上 下
107 / 123

107.いよいよ、明日から学園です。その前に予行練習?だそうです?

しおりを挟む
ルーサ様のお父様とお母様に会ってから一週間後、私は明日から学園のはずなのに、すでにお兄様とアーサーと馬車に乗っている。それも制服を着て?
「お兄様この練習は必要なことでしょうか?」
「マリー、分からないの?」
「これは学園に行く練習だから必要だよ。」
「先程からそれは何度も聞きました。そうではなくて、どうしてそんな練習がいるのですか?」
「マリーの集中が途切れて人形のようになることがないかの試験みたいなものだよ。」
アーサーが代わりに答えてくれた。
「試験?」
「そう、試験だよ。今日は休みだから、学園生は本当は入っちゃいけないんだけど、お願いして許可も取ったよ。一人教師が付けばいいって言われたからリック兄上に頼んだんだ。」

「また勝手に、私に内緒でそんなことをして…。」
「だって、予想の斜め上を行くのがマリーだからね、これだけは譲れないよ。」
「分かったわ。じゃあ楽しみましょうね。」
「ほら、もう予想の斜め上を走ってる…。」
「アーサー、僕の天使が心配だよ。やっぱり学園には行かなくていいんじゃないかな?」
「お兄様は私の楽しみを取るおつもりですか?」
「ごめんなさい…。楽しもう…。」
「マルクはマリーに甘すぎるんだよ。」
「アーサーに言われたくないよ。」

「だって、僕の女神が可愛いから。」
「それを言うなら、僕の天使だって可愛いから仕方ないよ。」
「お兄様もアーサーも、もうやめて下さい。恥ずかしいでしょう。」
「「ごめんなさい。」」
私は天使でも女神でもないわ。正解は悪役令嬢よ。恥ずかしすぎてここでお人形になりそうよ。普通に生活していたら大丈夫なのよ。はっきり言ってこの二人が一番問題なのよ。どうしてそれが分からないのかしら?何回も言っているのに…。恥ずかしいことがあると、お人形のようになってしまうと、魔力が途切れてしまうって、こんなに分かりやすく言っているのに、なんでこの二人には分からないのかが分からないわ。お父様もお母様も呆れていたけど、最後には、マリー付き合ってあげなさい。心配事はそれぞれだからってお母様に言われて仕方なく来たけど納得いかないわ。ごちゃごちゃ言ってしまったけど、久しぶりの学園に着いたみたいね。こうなったら、誰が何と言おうと楽しむわよ。

アーサーのエスコートで馬車を降りると、リック様が待っていてくださった。
「リック様今日は私の為にありがとうございます。」
「マリーちゃんここではリック先生でよろしくね。」
「失礼しましたわ。リック先生。」
なんだか恥ずかしいわね。
「マリーちゃんとは母上の治療で一日おきに会っていたのに、制服を着たマリーちゃんと学園で会うのはなんだか新鮮だね。」
「はい、私も不思議な感覚がしておりました。改めてリック先生よろしくお願いします。」
「ああ、こちらこそよろしくね。それでは、教室に行こうか。」

リック先生の案内で私たちは三階の三年生の部屋に行ったのだけど、そこにはすでに明日からのクラス分けの用紙が張り出されていて、私とアーサーは同じでBクラスであとのメンバーは一年生の時と一緒だったわ。お兄様はAクラスでルドたちと一緒でブロッサもAクラスだったの。
「酷いよ。どうして僕だけマリーと一緒じゃないのですか?」
「兄弟は基本一緒になれないんだよ。」
「そんなー。」
「お兄様、アーサーもあげましょうか?」
「「えっ?」」
「マリーなんて酷いことを言うんだよ。」
「そうだよ、アーサーが可哀想じゃないか。」

「私だって離れたいわけではありません。しかし、残念ながら過度な緊張状態になると、その…お人形さんのようになってしまうので、それを回避するにはそれが一番良いかと…。」
「なるほどね、マリーちゃんはスキンシップが激しいとお人形さんになっちゃうわけね?」
「お恥ずかしいのですが、そういうことなんです。」
「じゃあ、アーサーも我慢してAクラスだよ。」
「そんな…。」
「ごめんねアーサー。僕は教師だから生徒の安全は守らないといけないんだよ。」
「分かりました…。」
良かったわ、これで問題はなくなったんじゃないかしら?今日来て良かったわ。クラスのことまでは考えていなかったものね。なんだか階段の方がうるさいわね。今日は生徒はいないんじゃなかったの?

「ああ、見えたみたいだね。」
「誰ですか?」
「明日から隣国(ケブリック王国)の双子のマキム王太子殿下と、ココ王妃殿下も同じ学年になるので見学に見えたんだよ。クラスはルドくんが国王陛下から託されていますので二人ともAクラスだよ。」
「そうなんですね。」
「それで今日はルドくんと、シルバーくんが案内役で来ているんだ。」
リック先生が話し終わると丁度四人が上がってきてシルバーが、
「マリーたちの方が早かったみたいだね。こちらが…」
「なんて綺麗なご令嬢なんだ!僕の名前はマキムと言います。明日からは同じ学年ですね。マリーさんですね、よろしくお願いします。」
と言ってしっかり手を握られて手の甲にキスをされてしまった。きゃー、こんなに積極的な方は無理です。異国の文化かもしれませんが、女性のように綺麗なお顔で近づきすぎです。やっぱり、無理でした…。お人形になってしましました。

「大変だ。マリーの魔力が…。マリー落ち着いて、大丈夫だよ。すみません、ちょっと離れていただけますか?」
「マキムだめでしょう。こちらの文化はすぐに触っちゃだめって教わったじゃない。あら、素敵、あなたのお名前はなんて言うのかしら?私の名前はココよ。ココって呼んでね。」
「僕の名前はアーサーです。でもココ様、僕に勝手に触らないでください。触っていいのはマリーだけです。マリーは僕の婚約者です。」
「婚約者?妻ではないのね?それなら解消すればいいだけじゃない。良かったわ。私にもチャンスはあるのね。」
「だめ、私のアーサーだから…。」
「まぁいいわ。明日から、マリーさんもよろしくね。」
私はもちろん絶対にアーサーは渡さないと誓ったわ。でも、全く体が動かなくなってしまったから仕方なく帰ったのだけれど…。なんだか逃げるみたいで悔しかったわ。それでもアーサーがBクラスに残ることになって、安心したわ。ココ様とアーサーが同じクラスなんてものすごく危なかったわ。だって、ココ様のはスタイル抜群なんですもの。可愛らしい顔に似合わず、胸は大きいし、腰は細いし,お尻もプリってしていて、これは絶対にモテモテね。髪はまさかのピンクで、瞳は赤色、これはマキム様も同じね。男性のピンクの髪も意外とありかも…。二人してモテそうだわ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜

naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。 しかし、誰も予想していなかった事があった。 「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」 すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。 「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」 ──と、思っていた時期がありましたわ。 orz これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。 おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!

【完結】悪役令嬢のトゥルーロマンスは断罪から☆

白雨 音
恋愛
『生まれ変る順番を待つか、断罪直前の悪役令嬢の人生を代わって生きるか』 女神に選択を迫られた時、迷わずに悪役令嬢の人生を選んだ。 それは、その世界が、前世のお気に入り乙女ゲームの世界観にあり、 愛すべき推し…ヒロインの義兄、イレールが居たからだ! 彼に会いたい一心で、途中転生させて貰った人生、あなたへの愛に生きます! 異世界に途中転生した悪役令嬢ヴィオレットがハッピーエンドを目指します☆  《完結しました》

虐げられた令嬢は、姉の代わりに王子へ嫁ぐ――たとえお飾りの妃だとしても

千堂みくま
恋愛
「この卑しい娘め、おまえはただの身代わりだろうが!」 ケルホーン伯爵家に生まれたシーナは、ある理由から義理の家族に虐げられていた。シーナは姉のルターナと瓜二つの顔を持ち、背格好もよく似ている。姉は病弱なため、義父はシーナに「ルターナの代わりに、婚約者のレクオン王子と面会しろ」と強要してきた。二人はなんとか支えあって生きてきたが、とうとうある冬の日にルターナは帰らぬ人となってしまう。「このお金を持って、逃げて――」ルターナは最後の力で屋敷から妹を逃がし、シーナは名前を捨てて別人として暮らしはじめたが、レクオン王子が迎えにやってきて……。○第15回恋愛小説大賞に参加しています。もしよろしければ応援お願いいたします。

悪役令嬢は婚約破棄したいのに王子から溺愛されています。

白雪みなと
恋愛
この世界は乙女ゲームであると気づいた悪役令嬢ポジションのクリスタル・フェアリィ。 筋書き通りにやらないとどうなるか分かったもんじゃない。それに、貴族社会で生きていける気もしない。 ということで、悪役令嬢として候補に嫌われ、国外追放されるよう頑張るのだったが……。 王子さま、なぜ私を溺愛してらっしゃるのですか?

闇黒の悪役令嬢は溺愛される

葵川真衣
恋愛
公爵令嬢リアは十歳のときに、転生していることを知る。 今は二度目の人生だ。 十六歳の舞踏会、皇太子ジークハルトから、婚約破棄を突き付けられる。 記憶を得たリアは前世同様、世界を旅する決意をする。 前世の仲間と、冒険の日々を送ろう! 婚約破棄された後、すぐ帝都を出られるように、リアは旅の支度をし、舞踏会に向かった。 だが、その夜、前世と異なる出来事が起きて──!? 悪役令嬢、溺愛物語。 ☆本編完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

悪役令嬢ってこれでよかったかしら?

砂山一座
恋愛
第二王子の婚約者、テレジアは、悪役令嬢役を任されたようだ。 場に合わせるのが得意な令嬢は、婚約者の王子に、場の流れに、ヒロインの要求に、流されまくっていく。 全11部 完結しました。 サクッと読める悪役令嬢(役)。

処理中です...