。ときどき緩んでくるんだよな。誰かがたたいたりしているのかな?」

 外されたカバーの中には上と同じようなボタンが4つあった。

「このボタンは何なんだ?」

「俺たちもよく知らないんだが、昔使っていたボタンらしい。今は使えないので、間違ってボタンを押さないようにカバーをするように言われているんだよ。何か問題があったら困るからすぐに対応するようにときつく言われているんだ。
 それだったらボタンを取り外したらと思うだろ?けどボタンを取り外すと装置自体が壊れてしまう可能性もあって取り外せないんだとさ。」

「そうなのか。」

「すまんが修理道具を持ってくるからそれまでこれを間違って押さないように見といてくれるか?まあこの時間だから誰も来ないと思うけどな。」

 そういって係の人は修理道具を取りに行ったようだ。今回は夕べのうちに討伐を完了して明け方に戻ってきたのでこの時間には冒険者役場には冒険者はいない。まあ魔物狩りに行っていない連中はおそらく1階の食堂で酒でも飲んでいるのだろう。


 気になったのでカバーの外れた部分のボタンを見てみる。ほとんど見えなくなっているが、ボタンには文字が書かれている。上のボタンも前はこんな文字が書かれていたのかな?ボタンは4つあって「20:80」、「50:50」、「70:30」、「100:0」となっている。

 何の数字なんだろうか?気になったので前にもらって換金していなかったプレートを入れてボタンを押してみる。

 通常は100ドールの報酬なんだが、「100:0」のボタンを押したところ1000ドールの硬貨が2枚出てきた。

「は?」

 どういうことだ?いつもの20倍の硬貨が出てきたぞ。これは本当に壊れているのか?ドキドキしながら他のボタンでも試してみると、「70:30」で1400ドール、「50:50」で1000ドール、「20:80」で400ドール、いつも使っているボタンだと200ドールと100ドールだった。

 壊れているのかもしれないが、今のうちだと先ほどのプレートも入れて「100:0」のボタンを押してみると、いつもは2000ドールのはずが1万ドールの硬貨が4枚出てきた。

「おお~~~っ!!」

 小さな声で歓声を上げる。なぜだかよくわからないが、このボタンだと金額が20倍になっているぞ。少し残っていたプレートも全部換金してから係の人が戻ってくるのを待つ。

「すまん、すまん。なかなか道具が見つからなくてな。」

「いや、気にしなくてもいいさ。」

 この後カバーを取り付けるのを手伝うが、かなり適当に止めているので隙間が開いたままになっていた。これだったら何か突っ込めばボタンを押せるな。



 酒場で一人食事をしながらボタンのことを考えてみる。いつも使っているボタンが100ドールと200ドールだったこと、数字の順番から考えると、この二つのボタンは「95:5」と「90:10」だったと考えられるな。
 この二つの数字が報奨金と実績ポイントの割合と考えると5と10が報奨金?それなら数字が合うな。ってことは95と90が実績ポイントだと?
 いつも使っているボタンだと報酬のうち95%が実績ポイントにカウントされて報奨金は5%ということなのか?すべて報奨金と思っていたボタンも90%が実績ポイントに使われていたと言うことなのか?
 それじゃあ俺の年間に稼いでいたお金は40万としたら20倍で800万ドール?すでに特階位の慰労金を軽く超えているじゃないか!!

 これだったら冒険者で上の階位になるって意味があることなのか?特階位なんて一匹でどのくらいのものを狩っているって思っているんだ。おそらく今の俺の年収の10倍以上だろう。ということは年間に8000万ドールくらい稼いでいると言っていいだろう。
 それなのに引退後にもらえる金が年間500万ドールってどういうことなんだ?引退後の人生なんて長くても20年だぞ。それまでに稼いだお金のほとんどが戻ってこないって言うことになるじゃないか。
 たしかに魔物の素材を使った装備とか道具とかの値段を考えるとそのくらいの価値はあってもいいよな?なんで今まで気にしなかったんだろう?


 これって誰も気がついていないのか?それ以前に実績ポイントをためたいという気持ちがかなり薄れているのはどういうことだ?
 もしかして今回の戦闘で頭を打った時に何かあったのか?指を切断されたと言うことが影響しているのか?そういえば冒険者になってから階位をあげる欲望がなる前よりも強くなっていたような気もするな。

 うーん、かなり危ないことに気がついたような気もするので、あまりおおっぴらにしない方が良さそうだな。どう考えてもかなり上の方の思惑が絡んでいるだろう。もしかしたら国自体が絡んでいるのかもしれない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

2回目チート人生、まじですか

ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆ ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで! わっは!!!テンプレ!!!! じゃない!!!!なんで〝また!?〟 実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。 その時はしっかり魔王退治? しましたよ!! でもね 辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!! ということで2回目のチート人生。 勇者じゃなく自由に生きます?

婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。

なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。 そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。 そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。 彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。 それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

気づいたら異世界ライフ、始まっちゃってました!? 

飛鳥井 真理
ファンタジー
何だか知らない間に異世界、来ちゃってました…。 どうするのこれ? 武器なしカネなし地図なし、おまけに記憶もなんですけど? 白い部屋にいた貴方っ、神だか邪神だか何だか知りませんけどクーリングオフを要求します!……ダメですかそうですか。  気づいたらエルフとなって異世界にいた女の子が、お金がないお金がないと言いながらも仲間と共に冒険者として生きていきます。  努力すれば必ず報われる優しい世界を、ほんのりコメディ風味も加えて進めていく予定です。 ※一応、R15有りとしていますが、軽度の予定です。 ※ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。 ※連載中も随時、加筆・修正をしていきます。(第1話~第161話まで修正済)

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
 初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎  って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!  何故こうなった…  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  そして死亡する原因には不可解な点が…  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

和風MMOでくノ一やってたら異世界に転移したので自重しない

ペンギン4号
ファンタジー
和風VRMMO『大和伝』で【くノ一】としてプレイしていた高1女子「葵」はゲーム中に突然よく分からない場所に放り出される。  体はゲームキャラそのままでスキルもアイテムも使えるのに、そこは単なるゲームの世界とは思えないほどリアルで精巧な作りをしていた。  異世界転移かもしれないと最初はパニックになりながらもそこにいる人々と触れ合い、その驚異的な身体能力と一騎当千の忍術を駆使し、相棒の豆柴犬である「豆太郎」と旅をする。

【本編完結】転生隠者はまったり怠惰に暮らしたい(仮)

ひらえす
ファンタジー
後にリッカと名乗る者は、それなりに生きて、たぶん一度死んだ。そして、その人生の苦難の8割程度が、神の不手際による物だと告げられる。  そんな前世の反動なのか、本人的には怠惰でマイペースな異世界ライフを満喫するはず……が、しかし。自分に素直になって暮らしていこうとする主人公のズレっぷり故に引き起こされたり掘り起こされたり巻き込まれていったり、時には外から眺めてみたり…の物語になりつつあります。 ※小説家になろう様、アルファポリス様、カクヨム様でほぼ同時投稿しています。 ※残酷描写は保険です。 ※誤字脱字多いと思います。教えてくださると助かります。

処理中です...