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38.王太子殿下side&ブロッサの作ったまぼろしの薬

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【王太子殿下side】~ブロッサという女の子~

ブロッサは治療中だったが、俺たちに気付くとすぐに治療を辞めて患者の方を見もせずに俺たちの方にやってきた。なんだか俺たちに呼ばれるのを待っていたみたいだな。シルバーもそう思ったのか、
「誰かに言われてやらされてるのかね。」
そんなことをつぶやいていた。

ブロッサの容姿は、マリーが可愛いと言っていたように庇護欲を誘うような可愛らしさがあるとは思う。ふわふわのピンクの髪もたしかに可愛らしいな。神に選ばれし者ならば当たり前のことなのかもしれないができすぎているな。
俺たちがまぼろしの薬を見せてこれと同じものを作って欲しいと説明した時も、ふわっと微笑んで頷いていた。物分かりが良すぎないか?まるで、薬のことを知っていたみたいだ。この少女もマリーと同じで夢で見たのか?

シルバーが事前に準備しておいた隣の部屋でカサブランカの花びらの入った瓶を渡し、まぼろしの薬の入った瓶も渡して好きに調べて良いと伝えた。
すると、ブロッサは迷うことなくまぼろしの薬を一滴左の手のひらに垂らし、右の手をカサブランカの花びらの入った瓶にかざした。本当に一瞬だった。瓶自体が光ったのかと思うくらい眩しく光り、見た目はまぼろしの薬その物の液体が出来上がっていた。

たしかに、能力はずば抜けているな。これは、救世主と言われても、予言の女神と言われてもほとんどの者が納得するのも頷ける。ただし、マリーを知らなければだが…。
なぜだろう。マリーと比べてブロッサには何かが欠けているような気がする。いや、マリーの方が明らかに色々と残念なのだが。まずはこの液体をクライム殿に調べてもらおう。ブロッサに礼を言い、俺たちはクライム殿のもとへ急いだ。




【ブロッサの作ったまぼろしの薬】

再び実験室でお父様がヒロインの作った薬の成分を調べている間、私はルドとシルバーにヒロインが一瞬でまぼろしの薬を作った話を聞いて大興奮していた。
「ルド、左手に一滴垂らしただけで、舐めてもいないの?涙って成分も伝えなかったの?すごすぎない。私も見たかった。ずるい!やっぱり、憧れちゃうな。」
やっぱり、ヒロインは最高ね。そんなことを考えながら、ふとお父様の方を見ると、お父様が首を傾げていた。珍しいわね。

「お父様どうかされましたか?」
「ああ、成分は全く同じなのだが、何か薬の周りにプラスアルファーの気配を感じるのだが全く分からないんだ。」
「「「えっ?!」」」
「私にもまだ分からないことがあったようだ。ふふふ」
お父様喜んでいる場合ですか。

「お父様が分からないってことは新魔法ですか?」
「いやそうとも限らないよ。王族のみ知るものか、古代魔法か、あるいは隣国で危険と判断され抹消された魔法か。さて、どうしたものか。その子は無意識に使っている可能性が高いからな。この気配から察するに…。」
お父様には何となく察しはついているのね。あら何だか廊下が騒がしくなってきたわ。

「お父様、廊下の方で何かあったようです。ちょっと様子を見て来てもいいですか?」
「私も一緒に行こう。マリーは相変わらず耳がいいね。」
「シルバー何か聞こえたか?」
「いや、全く。」
「二人はちょっと待っていてくださいね。」

廊下に出ると、少し離れたところで、なんと金ぴかの蛇がぐったりしていた。体長一メートルくらいかしら……。
「どうされました?」
「薬師様助けてください。黄金の蛇様が元気がないのです。こんなことは私が三十年お世話させていただいている間で初めてでございます。隣国の国王陛下から下賜された大切な蛇様なんです。何かあれば、国の一大事になってしまいます。」

「それは大変ですね。」
助けてあげたいけど、うーん、大体どこが悪いのよ。金ぴかすぎて、何がなんだか。
「分かりました。一度お預かりして診てみましょう。」
お父様ったら引き受けて大丈夫なんですか。あら?!お父様が一瞬だけすごく悪いお顔をしたわよ。誰か、ここに犯罪者がいます…。何度も言いますけど、私は目と耳はものすごーくいいんですからね。嫌な予感しかしませんね。

私たちは蛇様を連れてもう一度実験室に戻ってきた。それを見たシルバーとルドの目は点になっている。そうなるわよね。金ぴかの蛇様だもの。
「クライム殿、首にかけていらっしゃるのは蛇で間違いないでしょうか?」
シルバーその通りよ。良い子は絶対にマネしちゃいけないことよ。普通の蛇でもだめだけど、こちらは黄金の蛇様ですからね。私がシルバーに説明している間に、なにやら向こうでお父様とルドがこそこそと話しているけど、全く聞こえないから結界を張っているのね。

あの二人のタッグは悪い予感しかしないわ。やっぱり。ルドの顔が一瞬すごく悪い顔になって、にやってしたのを見てしまった。ここにも犯罪者がたぶんいます。結界をどちらかが外したようで、突然、
「では、やってみましょう。」
と、ルドの声がして、シルバーが、
「何を?」

って聞いていた。シルバー、あなたがここに居てくれて本当に私は嬉しいわ。私と同じ感覚の人がいるってだけで少しは安心できるもの。でもね、たぶんだけど、答えはとんでもないものよ。シルバー覚悟した方がいいわよ。だって二人とも、ものすごーく悪い顔してたもの。


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