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78.ブルサンダー公爵家次男リックside ~ブルサンダー公爵家の人たち~②
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【リックside】
兄上が魔法省で働くようになり、兄上が泊まり込みの日は、父上が帰って来て母上も一緒に食事をした。たぶん、父上なりの母上への優しさだったのだと思う。そこで僕は教師になりたいと伝えた。母上は、あなたは優秀なのだから王宮で働きなさいと言ってきた。父上は夢に向かって頑張ればいいと言ってくれた。それから何年経っても僕の夢は変わらなかった。そして今年、やっと夢が叶って、教師として学園で仕事をする内定をもらえた。
すると母上はもういいわ。私にはもう一人息子がいるのだからと言い出した。アーサーのことなら、いまさら無理だと思うんだけど…。最近のアーサーの噂はすごくて、将来の魔法省のトップとか、騎士団長にもなれるとか、千年に一人の逸材とか言われているから、後悔しているのかな?なんて、のんきなことを思っていた。僕としてはアーサーが元気でいてくれさえすれば良かったから…。でもそれがいけなかった。
いよいよ教師として働く日の前日、母上に呼び出された。僕の仕事が始まるとなかなか会えなくなるから、お茶を一緒に飲んで欲しいと言われて少し嬉しかった。それで僕は母上とお茶を飲むことにした。そして小さい頃、熱が出た時に看病してもらって嬉しかったと伝えた。すると母上は、
「本当に、あなたが生まれてくれて嬉しかったのよ。可愛くて可愛くて、仕方なかったのに、こんな風に裏切られるなんて、あなたもアーサーも生まなければ良かった。」
裏切る?なんのことかと思ったけど、体が痺れ出して、それどころではなくなった。そして右足の足首にアンクレットをつけられた。
「痺れは十分もすれば完全に取れるから心配しないで、本当はこんな事したくはなかったんだけど、最近のあなたは言うことを聞かない悪い子に育ってしまったからいけないのよ。別にあなたの体になにか起こるわけではないわ。あなたはアーサーに触れるだけでいいの。簡単でしょ。でもね、もしもあなたが私に逆らってアーサーに触れなかったら、あなたの体は黒魔法に蝕まれていくわ。そのうち周りの者にも影響を与えてしまうでしょうね。あなたが受け持った生徒たちにもね。猶予は一週間よ。いい?ちゃんとアーサーに会ってね。軽く触れるだけでいいから。あなたの足からアンクレットが外れて、アーサーが私の所へペットとして戻ってきたらその時はまた会いましょうね。」
なんて、恐ろしい人だ。この人が僕の母親だなんて。父上に相談したくても父上は兄上と仕事で隣国に行っている。母上はこの時を狙っていたに違いない。でも母上は知らない。父上が母上のいるところでは本当のことを言わないことを。今回の仕事も、十日の日程と母上の前では言っていたが、本当は七日だ。そのくらい、父上は母上を危険人物だと考えている。それでも、いままで、母上が公爵家にいることができたのはたぶん僕のためだ。僕だけは母上に優しくしてもらっていたから。
「僕は馬鹿だな。一瞬でも喜んだりして…。僕だけ特別なわけがないのに。」
僕は情けなくて涙が出てきた。母上は知らないようだけど、アーサーは学園にいまはいない。だから会わなくてすむ。学園の生徒のみんなには申し訳ないけど、なるべく近づかないようにして、明日から寮生活だから部屋に閉じこもっていればきっとなんとかなる。とにかく父上が戻ってきたら相談しよう。
そう考えて、耐えて耐えて耐えてきたけど、今日でやっと六日経った。つらすぎる。生徒にも影響が出始めてしまった。明日は学園は休み。あと少しの我慢だ。そう思っていたら王宮から手紙が届いた。教師の資格証を渡すから明日の午後一時に来るようにと書いてある。僕が教師になってもいいのかな…。とりあえず、父上たちは朝一番で王宮の転移陣で帰って来るから、すべて相談しよう。僕はそんなことを考えながら苦しくて眠れない長い夜を過ごした。朝早く馬車で王宮に着いた僕は転移陣の隣の部屋で父上と兄上の帰りを待つことにした。
「もう、一歩も歩けないや。息をするのもつらくなってきちゃったな。」
部屋に足音が近づいてきた。
「リックいるのか?」
父上の声だ。僕は安心して涙を流してしまった。
「はい、父上。」
「どうした、リック、何があった!」
「父上、母上が…。」
「またあの女か。」
僕は、右の足首に付いているアンクレットを見せた。
「一週間以内にアーサーに触れるように言われました。もちろん、アーサーの幸せを奪う気はありませんから、触れる気はありません。でも、僕の体は黒魔法に蝕まれ、生徒にまで影響を与えてしまいました。丁度今日で一週間です。母上はアーサーをペットにすると言っていました。お願いです、父上。母上の暴走を止めて下さい。アーサーを守ってください。」
安心したのか、僕はここで気を失ってしまった。ここまで耐えてきたのに。結局僕は肝心なところで役に立たない兄上だった。
兄上が魔法省で働くようになり、兄上が泊まり込みの日は、父上が帰って来て母上も一緒に食事をした。たぶん、父上なりの母上への優しさだったのだと思う。そこで僕は教師になりたいと伝えた。母上は、あなたは優秀なのだから王宮で働きなさいと言ってきた。父上は夢に向かって頑張ればいいと言ってくれた。それから何年経っても僕の夢は変わらなかった。そして今年、やっと夢が叶って、教師として学園で仕事をする内定をもらえた。
すると母上はもういいわ。私にはもう一人息子がいるのだからと言い出した。アーサーのことなら、いまさら無理だと思うんだけど…。最近のアーサーの噂はすごくて、将来の魔法省のトップとか、騎士団長にもなれるとか、千年に一人の逸材とか言われているから、後悔しているのかな?なんて、のんきなことを思っていた。僕としてはアーサーが元気でいてくれさえすれば良かったから…。でもそれがいけなかった。
いよいよ教師として働く日の前日、母上に呼び出された。僕の仕事が始まるとなかなか会えなくなるから、お茶を一緒に飲んで欲しいと言われて少し嬉しかった。それで僕は母上とお茶を飲むことにした。そして小さい頃、熱が出た時に看病してもらって嬉しかったと伝えた。すると母上は、
「本当に、あなたが生まれてくれて嬉しかったのよ。可愛くて可愛くて、仕方なかったのに、こんな風に裏切られるなんて、あなたもアーサーも生まなければ良かった。」
裏切る?なんのことかと思ったけど、体が痺れ出して、それどころではなくなった。そして右足の足首にアンクレットをつけられた。
「痺れは十分もすれば完全に取れるから心配しないで、本当はこんな事したくはなかったんだけど、最近のあなたは言うことを聞かない悪い子に育ってしまったからいけないのよ。別にあなたの体になにか起こるわけではないわ。あなたはアーサーに触れるだけでいいの。簡単でしょ。でもね、もしもあなたが私に逆らってアーサーに触れなかったら、あなたの体は黒魔法に蝕まれていくわ。そのうち周りの者にも影響を与えてしまうでしょうね。あなたが受け持った生徒たちにもね。猶予は一週間よ。いい?ちゃんとアーサーに会ってね。軽く触れるだけでいいから。あなたの足からアンクレットが外れて、アーサーが私の所へペットとして戻ってきたらその時はまた会いましょうね。」
なんて、恐ろしい人だ。この人が僕の母親だなんて。父上に相談したくても父上は兄上と仕事で隣国に行っている。母上はこの時を狙っていたに違いない。でも母上は知らない。父上が母上のいるところでは本当のことを言わないことを。今回の仕事も、十日の日程と母上の前では言っていたが、本当は七日だ。そのくらい、父上は母上を危険人物だと考えている。それでも、いままで、母上が公爵家にいることができたのはたぶん僕のためだ。僕だけは母上に優しくしてもらっていたから。
「僕は馬鹿だな。一瞬でも喜んだりして…。僕だけ特別なわけがないのに。」
僕は情けなくて涙が出てきた。母上は知らないようだけど、アーサーは学園にいまはいない。だから会わなくてすむ。学園の生徒のみんなには申し訳ないけど、なるべく近づかないようにして、明日から寮生活だから部屋に閉じこもっていればきっとなんとかなる。とにかく父上が戻ってきたら相談しよう。
そう考えて、耐えて耐えて耐えてきたけど、今日でやっと六日経った。つらすぎる。生徒にも影響が出始めてしまった。明日は学園は休み。あと少しの我慢だ。そう思っていたら王宮から手紙が届いた。教師の資格証を渡すから明日の午後一時に来るようにと書いてある。僕が教師になってもいいのかな…。とりあえず、父上たちは朝一番で王宮の転移陣で帰って来るから、すべて相談しよう。僕はそんなことを考えながら苦しくて眠れない長い夜を過ごした。朝早く馬車で王宮に着いた僕は転移陣の隣の部屋で父上と兄上の帰りを待つことにした。
「もう、一歩も歩けないや。息をするのもつらくなってきちゃったな。」
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「はい、父上。」
「どうした、リック、何があった!」
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「またあの女か。」
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安心したのか、僕はここで気を失ってしまった。ここまで耐えてきたのに。結局僕は肝心なところで役に立たない兄上だった。
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