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一章

第二話:

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 ドルルとエンジン音をたてて、スクーターバイクは雑草だらけの街道をそれなりの速で移動していた。

 豪快に目の前の雑草を挽き潰しながら移動していく。

それは太陽が沈み始めた少し手前ごろ。

民家の灯りと、煙突の煙。

小さな集落とでも言えば良いか、農村。

そんな言葉が似合う場所。

見張り台や、堀もあり、丈夫な柵と、鎧姿の門番?みたいな人影が見える…

「…なんか、見えてきたな。」

『はい、マスター………ラジエ村…だそうですよ。』

「……おぅ…俺、もうおどろかねぇからな!ツッコミしねぇからな!…マジでッかよ!!。」

俺がひとりで騒ぎながらも、スクーターバイクの速度は変わら無い訳で、だんだんと、ラジエ村の門?のそばまで近づいていく。

「なんだあれ?……あー止まれ~」

なんか気の抜けるおっさんの門番。

「あいよ。」

小さなブレーキ音が聞こえ、スクーターバイクを止めて片足を大地につける。

「…おー、なんか面妖な乗り物だな、なんだこれ?…あ、とと、兄ちゃんはこの村に何のようだ?」

おっさんの、何とも言えぬ言葉。

「あー、見てのとおり旅をしてる?…旅人?…そんでまぁ…あー質屋でもないかな、それと宿…そんな感じで。」

俺のその場しのぎで適当に考えた設定…そのまんまな言い草に自分で言ってて苦笑する。

「お?旅人さんか冒険者じゃねえのな、うちの村はとくに特別なものは無いが、そうだな……質屋?じゃねえけど青い屋根の店があるぜ、あとその向かいに酒場と宿屋をやってる所があるかぜ。」

「おー、このまんまは行っても良いのか?」

「ん?いい、いい、どうせ金取るわけでもないし、暇な門番さ。」

「あいよ、じゃぁおっちゃんまたな。」

俺は、若干拍子抜けしつつもその丸太で作ったような門を通り抜ける。

『…ものすごく自然な対応でしたねマスター。』

「……ぁあ、自分でもビックリだな。」

いちようバイクのエンジンはきり、手押しで村の中を進んでいく。

しばらく歩くと目立つ青い屋根。

多分、アレが門番のおっちゃんが言ってた店?が見えてくる。

「…あれか?」

『と、思われます。』

時折すれ違う村人に会釈して、その青い屋根の店の前まで来る。

なんか、魔女の店?みたいなたたずまいだな。

それに向かいには、酒場だっけ?

「……うん、ファンタジーな宿屋そのまんまだな……だが、まずはこっちだ、金作らないと。」

俺は、魔女の店みたいな青い屋根の店に入る。

むろん、入口の隣にスクーターバイクは止めてあるし、【キー】は抜き取りポッケとの中。

うす暗い店内に入ると感じる独特な匂い。

棚や壁にところせましと並ぶ大きめのガラス瓶となんか乾燥した植物やキノコ。

壁には農機具や鍋、フライパン、短剣?まぁよく分からないけれど色々と。

カウンターに座り、煙管のようなものを吹かす眼鏡をかけた老婆がいた。

「いらっしゃい、見ない顔だね、何か入り用だい?」

「ん、えっと…売りたい物があるんだけど……いいのかな?」

少しビクつきながらも、要件を言う。

「ほう、まあ見てみましょうかね。」

俺は、背負っていた鞄を降ろすと、その中から魔石を取り出す。

これは聖剣(爆笑)でミンチにした狼型のモンスターから抜き取ったもの。

他にも何個か。

これ全部、ミンチにしたモンスターの魔石である。

襲われること数度、そのたびに、ミンチ肉となった哀れなモンスターよ安らかに金になれ…とか何とか。

ファンタジーに定番の、モンスターから魔石を剥ぎ取るのはそんなに難しくも無く、どちらかと言えば【キー】の助言のおかげでこういう物を回収しておいたのだ。

「ほう、魔石だね、それも七個……相場は安くなるけどいいかい?」

店主らしきお婆さんは、ソロバンみたいな物を指で弾き、そう言った。

「あー、向かいの宿に泊まれるくらいなら。」

「お?まぁそれくらいならよゆうさね。」

そう言うと、カウンターの裏から銀貨をとり出す。

「ほれ、全部で銀貨五枚でどうだい?」

そう言われても相場なんて分からないのだが。

『マスター、このお婆さんは、それなりに色を付けてくれたみたいですよ』

…なんで、お前はそう言うのを知ってるの?

まぁ、助かるけど。

「えっと、了解です。」

「ふふ、向かいの宿なら銀一枚で五日は止まれるだろうよ。」

俺が何とも言えない顔をしていると、おばあちゃん

「な…そんなに。」

「それよりもだ、この魔石のモンスターは群れる奴らだ、皮や牙、爪なんかは無いのかい?」

「えっと…それは無いデスね。」

「そうか残念だが仕方ないね、次に持ってくるときはそう言うのもまとめて買い取るよ。」

お婆さんはその手で魔石をしまうと、また煙管のようなものを吹かす。

「それじゃあ、またきます。」

俺はそう言って、この雑貨屋なか、何でも屋なのかよく分からないけれど、お店を出る。

「ふぅ、軍資金確保だな。」

『…それでは、お宿に?』

俺は、入口付近に止めたスクーターバイクに近づく。

珍しい物でも見るように、遠巻きに村人が眺めていたり、子供が触ったりしていた。

いちよう、断りを入れ、子供たちをどかす。

素直なもので、蜘蛛の子を散らすとはこういうことを言うのかとおもうほどワーっといなくなってしまう。

俺はスクーターバイクのロックを外して、手押しで向かいの宿にいく。

『マスター、私の本体はと共にありますので、バイク側の方は鞄に入れることを具申します。』

「あ、その手があったか。」

俺はそう言うと、鞄をスクーターバイクに被せる。

すると、絶対にあり得ない体積がスルリと吸い込まれて消えていく。

「…なんかスゲー。」

『これにて、盗難防止ですね。』

「……そうか、そう言うこともあるよな…異世界だし。」

俺はそう言うと、宿ののれんをくぐる。

「こんちわーす。」

大きな看板が目印の、1階が酒場、上が宿になっているみたいな建物。

見た目も立派で、木造家屋、食堂だろう厨房から、恰幅の言い女将が出てきた。

「はいはい、いらっしゃい」

「あ、宿泊でおねがいします。」

「あらあら、珍しい今は何部屋か空いてるから大丈夫よ、朝夜ご飯付き、支払いは先になるけど、何日ほどかしら?」

「…いちよう数日、銀一枚ほどでおねがいします。」

「はい、それじゃあ五日ね、いちよう返品とかも受け付けてるからね。」

「はい、あ、俺はタツヤって言います、よろしくおねがいします。」

「これはご丁寧に、女将のマーサですよ、それじゃあ5番の鍵と、もうじき夕食ですからね。」

「どうも。」

女将から鍵をもらい、上の階の部屋に案内される。

一番奥の鍵と同じ数字の書かれた扉。

部屋はそこそこ広く、出窓にベッド。

クローゼット、小さなテーブルが、ある。

異世界仕様にしてはかなり上等な部類だろう。

「それじゃあ、トイレや井戸は下の、裏にありますからね。」

女将はそう言うと、下におりていく。

「よっと、思ったよりベッドも柔らかいってか藁か?へぇ初めて見るな。」

俺は疲れてポキポキと首を鳴らして、伸びをしてベッドに倒れこむ。

しばらくウトウトしていると、漂ってくるいい匂いがする。

そうすればお腹も自然となる。

「飯いくか。」

立ち上がり、下におりていく。

食堂というより、酒場それも、ざっ異世界って感じの雰囲気。

出てくる飯は、デカい皿に山盛りの野菜と焼いた肉、独特な食感のパン、アッサリしたスープ、飲み物はお茶。

そのどれもが、美味しいなんかスゲーと感心しながらあっという間に完食してしまう。

2回ぐらいおかわりしました。

ついで風呂……は無いのでタライを借りて井戸水をくみ上げると、タオルで汚れを落とす。

スゲー寒い、でもスゲー新鮮な感じ。

これぞ異世界だな。

……そのうち風呂探すか。
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