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癒し系幼馴染の二人は大晦日をのんびりイチャイチャと過ごして誕生日を共に祝う
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「もう年末とは早いもんだなあ。奏ちゃん」
「そうねえ。今年一年、楽しかった?除夜君」
急な坂の上に立つ二階建てで和風建築の一軒家の広間にて。
明日十七歳になる二人がこたつに入って仲良く談笑していた。
余人が見れば長く連れ添った夫婦ではないかと思う光景。
しかし、その実態は交際歴一年の出来立てほやほやカップルである。
坂上の一軒家に住む坂上除夜。
坂を下ったやはり一軒家に住む坂下奏。
二人の家は郊外にあるが、不幸か幸いか近所の同年代が他に居なかった。
そんなちょっと特殊な環境もあって二人仲良く姉弟あるいは兄妹のように育った。
思春期を過ぎても特に気にせず親密な関係が続くかと思われたのんびり屋二人。
ただ、昨年の大晦日に少しだけ二人の関係は変わった。
すなわち、仲の良い家族のような関係から、恋人としての関係を加えたものに――
■■■■一年前■■■■
「ふぅ。やっぱり大晦日の夜は寒いもんだなあ」
寂れた小さな小さな神社にて。
ネイビーブルーのコートを羽織った少年とベージュのコートを羽織った少女。
除夜と奏は二人だけの深夜の初詣をしていた。
いつからか儀式になった二人の恒例行事。
「そうねえ。でも、それも大晦日の夜の良さだよ」
活発な印象を与えるショートカットと正反対にのんびりとした口調で応じる奏。
この年頃の女子にしてはやや小柄な150cm未満の身長で可愛らしい容姿と、話に加わるや会話をスローペースにしてしまう事から学年随一の癒し系として可愛がられている少女でもある。
「この神社に二人で参拝するのも何回目だろう」
隣にいる少女をちらと見て、除夜は思う。
奏ちゃんはやはり癒されるなあと。
「そうねえ。たぶん8回目……かなあ?」
ぽわぽわとして応じる奏は隣の少年を見て思う。
除夜君と一緒にいると癒されるなあと。
二人は同クラで癒し系カップルとして有名なのだけどそれはさておいて。
とても相性が良い二人なのは間違いなかった。
「今年一年、ありがとう。奏ちゃん」
「こちらこそありがとう。除夜君」
傍から見ると「素直か!」と言ってしまいそうな光景。
しかし、この二人にとってはそれが日常だった。
「さて、そろそろお参りしようか」
除夜が手元の腕時計を見れば午後11時55分。
あと5分で年が変わる。
「除夜君は何をお願いする?」
さて、年齢に似合わずのんびりとした二人だけど。
しかしやっぱりそれは年頃の男女。
お互いに恋人になれたらと思っていたのだった。
だから、少し期待を込めての質問。
「奏ちゃんは何をお願いするんだい?」
それをわかってか質問を質問で返す除夜。
「いじわる」
少し頬を膨らませて、でも上機嫌そうに抗議の声をあげる奏。
「いやあ。純粋に何をお願いするのか聞いただけだよ」
傍からみれば何を言っているのだと思いそうな光景。
実のところ二人はこの神社に来るまで二人で手を繋いでいた。
これは習慣ではなくて今日初めてしたこと。
故にお互いがお互いを意識してることをなんとなく察していた。
「こういう時は男の子から気持ちを言ってくれるものだと思うの」
私の気持ちにはもう気づいているでしょう?とばかりの言葉。
「それは時代錯誤だよ。今は男女平等の時代」
さっさと告白しろと暗に言っている奏に、
ならそっちがさっさと告白して欲しいと躱す除夜。
似た者同士であった。
「ふぅ。除夜君はこういう時は頑固だね」
仕方ないんだからと溜息。
似た者同士の二人だけどここぞという時に頑固なのは除夜の方。
だから、と。
「除夜君の事、最近はよく気になるようになってた」
「うん。僕も」
「だから、これからは恋人としてもお付き合いして欲しい」
恋人として、ではなく、恋人としても。
その意味合いを少しばかり思案した除夜はといえば。
「親戚としても、恋人としても。そんな意味で良いのかな?」
実は二人は遠い親戚筋ではとこ同士にあたる。
付き合いの深さはそれによるところもあるのだった。
「親戚じゃなくて家族だと思ってるよ?」
そんな寂しいことを言わないで欲しいと少し咎めるような声色。
「ごめんな。そういうのは少し照れくさくて」
下手をしたら実の家族以上に家族として過ごして来た二人。
だからこそ、逆に口に出すのは少し照れくさかったのだ。
本人は気づいていないが少し頬が赤らんでいる。
「除夜君がときどき照れ屋さんなのはわかってるから」
除夜君は可愛いなあと、そう奏は思う。
つい口元が緩んでしまう。
「奏ちゃんも照れ屋さんだと思うけど?」
繋いだ手から伝わって来る汗を感じながら除夜は思う。
緊張しちゃって奏ちゃんは可愛いなあと。
「む……それじゃあ、お互い照れ屋ということにしない?」
いかにのんびり屋の二人といえども内心は結構緊張していたのだった。
さっさとこの恥ずかしいやりとりを終えて帰りたいのが本音。
「そうだなあ。じゃあ、そうしようか」
午前0時ちょうど。二人は神様の前で願ったのだった。
今年は恋人としても仲良くしていけますようにと。
「あ、そういえば。誕生日おめでとう。奏ちゃん」
「除夜君も誕生日おめでとう」
二人の誕生日は一月一日。
元旦に生まれた二人はこうして誕生日を祝うのも常だった。
□□□□現在□□□□
「それはやっぱり楽しかったよ。奏ちゃんが恋人になるとあんなになるなんて」
今年一年を振り返りながら彼は思わずにやけているのを自覚していた。
初めてのデートに初めてのキス。初めてのお泊り旅行に初体験。
彼女には意外に嫉妬深い一面があることや、恋に恋する純情な一面があること。
そんな色々を思い出していたのだった。
「除夜君はなーにを想像してるのかなあ?」
きっと不埒な想像をしていたに違いないと頬を引っ張る奏。
「いひゃい、いひゃいって。変な想像は何もしてないよ」
「……私の目を見て誓える?」
珍しく眼光鋭く見据える彼女。
「ごめん。嘘つきました」
あっさり認めるがそれもそのはず。
思い返していた中には思春期男子らしいあれこれもあったからだ。
「それならよろしい。ちなみに何を思い出してたの?」
そもそも追及する気もなかったのであっさり引っ込めるものの、何を考えていたのかは知っておきたかった。
「……初めてキスしたときのこととか。それと……初めてした時のこととか」
デリカシーがないと怒られても仕方ない告白である。
「……う。私も思い出してきちゃった」
しかし、奏も年頃の女の子で純情でもある。
思い出を振り返って恥ずかしくなってしまったのだった。
「ま、まあ。ところで、今年は初詣行かないでいいの?」
時刻はもう11時30分。いつもの神社に初詣に行くならそろそろ出発しないと。
そう思っての問いかけ。
「恋人としての初めての元旦だから。こたつでぬくぬく過ごしたい」
何がだからなのか不明だが。とにかく寒い外よりも暖かい家。
それが彼女の主張だった。
「二回目じゃないの?」
確か日が変わった前後に告白しあったはず。
なら二回目ではという疑問だったけど。
「だって。去年の元旦は色々どうしていいかわからなかったから」
恋人になったばかりの元旦。
嬉しいのと同時に恥ずかしい気持ちがあって、二人はあんまり恋人らしく過ごせていなかった。お互いにカチコチに緊張していたくらいだ。
「奏ちゃんもよくわからないところにこだわるよね」
彼もたいがいよくわからないところにこだわるのだけど。
自分のことを棚にあげてそう言ったのだった。
「ところで。おじさんたちも妙なところに気を利かせるんだから」
11時50分現在。坂上家にいるのは除夜と奏の二人だけ。
本来ならいるはずの両親や祖父母は不在。
「まあいいじゃないか。二人でのんびり年越し。僕たちらしいよ」
どこか世間のペースからずれている二人。
そんな二人を幼い頃から見ていた両家の両親は、
「今年は二人きりにしてやろう」
と妙な気を利かしたのだった。
「そうかもね。あ、蕎麦がもう茹で上がってる」
台所にパタパタと駆けて行く奏。
年越し蕎麦をこれから二人で食べるところなのだ。
「奏ちゃんと結婚したらこんな風に過ごしてるのかな」
最愛の恋人を眺めながら除夜はといえばそんな事を考えていた。
色々なところをすっ飛ばし過ぎである。
11時58分。
二人の手元には出来立てほやほやの掛け蕎麦。
余計な具がないシンプルなものを。
そんな事も二人の間のルールだった。
「よし、それじゃ食べようか」
橋を割っていただきますをしようとする除夜。
「その前に。恒例の挨拶がまだだよ?」
食いしん坊なんだからとばかりにいう奏。
「ああ、そうだったね。それじゃあ……」
二人で息を合わせて、
「「あけましておめでとう。それと、誕生日おめでとう」」
新年と誕生日の両方を祝う言葉を送りあったのだった。
こんなのんびりとした二人の関係はこれからもきっと続いていく。
誰かが見ればそう思うような光景だった。
「そうねえ。今年一年、楽しかった?除夜君」
急な坂の上に立つ二階建てで和風建築の一軒家の広間にて。
明日十七歳になる二人がこたつに入って仲良く談笑していた。
余人が見れば長く連れ添った夫婦ではないかと思う光景。
しかし、その実態は交際歴一年の出来立てほやほやカップルである。
坂上の一軒家に住む坂上除夜。
坂を下ったやはり一軒家に住む坂下奏。
二人の家は郊外にあるが、不幸か幸いか近所の同年代が他に居なかった。
そんなちょっと特殊な環境もあって二人仲良く姉弟あるいは兄妹のように育った。
思春期を過ぎても特に気にせず親密な関係が続くかと思われたのんびり屋二人。
ただ、昨年の大晦日に少しだけ二人の関係は変わった。
すなわち、仲の良い家族のような関係から、恋人としての関係を加えたものに――
■■■■一年前■■■■
「ふぅ。やっぱり大晦日の夜は寒いもんだなあ」
寂れた小さな小さな神社にて。
ネイビーブルーのコートを羽織った少年とベージュのコートを羽織った少女。
除夜と奏は二人だけの深夜の初詣をしていた。
いつからか儀式になった二人の恒例行事。
「そうねえ。でも、それも大晦日の夜の良さだよ」
活発な印象を与えるショートカットと正反対にのんびりとした口調で応じる奏。
この年頃の女子にしてはやや小柄な150cm未満の身長で可愛らしい容姿と、話に加わるや会話をスローペースにしてしまう事から学年随一の癒し系として可愛がられている少女でもある。
「この神社に二人で参拝するのも何回目だろう」
隣にいる少女をちらと見て、除夜は思う。
奏ちゃんはやはり癒されるなあと。
「そうねえ。たぶん8回目……かなあ?」
ぽわぽわとして応じる奏は隣の少年を見て思う。
除夜君と一緒にいると癒されるなあと。
二人は同クラで癒し系カップルとして有名なのだけどそれはさておいて。
とても相性が良い二人なのは間違いなかった。
「今年一年、ありがとう。奏ちゃん」
「こちらこそありがとう。除夜君」
傍から見ると「素直か!」と言ってしまいそうな光景。
しかし、この二人にとってはそれが日常だった。
「さて、そろそろお参りしようか」
除夜が手元の腕時計を見れば午後11時55分。
あと5分で年が変わる。
「除夜君は何をお願いする?」
さて、年齢に似合わずのんびりとした二人だけど。
しかしやっぱりそれは年頃の男女。
お互いに恋人になれたらと思っていたのだった。
だから、少し期待を込めての質問。
「奏ちゃんは何をお願いするんだい?」
それをわかってか質問を質問で返す除夜。
「いじわる」
少し頬を膨らませて、でも上機嫌そうに抗議の声をあげる奏。
「いやあ。純粋に何をお願いするのか聞いただけだよ」
傍からみれば何を言っているのだと思いそうな光景。
実のところ二人はこの神社に来るまで二人で手を繋いでいた。
これは習慣ではなくて今日初めてしたこと。
故にお互いがお互いを意識してることをなんとなく察していた。
「こういう時は男の子から気持ちを言ってくれるものだと思うの」
私の気持ちにはもう気づいているでしょう?とばかりの言葉。
「それは時代錯誤だよ。今は男女平等の時代」
さっさと告白しろと暗に言っている奏に、
ならそっちがさっさと告白して欲しいと躱す除夜。
似た者同士であった。
「ふぅ。除夜君はこういう時は頑固だね」
仕方ないんだからと溜息。
似た者同士の二人だけどここぞという時に頑固なのは除夜の方。
だから、と。
「除夜君の事、最近はよく気になるようになってた」
「うん。僕も」
「だから、これからは恋人としてもお付き合いして欲しい」
恋人として、ではなく、恋人としても。
その意味合いを少しばかり思案した除夜はといえば。
「親戚としても、恋人としても。そんな意味で良いのかな?」
実は二人は遠い親戚筋ではとこ同士にあたる。
付き合いの深さはそれによるところもあるのだった。
「親戚じゃなくて家族だと思ってるよ?」
そんな寂しいことを言わないで欲しいと少し咎めるような声色。
「ごめんな。そういうのは少し照れくさくて」
下手をしたら実の家族以上に家族として過ごして来た二人。
だからこそ、逆に口に出すのは少し照れくさかったのだ。
本人は気づいていないが少し頬が赤らんでいる。
「除夜君がときどき照れ屋さんなのはわかってるから」
除夜君は可愛いなあと、そう奏は思う。
つい口元が緩んでしまう。
「奏ちゃんも照れ屋さんだと思うけど?」
繋いだ手から伝わって来る汗を感じながら除夜は思う。
緊張しちゃって奏ちゃんは可愛いなあと。
「む……それじゃあ、お互い照れ屋ということにしない?」
いかにのんびり屋の二人といえども内心は結構緊張していたのだった。
さっさとこの恥ずかしいやりとりを終えて帰りたいのが本音。
「そうだなあ。じゃあ、そうしようか」
午前0時ちょうど。二人は神様の前で願ったのだった。
今年は恋人としても仲良くしていけますようにと。
「あ、そういえば。誕生日おめでとう。奏ちゃん」
「除夜君も誕生日おめでとう」
二人の誕生日は一月一日。
元旦に生まれた二人はこうして誕生日を祝うのも常だった。
□□□□現在□□□□
「それはやっぱり楽しかったよ。奏ちゃんが恋人になるとあんなになるなんて」
今年一年を振り返りながら彼は思わずにやけているのを自覚していた。
初めてのデートに初めてのキス。初めてのお泊り旅行に初体験。
彼女には意外に嫉妬深い一面があることや、恋に恋する純情な一面があること。
そんな色々を思い出していたのだった。
「除夜君はなーにを想像してるのかなあ?」
きっと不埒な想像をしていたに違いないと頬を引っ張る奏。
「いひゃい、いひゃいって。変な想像は何もしてないよ」
「……私の目を見て誓える?」
珍しく眼光鋭く見据える彼女。
「ごめん。嘘つきました」
あっさり認めるがそれもそのはず。
思い返していた中には思春期男子らしいあれこれもあったからだ。
「それならよろしい。ちなみに何を思い出してたの?」
そもそも追及する気もなかったのであっさり引っ込めるものの、何を考えていたのかは知っておきたかった。
「……初めてキスしたときのこととか。それと……初めてした時のこととか」
デリカシーがないと怒られても仕方ない告白である。
「……う。私も思い出してきちゃった」
しかし、奏も年頃の女の子で純情でもある。
思い出を振り返って恥ずかしくなってしまったのだった。
「ま、まあ。ところで、今年は初詣行かないでいいの?」
時刻はもう11時30分。いつもの神社に初詣に行くならそろそろ出発しないと。
そう思っての問いかけ。
「恋人としての初めての元旦だから。こたつでぬくぬく過ごしたい」
何がだからなのか不明だが。とにかく寒い外よりも暖かい家。
それが彼女の主張だった。
「二回目じゃないの?」
確か日が変わった前後に告白しあったはず。
なら二回目ではという疑問だったけど。
「だって。去年の元旦は色々どうしていいかわからなかったから」
恋人になったばかりの元旦。
嬉しいのと同時に恥ずかしい気持ちがあって、二人はあんまり恋人らしく過ごせていなかった。お互いにカチコチに緊張していたくらいだ。
「奏ちゃんもよくわからないところにこだわるよね」
彼もたいがいよくわからないところにこだわるのだけど。
自分のことを棚にあげてそう言ったのだった。
「ところで。おじさんたちも妙なところに気を利かせるんだから」
11時50分現在。坂上家にいるのは除夜と奏の二人だけ。
本来ならいるはずの両親や祖父母は不在。
「まあいいじゃないか。二人でのんびり年越し。僕たちらしいよ」
どこか世間のペースからずれている二人。
そんな二人を幼い頃から見ていた両家の両親は、
「今年は二人きりにしてやろう」
と妙な気を利かしたのだった。
「そうかもね。あ、蕎麦がもう茹で上がってる」
台所にパタパタと駆けて行く奏。
年越し蕎麦をこれから二人で食べるところなのだ。
「奏ちゃんと結婚したらこんな風に過ごしてるのかな」
最愛の恋人を眺めながら除夜はといえばそんな事を考えていた。
色々なところをすっ飛ばし過ぎである。
11時58分。
二人の手元には出来立てほやほやの掛け蕎麦。
余計な具がないシンプルなものを。
そんな事も二人の間のルールだった。
「よし、それじゃ食べようか」
橋を割っていただきますをしようとする除夜。
「その前に。恒例の挨拶がまだだよ?」
食いしん坊なんだからとばかりにいう奏。
「ああ、そうだったね。それじゃあ……」
二人で息を合わせて、
「「あけましておめでとう。それと、誕生日おめでとう」」
新年と誕生日の両方を祝う言葉を送りあったのだった。
こんなのんびりとした二人の関係はこれからもきっと続いていく。
誰かが見ればそう思うような光景だった。
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