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120.卒業パーティーの日がきました

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「お嬢様お綺麗です。」
私は黒バラの刺繍が入った水色のドレスを着て、黒バラを髪に付け、アーサーからもらった婚約指輪もしっかり付けて今日は念の為ルーサ様から頂いたブレスレットも付けて卒業パーティーに出ることにしたわ。
「サリーありがとう。」
「お嬢様、下でアーサー様たちがお待ちですよ。」
「そうね。行ってくるわ。」
お兄様もアーサーもなんてカッコいいのかしら?エントランスで待っている二人はどう見ても王子様だわ。アーサーは黒を基調とした正装服、お兄様は銀に近い白を基調とした正装服だけど二人とも胸に青バラを挿していて素敵です。

「お待たせしました。」
「マリーはどんどん綺麗になっていくね。やっぱり天使だね。」
「お兄様とアーサーこそ、ますますカッコよくなっています。」
「じゃあそろそろ行こうか。」
お兄様に手を引かれて三人で馬車に乗ったわ。今日で学園も最後なのね。

「今日は絶対にアーサーから離れないでね。サーシャが来るのだからね。すぐに結界を張る予定だけど気を付けるに越したことはないからね。」
「分かっています。もう何度も聞いていますもの。アーサーからけっして離れません。結界の微調整はルドができるようになったから今回はアーサーの横にいれば良いんですよね。」
「ああ、そうだよ。王太子殿下は努力家だね。」
「私もそう思います。努力家で責任感が強くて将来この国は安泰ですね。」

「さぁ着いたよ。」
私はアーサーのエスコートで馬車を降りたわ。今日は、絶対に上手くいくわよね…。なんでこんなに不安なのかしら?サーシャの体からはどこにいても分かるくらい強烈な臭いの魔力?が出ているらしいからいつ来るかはっきりと分かるらしいし、計画も完璧だと皆さん言っているのに。あら、こちらにルドとブロッサが来るわ。
「マリーにお願いがあるんだけど。」
「ブロッサ、何かしら?」
「ラムルを預かってくれないかしら。」
「ラムルを?」
「そうよ。本当はピゴくんもお願いしたいんだけどピゴくんは離れてくれそうもないから…。」

「分かったわ、預かります。これからサーシャを捕まえるんですものね。気をつけてね。」
「ありがとう。」
「ラムル、申し訳ないけど卒業パーティーの間だけ私の肩に乗ってくれるないかしら?」
そう言えばラムルに言葉って通じるのかしら?大丈夫だったみたいね。ラムルは言葉を理解できるみたいで、あくびをしながら羽もないのにふわふわと浮いて私の右肩に乗ってくれたわ。
「可愛い!」
「このふてぶてしい態度のどこが可愛いんだよ!」
あら、ルドはどうしたのかしら?ラムルに焼きもちを焼いてるの?まさかね。
「ルドも気をつけてね。」
「ああ、心配するな。マリーはパーティーを楽しんでいてくれ。」
「分かったわ。楽しませてもらうわね。」
そうよね。信じて私はパーティーを楽しみましょう。

開始十分前なのにまだ来ないの?もう生徒は全員集まってると思うし、生徒会のメンバーは後から入ってくるからパーティーが始まる前に来ると思っていたんだけど。あら?ルーサ様が慌ててる?どうしたのかしら?
「マリー、何かあったみたいだね。僕から離れないでね。」
「ええ、今日は離れないわ。だって私にできることなんて何もないんですもの。今日はみんなを信じるだけ、ラムルも一緒に白パンを食べて楽しみましょうね。」
ブロッサがラムルの好物の白パンをシルバーのカサブランカ公爵家に頼んでくれたから、焼き立てのパンのいい匂いがしているわ。絶対に美味しいわよね。やっぱり言ってる意味が分かるのね。ラムルの目がきらきらと輝き出したわ。そう思っていたのに、念話でルーサ様に話しかけられて、
「みんな聞いておくれ、さっきサーシャの魔力が霧の谷に飛んだんだ。その直後、ネクスからサーシャが目の前に現れたと念話で知らせがきて、それからなんの連絡もこない。たぶんネクスはサーシャにやられた…。」

ルーサ様がつらそうでサーシャに対する怒りが抑えられそうもないわ。
「サーシャが来るよ。あと十秒ないね、なんてスピードだ。早く結界を張っておくれ、さぁ始まるよ。」
結界はお兄様がセットし、ルドが最後の微調整をする前にお兄様は中に入るように言われて、お兄様はいま私の隣にいるわ。
「お兄様、流石に心配で楽しめません!」
「そうだね、水晶で見てみようか。その前にラムル、白パンだよ、お食べ。」
「ラムル良かったわね。」
ラムルはこんな非常事態なのに背中とお腹をボリボリ掻いてから嬉しそうに白パンを器用に持って食べ始めたわ。少し冷静になれたわね。ラムルっておじさんみたい…。

「見ても何もできないんだからつらくなるだけだよ。」
「アーサー、ルーサ様が私たちにも念話を送ってきたのよ。私たちの魔力も必要なのかもしれないわ。もしかしたら私たちの力も借りたいのかもしれないでしょ。」
「僕はマリーに危ないことはしてほしくないんだよ。」
「今回はアーサーが守ってくれるんでしょ?」
「分かったよ。絶対に守る。だから僕の横にいてよ。」
「もちろんよ。」
私はアーサーの耳元で、私の未来の旦那さま頼りにしているわって伝えたわ。アーサーは真っ赤になって何度も頷いてくれたわ。大切な人を放っておくなんて私にはできないもの。まずは状況を把握しなきゃ。
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