11 / 39
究極の幼馴染 VS. 至高の幼馴染
しおりを挟む
窓の外を見れば桜が散る、新学期が始まったばかりの俺たちの高校。
今日はクラス替えになったばかりで、つまりは人間関係がシャッフルされる時期でもある。
俺、彼方涼真の幼馴染である久世友香が同じクラスなのか少し心配だったけど、幸い同クラだった。やはり昔からの付き合いがいると居ないかじゃ新しい人間関係に馴染めるかどうかが大きく変わるし、何より友香とは一緒に居て安心感がある。
ふと見れば既に、新しい窓際席に友香は着席して、そして何故かぼんやりと桜を眺めていた。
「よっ。友香。春休みはどうだった?」
ポンと気安く肩を叩く。友香と会ったのは小学校四年の頃。父親の転勤で大阪から引っ越してきたらしい。大阪人らしい……なんていうと偏見かもしれないけど、親しみやすさもあったし何よりオープンな気質があっていたのか。
同じ月に意気投合した俺たちはそれ以来仲良くやってきた。過度に馴れ馴れしいわけじゃなくて、気兼ねなく付き合える親友といったポジションだ。
「うん?あ、リョーマ。ちょっとかーさんの実家帰っとったんよー」
どことなく違和感がある。何がと言われると難しいけど元気がないような。
「そっちの実家ってそこそこ古いとこだったっけ。面白いことでもあったか?」
「うーん……面白いことっていうか……。ゴロゴロして従姉妹たちとゲームしてとか色々あったんやけど……」
一体どうしたんだろうか。実家で何か元気を無くすような出来事でもあったとか?
「なんかやなことでもあったか?話くらいは聞くぞ」
お互い、悩みがあったら率直に話す。時には夜に物思いに耽った結果として電話をかけたりかけられたり。そんなこともある俺たちだけど、それ故に色々悩みやお互いのことを共有してあっているし、親しい仲だと信じられる。
「そやねー。ちょっと長くなりそうなんで放課後でもええ?」
「おっけ。元気出せとは言わんけど、落ち込み過ぎるなよ」
「あんがとさん」
元気がないことだって時にはある。放課後、話を聞いてやればそれでいい。
そのはずだったのだけど―
「あー。噂の彼方君と久世さんだー。やっほー」
声をかけて来たのはやたら初対面でも気軽に声をかけるらしいと一年の時に噂に聞いていた同じ学年の穂積恵子。人によって得意苦手がはっきりと別れるタイプだ。
「おっす。穂積だったっけ。一年のときにはほとんど話したこともなかったけど」
「違うクラスだもん。仕方ないよ―」
至極あっけらかんとした様子だ。多少馴れ馴れしいとは聞いてたけど、これくらいなら全然許容範囲。
「で、どうしたんだ?」
「彼方君と久世さんって小学校の頃からの友達なんでしょ?幼馴染ってどんな感じなのか聞きたいな―って思ったの」
来た。俺たちにとってはもはやFAQと化した質問だ。
やはり小中までならともかく高校まで仲良くしている男女となると割と珍しいらしく、とかく質問されるものなのだ。巷に流布している幼馴染ものの影響もあるかもしれない。
小声で話しかけてみるものの。
(なんていうか、またかーって感じだよな)
(う、うん。そやね)
まただ。何処か違和感がある。
「一応幼馴染って言えばそうだけど。そこまで―」
言おうとした途中だった。
「幼馴染なんて呼べるほどの仲やないよ。もちろん友達やけどね」
え?友香の回答は俺にとっても呆然とするものだった。
もちろん、幼馴染という言い回しは誰かに説明するためのものだ。
俺たち幼馴染だよな、なんて言ったりはしない。
ただ、その表現にはどこか拒絶の色合いが感じられて、俺は何か裏切られたような、そんな気分になっていた。
「え?で、でも、小学校の頃から仲良いんでしょ」
穂積にとっては興味本位の質問だったのだろう。増してや、友香は基本的にはオープンな性格で知られているからこんな回答は想定外だったに違いない。
「あ、うーん。ごめんな。もちろん、リョーマとは小四からやし、仲は結構ええ方やと思うよ。ただ、そこまで深い仲やないから。期待に添えんかったら悪いかなって思ったんや」
穂積をびっくりさせてしまったのに気づいたのだろう。慌てて言い足した友香だけど、俺の違和感は増える一方だ。
中学の頃も、高校に上がってからも。それこそ、三学期だって結構仲良くやってきたじゃないか。もちろん男女の仲じゃないとはわかっちゃいる。それでも、どこか一方通行な気がしてショックを隠しきれない。
「そ、そっか。なんかごめんね。それじゃ、また後で!」
きっと地雷を踏んだと思ったんだろう。ささっと自席に戻る穂積。あと、さっきの友香の言い方が妙に堅かったせいか、クラス中からどうにも注目を集めている気がする。
「なあ。ひょっとして、痴話喧嘩か?」
「一年の頃あんだけ仲良かったのにねー」
「春休みの間に喧嘩でもしたのかな」
「そうだよ、きっと。デート中に揉めたとか」
お前ら聞こえてるんだけどな。でもまあ、特に一年から同じクラスだった奴が気になるのはわかる。そこまでの仲じゃないから、みたいな言い方をされちゃな。というか、俺が一番落ち込んでるんだけど。一体アイツに何があったんだ。
新学期の授業がロクに聞こえないまま一時限目の授業が終わった廊下にて。
「なあ。やっぱ様子が変だけど、何かあったのか?」
そう聞いてみることにした。
本当は放課後に聞く予定だったけど、さっきの答えがざわついて仕方ない。
「放課後にちょっと来てくれへん?本当の幼馴染って奴がおったんよ」
「あ、ああ……」
って、本当の幼馴染?一瞬スルーしてしまいそうになったけど、なんというパワーワード。まさかグルメ対決でもあるまいに、幼馴染に本物も偽物もないだろう。
「なあ。色々ツッコミたくなってきたんだけど、本当の幼馴染ってのは何なんだよ。別に言葉の定義とかどうでもよくないか?お前との間で揉めたくはないんだけど、親友だと思ってたのは一方的だったか?」
少し気持ちがササクレだっている。そう感じつつも、問わずには居られなかった。
「ああ。ごめん。そうやないんよ。朝のは言葉選びが悪くてごめんな。私もリョーマのことは親友やと思っとるよ」
その言葉に少しほっとした。友達だけど、なんとも思ってないとか思われてたらどうしようかと思った。
「ただ、新学期に大阪から転校して来た子らがやな……まあ、さっきの本当の幼馴染って感じなんやけど。説明しづらいし、放課後ちょっと二人に会ってもらってもええかなあ」
なるほど。そこに繋がるのか。なんで朝に落ち込んでいたのか。幼馴染という言葉を急に拒絶するようになったのか。理由はきっとそこにあるに違いない。
「ああ。大阪ってことはひょっとしてお前の従姉妹とか?」
あんまりないことではあるけど、従姉妹がこちらに転校というのもありえなくはないだろう。そう思ったのだけど。
「従姉妹っていうか……実家のご近所に仲ええ男女がおるんよ。で今学期にこっちに転校してきてな。細かいのは会ってもらった方が早いと思う。本当の幼馴染ってのがわかると思うんよ」
また出た。本当の幼馴染。
真面目なところ申し訳ないがツッコミたい気持ちでいっぱいだ。
「わかった。落ち込んだ理由は大体察したし、本当の幼馴染とやらに会わせてくれ」
友香はとてもいい奴なのだけど、関係の深さというのに執着を持ってる節がある。
それは俺もであって、お互い様なのだけど、きっとそれ絡みなのだろう。
(割とどうでもいいところに落ち着きそうだけど)
友香のやつの悩みなんてのは9割くらい人間関係絡みで、しかも関係の深さに関するものなのだ。傍目のオープンさとは裏腹に随分繊細な奴なので、きっと気にし過ぎというところに落ち着くに違いない。
てなわけで放課後。
俺は友香と一緒に空き教室に向かっていた。
「で、その本当の幼馴染さんたちとお前はどういう関係なんだ?」
「かーさんの実家に帰ったときにたまに遊ぶくらいの仲ていう感じやね。こないだは数年ぶりに会ったんで、三人で一緒に遊ぼーって感じになったわけなん」
「大体わかってきた。で、転校の話とか色々聞いたわけだな?」
「そうなんよ。あの子の……男の子の方の両親がこっちに転勤らしくてええ転校先探しとったらしいんやけど、かーさん経由でこっちの学校紹介されたらしいんよ。たぶん、多少なりとも知り合いおるんが安心ってのもあるんやろね」
なるほどなあ。
「事情はわかった。にしても二人揃って転校ってのも大した仲の良さっていうか」
いくら仲が良くてもそうあることじゃない。
「まー既に付き合っとるらしいんよ。離れるのがやなんやって」
「完全にそいつらの惚気だな。それ。しかも、片方の転勤にもう片方の子どもがついてくるわけだろ」
なんともはや。そりゃ恋人同士になって離れるのは嫌だろうけど、揃ってこっちにとか。いくら付き合っているとはいえ、女の子の方のご両親は、親元に置いとかないとという不安はなかったのだろうか。
「そこはよー知らんのやけど、お互いの両親が仲良くて、あの子なら任せられると思ったらしいよー」
「そうっとうな仲の深さだな。友香が凹んだ理由はわかってきたぞ」
にしても、そいつらが特殊過ぎるだけで凹まなくていいだろとは思うけど。
「でも、朝はごめんなー。凹んでたとは言えあんなこと言ってしまって」
朝の一言は彼女なりに気にしていたんだろう。
なら、俺から気にすることじゃない。
「気にすんな。最初は凹んだけど、そういう理由なら全然わかるからさ」
「ほんっと、リョーマが友達で助かるわ」
「お互い様だって」
気がつけば喉元に刺さった棘はすっかり抜けていた。
まー、カップルの惚気聞かされるだけになるだろうけど、どうでもいいや。
というわけで、空き教室にて。
「加代ちゃん、友助君。例のリョーマ連れてきたよ―」
例の。一体、彼女はどんなことを語っていたのやら。
「友香ちゃんの実家での友達の新田加代。よろしくね」
「俺は加代の彼氏の新田友助。よろしく」
なんていうか典型的な美男美女というのがふさわしいカップルだった。
長身痩躯で整った顔立ち。長距離でもやってそうな友助君。
やっぱり整った顔立ちで、友助君よりやや小さめだけど高身長で、モデル体型な加代さん。って。
「そういえば、名字一緒なんだな。親戚とかなのか?」
まさかたまたま近所に居た二人の名字が一致してたなんてこともあるまい。
「友香ちゃん、言ってなかったん?」
もう、と言いたげな加代さん。
友香も可愛いと思うけど、親しみが持てるって感じの顔つき。
一方加代さんはといえば、芸能人的な整った顔立ちといえばいいんだろうか。
「言うの忘れとったんよ。二人は遠縁の親戚ってやつで。確かはとこ?」
「そそ。俺と加代はお互いの家に預けられたりとか色々あってなー。諸々はしょるんやけど、今は恋人としてお付き合いっちゅうとこ」
「もう、友助ったらー。お突き合いとかエロいよー」
ばんばんと嬉しそうに友助君の背中をバンと叩く加代さん。
何がエロいんだよ。この恋愛脳め。
お付き合い→お突き合いってとこだろうけど。
(なあ、本当の幼馴染っていうかただのバカップルじゃないか?)
見てて胸焼けがしてきた。
(当てられてたけど、正気に戻ってみたらそんな気がせんでもないような)
ということは今朝は正気じゃなかったのか。
「で、いきなりで悪いんだけど、今朝から友香がやけに凹んでるんだけど。本当の幼馴染とかどーとか言って。そっちで何かあったりしたのか?」
どんどん投げやりになっていく自分を感じるけど、気持ちの良い仲の良さというより初見の印象でこいつらはただのバカップルだという印象が植え付けられたせいだ。うん。そうに違いない。
「本当の幼馴染って。そりゃー、ウチと友助はそれこそ幼稚園くらいの頃からの突き合いもとい付き合いやけどねー」
お前は下ネタを入れないと気が済まない病気にでもかかってるのか。
行間でいちいちツッコミを入れたくなる。
「加代も初見に下ネタはほどほどにしとけよー。二人ともドン引きしてるやんか」
「ごめんごめん。ウチらあんまり育ちよーないからつい、な」
宥める友助君に、謝る加代さん。
(確かに息はぴったりだな)
(そやろ。バカップルってのも言われてみると気づいたんやけど)
(バカップル要素抜いたらダメだろ。こいつらの浮かれっぷりはそれが大きいぞ)
そして、ひそひそと小声で話す俺たち。
「脱線したけど、君らの仲がいいのはほんっとよくわかった」
「そやろー。友助は昔っから優しくてなー」
「照れるやろー。加代も昔から綺麗やったけどなー」
だからバカップルやめろ。ついでに毎回話を脱線させるな。
「で、二人は幼稚園からの付き合いからとは聞いてるけど、その頃からずっと仲が良かったのか?」
「そやねー。ウチの両親は共働きで忙しかったから、友助のとこ預けられたのもしょっちゅうやし。半分くらいは家族やないかな」
「色々あったわな。加代が小さい頃に池で溺れそうになったり」
「あの時、友助が助けてくれなかったら今ウチおらんからほんと感謝しとるよー」
こういうのでいいんだよ。こういうので。
純粋に微笑ましいエピソード。
バカップル、バカップル言わないといけなかったのはしんどかった。
それはともかく、俺たちとくらべても息がぴったりなのは確かで。
「歴史の重みって奴を感じるな。伊達に幼稚園の頃からじゃないというか」
俺は凹むほどの繊細さはないけど、友香が凹んだ理由はわかった。
「でも、彼方君と友香ちゃんも十分仲ええと思うよ―。ウチらのこと仲良くひそひそ話しとるし」
「わりい。聞こえてたか」
「ええって、ええって。バカップルなんは自覚しとるしな」
「自覚あったのか」
しまった。ついうっかり口に。
「付き合いたてホヤホヤのカップルやからねー。そんくらいはわかっとるよ」
ねー、と友助君に同意を求める加代さん。
「そーそ。好きなんやからバカップル言われても堂々としてればええっちゅうのが俺らのスタンス」
ここまで来るといっそ清々しいことで。
単なるバカップルという評価は少し変えなければいけないか。
でも、こういう奴らならいっそ話しやすいわけで。
「ならフランクに行かせてもらうけどな。友香の奴がそっちの仲が良すぎて、自分たちは幼馴染とは言えないんじゃないかとか悩んでたみたいなんだよ。こう、友香はいい奴なんだけど、ちょっと繊細っていうかな」
「そーいうの友香ちゃんらしいわー。言うても中学以来会うてなかったんやけど。でもなー。ウチらから見てもちゃんと仲ええから気にしなさんな。好きなんやろ?彼方君のこと」
え?何か唐突に爆弾が放り込まれたような。
「あsdfghjkl;:」
あ。友香がバグった。顔が真っ赤で何かを必死にまくし立てているけど、ほとんど日本語になっていない。
「落ち着けっつーの。日本語OK?」
「言うても、いきなり私の気持ちばらされて落ち着いてられるわけないやろー!」
もう全力で叫ぶ友香である。
「ちなみに当事者がここにおるわけやけど」
煽る加代さん。
「さてさて、お二人さんとしてはどんなお気持ちで?」
そして乗っかる友助君。
嫌な意味で息がぴったりな二人だ。
「あのさー。おたくさんら。こちらの仲を勝手に乱されちゃ困るんですが」
「言うても、彼方君も友香ちゃんのこと好きやろ?」
さも当然と言い放つ友助君。
「ちょ、おま」
何を急に。
「見てたらわかるよねー。単なる友情だけでこれだけ気にしとるわけないもん」
「な。やったら、さっさとくっついた方が早いってもんや」
(これが大阪ノリってやつなのか?)
(この二人が特別変なだけやから気にせんといて)
(さよか)
(さすがにここまで無神経なのと一緒にされるのは大阪人として心外や)
ほっとした。大阪人が皆こいつらみたいなのかと思うところだった。
「あ、あの。ところで、リョーマが私のこと好きっちゅうのは……」
あ。そういえば、もうほぼバラされたに等しいんだった。
もう、せっかくただの友情ということにして色々誤魔化してたのに。
でも、ここまで来たら腹を決めるか。
「そこのバカップルさんに嵌められたみたいで大変遺憾だけど。せっかくだし、ちゃんと気持ちを伝えるな。友香のこと好きだ。ちょっと気が小さいところも、なんていうか結構いじらしいところも。親友ってことにしとけばごまかせるかなって思ってたけど、友香の気持ちもわかったから、誤魔化しても仕方ないし」
このバカップルには感謝していいやら、
土足でこちらの仲に踏み入られたことを怒っていいやら。
「私も。私も、リョーマのこと好きやったよ。転校で色々寂しかったけど、すぐ馴染めたんもリョーマのおかげやし、気が小さい私のために色々相談に乗ってくれたことも、ぜーんぶ大切に思っとるから」
はー、もう顔が熱いったらありゃしない。
友香の方も顔が真っ赤だしな。
「で、本当の幼馴染さんとしては感想はいかがで?」
「おめでとーさん。良かったやん。これで晴れてバカップル仲間成立!」
「そーそー。仲良きことは美しきかな」
ほんとに食えない奴らだ。
「私らは普通に交際するつもりよ。バカップルになるつもりはないんやから」
「そうそう。大体、もうちょっと慎みをというものをだなー」
根が悪い奴らじゃないのはわかるけど、それはそれ。
「ふーん。でも、今朝から色々クラスで噂聞いとったんやけど、一年の頃とかめっちゃ仲良かったらしいやん」
にやーと嫌な笑顔で詰め寄ってくる加代さん。
「いやそりゃ仲は良かったけど、別にカップルじゃなくて友達の範囲だったわけで」
必死で抗弁するも。
「頻繁に夜通話しとったとかも聞いたでー。これで普通の友達なんかなー?」
あくまで加代さんは詰め寄ってくる。
「な、仲良かったら同性同士の友達でもやるだろ」
いやしかし、と抗弁する。
「同性同士やったらな。色々聞いてみたら、一年の時の知り合いほとんどが二人は付き合ってると思ってたみたいやよ。加えて言うと、二人で教室でご飯食べたりもしてたとか」
え。本当、なのか?
「ま、待て。別に友達でも仲がよ、け、れ、ば……」
言ってて段々自信がなくなってきた。
「ないわー。そう思わへん?友助?」
「男の俺から見てもないわー」
ねーと顔を見合わせる二人。
こいつらやっぱりムカツク。
というわけで、と。
「「二人とも十分バカップルやと思うでー」」
「「バカップル(じゃない|やない)!」」
そんなとってもどうでも良いオチがついたのだった。
「そう言わんとバカップル同盟組もうやー」
「そーそー」
「断固としてお断りだ。友達としてならともかく」
「右に同じく。やっぱり一緒にはされたくないの!」
こうして、身も蓋もない俺たちの交際が始まったのだった。
しかし、最初の「本当の幼馴染」っていうのどうでも良い話だったな。
友香が勝手に凹んでただけで。
(こんなことなら早めに告白しておくべきだった)
将来思い返したときに、稀に見るグダグダ告白として記憶に残るに違いない。
そして、目の前のバカップル二人が生き証人だ。
ただ、まあ。
(バカップル同盟は断じてお断りだが)
幼馴染同盟くらいなら組んでやってもいいかもな。
そう心のなかでつぶやいた俺だった。
断じて感謝はしてやらないけどな。
今日はクラス替えになったばかりで、つまりは人間関係がシャッフルされる時期でもある。
俺、彼方涼真の幼馴染である久世友香が同じクラスなのか少し心配だったけど、幸い同クラだった。やはり昔からの付き合いがいると居ないかじゃ新しい人間関係に馴染めるかどうかが大きく変わるし、何より友香とは一緒に居て安心感がある。
ふと見れば既に、新しい窓際席に友香は着席して、そして何故かぼんやりと桜を眺めていた。
「よっ。友香。春休みはどうだった?」
ポンと気安く肩を叩く。友香と会ったのは小学校四年の頃。父親の転勤で大阪から引っ越してきたらしい。大阪人らしい……なんていうと偏見かもしれないけど、親しみやすさもあったし何よりオープンな気質があっていたのか。
同じ月に意気投合した俺たちはそれ以来仲良くやってきた。過度に馴れ馴れしいわけじゃなくて、気兼ねなく付き合える親友といったポジションだ。
「うん?あ、リョーマ。ちょっとかーさんの実家帰っとったんよー」
どことなく違和感がある。何がと言われると難しいけど元気がないような。
「そっちの実家ってそこそこ古いとこだったっけ。面白いことでもあったか?」
「うーん……面白いことっていうか……。ゴロゴロして従姉妹たちとゲームしてとか色々あったんやけど……」
一体どうしたんだろうか。実家で何か元気を無くすような出来事でもあったとか?
「なんかやなことでもあったか?話くらいは聞くぞ」
お互い、悩みがあったら率直に話す。時には夜に物思いに耽った結果として電話をかけたりかけられたり。そんなこともある俺たちだけど、それ故に色々悩みやお互いのことを共有してあっているし、親しい仲だと信じられる。
「そやねー。ちょっと長くなりそうなんで放課後でもええ?」
「おっけ。元気出せとは言わんけど、落ち込み過ぎるなよ」
「あんがとさん」
元気がないことだって時にはある。放課後、話を聞いてやればそれでいい。
そのはずだったのだけど―
「あー。噂の彼方君と久世さんだー。やっほー」
声をかけて来たのはやたら初対面でも気軽に声をかけるらしいと一年の時に噂に聞いていた同じ学年の穂積恵子。人によって得意苦手がはっきりと別れるタイプだ。
「おっす。穂積だったっけ。一年のときにはほとんど話したこともなかったけど」
「違うクラスだもん。仕方ないよ―」
至極あっけらかんとした様子だ。多少馴れ馴れしいとは聞いてたけど、これくらいなら全然許容範囲。
「で、どうしたんだ?」
「彼方君と久世さんって小学校の頃からの友達なんでしょ?幼馴染ってどんな感じなのか聞きたいな―って思ったの」
来た。俺たちにとってはもはやFAQと化した質問だ。
やはり小中までならともかく高校まで仲良くしている男女となると割と珍しいらしく、とかく質問されるものなのだ。巷に流布している幼馴染ものの影響もあるかもしれない。
小声で話しかけてみるものの。
(なんていうか、またかーって感じだよな)
(う、うん。そやね)
まただ。何処か違和感がある。
「一応幼馴染って言えばそうだけど。そこまで―」
言おうとした途中だった。
「幼馴染なんて呼べるほどの仲やないよ。もちろん友達やけどね」
え?友香の回答は俺にとっても呆然とするものだった。
もちろん、幼馴染という言い回しは誰かに説明するためのものだ。
俺たち幼馴染だよな、なんて言ったりはしない。
ただ、その表現にはどこか拒絶の色合いが感じられて、俺は何か裏切られたような、そんな気分になっていた。
「え?で、でも、小学校の頃から仲良いんでしょ」
穂積にとっては興味本位の質問だったのだろう。増してや、友香は基本的にはオープンな性格で知られているからこんな回答は想定外だったに違いない。
「あ、うーん。ごめんな。もちろん、リョーマとは小四からやし、仲は結構ええ方やと思うよ。ただ、そこまで深い仲やないから。期待に添えんかったら悪いかなって思ったんや」
穂積をびっくりさせてしまったのに気づいたのだろう。慌てて言い足した友香だけど、俺の違和感は増える一方だ。
中学の頃も、高校に上がってからも。それこそ、三学期だって結構仲良くやってきたじゃないか。もちろん男女の仲じゃないとはわかっちゃいる。それでも、どこか一方通行な気がしてショックを隠しきれない。
「そ、そっか。なんかごめんね。それじゃ、また後で!」
きっと地雷を踏んだと思ったんだろう。ささっと自席に戻る穂積。あと、さっきの友香の言い方が妙に堅かったせいか、クラス中からどうにも注目を集めている気がする。
「なあ。ひょっとして、痴話喧嘩か?」
「一年の頃あんだけ仲良かったのにねー」
「春休みの間に喧嘩でもしたのかな」
「そうだよ、きっと。デート中に揉めたとか」
お前ら聞こえてるんだけどな。でもまあ、特に一年から同じクラスだった奴が気になるのはわかる。そこまでの仲じゃないから、みたいな言い方をされちゃな。というか、俺が一番落ち込んでるんだけど。一体アイツに何があったんだ。
新学期の授業がロクに聞こえないまま一時限目の授業が終わった廊下にて。
「なあ。やっぱ様子が変だけど、何かあったのか?」
そう聞いてみることにした。
本当は放課後に聞く予定だったけど、さっきの答えがざわついて仕方ない。
「放課後にちょっと来てくれへん?本当の幼馴染って奴がおったんよ」
「あ、ああ……」
って、本当の幼馴染?一瞬スルーしてしまいそうになったけど、なんというパワーワード。まさかグルメ対決でもあるまいに、幼馴染に本物も偽物もないだろう。
「なあ。色々ツッコミたくなってきたんだけど、本当の幼馴染ってのは何なんだよ。別に言葉の定義とかどうでもよくないか?お前との間で揉めたくはないんだけど、親友だと思ってたのは一方的だったか?」
少し気持ちがササクレだっている。そう感じつつも、問わずには居られなかった。
「ああ。ごめん。そうやないんよ。朝のは言葉選びが悪くてごめんな。私もリョーマのことは親友やと思っとるよ」
その言葉に少しほっとした。友達だけど、なんとも思ってないとか思われてたらどうしようかと思った。
「ただ、新学期に大阪から転校して来た子らがやな……まあ、さっきの本当の幼馴染って感じなんやけど。説明しづらいし、放課後ちょっと二人に会ってもらってもええかなあ」
なるほど。そこに繋がるのか。なんで朝に落ち込んでいたのか。幼馴染という言葉を急に拒絶するようになったのか。理由はきっとそこにあるに違いない。
「ああ。大阪ってことはひょっとしてお前の従姉妹とか?」
あんまりないことではあるけど、従姉妹がこちらに転校というのもありえなくはないだろう。そう思ったのだけど。
「従姉妹っていうか……実家のご近所に仲ええ男女がおるんよ。で今学期にこっちに転校してきてな。細かいのは会ってもらった方が早いと思う。本当の幼馴染ってのがわかると思うんよ」
また出た。本当の幼馴染。
真面目なところ申し訳ないがツッコミたい気持ちでいっぱいだ。
「わかった。落ち込んだ理由は大体察したし、本当の幼馴染とやらに会わせてくれ」
友香はとてもいい奴なのだけど、関係の深さというのに執着を持ってる節がある。
それは俺もであって、お互い様なのだけど、きっとそれ絡みなのだろう。
(割とどうでもいいところに落ち着きそうだけど)
友香のやつの悩みなんてのは9割くらい人間関係絡みで、しかも関係の深さに関するものなのだ。傍目のオープンさとは裏腹に随分繊細な奴なので、きっと気にし過ぎというところに落ち着くに違いない。
てなわけで放課後。
俺は友香と一緒に空き教室に向かっていた。
「で、その本当の幼馴染さんたちとお前はどういう関係なんだ?」
「かーさんの実家に帰ったときにたまに遊ぶくらいの仲ていう感じやね。こないだは数年ぶりに会ったんで、三人で一緒に遊ぼーって感じになったわけなん」
「大体わかってきた。で、転校の話とか色々聞いたわけだな?」
「そうなんよ。あの子の……男の子の方の両親がこっちに転勤らしくてええ転校先探しとったらしいんやけど、かーさん経由でこっちの学校紹介されたらしいんよ。たぶん、多少なりとも知り合いおるんが安心ってのもあるんやろね」
なるほどなあ。
「事情はわかった。にしても二人揃って転校ってのも大した仲の良さっていうか」
いくら仲が良くてもそうあることじゃない。
「まー既に付き合っとるらしいんよ。離れるのがやなんやって」
「完全にそいつらの惚気だな。それ。しかも、片方の転勤にもう片方の子どもがついてくるわけだろ」
なんともはや。そりゃ恋人同士になって離れるのは嫌だろうけど、揃ってこっちにとか。いくら付き合っているとはいえ、女の子の方のご両親は、親元に置いとかないとという不安はなかったのだろうか。
「そこはよー知らんのやけど、お互いの両親が仲良くて、あの子なら任せられると思ったらしいよー」
「そうっとうな仲の深さだな。友香が凹んだ理由はわかってきたぞ」
にしても、そいつらが特殊過ぎるだけで凹まなくていいだろとは思うけど。
「でも、朝はごめんなー。凹んでたとは言えあんなこと言ってしまって」
朝の一言は彼女なりに気にしていたんだろう。
なら、俺から気にすることじゃない。
「気にすんな。最初は凹んだけど、そういう理由なら全然わかるからさ」
「ほんっと、リョーマが友達で助かるわ」
「お互い様だって」
気がつけば喉元に刺さった棘はすっかり抜けていた。
まー、カップルの惚気聞かされるだけになるだろうけど、どうでもいいや。
というわけで、空き教室にて。
「加代ちゃん、友助君。例のリョーマ連れてきたよ―」
例の。一体、彼女はどんなことを語っていたのやら。
「友香ちゃんの実家での友達の新田加代。よろしくね」
「俺は加代の彼氏の新田友助。よろしく」
なんていうか典型的な美男美女というのがふさわしいカップルだった。
長身痩躯で整った顔立ち。長距離でもやってそうな友助君。
やっぱり整った顔立ちで、友助君よりやや小さめだけど高身長で、モデル体型な加代さん。って。
「そういえば、名字一緒なんだな。親戚とかなのか?」
まさかたまたま近所に居た二人の名字が一致してたなんてこともあるまい。
「友香ちゃん、言ってなかったん?」
もう、と言いたげな加代さん。
友香も可愛いと思うけど、親しみが持てるって感じの顔つき。
一方加代さんはといえば、芸能人的な整った顔立ちといえばいいんだろうか。
「言うの忘れとったんよ。二人は遠縁の親戚ってやつで。確かはとこ?」
「そそ。俺と加代はお互いの家に預けられたりとか色々あってなー。諸々はしょるんやけど、今は恋人としてお付き合いっちゅうとこ」
「もう、友助ったらー。お突き合いとかエロいよー」
ばんばんと嬉しそうに友助君の背中をバンと叩く加代さん。
何がエロいんだよ。この恋愛脳め。
お付き合い→お突き合いってとこだろうけど。
(なあ、本当の幼馴染っていうかただのバカップルじゃないか?)
見てて胸焼けがしてきた。
(当てられてたけど、正気に戻ってみたらそんな気がせんでもないような)
ということは今朝は正気じゃなかったのか。
「で、いきなりで悪いんだけど、今朝から友香がやけに凹んでるんだけど。本当の幼馴染とかどーとか言って。そっちで何かあったりしたのか?」
どんどん投げやりになっていく自分を感じるけど、気持ちの良い仲の良さというより初見の印象でこいつらはただのバカップルだという印象が植え付けられたせいだ。うん。そうに違いない。
「本当の幼馴染って。そりゃー、ウチと友助はそれこそ幼稚園くらいの頃からの突き合いもとい付き合いやけどねー」
お前は下ネタを入れないと気が済まない病気にでもかかってるのか。
行間でいちいちツッコミを入れたくなる。
「加代も初見に下ネタはほどほどにしとけよー。二人ともドン引きしてるやんか」
「ごめんごめん。ウチらあんまり育ちよーないからつい、な」
宥める友助君に、謝る加代さん。
(確かに息はぴったりだな)
(そやろ。バカップルってのも言われてみると気づいたんやけど)
(バカップル要素抜いたらダメだろ。こいつらの浮かれっぷりはそれが大きいぞ)
そして、ひそひそと小声で話す俺たち。
「脱線したけど、君らの仲がいいのはほんっとよくわかった」
「そやろー。友助は昔っから優しくてなー」
「照れるやろー。加代も昔から綺麗やったけどなー」
だからバカップルやめろ。ついでに毎回話を脱線させるな。
「で、二人は幼稚園からの付き合いからとは聞いてるけど、その頃からずっと仲が良かったのか?」
「そやねー。ウチの両親は共働きで忙しかったから、友助のとこ預けられたのもしょっちゅうやし。半分くらいは家族やないかな」
「色々あったわな。加代が小さい頃に池で溺れそうになったり」
「あの時、友助が助けてくれなかったら今ウチおらんからほんと感謝しとるよー」
こういうのでいいんだよ。こういうので。
純粋に微笑ましいエピソード。
バカップル、バカップル言わないといけなかったのはしんどかった。
それはともかく、俺たちとくらべても息がぴったりなのは確かで。
「歴史の重みって奴を感じるな。伊達に幼稚園の頃からじゃないというか」
俺は凹むほどの繊細さはないけど、友香が凹んだ理由はわかった。
「でも、彼方君と友香ちゃんも十分仲ええと思うよ―。ウチらのこと仲良くひそひそ話しとるし」
「わりい。聞こえてたか」
「ええって、ええって。バカップルなんは自覚しとるしな」
「自覚あったのか」
しまった。ついうっかり口に。
「付き合いたてホヤホヤのカップルやからねー。そんくらいはわかっとるよ」
ねー、と友助君に同意を求める加代さん。
「そーそ。好きなんやからバカップル言われても堂々としてればええっちゅうのが俺らのスタンス」
ここまで来るといっそ清々しいことで。
単なるバカップルという評価は少し変えなければいけないか。
でも、こういう奴らならいっそ話しやすいわけで。
「ならフランクに行かせてもらうけどな。友香の奴がそっちの仲が良すぎて、自分たちは幼馴染とは言えないんじゃないかとか悩んでたみたいなんだよ。こう、友香はいい奴なんだけど、ちょっと繊細っていうかな」
「そーいうの友香ちゃんらしいわー。言うても中学以来会うてなかったんやけど。でもなー。ウチらから見てもちゃんと仲ええから気にしなさんな。好きなんやろ?彼方君のこと」
え?何か唐突に爆弾が放り込まれたような。
「あsdfghjkl;:」
あ。友香がバグった。顔が真っ赤で何かを必死にまくし立てているけど、ほとんど日本語になっていない。
「落ち着けっつーの。日本語OK?」
「言うても、いきなり私の気持ちばらされて落ち着いてられるわけないやろー!」
もう全力で叫ぶ友香である。
「ちなみに当事者がここにおるわけやけど」
煽る加代さん。
「さてさて、お二人さんとしてはどんなお気持ちで?」
そして乗っかる友助君。
嫌な意味で息がぴったりな二人だ。
「あのさー。おたくさんら。こちらの仲を勝手に乱されちゃ困るんですが」
「言うても、彼方君も友香ちゃんのこと好きやろ?」
さも当然と言い放つ友助君。
「ちょ、おま」
何を急に。
「見てたらわかるよねー。単なる友情だけでこれだけ気にしとるわけないもん」
「な。やったら、さっさとくっついた方が早いってもんや」
(これが大阪ノリってやつなのか?)
(この二人が特別変なだけやから気にせんといて)
(さよか)
(さすがにここまで無神経なのと一緒にされるのは大阪人として心外や)
ほっとした。大阪人が皆こいつらみたいなのかと思うところだった。
「あ、あの。ところで、リョーマが私のこと好きっちゅうのは……」
あ。そういえば、もうほぼバラされたに等しいんだった。
もう、せっかくただの友情ということにして色々誤魔化してたのに。
でも、ここまで来たら腹を決めるか。
「そこのバカップルさんに嵌められたみたいで大変遺憾だけど。せっかくだし、ちゃんと気持ちを伝えるな。友香のこと好きだ。ちょっと気が小さいところも、なんていうか結構いじらしいところも。親友ってことにしとけばごまかせるかなって思ってたけど、友香の気持ちもわかったから、誤魔化しても仕方ないし」
このバカップルには感謝していいやら、
土足でこちらの仲に踏み入られたことを怒っていいやら。
「私も。私も、リョーマのこと好きやったよ。転校で色々寂しかったけど、すぐ馴染めたんもリョーマのおかげやし、気が小さい私のために色々相談に乗ってくれたことも、ぜーんぶ大切に思っとるから」
はー、もう顔が熱いったらありゃしない。
友香の方も顔が真っ赤だしな。
「で、本当の幼馴染さんとしては感想はいかがで?」
「おめでとーさん。良かったやん。これで晴れてバカップル仲間成立!」
「そーそー。仲良きことは美しきかな」
ほんとに食えない奴らだ。
「私らは普通に交際するつもりよ。バカップルになるつもりはないんやから」
「そうそう。大体、もうちょっと慎みをというものをだなー」
根が悪い奴らじゃないのはわかるけど、それはそれ。
「ふーん。でも、今朝から色々クラスで噂聞いとったんやけど、一年の頃とかめっちゃ仲良かったらしいやん」
にやーと嫌な笑顔で詰め寄ってくる加代さん。
「いやそりゃ仲は良かったけど、別にカップルじゃなくて友達の範囲だったわけで」
必死で抗弁するも。
「頻繁に夜通話しとったとかも聞いたでー。これで普通の友達なんかなー?」
あくまで加代さんは詰め寄ってくる。
「な、仲良かったら同性同士の友達でもやるだろ」
いやしかし、と抗弁する。
「同性同士やったらな。色々聞いてみたら、一年の時の知り合いほとんどが二人は付き合ってると思ってたみたいやよ。加えて言うと、二人で教室でご飯食べたりもしてたとか」
え。本当、なのか?
「ま、待て。別に友達でも仲がよ、け、れ、ば……」
言ってて段々自信がなくなってきた。
「ないわー。そう思わへん?友助?」
「男の俺から見てもないわー」
ねーと顔を見合わせる二人。
こいつらやっぱりムカツク。
というわけで、と。
「「二人とも十分バカップルやと思うでー」」
「「バカップル(じゃない|やない)!」」
そんなとってもどうでも良いオチがついたのだった。
「そう言わんとバカップル同盟組もうやー」
「そーそー」
「断固としてお断りだ。友達としてならともかく」
「右に同じく。やっぱり一緒にはされたくないの!」
こうして、身も蓋もない俺たちの交際が始まったのだった。
しかし、最初の「本当の幼馴染」っていうのどうでも良い話だったな。
友香が勝手に凹んでただけで。
(こんなことなら早めに告白しておくべきだった)
将来思い返したときに、稀に見るグダグダ告白として記憶に残るに違いない。
そして、目の前のバカップル二人が生き証人だ。
ただ、まあ。
(バカップル同盟は断じてお断りだが)
幼馴染同盟くらいなら組んでやってもいいかもな。
そう心のなかでつぶやいた俺だった。
断じて感謝はしてやらないけどな。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
冬の水葬
束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。
凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。
高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。
美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた――
けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。
ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結】天上デンシロック
海丑すみ
青春
“俺たちは皆が勝者、負け犬なんかに構う暇はない”──QUEEN/伝説のチャンピオンより
『天まで吹き抜けろ、俺たちの青春デンシロック!』
成谷響介はごく普通の進学校に通う、普通の高校生。しかし彼には夢があった。それはかつて有名バンドを輩出したという軽音楽部に入部し、将来は自分もロックバンドを組むこと!
しかし軽音楽部は廃部していたことが判明し、その上響介はクラスメイトの元電子音楽作家、椀田律と口論になる。だがその律こそが、後に彼の音楽における“相棒”となる人物だった……!
ロックと電子音楽。対とも言えるジャンルがすれ違いながらも手を取り合い、やがて驚きのハーモニーを響かせる。
---
※QUEENのマーキュリー氏をリスペクトした作品です。(QUEENを知らなくても楽しめるはずです!)作中に僅かながら同性への恋愛感情の描写を含むため、苦手な方はご注意下さい。BLカップル的な描写はありません。
---
もずくさん( https://taittsuu.com/users/mozuku3 )原案のキャラクターの、本編のお話を書かせていただいています。実直だが未熟な響介と、博識だがトラウマを持つ律。そして彼らの間で揺れ動くもう一人の“友人”──孤独だった少年達が、音楽を通じて絆を結び、成長していく物語です。
表紙イラストももずくさんのイラストをお借りしています。pixivでは作者( https://www.pixiv.net/users/59166272 )もイラストを描いてますので、良ければそちらもよろしくお願いします。
---
5/26追記:青春カテゴリ最高4位、ありがとうございました!今後スピンオフやサブキャラクターを掘り下げる番外編も予定してるので、よろしくお願いします!
タカラジェンヌへの軌跡
赤井ちひろ
青春
私立桜城下高校に通う高校一年生、南條さくら
夢はでっかく宝塚!
中学時代は演劇コンクールで助演女優賞もとるほどの力を持っている。
でも彼女には決定的な欠陥が
受験期間高校三年までの残ります三年。必死にレッスンに励むさくらに運命の女神は微笑むのか。
限られた時間の中で夢を追う少女たちを書いた青春小説。
脇を囲む教師たちと高校生の物語。
透明な僕たちが色づいていく
川奈あさ
青春
誰かの一番になれない僕は、今日も感情を下書き保存する
空気を読むのが得意で、周りの人の為に動いているはずなのに。どうして誰の一番にもなれないんだろう。
家族にも友達にも特別に必要とされていないと感じる雫。
そんな雫の一番大切な居場所は、”150文字”の感情を投稿するSNS「Letter」
苦手に感じていたクラスメイトの駆に「俺と一緒に物語を作って欲しい」と頼まれる。
ある秘密を抱える駆は「letter」で開催されるコンテストに作品を応募したいのだと言う。
二人は”150文字”の種になる季節や色を探しに出かけ始める。
誰かになりたくて、なれなかった。
透明な二人が150文字の物語を紡いでいく。
表紙イラスト aki様
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる