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69.三日間も眠っていたようです①

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「マリー、マリー分かるかい?お父様だよ。」
「あら、お父様、私どうしたんでしょうか?」
「マリーは疲れて、少し王宮で眠っていただけだよ。」
「サリーも来たし、魔女のルーサ殿もみえたからそろそろ起きて挨拶しなさい。」
「えっ、このような格好で申し訳ありません。ブラックリリー公爵家のマリーと申します。」

「ああ、いいよ。こちらこそ、眠っている令嬢の部屋に入って来てすまなかったね。私は魔女のルーサだよ。ルーサと呼んでおくれ。」
「ありがとうごさいます。ルーサ様。サリーも来てくれてありがとう。私の瞳、金色になったのよ。素敵でしょ。」
「ええ、お嬢様とても心配しましたよ。でも瞳が金色とは何のことですか?」
「あれ?もう治ちゃったのかしら?」

「マリーは金色が良かったのかい?今は私の魔法で元の色に変えているだけで、まだ金色だよ。」
「そうだったんですね…。」
「見たいのかい?」
「はい、サリーにも見せてあげたいです。」
「侍女さん腰を抜かさないでおくれよ。」

「え?」
「ほれ。」
「え?お嬢様の瞳が金色、金色は…王家の色…。」
「ね、カッコいいでしょ。」
「カッコいいでしょ、ではありません。」

「まぁまぁ、そんなに怒らないで、すぐに、戻すからね。」
それからルーサ様は、私の瞳が本当の色に戻るのはブレスレットが外れる時だと教えてくれた。ブレスレットはラムルが小さくなったタイミングで外れるらしい。そしてブレスレットの中にはなんと、初代予言の女神様が眠っているんだとか。私が眠っている間に、ルーサ様は千年ぶりに初代予言の女神様と少しだけお話したらしい。初代予言の女神様のお名前はブローサ様。いまは魔力が少ないから実体化は無理だったようだけど、少しでもお話できてよかったわね。ルーサ様もずっと寂しかったでしょうね。千年とか想像できないもの。

ブローサ様は当時、この国の国王陛下のことが好きで、国王陛下と結婚して赤ちゃんまでいたのに、国民を守る為に、自分の生命力でラムルを封印して、ご自分も千年の眠りについてしまわれたのだとか。その時に瞳がピンクから金色に変わったとルーサ様は教えてくれたわ。ということは…夢の中のふわふわピンクの髪に、金色の瞳の女の人はゲームの中のブロッサ嬢じゃなくて、ブローサ様だったのね。あれ?ブローサ様なんてゲームに出てこないわよね?いまはゲームのことを考えるのはやめましょう。それにしても、好きな人と離れ離れになるなんてどんだけ辛かっただろう。私だったら絶対に耐えられない。その国王陛下はルドに瓜二つらしいけど、口は悪くなかったらしい。

それから信じられないけど、ブロッサ嬢もかなり口が悪いらしい。それはかなりショックだわ。他にも沢山教えてもらった。私が寝ている間に色んな事があったのね。知らないうちに色々なことが終わっているって淋しいものね。例えば、ラムルを小さくする練習は上手くいっていて、ブロッサ嬢とルドが力を合わせて頑張っているとか、すごく見たかったわ。絶対にブロッサ嬢はカッコいいんだろうな。ピゴくんが黄金の蛇様に戻るところもちょっとだけ見てみたかったわ。

そう言えば、ピゴくんについても、ルーサ様から色々教えてもらえたわ。救護院の方が話していた内容と同じこともあったけど、ピゴくんはやっぱり、元々は小りすの姿で、ブローサ様がラムルと一緒に眠りについてから、千年後の予言の女神に会うために、予言の女神は光魔法を使えるので、病人が来る救護院のそばの礼拝堂に千年もいたのだとか。始めは小りすの姿だったけど、威厳がないとかで、救護院の目印である蛇の形になったんですって。たしかに蛇の方が近寄りがたいものね。

でも、予言の女神のことは秘密だから表向きは魅了の術者が現れた時に対処するためとしたんですって。ちなみに魅了も予言の女神にしか本当は使えないんだけど、隣国で魅了を使える振りをする者が現れて丁度良かったからピゴくんが魅了に反応できるように魔法をかけたんですって…。だからあの時、急に動かなくなったり、ブロッサ嬢の所に行ったりしたのね。そもそも魅了という魔法は、アーサーが言っていたような魔法だったわ。要は惚れ薬ね。だけど、ピゴくんの場合は、なんと魅了の魔力の味が好きで、ブローサ様が味付けに使っていたとか。魅了の味ってどんな味なのかしら?この辺のことは国王陛下でもはっきりしたことは知らないかもしれないんですって!

だけどブロッサ嬢は、アーサーが言っていた通り、無意識に魅了の魔法を使ってしまっていたらしいの。でもピゴくんが魅了は全部食べてくれるから心配ないんですって。ルーサ様ってすごいわ。知らないことなんてないんじゃないかしら?

それから、隣国の王からの贈り物というのは真っ赤な嘘で、ルーサ様がピゴくんを丁重に扱ってもらう為についた嘘でした。だけど、あとから、両国の500年前くらいの国王?に了承は得たって言っていたからいいのよね?流石ルーサ様だわ。色々聞いておいて、今更だけど、この話聞いても良かったのかしら?

でもルーサ様との後半の話はほとんどがお肉の話だったわ。以前私が屋台で食べたお肉の話。ルーサ様もお肉が大好物なんだとか、でも、ダリの肉はまだ食べたことがないそうで、明日、私とルーサ様となぜかシルバーで前に屋台のおじさんに聞いた、橋の横の小さな赤い屋根の店に行くことになったの。うふふ、とても楽しみだわ。私が嬉しくてにやにやしていると、

「マリーお父様のことを忘れていないかい?」
と、お父様に言われてしまったわ。まずいわ、完全に忘れていたわ。でもこの状態は何?いつの間にお父様の膝の上に乗せられたのかしら?
「お父様、私はいつから、お父様のお膝の上にいるのでしょうか?」
「肉の話の辺りからだよ。あまりにもベッドから身を乗り出すものだから危なくてね、ベッドから私の膝にそのままスライドさせたんだよ。」


「そうでしたか、それは失礼しました。ところでお父様、ルーサ様のお話からすると、私はまた何日か寝てしまったのでしょうか?」
「ああ、三日だけだよ。」
「三日も!」
あまりにもショックで、もう一度布団に潜り込みたくなったわ。


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