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82.本当の悪者が分かりました

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「私の邪魔をしたのは誰だい?おや、ルーサだったのかい。予言の女神のペットが余計なことをしてくれたね。」
相当怒っているみたいね。でも、私の方がめちゃくちゃ怒っていますからね。
「サーシャ千年見ないうちにかなり老けたね。私と同い年だと思っていたけどね。可愛らしかった面影が全くないじゃないか。かなり、瘴気を体にため込んでいるね。おばあさんは山でのんびり過ごしたらどうだい。」

「あんたは随分と生意気になったね。魔法で私に勝てるとでも思っているのかい。早くその娘をこっちに渡しな、その娘が器なんだろう?」
「誰が、誰に勝てないって、笑わせるんじゃないよ。今のサーシャになら、余裕で勝てると思うけどね。」
なんだって、調子に乗るんじゃないよ。面倒くさいこと言ってると力ずくでもらっていくよ。」

「魔女のおばあさん、取れるものなら取ってみたら?私は強いわよ。」
ブローサ様がサーシャを挑発してって、念話で言ってくるからさっきから頑張っているけどめちゃくちゃ怖いんですけど…だって、私、めちゃくちゃ弱いわよ。その調子その調子って、ブローサ様は言うけど、正直怒らせる必要あるのかしら?

「人間の分際でふざけるんじゃないよ。」
サーシャが私の方に近づいてきた。マリーちゃん、今よ、サーシャの手を掴んでちょうだい。念話でブローサ様に言われて、私は反射神経だけはものすごくいいからさっと掴んだわ。すると、サーシャが急に苦しみ始めた。
ブローサ様が言うには、サーシャの魔力をブローサ様とルーサ様ですべて吸収する作戦らしい。そうとは知らないサーシャは、

「魔女の魔力を吸収するなんて、人間の皮を被った化け物か…。」
「こんな可愛い化け物がいるわけないでしょ。」
私は思わず怖いのも忘れて怒ってしまったわ。だって、どこから、どう見ても可愛らしい女の子でしょうが、失礼しちゃうわ。でも、この魔女だけは絶対に許さないんだから、アーサーがどれだけ苦しんできたと思っているのよ。実際に魔力を吸収しているのはブローサ様とルーサ様だけど、この手だけは絶対に放さないわ。

サーシャの顔がしわしわになってきた…。ブローサ様が言うには魔女は魔力量が多いから長生きをするだけで、人間と同じ魔力量になれば、寿命も同じくらいになるらしい。ふと、ルーサ様の方を見ると、とても苦しそうに私の手を離して倒れていくのが見えた。私は思わずサーシャの手を離して、ルーサー様を支えてしまった。
「馬鹿!」

その瞬間サーシャに逃げられ、ルーサ様に叱られた。
「ごめんなさい。」
とんでもないことをしてしまった。どうしよう。涙がぽろぽろ止まらない。目隠しの魔法で隠れて見ていたアーサーたちが出てきた。

「マリーを責めないであげてください。マリーは優しい子だからルーサ様が倒れるのを無視なんてできないんです。」
アーサーが必死に庇ってくれている。ルーサ様も
「分かっているよ。ごめんね、マリー。たしかにマリーは悪くないよ。」

「でも、私、アーサーのお母様にやっつけるって約束したのに…。」
まだ、涙が止まらない。
「まぁ、なんて優しい子なのかしら。マリーちゃんというのね、あなたはやっつけてくれたわ。あんなにしわしわのおばあさんにしてくれて、心の底からスカッとしたもの。もう十分よ。それに、あの状態では、魔の森の中でしか生きていけないんじゃないかしら?」

「そうだよマリー、あと五百年は魔の森から出てこれないだろうからね、五百年は人も襲えないさ。それにラムルのついでにやっつければいいだけさ。」

「うーん、それはどうかしら?」
突然、ブレスレットの中から直接声が聞こえてきた。今回はみんなにも聞こえているようでびっくりしているわ。
「サーシャの魔力のおかげで実体化もできそうなので、ちょっと皆さん、とても眩しいと思うので目をつぶっていてくださいね。」
目をつぶっていても眩しいくらいの光り輝き、ブレスレットが消えて、そこにはピンク色でふわふわの髪に、金色の瞳のブローサ様が目の前に立っていた。やっぱり、
夢の中の女の人だわ。

「えーと、皆さんはじめましてね。初代予言の女神なんて言われているブローサと申します。早速だけど、アーサー君こちらに来てくれる。」
アーサーは頷いて、ブローサ様の前に立った。ブローサ様がアーサーの手を握った途端みんなが、
「おー!」
って、どうやらアーサーの魔力がもとに戻ったらしい。私にはやっぱり全く分からなかったわ。

「さてと、ちょっと急いでやらないといけないことができたから、ブルサンダー公爵家の皆様、ちょとアーサー君を借りるわね。あと、公爵様、夫人を大切にしてあげてくださいね。アーク君にリック君、今からでもうんと、甘えなさい。では、さようなら。」
一瞬で王宮のお父様とお兄様のいる先程の部屋に戻ってきた。流石ブローサ様だわ。

「えーと、何度も同じ説明をしている時間はないから、念話を使って一気に話すわよ。皆さん初めまして、突然ごめんなさいね。私は初代予言の女神ことブローサと申します。千年前にラムルが生まれる原因を作った魔女のサーシャがまた、魔の森に逃げたの。このことで、近々ラムルが生まれることがサーシャにばれてしまったわ。魔女のサーシャはね、ラムルの魔力を狙っているの。それを取られたら、神をも超える存在になってしまうわ。何としてでも止めないと。とにかく作戦を伝えたいし、念話では限界もあるから、陛下、お部屋を借りますね。いまから皆さんを転移させますからね。では、あとで会いましょう。」

「そんなこともできるんですか?」
「私は意外とすごいのよ。マリーちゃん。」
なんとなく、ブローサ様が寂しそうな表情をした気がした。あれ、ルーサ様も寂しそう?どうしたのかしら?そんなことを考えていたら、王の広間に転移していた。


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