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城塞都市テザール
73.愛のスイッチON
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「さて、これで再び数的優位を取れたな。始めようかシェルドムート」
そう言い放ったナツキさんは、壁に直撃する寸前で"炎の輪"の膨張を止めて、炎を刀の中へと戻す。
そしてその流れのまま、天井へと瞬間移動していたシェルドムートに対して不敵な笑みを向けているのだった。
…………さてさて。それじゃあ俺は、ここで一旦思った事をハッキリ言う事にしようか。
「ナ、ナツキさん!??ここ鉱山内ですよ!?あんまり大技出したら生き埋めになるんですよ!?やめてもらえますっ!?!?心臓止まるかと思ったぁぁあ!!!」
◇
「何を騒いでいるんだサン。ちゃんと壁に当たる寸前で止めたじゃないか」
「止めたじゃないか(キリッ!)……じゃないでしょ!?ちょっとアソコの壁見てもらえます?メチャメチャ当たってますやん!ちょっと壁にヒビ入ってますやんっ!?」
「あれは、あれだよ。ちょっとした遊びだよ」
「遊びで生き埋めになりたくねぇよぉぉお!!」
半分泣きながら訴える俺だったが、ナツキさんはあんまり事の重大さを理解してはいないようだった。俺は今日、シェルドムートじゃなくてナツキさんに殺されるのかもしれない。
もう仕方ない、とにかく俺はナツキさんのサポートに徹するのがベストなのかもな。どうやらシェルドムートも我慢の限界のようだし…………。
【シュオンッ!!】
やはり俺の予想通り、早速シェルドムートは4本の腕を不規則に伸ばしたかと思えば、グニャングニャンと空間の中で振り回し始めた!
さすがに腕の動きが早い。手のひらに触られたらゲームオーバーなだけに、一瞬の油断も出来ない時間が始まってしまったようだ。
「さぁ始まったぞサン!!さっきの攻撃の事は後で反省するから、まずはこの無差別攻撃から生き残れっ!!」
「言われなくてもやってますよっ!!!」
ヒュンヒュンと俺の真横を通過してくシェルドムートの細く茶色い腕。どうやら腕が極端に細いのは、この無差別攻撃でスピードを出す為なのだろうか?と勝手に憶測をしてしまう。
とはいえ俺のスキル・”魔力感知眼・解”があれば対応できる範囲のスピードだ。なにせこの魔力感知眼・解があれば相手の体内魔力は全て透視できる。
つまり使い方にさえ慣れてしまえば、相手の次の行動を未来予知のように予測できてしまうのだ。
【サッ………サッ………!】
俺はまるで猿のような身のこなしで腕の猛攻を避け続け、壁を足場にしながら定期的に攻撃も仕掛けていた。
だが当然シェルドムート自身も瞬間移動できるので、中々致命傷には繋がらない。
むしろ遠距離から斬撃を飛ばしてしまうと、その斬撃を転移させられて俺やナツキさんにカウンターとして放ってくるのだから厄介だ!
「ナツキさん、これじゃあジリ貧ですよ!!」
「分かっている、だがもう少し様子を見させてくれ」
そう言うナツキさんは、俺とは対照的にほとんど動き回らずにシェルドムートの腕を対処していた。その場でドッシリと構え、少し炎をまとった刀で何百回も腕を切り落としているのだ。
彼女も”遠距離攻撃は有効ではない”という事には気付いているが故の、こう着状態なのだろう。
「クソ、近づけないな。シェルドムート自身も、確実に自分を瞬間移動させられる距離を完璧に把握しているせいで、一気に距離を詰める事も出来ない。かといって腕の回復速度も0.01秒程度しか落ちていない。
まずいな。サン、何とかしてくれ。君の方が私よりも身のこなしは俊敏だろう?」
「ここに来ての無茶振りやめてもらえます!?俺だって使えない刀で必死に頑張ってるんですぅぅ!!」
「…………離婚だな」
「分かった、やりますやりますよぉお!!俺に合わせて援護してくださいよぉ!?!?」
「もちろんだ。カッコいい所を見せてもらおうか」
その言葉を聞いた瞬間、俺の体の中から音が鳴ったような気がした。
パチンッ……
そう、完全にスイッチが入った音だ。今まで散々助けられてきたナツキさんに良い所を見せたいスイッチが入った音だ!
「おっしゃああ!久しぶりに良い所魅せてやるぜゴノヤロォォォオ!!!!」
かつてない程のエネルギーに満ち溢れた今の俺は、きっと魔王も倒せるような気がしている。
そう言い放ったナツキさんは、壁に直撃する寸前で"炎の輪"の膨張を止めて、炎を刀の中へと戻す。
そしてその流れのまま、天井へと瞬間移動していたシェルドムートに対して不敵な笑みを向けているのだった。
…………さてさて。それじゃあ俺は、ここで一旦思った事をハッキリ言う事にしようか。
「ナ、ナツキさん!??ここ鉱山内ですよ!?あんまり大技出したら生き埋めになるんですよ!?やめてもらえますっ!?!?心臓止まるかと思ったぁぁあ!!!」
◇
「何を騒いでいるんだサン。ちゃんと壁に当たる寸前で止めたじゃないか」
「止めたじゃないか(キリッ!)……じゃないでしょ!?ちょっとアソコの壁見てもらえます?メチャメチャ当たってますやん!ちょっと壁にヒビ入ってますやんっ!?」
「あれは、あれだよ。ちょっとした遊びだよ」
「遊びで生き埋めになりたくねぇよぉぉお!!」
半分泣きながら訴える俺だったが、ナツキさんはあんまり事の重大さを理解してはいないようだった。俺は今日、シェルドムートじゃなくてナツキさんに殺されるのかもしれない。
もう仕方ない、とにかく俺はナツキさんのサポートに徹するのがベストなのかもな。どうやらシェルドムートも我慢の限界のようだし…………。
【シュオンッ!!】
やはり俺の予想通り、早速シェルドムートは4本の腕を不規則に伸ばしたかと思えば、グニャングニャンと空間の中で振り回し始めた!
さすがに腕の動きが早い。手のひらに触られたらゲームオーバーなだけに、一瞬の油断も出来ない時間が始まってしまったようだ。
「さぁ始まったぞサン!!さっきの攻撃の事は後で反省するから、まずはこの無差別攻撃から生き残れっ!!」
「言われなくてもやってますよっ!!!」
ヒュンヒュンと俺の真横を通過してくシェルドムートの細く茶色い腕。どうやら腕が極端に細いのは、この無差別攻撃でスピードを出す為なのだろうか?と勝手に憶測をしてしまう。
とはいえ俺のスキル・”魔力感知眼・解”があれば対応できる範囲のスピードだ。なにせこの魔力感知眼・解があれば相手の体内魔力は全て透視できる。
つまり使い方にさえ慣れてしまえば、相手の次の行動を未来予知のように予測できてしまうのだ。
【サッ………サッ………!】
俺はまるで猿のような身のこなしで腕の猛攻を避け続け、壁を足場にしながら定期的に攻撃も仕掛けていた。
だが当然シェルドムート自身も瞬間移動できるので、中々致命傷には繋がらない。
むしろ遠距離から斬撃を飛ばしてしまうと、その斬撃を転移させられて俺やナツキさんにカウンターとして放ってくるのだから厄介だ!
「ナツキさん、これじゃあジリ貧ですよ!!」
「分かっている、だがもう少し様子を見させてくれ」
そう言うナツキさんは、俺とは対照的にほとんど動き回らずにシェルドムートの腕を対処していた。その場でドッシリと構え、少し炎をまとった刀で何百回も腕を切り落としているのだ。
彼女も”遠距離攻撃は有効ではない”という事には気付いているが故の、こう着状態なのだろう。
「クソ、近づけないな。シェルドムート自身も、確実に自分を瞬間移動させられる距離を完璧に把握しているせいで、一気に距離を詰める事も出来ない。かといって腕の回復速度も0.01秒程度しか落ちていない。
まずいな。サン、何とかしてくれ。君の方が私よりも身のこなしは俊敏だろう?」
「ここに来ての無茶振りやめてもらえます!?俺だって使えない刀で必死に頑張ってるんですぅぅ!!」
「…………離婚だな」
「分かった、やりますやりますよぉお!!俺に合わせて援護してくださいよぉ!?!?」
「もちろんだ。カッコいい所を見せてもらおうか」
その言葉を聞いた瞬間、俺の体の中から音が鳴ったような気がした。
パチンッ……
そう、完全にスイッチが入った音だ。今まで散々助けられてきたナツキさんに良い所を見せたいスイッチが入った音だ!
「おっしゃああ!久しぶりに良い所魅せてやるぜゴノヤロォォォオ!!!!」
かつてない程のエネルギーに満ち溢れた今の俺は、きっと魔王も倒せるような気がしている。
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