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1.前世を思い出したら崖っぷちでした①
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「何これ…。ちょ、ちょっと待って…。」
さっきから頭の中に次から次へと、遠慮なく色々な記憶が流れ込んでくる。
その圧がものすごくて、誰かに早く思い出しなさいって、言われているみたい。
「これ、前世の私の記憶なんだわ。」
私の名前は長谷川真理。ばりばりの日本人。
と言っても、今さっき思い出した前世の名前だけど。
――――自分の意思とは無関係に今も流れ込んでくる。
「もう疲れて寝たかったのに…。」
「寝てる場合じゃないわよ。なにをのんきなことを言ってるの!」
とうとう誰かの声まで聞こえてきたわ。若干怒ってるのが気になるわね。
「さっちゃん、しゃべったらだめだよ。神様にばれたらどうするの。」
あら今度はイケボさんね。なんだか懐かしい感じ。小声で話したつもりでしょうけど、私は目と耳がとてもいいから、バッチリ聞こえていますけどね。でも、神様とか言っていたわね。神様絡みとか怖いんですけど。
ああ、もう限界。怖いし、情報多すぎてキャパオーバーで気絶しそうだわ。あれ?気絶してもいいのかも?ここ、ベッドの上だし。結局私は、キャパオーバーで意識を手放したの。
これは夢なのかしら?ふわふわと浮いて、前世の色々な場面を見ている感じ。無理やり入ってくる情報より見ている方が楽ね。今もおじいちゃんが私の頭に氷枕を敷いてくれている。前世の私は膝から下がない状態で生まれてきて、それだけでも家族にとっては大変なのに、とにかく体が弱くて、すぐに風邪を引いて高熱を出していたの。おじいちゃん、すごく優しかったな。
おじいちゃんは私のパパを一人で育てあげたから、料理も洗濯もすべて完璧。空いた時間で沢山遊んでくれたわ。だから学校にはほとんど行けなかったけど、ちっとも淋しくなかったの。縁側で一緒に本を読むのも好きだったわ。おじいちゃんの部屋に飾ってあった若い頃のおばあちゃんの写真、すごく綺麗だったな。パパの顔はおばあちゃん似な気がする。パパの行動はちょっと乙女だったけど、見た目はパパもおじいちゃんもカッコいいのよね。パパとママが楽しそうに話をしているわ。きっと乙女ゲームの話ね。
私の両親はすごく頭のいい大学で知り合って、乙女ゲームの話で意気投合したらしいの…。どうしたら意気投合できるのかと思うけど、攻略対象者みたいにカッコよくなりたかったパパと、宝塚の男役に憧れるも現実は厳しくて、(背が150㎝ない。私なんて膝から下がないんだから贅沢よね。)夢を断念した母には、乙女ゲームの攻略対象者が、違う意味でキラキラと輝いて見えたとか。
そこで終わらないのが私のパパとママ。すごく頭がいいから大学生の時に初代乙女ゲームを作ちゃったの。私は義足を着ければ外で歩くこともできたけど、とにかく体が弱くて熱ばかり出していたから、学校にもあまり行けず、家の中でほとんど過ごしていたわね。そんなわけで、初代乙女ゲームはよくプレイしたの。私の大好きなキャラは、実はおじいちゃんに見た目が似ている人で、残念ながら攻略対象者ではなかったけど、アーサー様っていう男の人。いつも少し寂しそうなんだけど、なぜか悪役令嬢のマリーにだけは微笑むの。その顔が、せつないくらい優しくて…、目が離せなくなるの。でも恥ずかしいからこれは内緒。
また場面が変わって…いまの今まで忘れていたわ。
「絶対忘れちゃいけなかったのに。」
おじいちゃんが私に覆いかぶさるように倒れている。大きな大きな地震がきて、家の下敷きになって、最後まで私を守ろうとしてくれたんだわ。
「ありがとう…。おじいちゃん。」
私もこの時死んじゃったのかな?
この後、女神のように美しいおばあちゃんに初めて会ったから。あの時は、おばあちゃんが若すぎておばあちゃんって呼べなかったけど、おじいちゃんは涙をためながらも、胸が苦しくなるような笑顔でおばあちゃんを見つめていたっけ。本当に好きだったのね。
でも感動はその一瞬で、あとはもうおばあちゃんの規格外の話にびっくりするばかりで。とにかく圧倒させられたわね。
ーーーーおばあちゃんだわ…やっぱり綺麗、二十代かな?しっかり見て色々と思い出さなきゃ。大事な事がまだまだ思い出せないもの…。
なんだかあの時に戻った感じ…真理に戻った見たいね。
「真理ちゃん、初めましてね。私はあなたのおばあちゃんなんだけど、写真で見たことあるかしら?私ね、どうしても真理ちゃんに、私やあなたのお父さん、お母さんのように、素敵な恋をして欲しくって、いつも神様のお仕事を、手伝ってあげているから、神様にお願いしてみたの。真理ちゃんに、素敵な恋をするチャンスをあげってって。」
・・・私の聞き間違いじゃなきゃ、いま、仕事を『手伝ってあげてるって』言ったわよね。神様に対して上から目線なんて、不敬よね?ばちとか当たらないのかしら?ちょっと心配ね…。
「それでね、他の世界でいいなら素敵な恋をするチャンスをあげられるって言うから、あなたもよく知っている、初代乙女ゲームにさせてもらったわ。ほら、神様って忙しいでしょ。すぐに決めないと、契約不成立になっちゃうから、今までの真理ちゃんを見ていて、勝手に決めさせてもらちゃったけど、ごめんなさいね。ここまでは決定事項だから変えられないけど、パパとママには夢の中で伝えておいたわ。二人とも会えなくなるのは淋しいけど、乙女ゲームに転生したら思いっきり走りなさいって。すごく羨ましいとも言ってたわ。」
思いっきり、走りなさいって聞いて一瞬涙が出そうになったけど、すごく羨ましいって聞いたら涙が引っ込んじゃったわね。流石私のパパとママ。でもあの地震の中、生きていてくれたんだ。十八歳で死んじゃう親不孝を許してね。一人で転生とか、すごく不安だけど…もう決定しちゃってるのよね。
よ~し!おばあちゃんがくれた折角のチャンスだもの、大事にしなきゃね。とりあえず、一番大事なことを聞こうかな。
さっきから頭の中に次から次へと、遠慮なく色々な記憶が流れ込んでくる。
その圧がものすごくて、誰かに早く思い出しなさいって、言われているみたい。
「これ、前世の私の記憶なんだわ。」
私の名前は長谷川真理。ばりばりの日本人。
と言っても、今さっき思い出した前世の名前だけど。
――――自分の意思とは無関係に今も流れ込んでくる。
「もう疲れて寝たかったのに…。」
「寝てる場合じゃないわよ。なにをのんきなことを言ってるの!」
とうとう誰かの声まで聞こえてきたわ。若干怒ってるのが気になるわね。
「さっちゃん、しゃべったらだめだよ。神様にばれたらどうするの。」
あら今度はイケボさんね。なんだか懐かしい感じ。小声で話したつもりでしょうけど、私は目と耳がとてもいいから、バッチリ聞こえていますけどね。でも、神様とか言っていたわね。神様絡みとか怖いんですけど。
ああ、もう限界。怖いし、情報多すぎてキャパオーバーで気絶しそうだわ。あれ?気絶してもいいのかも?ここ、ベッドの上だし。結局私は、キャパオーバーで意識を手放したの。
これは夢なのかしら?ふわふわと浮いて、前世の色々な場面を見ている感じ。無理やり入ってくる情報より見ている方が楽ね。今もおじいちゃんが私の頭に氷枕を敷いてくれている。前世の私は膝から下がない状態で生まれてきて、それだけでも家族にとっては大変なのに、とにかく体が弱くて、すぐに風邪を引いて高熱を出していたの。おじいちゃん、すごく優しかったな。
おじいちゃんは私のパパを一人で育てあげたから、料理も洗濯もすべて完璧。空いた時間で沢山遊んでくれたわ。だから学校にはほとんど行けなかったけど、ちっとも淋しくなかったの。縁側で一緒に本を読むのも好きだったわ。おじいちゃんの部屋に飾ってあった若い頃のおばあちゃんの写真、すごく綺麗だったな。パパの顔はおばあちゃん似な気がする。パパの行動はちょっと乙女だったけど、見た目はパパもおじいちゃんもカッコいいのよね。パパとママが楽しそうに話をしているわ。きっと乙女ゲームの話ね。
私の両親はすごく頭のいい大学で知り合って、乙女ゲームの話で意気投合したらしいの…。どうしたら意気投合できるのかと思うけど、攻略対象者みたいにカッコよくなりたかったパパと、宝塚の男役に憧れるも現実は厳しくて、(背が150㎝ない。私なんて膝から下がないんだから贅沢よね。)夢を断念した母には、乙女ゲームの攻略対象者が、違う意味でキラキラと輝いて見えたとか。
そこで終わらないのが私のパパとママ。すごく頭がいいから大学生の時に初代乙女ゲームを作ちゃったの。私は義足を着ければ外で歩くこともできたけど、とにかく体が弱くて熱ばかり出していたから、学校にもあまり行けず、家の中でほとんど過ごしていたわね。そんなわけで、初代乙女ゲームはよくプレイしたの。私の大好きなキャラは、実はおじいちゃんに見た目が似ている人で、残念ながら攻略対象者ではなかったけど、アーサー様っていう男の人。いつも少し寂しそうなんだけど、なぜか悪役令嬢のマリーにだけは微笑むの。その顔が、せつないくらい優しくて…、目が離せなくなるの。でも恥ずかしいからこれは内緒。
また場面が変わって…いまの今まで忘れていたわ。
「絶対忘れちゃいけなかったのに。」
おじいちゃんが私に覆いかぶさるように倒れている。大きな大きな地震がきて、家の下敷きになって、最後まで私を守ろうとしてくれたんだわ。
「ありがとう…。おじいちゃん。」
私もこの時死んじゃったのかな?
この後、女神のように美しいおばあちゃんに初めて会ったから。あの時は、おばあちゃんが若すぎておばあちゃんって呼べなかったけど、おじいちゃんは涙をためながらも、胸が苦しくなるような笑顔でおばあちゃんを見つめていたっけ。本当に好きだったのね。
でも感動はその一瞬で、あとはもうおばあちゃんの規格外の話にびっくりするばかりで。とにかく圧倒させられたわね。
ーーーーおばあちゃんだわ…やっぱり綺麗、二十代かな?しっかり見て色々と思い出さなきゃ。大事な事がまだまだ思い出せないもの…。
なんだかあの時に戻った感じ…真理に戻った見たいね。
「真理ちゃん、初めましてね。私はあなたのおばあちゃんなんだけど、写真で見たことあるかしら?私ね、どうしても真理ちゃんに、私やあなたのお父さん、お母さんのように、素敵な恋をして欲しくって、いつも神様のお仕事を、手伝ってあげているから、神様にお願いしてみたの。真理ちゃんに、素敵な恋をするチャンスをあげってって。」
・・・私の聞き間違いじゃなきゃ、いま、仕事を『手伝ってあげてるって』言ったわよね。神様に対して上から目線なんて、不敬よね?ばちとか当たらないのかしら?ちょっと心配ね…。
「それでね、他の世界でいいなら素敵な恋をするチャンスをあげられるって言うから、あなたもよく知っている、初代乙女ゲームにさせてもらったわ。ほら、神様って忙しいでしょ。すぐに決めないと、契約不成立になっちゃうから、今までの真理ちゃんを見ていて、勝手に決めさせてもらちゃったけど、ごめんなさいね。ここまでは決定事項だから変えられないけど、パパとママには夢の中で伝えておいたわ。二人とも会えなくなるのは淋しいけど、乙女ゲームに転生したら思いっきり走りなさいって。すごく羨ましいとも言ってたわ。」
思いっきり、走りなさいって聞いて一瞬涙が出そうになったけど、すごく羨ましいって聞いたら涙が引っ込んじゃったわね。流石私のパパとママ。でもあの地震の中、生きていてくれたんだ。十八歳で死んじゃう親不孝を許してね。一人で転生とか、すごく不安だけど…もう決定しちゃってるのよね。
よ~し!おばあちゃんがくれた折角のチャンスだもの、大事にしなきゃね。とりあえず、一番大事なことを聞こうかな。
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