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27.馬車の中で

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来た時と同じように皆様に見送られて、カール様にエスコートされて馬車に乗ったわ。
「カール様、皆様とても素敵な方々ですね。」
「そう言ってもらえると私も嬉しいよ。だけど私は、ロザリーのことになると急に心が狭くなってしまうようなんだ。ずっと、祖父に嫉妬していたんだからね。」
「えっ?いつですか?」
嫉妬するような場面なんてあったかしら?もしかして、おじい様の筋肉を褒めた時かしら?でもずっとって…。
「ごめんなさい。それは私がおじい様の筋肉を芸術品と言ったからですか?」
「それもあるが、祖父の武勇伝をうっとりしながら聞いていたではないか。私の筋肉が祖父に劣るから私への思いが覚めてしまったのかい?」
「カール様はなにをおっしゃっているのですか?そんなことあるわけないではありませんか。おばあ様にはおじい様が唯一、そして私にはカール様が唯一ですわ。」
「それではなんであんなにうっとりと聞いていたんだい?」
「そ、それは…。」
恥ずかしいけど言わないと誤解は解けないわよね。

「お恥ずかしいのですが、おじい様を勝手にカール様だったらって考えて想像して聞いていたんです。カール様が私を助けに来てくださって私が二階から飛び降りてカール様にキャッチしていただいたりと…。妄想が過ぎましたわ。」
「・・・そうだったのか。勝手に嫉妬していたんだな。」
「いえ、カール様のせいではありませんは、私もカール様が他の女性のことでうっとりされていると思ったら、カール様のほっぺをつねってしまうかもしれませんわ。」
「私のほっぺをロザリーがつねる?全く痛くなさそうだな。ふっふふ。」
「笑うところではありませんわ。」
「すまない、ほっとしたんだ。ロザリー、抱きしめてもいいかい?」
「はい、抱きしめてくださいませ。」
カール様は優しく抱きしめてくださったわ。この匂い本当に大好き。
「カール様の匂い大好きです。ホッとします。」
「臭くはないか?」
「ええ、大好きな匂いです。」
「私もだ、ロザリーからする甘い匂いがたまらないんだ。これはロンによると、好きな異性からする匂いらしい。」

「そうなのですね。勉強になりましたわ。ずっと嗅いでいたくなるんです。」
「そうだな、そして、頭の中がロザリーでいっぱいになって…。」
突然、カール様の目つきが変わって、獲物を見つけた獣みたいって思ったら、次の瞬間激しいキスが降ってきて、息が、苦しい。カール様のお口は大きくて、鼻も口も塞がれてしまうから助けて…。
「く、苦しいです。」
「あっ、すまない。ロンに言われたのだった。首元の匂いは嗅がないようにと、本当に理性が飛んでしまうところだった。本当にすまなかった。」
「いえ、苦しかっただけで嫌だったわけではなく、加減していただければ私もカール様に触れていただきたいので。」
「ロザリー…」
これは一応手加減してくださっているのかしら?なんとか息が出来る絶妙なキスと…ドレスの上からなのに胸を直接掴まれているみたいに力強くちょっぴり痛いくらいに触られて…恥ずかしいけど全然嫌じゃないわ、なんだかお腹の奥に熱が溜まってくるみたい…。その時、ガタンと馬車が石をはじいて、
「ああ、申し訳ない…。私はまた…。ロザリー、聞いてもらいたい話があるんだ。実は早く結婚したくて国王陛下に頼んで、教会を一年後の今日で抑えてもらったんだ。場所はナーストリア教会だ。君のご両親とうちの祖母たちがあげたところだよ。どうだろうか?」
「素敵です。私も早くカール様と結婚したいです。」
「実は宰相殿にもご尽力いただいたんだ。一年後のスケジュールを開けてもらえるようにね。」
「カール様、大好きです。幸せ過ぎて怖いくらいですわ。」
「これからもっと幸せにするつもりだ。結婚式までにはやることが沢山あると思うが素敵な結婚式にしよう。それから私たちの新居だが、知っての通り、私はビハンド伯爵の座を弟に譲っている。宰相殿からはハイゼル公爵家に入るように言われているし、ありがたいことにハイゼル公爵家の離れを新居にしていいそうなんだ。」
「まぁ、なんて素敵な提案なんでしょう。やっぱりお父様は最高だわ。」

「私もそう思うよ。公爵家のことは近衛騎士団長をやっている間は執事のルーカス殿に任せて少しずつ覚えていけばいいとも言ってもらっている。まぁ、ほとんどのことはロザリーがもうできるらしいしね。」
「そんなことはないと思いますが、一応一通りのことは学びましたわ。お父様が宰相なので私が採決しないと間に合わない時もありますので…。」
「こんなに可愛らしくて、しっかりしていて、私にはもったいないくらいだが、もう絶対に離せない。」
「離さないでください。おじいさんとおばあさんになっても一緒にいてくださいね。」
「もちろんだ。」
「そう言えば、おじい様はなんで亡くなられたのですか?」
「老衰だよ。九十迄生きたらしい。」
「えっ?おばあ様とおじい様っていくつ違ったんですか?」
「祖父と祖母の年の差婚は有名だから知っているとばかり思っていが、結婚した時が祖父は五十を越していたと思う。祖母は十八かな?」

「まぁ、筋肉の前に、歳の差婚でしたのね。」
「昔は稀にあったようだ。しかし、年齢不詳の強さだったらしい。全く筋肉が衰えることはなかったと聞いているからね。」
「そうですか。カール様も長生きしてくださいね。」
「私はロザリーを残して死んだりしないよ。ロザリーに寂しい思いはさせない。」
「約束ですからね。」
「ああ、約束だ。」
公爵邸に着くとエマが外で待っていてくれたわ。私は一生懸命ビハンド伯爵家でのことをエマに全部話したわ。エマはずっとニコニコしながら聞いていてくれたけど、話し終わる頃には夕食も、湯あみも終わって、もう寝るだけになっていたの。いつものように、エマに手を握ってもらいながら眠りにつこうとすると、
「お嬢様明日は久しぶりにクレア様がきてくださるようですよ。」
と言われたの。
「クレアが?とても楽しみだわ。」
「そうですね。では、今日はゆっくりお休みくださいね。」

「ええ、エマおやすみなさい。」
私はぐっすりと眠ることができて、次の日の朝はエマが私の体調を心配して、少し遅めに起こしてくれたの。本当に優しくて、優秀な侍女なの。

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