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カルマル防衛戦

43.天柱

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「ハァ、ハァ……クッソ、硬すぎるだろ……」


 戦いが本格化してから約20分、とうとう俺は肩で息をし始めるほどに疲弊ひへいしていた。

 だがそれは俺だけではない。
 強力な技を連発しても俺を仕留められないアテラと仮面男も同様だった。


「ちょこまかと動き回って、本当にアナタはハエのようですねサン・ベネット!?勝てるはずのない戦いに、なぜここまで必死になるのです!?いいから早く死になさいっ!!」

「勝てないと思ってんのはお前だけだよバーカ……ハァハァ……」


 そう余裕を見せようとする俺だったが、追い込まれている状況に変わりはなかった。

 なにせアテラの体にはほとんどダメージを与えられていない上に、仮面男の魔力もまだまだ尽きそうにない。
 俺はあまりに硬すぎるアテラのウロコに大苦戦を強いられていたのだ。

 とはいえこの約20分間、闇雲に雷撃を放っていたワケでもない。
 少しずつ、本当に少しずつアテラの”首元”のウロコ3枚だけにダメージを蓄積させていたのだ。

 おそらく次の一撃であそこのウロコは砕ける。
 ならば、そこに最大の一撃を打ち込めばきっとアテラの首を落とす、最低でも大ダメージを与えられるのは間違いなかった。


「さぁ、そろそろフィニッシュといこうじゃねぇか神の剣竜さんよ」


 俺は残り少ない魔力を振り絞り、再び技を発動する。


「雷身兵団ッッ!!」


 今回の戦いで何度も使用した、雷の分身を作る技。
 これを使って、最後の一撃の準備を進めていくんだ……!


「また鬱陶うっとうしいその分身技……。アテラ、全て聖剣で消し飛ばしなさいっ!!ワタクシは拘束魔法で本体を捕まえます!」

【グガァアアアアア!!!!】


 さすがにアテラと仮面男も、長引く戦いにフラストレーションが溜まってきている様子だった。

 だがコレは俺にとっては好都合。
 戦いっていうのは、最後まで頭を冷静に動かせた方が勝つモノなんだよ。

 ドンドンいかれ、ドンドン冷静さを失え。
 俺がココで必ず勝負を決めてやる……!!





「アテラ、閃煌拡散弾せんこうかくさんだんを撃ちなさい!!分身を一気に仕留めるのですっ!!」


 アテラの口から放たれたのは、戦いの最初に放ったブレス攻撃・閃煌せんこうを散弾銃のように広い範囲に放つ技だった。

 さすがに威力は一点集中した閃煌せんこうよりも落ちているが、攻撃範囲は段違いに広い。
 おかげでアテラの周りを高速で移動していた俺の分身達は次々に拡散弾に当たってしまい、消滅してしまっていた。

 だが焦るな、まだだ。
 まだ時間が必要なんだ。

 もう少し粘ってくれ、分身達……!


「どれですか!?どれが本体なのですかサン・ベネット!!今更こんな小技でアテラを倒せるなんて分かっているでしょう!?またお得意の時間稼ぎで、一体何ができるのですかっっ!?」


 だが俺はその質問に答える事なく、ただひたすらに分身達に攻撃を続けさせる。

 分身の残りはあと4体。
 そろそろ限界が近づいてきている。

 もう少し、もう少しだけ魔力をらせてくれ!
 あと20秒でいい、あと20秒で全てを終わらせられるから……!


 —————だがそう願った矢先だった。


「もういいです。少しワタクシも危険になるので使うのを躊躇ちゅうちょしていましたが、仕方がありません。アテラ、神の柱で全てを浄化しなさい。ワタクシは防御魔法で身を守ります」


 そう命令されたアテラは、とうとう俺の分身達に対しての攻撃をやめていた。
 そして天を見上げて、ガバッと大きな口を開く。

 するとそこから放たれた小さな小さな球体は、比較的ゆっくりと雲の上まで登っていき、気付けば視認できない高さにまで上昇していた。

 閃煌せんこうとは違った、本当に小さな球体だった。
 だが天から降り注いできたのは閃煌せんこうよりも何百倍の威力と範囲を兼ね備えた、まさに【光の柱】と呼ぶべき天からの攻撃だったのだ。


【キュイィィン………ドッッゴォォァアアンン!!!】


 アテラと仮面男の周り、半径約200mだろうか?
 その範囲は全て、天から降り注いだ光の柱に覆われていた。

 俺の分身は一瞬にして跡形もなく消滅させられ、光が降り注いだ地面も一瞬にして空洞へと変貌へんぼうしていた。
 まさに天からのさばきと呼ぶのがピッタリの恐ろしい一撃だったのだ。

 そして光の柱が消えて、中から出てきた仮面男はというと……。


「ハァ、危ない危ない……!国王様から授かった”最上級の防御魔法”を使っていなければ、間違いなくワタクシも即死していたでしょうねぇ……」


 仮面男の上半身はヒドく焼き焦げたようになっており、白い仮面も3分の1ほどが割れてしまっていた。
 上半身に着ていた黒いローブもボロボロになっており、中に着ていた戦闘服のような衣服もあらわになっていた。

 まさに自身の身体をかえりみずに敵を倒す、仮面男の覚悟が見えた一撃だったようだ。



 ………というワケで俺は、その一部始終を奴らから”300m離れた場所”から視認していた。 
 実は分身を発動した直後に、出来るだけ魔力を隠しながらシッカリと距離を取っていたのだ!

 さぁ、20秒は稼げたぞ。

 これだけの距離を取らないと放てない、俺の最初で最後の一撃。
 アテラの首元のウロコを目がけて、いざ……放つッッ!!




終典しゅうてん百雷ひゃくらいあわれミ】



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