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友だちってどうやって作るんじゃ?
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朝食を終えた妾は、とりあえずサクラと学園に向かうことにした。
ヤンヤンは寮に残ることになる。
さすがに学園の中に付き人は入れないからの。
ヤンヤンはサクラのお付きのシーナと共に寮で寮母の手伝いをすることになっておる。
寮から学園の正門まで行くと、サクラともそこで別れた。
サクラは今年から高等科になるので中等科の妾とは校舎が別なのじゃ。
サクラに教えてもらった中等科の校舎へと歩き出すと、同じ方角へ行く生徒にまぎれる。
同じ年頃の者をこれほどたくさん見るのは初めてじゃ。
ちょっと緊張しつつ、新しい制服、新しいカバン、新しい靴で校舎へ向かう。
ワクワクドキドキでスキップしそうじゃが我慢した。
こういう時ほどお淑やかにせねばな。
クラスはメラギアとわかっておるので、校舎の前にあった立て看板と案内図で教室の場所もすぐわかった。
そして、一年生メラギアクラスの教室の入り口、ドアの前に立った。
こ、ここから妾の青い春が始まる!
と思うたらーーー。
「おい、ボサーッと突っ立ってんな」
「え?」
「おまえだよ、グズ!」
「わ、妾のことか?」
突然の背後からの口撃!?
振り返った妾の目に、真っ黒なカラスのような少年が立っておった。
真っ黒な髪! 真っ黒な瞳! 真っ黒な・・・・・・?
「それはツノか?」
「あァ? うっせぇよ。 さっさと退けよ、邪魔なんだよ。ボケが」
なんと口の悪い男子じゃ。
妾、こんな暴言を受けたのは初めてじゃ。
しかし、それ以上にツノが気になるのぉ。
十五センチくらいのクルクルと巻き状になった立派なツノが二本生えておる。
確か、ツノがある竜族はーーー。
「東方の龍人族か?」
「だったらなんだってんだ? いいから退け!」
男子は妾を押しのけて教室へ入って行く。
龍人族はこのドラゴニア帝国では滅多に見かけない。
妾ですら王宮の賓客として何度か見かけたことがあるくらいじゃ。
この学園にいるということは留学生かもしれぬな。
妾が一人、ふむふむと納得しておると、背後から今度は二人連れの女子がやって来た。
「あ、あの・・・・・・もしかしてバーミリオン様ですか?」
妾より背の高いたんぽぽ色の髪の少女が驚いたように話しかけてくる。
隣には大人しそうな丸メガネの子もいる。
「うむ。妾がバーミリオン・ヘデス・ドラゴニアじゃ」
胸を大きく張って答えると、なぜか教室の中から「はァァ!?」と大きな声が聞こえてきた。
見ると、先ほどの口の悪い男子がこちらを睨んでおる。
いや、そんな顔をされても・・・・・・。
「バーミリオン様、お気になさらないでくださいね。あの方、龍人族の留学生なんですよ」
「礼儀を知らない無作法な方なのです。東方の出身ということで先生も他の生徒も注意しないので、あのように尊大な態度でみんな困っているのです」
小声で二人が教えてくれた。
やはり留学生であったか。
わざわざこの帝国に留学ということは、それなりの地位にある人物の子息のはず。
そこに先生が到着したため、初めてのホームルームが始まった。
まずは全員で体育館とやらに行き、入学式に参加。
それから教科書の配布があるので取りに行き、また教室に戻ってホームルームという予定らしい。
流れ作業のようにそれらを終えると、教室に戻った妾は大人しく席についておった。
一番後ろの左端から二番目の席じゃ。
隣はなんと先ほどの龍人族の男子留学生。
まあ、なんか知らぬがすごい睨まれておる。
席に着いてから、ずっとこちらを見ておるのじゃ。
妾がドア前で立っておったのがそんなに気に食わなかったのか?
それはちょっと心が狭すぎやせんか?
できるだけ気にしない素振りで、妾は教壇の先生へと視線を向けた。
ショートヘアの若い女性教師は、妾の一番上の姉と歳は同じくらいに見える。
少し緊張しているのか、固い表情で明日からの学校生活について説明している。
年間行事もいろいろあるし、試験も期末ごとにあり、なかなか忙しそうじゃ。
しかし、妾にはそれ以上に大切なことがある!
まずは友だち作りなのじゃ。
今のところまだ誰ともいい感じになっておらぬ。
それなのに気づいたら何人かのクラスメイトはすでに二、三人ずつ固まって話していたりして、ちょっと焦っておる。
妾も早急に誰かに話しかけなければ。
「おい」
ん? 何か聞こえたような?
「おいって!」
声のする隣を見ると、先ほどから妾を睨んでいた男子が何やら呼んでいる。
だが! これは無視じゃ!
妾、こいつとは友だちにならんぞ。
プイッとそっぽを向いておると、何かが頭にポンと当たった。
机に落ちたそれは、なんと小さく紙を丸めたもの。
妾は不承ながら広げてみた。
「おい、おまえ第四皇女って本当か!?」
こやつ、自分の無礼な態度を顧みるということを知らぬのか?
ちらりと横を見ると、相変わらず不満そうな顔でこちらを窺っておる。
無視してやろうかと思ったが、妾は礼儀を重んじるのでな。
投げつけられた紙に『うむ』と書いて隣に手渡した。
やつが受け取って開いた途端、突然だった。
「この野郎ッ!!」
男子が隣の席から飛びかかってきたのじゃ!
ヤンヤンは寮に残ることになる。
さすがに学園の中に付き人は入れないからの。
ヤンヤンはサクラのお付きのシーナと共に寮で寮母の手伝いをすることになっておる。
寮から学園の正門まで行くと、サクラともそこで別れた。
サクラは今年から高等科になるので中等科の妾とは校舎が別なのじゃ。
サクラに教えてもらった中等科の校舎へと歩き出すと、同じ方角へ行く生徒にまぎれる。
同じ年頃の者をこれほどたくさん見るのは初めてじゃ。
ちょっと緊張しつつ、新しい制服、新しいカバン、新しい靴で校舎へ向かう。
ワクワクドキドキでスキップしそうじゃが我慢した。
こういう時ほどお淑やかにせねばな。
クラスはメラギアとわかっておるので、校舎の前にあった立て看板と案内図で教室の場所もすぐわかった。
そして、一年生メラギアクラスの教室の入り口、ドアの前に立った。
こ、ここから妾の青い春が始まる!
と思うたらーーー。
「おい、ボサーッと突っ立ってんな」
「え?」
「おまえだよ、グズ!」
「わ、妾のことか?」
突然の背後からの口撃!?
振り返った妾の目に、真っ黒なカラスのような少年が立っておった。
真っ黒な髪! 真っ黒な瞳! 真っ黒な・・・・・・?
「それはツノか?」
「あァ? うっせぇよ。 さっさと退けよ、邪魔なんだよ。ボケが」
なんと口の悪い男子じゃ。
妾、こんな暴言を受けたのは初めてじゃ。
しかし、それ以上にツノが気になるのぉ。
十五センチくらいのクルクルと巻き状になった立派なツノが二本生えておる。
確か、ツノがある竜族はーーー。
「東方の龍人族か?」
「だったらなんだってんだ? いいから退け!」
男子は妾を押しのけて教室へ入って行く。
龍人族はこのドラゴニア帝国では滅多に見かけない。
妾ですら王宮の賓客として何度か見かけたことがあるくらいじゃ。
この学園にいるということは留学生かもしれぬな。
妾が一人、ふむふむと納得しておると、背後から今度は二人連れの女子がやって来た。
「あ、あの・・・・・・もしかしてバーミリオン様ですか?」
妾より背の高いたんぽぽ色の髪の少女が驚いたように話しかけてくる。
隣には大人しそうな丸メガネの子もいる。
「うむ。妾がバーミリオン・ヘデス・ドラゴニアじゃ」
胸を大きく張って答えると、なぜか教室の中から「はァァ!?」と大きな声が聞こえてきた。
見ると、先ほどの口の悪い男子がこちらを睨んでおる。
いや、そんな顔をされても・・・・・・。
「バーミリオン様、お気になさらないでくださいね。あの方、龍人族の留学生なんですよ」
「礼儀を知らない無作法な方なのです。東方の出身ということで先生も他の生徒も注意しないので、あのように尊大な態度でみんな困っているのです」
小声で二人が教えてくれた。
やはり留学生であったか。
わざわざこの帝国に留学ということは、それなりの地位にある人物の子息のはず。
そこに先生が到着したため、初めてのホームルームが始まった。
まずは全員で体育館とやらに行き、入学式に参加。
それから教科書の配布があるので取りに行き、また教室に戻ってホームルームという予定らしい。
流れ作業のようにそれらを終えると、教室に戻った妾は大人しく席についておった。
一番後ろの左端から二番目の席じゃ。
隣はなんと先ほどの龍人族の男子留学生。
まあ、なんか知らぬがすごい睨まれておる。
席に着いてから、ずっとこちらを見ておるのじゃ。
妾がドア前で立っておったのがそんなに気に食わなかったのか?
それはちょっと心が狭すぎやせんか?
できるだけ気にしない素振りで、妾は教壇の先生へと視線を向けた。
ショートヘアの若い女性教師は、妾の一番上の姉と歳は同じくらいに見える。
少し緊張しているのか、固い表情で明日からの学校生活について説明している。
年間行事もいろいろあるし、試験も期末ごとにあり、なかなか忙しそうじゃ。
しかし、妾にはそれ以上に大切なことがある!
まずは友だち作りなのじゃ。
今のところまだ誰ともいい感じになっておらぬ。
それなのに気づいたら何人かのクラスメイトはすでに二、三人ずつ固まって話していたりして、ちょっと焦っておる。
妾も早急に誰かに話しかけなければ。
「おい」
ん? 何か聞こえたような?
「おいって!」
声のする隣を見ると、先ほどから妾を睨んでいた男子が何やら呼んでいる。
だが! これは無視じゃ!
妾、こいつとは友だちにならんぞ。
プイッとそっぽを向いておると、何かが頭にポンと当たった。
机に落ちたそれは、なんと小さく紙を丸めたもの。
妾は不承ながら広げてみた。
「おい、おまえ第四皇女って本当か!?」
こやつ、自分の無礼な態度を顧みるということを知らぬのか?
ちらりと横を見ると、相変わらず不満そうな顔でこちらを窺っておる。
無視してやろうかと思ったが、妾は礼儀を重んじるのでな。
投げつけられた紙に『うむ』と書いて隣に手渡した。
やつが受け取って開いた途端、突然だった。
「この野郎ッ!!」
男子が隣の席から飛びかかってきたのじゃ!
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