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ヤンヤンと列車にて
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芋掘り大会は二番目の兄、レッカ・ショーサラー・ドラゴニアが大活躍して終わったらしい。
妾は学園に戻る前に兄姉たちに叱られて、セレスティにも尋問されて、ヤンヤンとミンミンにもチクチク小言を言われてしもうた。
まあ、仕方がない。
勝手に抜け出して図書館でエンジョイしてたことになったが、事実を話すわけにもいかぬしな。
妾が呪いの真実を知って落ち込んでいるのも、ヤンヤンたちは怒られて凹んでいるだけだと思っておる。
おかげで変に追求もされなかった。
しかし、これからどうしたものか。
妾の目的は呪いを解くことじゃ。
一歩前進したが、次の道筋が見えないので動きが取れぬ。
ポーキュリと会長に頼るだけでいいんじゃろうか。
頭痛が治ったのにグルグル考えているせいで、眉間のシワは深くなるばかりじゃ。
「このままじゃ早く老けてしまいそうじゃ」
ぼやいた言葉を聞きつけたのか、ヤンヤンが向かいから笑った。
「ひめ様が老ける前にわたしがおばあちゃんになりますよ」
「そうかの?」
妾たちは学園に戻るため列車に乗っておる。
一等席の個室なのでヤンヤンと二人、落ち着いたものじゃ。
学園に戻るため宮を出る時は少し大変だった。
ミンミンが付いてくると泣き出して、さしもの妾も困惑してしもうた。
ヤンヤンに宥められてもダメだったが、最近宮に入ったという若い侍従に声をかけられた途端、目がハートなっていたので大丈夫じゃろう。
失った恋は新しい恋で上書きするわ! と言っておったしな。
「また忙しい学園生活ですが、誠心誠意お仕えしますね」
「うむ」
やはりヤンヤンはいいのぅ。
鳶色の長い髪を今日はポニーテールにして、紺色のパンツスーツを着こなしている。
できる秘書っぽくてカッコ良いのじゃ。
これでまだ十九才。
妾の目の赤いうちは嫁にはいかせぬぞ~。
「それでひめ様、そろそろ話していただけませんか?」
「ん? 何をじゃ?」
「芋掘り大会を抜け出して図書館に行っていた理由です」
突然のジャブに妾はうろたえた。
「・・・・・・な、何を言っておる。それならとっくに説明したではないか」
ヤンヤンが向かいから怪しんだ顔で見てくる。
「わたしはいつもひめ様と一緒なのですよ。何か隠していることぐらいわかります」
「ななな、何も隠してなんかーーー」
そうじゃ! 何もうろたえる必要などないのじゃ!
図書館に行ったのは読みたい本があったからだと説明してある。
それが禁帯出の書庫にある本だとは言ってないが・・・・・・。
「ちょっと本を読んでいただけじゃ」
ヤンヤンはあからさまにため息をついた。
「どうしても言えないことなのですか?」
「・・・・・・」
「わかりました」
ヤンヤンが頷く。
「では話せるようになったら話してくださいね」
いきなり物分かりが良くなるのも怖い。
妾は聞き返した。
「そ、それでいいのか?」
「無理に聞き出すわけにもいきませんから」
「セレスティなら脅したり逆さ吊りにしたりするぞ」
ふふっとヤンヤンが笑う。
「ひめ様ったら、そんなことできませんよ。セレスティ様とは立場が違います。それにそんなことをしてもひめ様は頑固ですから話してはくれないでしょう」
確かにセレスティは侍女頭である前に、妾の乳母。
つまり母親同然なので、ヤンヤンとは違って、皇帝の息女だろうと権威に関わりなく接してくる。
じゃが、妾にとってヤンヤンは血は繋がっておらぬが姉のようなもの。
この距離感が少し寂しく感じた。
「・・・・・・そのうち話す」
「はい。でも危ないことはほどほどにしてくださいね」
「うむ」
それきりヤンヤンは図書館のことを聞いてはこなかった。
列車の中で宮の料理人がこしらえた豪勢なお弁当を食べ、お昼寝をしていたら、あっという間に妾たちは騒がしい学園へと戻っていたのじゃ。
妾は学園に戻る前に兄姉たちに叱られて、セレスティにも尋問されて、ヤンヤンとミンミンにもチクチク小言を言われてしもうた。
まあ、仕方がない。
勝手に抜け出して図書館でエンジョイしてたことになったが、事実を話すわけにもいかぬしな。
妾が呪いの真実を知って落ち込んでいるのも、ヤンヤンたちは怒られて凹んでいるだけだと思っておる。
おかげで変に追求もされなかった。
しかし、これからどうしたものか。
妾の目的は呪いを解くことじゃ。
一歩前進したが、次の道筋が見えないので動きが取れぬ。
ポーキュリと会長に頼るだけでいいんじゃろうか。
頭痛が治ったのにグルグル考えているせいで、眉間のシワは深くなるばかりじゃ。
「このままじゃ早く老けてしまいそうじゃ」
ぼやいた言葉を聞きつけたのか、ヤンヤンが向かいから笑った。
「ひめ様が老ける前にわたしがおばあちゃんになりますよ」
「そうかの?」
妾たちは学園に戻るため列車に乗っておる。
一等席の個室なのでヤンヤンと二人、落ち着いたものじゃ。
学園に戻るため宮を出る時は少し大変だった。
ミンミンが付いてくると泣き出して、さしもの妾も困惑してしもうた。
ヤンヤンに宥められてもダメだったが、最近宮に入ったという若い侍従に声をかけられた途端、目がハートなっていたので大丈夫じゃろう。
失った恋は新しい恋で上書きするわ! と言っておったしな。
「また忙しい学園生活ですが、誠心誠意お仕えしますね」
「うむ」
やはりヤンヤンはいいのぅ。
鳶色の長い髪を今日はポニーテールにして、紺色のパンツスーツを着こなしている。
できる秘書っぽくてカッコ良いのじゃ。
これでまだ十九才。
妾の目の赤いうちは嫁にはいかせぬぞ~。
「それでひめ様、そろそろ話していただけませんか?」
「ん? 何をじゃ?」
「芋掘り大会を抜け出して図書館に行っていた理由です」
突然のジャブに妾はうろたえた。
「・・・・・・な、何を言っておる。それならとっくに説明したではないか」
ヤンヤンが向かいから怪しんだ顔で見てくる。
「わたしはいつもひめ様と一緒なのですよ。何か隠していることぐらいわかります」
「ななな、何も隠してなんかーーー」
そうじゃ! 何もうろたえる必要などないのじゃ!
図書館に行ったのは読みたい本があったからだと説明してある。
それが禁帯出の書庫にある本だとは言ってないが・・・・・・。
「ちょっと本を読んでいただけじゃ」
ヤンヤンはあからさまにため息をついた。
「どうしても言えないことなのですか?」
「・・・・・・」
「わかりました」
ヤンヤンが頷く。
「では話せるようになったら話してくださいね」
いきなり物分かりが良くなるのも怖い。
妾は聞き返した。
「そ、それでいいのか?」
「無理に聞き出すわけにもいきませんから」
「セレスティなら脅したり逆さ吊りにしたりするぞ」
ふふっとヤンヤンが笑う。
「ひめ様ったら、そんなことできませんよ。セレスティ様とは立場が違います。それにそんなことをしてもひめ様は頑固ですから話してはくれないでしょう」
確かにセレスティは侍女頭である前に、妾の乳母。
つまり母親同然なので、ヤンヤンとは違って、皇帝の息女だろうと権威に関わりなく接してくる。
じゃが、妾にとってヤンヤンは血は繋がっておらぬが姉のようなもの。
この距離感が少し寂しく感じた。
「・・・・・・そのうち話す」
「はい。でも危ないことはほどほどにしてくださいね」
「うむ」
それきりヤンヤンは図書館のことを聞いてはこなかった。
列車の中で宮の料理人がこしらえた豪勢なお弁当を食べ、お昼寝をしていたら、あっという間に妾たちは騒がしい学園へと戻っていたのじゃ。
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