上 下
117 / 123

117.学園祭です(猫の尻尾は危険)

しおりを挟む
やっと、お兄様とアーサーが帰って来たのね。廊下の私の椅子の前に二人が立っていてくれたわ。
「マリーお帰り、次は僕とデートして。」
「アーサーただいま。もちろんよ。お兄様少しお待ちくださいね。」
「ああ、待っているから、行っておいで。」
すると、ルナが、
「師匠、待っている間、魔道具についてお話したいので私とデートしてくださいませんか?」
すごい誘い方ね。周りのみんなが笑っているわ。
「ずるいよ、ルナ、僕だってマルク殿と魔道具の話をしたいよ。」
「シルバーは男の子でしょ。あとで話の内容を教えてあげるから。」
「絶対だからね。」
全くロマンチックじゃないけど、三人らしいわね…。

「じゃあ、ルナに教えて欲しいこともあったから行こうか。」
「本当ですか?ありがとうございます。」
「ルナ嬢、僕とデートしてください。」
「はい、喜んで。」
先に二人が行ってしまったわね。
アーサーが膝をついて私を誘ってくれたわ。
「マリー嬢、僕とデートしてください。」
「ええ、喜んで。」
ここは何かしら?ああ、猫カフェね。

「マリー可愛いよ。猫耳最高。尻尾も最高だよ。」
「アーサーも猫族って感じね。尻尾も耳も本物みたい、ちゃんと自分の意思で動くのね。」
「本当だね。耳は直接頭から出ているし尻尾もお尻にくっついてるね。上半身裸だし、短いズボンだから、マリー僕寒いよ、温めて。」
たしかにアーサーは露出が多すぎるわね。私の方は可愛らしいもふもふの長めのセーターだし、下も分厚いタイツでこちらも、もふもふだから温かいけど、アーサーは寒そうね。でも筋肉質の肌がカッコ良くて緊張しちゃうわ。
「アーサー温めてあげるから目をつぶっていて。」
「嫌だよ。可愛いマリーが見られないじゃないか。」
「アーサー泣かないの。もう、本当に早く泣き止んでちょうだい。」
私は恥ずかしいのも忘れてアーサーを抱きしめて、背中を撫でてあげた。アーサーも段々落ち着いてきたのか、私の猫耳を触り出して、
「くすぐったいわ、アーサー。」
「僕の耳も触ってみて。」
「ほら、くすぐったいでしょ?」

「本当だね。本当に耳を触られているみたいだ。この感度はすごいね。」
「でしょ。分かったら触らないでね。きゃっ!どうして舐めるのよ。」
「だって美味しそうだったから。」
「お馬鹿、耳が美味しいわけないでしょ。きゃっ。どうして噛むのよ。」
「美味しかったから…。」
「美味しくてもだめ!可愛い顔してもだめなものはだめ。」
「分かったよ。耳には触れないから温めて。」
「もう、アーサーのせいでドキドキが止まらないから無理。」
「そんなこと言わないで。じゃあ、僕がむぎゅってしてあげる。」
「えっ?待って…。」
アーサーに後ろから抱きしめられて、尻尾をアーサーの顔ですりすりされたら、体の力が抜けてしまったわ。猫ちゃんの尻尾恐るべし…。力が抜けて動けなくなった私を見てアーサーがプチパニックになってしまって号泣し出したわ。

「マリー大丈夫?まさか、お人形さんになるとかじゃないよね。僕が無理させ過ぎたから…。どうしよう、マリーごめんね。」
アーサーをなんとか冷静にさせなきゃ。ただ単にこれは腰が抜けたようなものだと思うから、
「アーサーの尻尾貸して。」
「えっ?尻尾?はいどうぞ。」
私は体が動かないから、仕方なく、はしたないけど尻尾にカプリと噛みついたわ。
「ひゃっ。」
アーサーも脱力して私の横にぺたりと座り込んでしまったわ。
「分かった?」
「分かった…。」
「だから心配しないで…。ふ、ふふふ。私たち何しているのかしらね。」
「本当だね。猫の尻尾は恐ろしいね。ははは。力が抜けちゃったよ。」

それから、腰が抜けちゃった私たちは色々な話をしたの。例えば、アーサーは、卒業したら魔術師騎士団じゃなくて魔法省に入ろうと思っているんですって。魔の森に結界を張ることができたから、魔獣は出てこれないので魔術師騎士団はそんなに人数がいらなくなったんだよと教えてもらったわ。それに、マルクの手伝いをしようと思うと魔法省にいた方がいいからと言ってくれたわ。たぶんこちらが大きな理由ね。騎士団も魔獣がいなくなって、いまは、治安の悪いところに活躍の場を変えたり、森から出てくる凶暴なくまや、おおかみを捕まえに行ってもらっているらしいわ。いま迄は謎のヒーローこと、ネクスさんに任せっきりだったけど、これからはそうはいかないものね。ネクスさんは霧の谷とこちらで忙しいもの。凶暴な動物も結局魔力の核はあるから、捕獲方法は同じなんですって。森のそばの村人からはものすごく喜ばれているみたいだわ。私はその後のお肉の行方が気になっちゃったんだけど、流石アーサーすぐに教えてくれたわ。騎士団の皆さんと村人の皆さんでいただくんですって。なぜかその時は必ず、ネクスさんが調理をしに来てくれるらしいわ。なんて優しいのかしら。村人の栄養状態も段々良くなってきているようだし、ブロッサもルドと時々お手伝いに行っているんですって、やっぱりヒロインね。

私とアーサーはやっと体に力が入るようになってきて、花火を一緒に見る約束をしたところでちょうど時間になって元の廊下に戻て来たわ。花火の時間が待ち遠しいわ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます

葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。 しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。 お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。 二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。 「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」 アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。 「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」 「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」 「どんな約束でも守るわ」 「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」 これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。 ※タイトル通りのご都合主義なお話です。 ※他サイトにも投稿しています。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

私の恋が消えた春

豆狸
恋愛
「愛しているのは、今も昔も君だけだ……」 ──え? 風が運んできた夫の声が耳朶を打ち、私は凍りつきました。 彼の前にいるのは私ではありません。 なろう様でも公開中です。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

処理中です...