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冒険の旅

旅の再開

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 -MkⅢ-
 結局、この日中の作戦で、完全に盗賊団組織は壊滅に追い込めたようだ。
 んで、貴族っぽい服装で逮捕されたあの奴隷商人は、私の未だ言った事の無い大陸から来ていた。
 このままそっちの大陸にって言う気もあったんだけど、未だこの大陸を回り切れていない。
 なんせこの大陸って、日本と非常に似通って居ると言うか、同じ文化が多数存在するので、この国にならば未だに見つけていない食材や調味料に出会える可能性が捨てきれない。
 納豆、海苔、若布、飛魚出汁、白醤油、カボス、スダチ、甘醤油、麦味噌、カラスミ、ハモ。
 パッと思いつくだけでもコレだけ出て来る。
 これは探さない手は無いでしょう?
 なので私は、そろそろこの街を出る算段をしている真っ最中だ。
 勿論、玉藻ちゃんとね。
 オーブはと言うと、そろそろジ・アースに合流させても良いと思う。
「オーブ、アンタはそろそろ、ジ・アースと一緒に行動してちゃんと鍛錬する事を忘れないで頑張れば、直ぐに拳王位には成れると思うんだけど、どう?」
「ん~・・・師匠がそう言うのにゃらいけそうにゃ気もするけど、まだまだ師匠に教わりたい事は沢山有る気もするのにゃ、もう少しだけ師匠に同行させて欲しいにゃ。」
「そう、んじゃぁ、もう暫く一緒に行くか!」
「師匠~!やっぱ師匠はアタイの気持ちを尊重してくれて良い師匠にゃ~。」
「ん?そんな事無いわよ? そろそろあんたの部屋のトレーニング機器ももう一段階レベルアップして置いたから、今日から頑張ってね~。」
「鬼にゃぁ~! 師匠のあほぉ~! ロリババァ~!」
「ほぅ? それは、死にたいと言う事かな? もう二段階上げとくから死ぬ気でやれよ?」
「ヒぃ~! ごめんにゃさい~、許してぇ~!」
「だめ。」
「・・・・・」
「あんた一言余計なのよ、いつもいつもまぁ、人を怒らす天才だろ?マジで。」
 ちなみに今既にオーブの使って居るトレーニング機器に付与されてる不可は100㎏を超えた物が殆どだったりする。
「ところで玉藻ちゃん、次の姉妹の位置判るの?」
「判ります、一番近いんはここから南西になるんやろか? 多分、奈良っちゅう所や無いかと思います。」
「成程、それならスパイダーで行けば、遅くとも今晩には到着すると思う、道があんまり良く無い事考えても多分今晩には着くでしょう。」
 道路の整備は重要である。整備してありさえすればほんの2~3時間も有れば着くだろうけどね、ここから奈良方面へは、獣道に毛が生えた程度の道しか確認出来ない、しかも途中に割と危険なクラスのダンジョンがある可能性がある。
 あまり危険なようなら、そこで一泊してでも、ダンジョンコアを取り出してダンジョン自体を消さねば成らないかも知れない。
 今いるこの街の周囲の、危険な部類の魔獣の多さの原因と思われる、ダンジョンの群生、このダンジョンから漏れ出す魔素が魔物を、魔獣を強くして居ると考えると辻褄が合うからね。
 少しでもヤバいダンジョンは潰しておくに限る。
 そうで無いと、何処からスタンピードが起こっても可笑しく無いからね。
 それにしても、やはり例の魔王は、暫くこの大陸に滞在して居たのだろう、自分を隠す為にダンジョンを作りまくったと考える。
 その証拠に、ダンジョンコアのすぐ傍には、既にホムンクルスである事が判明している魔族の物と思しき骨格標本が転がって居るからね。
「さ、それじゃ、明日の朝出発で良いね?」
「エリー・・・師匠、もう行っちゃうんだ。」
「ああ、クリス、聞いてたのか、まぁそのうち又合流する事に成るんだろうさ。
 お前等とは切っても切れない縁が出来てるようだし、又近いうちに会えるさ。」
「ああ、そうだな、それに、俺達の成長の為にもエリートはあまり一緒に居ない方が、だろ?」
「ま、そう言う事だ、あ、そうそう、キースは後で、私のスパイダーにカイエン夫婦と一緒に来いよ、暫く離れる前にメンテしといてやる。」
「ああ、そうだった、後で行くわ、よろしく頼む。」
「さて、私は少し早めだが今日は色々あって疲れたし、そろそろスパイダーに帰るぞ、ゆっくり風呂にも入りたいしな。」
「あらぁ、エリーちゃんもう帰っちゃうの? これから打ち上げしようと思ったのにぃ~。」
「マカンヌ、無理言うな、ダンジョンから帰って来たばかりのエリーを盗賊討伐に駆り出したんだ、疲れて無い訳が無い。
 後でメンテに本当に行って良いのか?」
「ああ、気にするな、二時間も寝れば大丈夫だ。」
「判った、後でキースと待ち合わせて行く。」
 ----------
 ジ・アースと別れた私と玉藻は、風呂で疲れを癒した後、自室に戻って横になろうとした、その時。
「只今にゃ~。」
 オーブは打ち上げに参加してたのだが、戻って来たらしい。
「お、早かったね、お帰り。」
「遅く帰ったら師匠に特訓追加されそうだったから戻って来たにゃ、今からトレーニング開始するにゃ~。」
 うん、やる気が出て来たようで何より。
「だけど、睡眠も大事よ、アンタも私と同じ時間起きて色々やってたんだから先ずは寝なさい、お風呂はいっといで。」
「うん、師匠がそう言うなら、従うにゃ~。」
「私も今から2時間程ねるわ、おやすみ。」
「お休みにゃさいにゃの、師匠。」
 さあ、しっかり寝ておこう。
 --------
 回復促進のナノマシンのお陰で睡眠時間は短くても体力位は回復できるんだけど、元の世界では30分寝るだけで6時間睡眠をとったのと同じ効果を得られて居たんだけどさ、こっちの世界では、多分この出鱈目な生命力と、魔力って言う以前にはなかった要素があるせいか、以前より進化してる筈のナノマシンな筈なのに2時間寝ないと同じ効果が得られないんだよね。
 だから2時間だった訳なんだけど、今、目が覚めました。
 きっかり2時間。
 疲れてたなぁーって思うわ、マジで。
 って言うか、現在19時、そろそろカイエン夫婦とキースが来ても可笑しく無い時間だな、もうすぐ初冬の昨今は、日も短くなってる、外はすっかり真っ暗だ。
 キース達がメンテナンスに来る前に食事を済ませてしまおう。
 いつもなら自分で作る所なんだが、時間が余り無いのは明らかだ。
 私がこのオートクッカーを使うなんていつ以来だろうな。
 旅を始めた頃は色々忙しかったから使ってたけどさ。
 手軽に食べられるからカレーにしよう。
 それも、ハンマーヘッドオックスのスジ肉を使って圧力鍋で炊いたカレーが良い。
 これね、初めからスジカレー様に調合して置いた特製のカレールゥを使って、隠し味を19種類使うと言う、どっちがスパイスだか判んないようなレシピなので、深く追求しないでねw
 既に確定してるレシピなのに、私が作る方が、誰が作るよりずっと美味しいのは何故ですかね?
 勿論オートクッカーが作っても私の味に成らないの、不思議よね?
 まぁこれはこれで美味しいから良いけどさ。
 デザートに、辺境伯から少し譲って貰ってた牛乳を使って作っておいたヨーグルトに、トレントアップルの蜂蜜で煮込んだ奴を乗せて。
 ん~、おいしい~。
 食後を優雅に過ごして居ると、電脳に通信が入った。
 キースだ。
『済まない、遅くなったか?』
 そんな事は無いと思うぞ、丁度良い位だろ、むしろ。
 そう思った私は、そのまま返してやる事にした。
『ハッチ開けてくれ。』
『ああ、スマン、うっかり。』
 セキュリティー上、私と玉藻ちゃんとオーブ以外には、私が指示しない限りハッチは開かないんだったw
 ハッチを開け、三人を迎え入れ、カーゴスペースに仕切ったパーティションの内部をラボに模様替えし、無菌状態にして置いた。
 手始めにキースから診察する。
 義手の状態は、おもいのほか調子が良さそうだ、キースならもっと酷使して傷みが出てそうなんだけどな・・・
 マカンヌも概ね問題無し、何故か知らんがトップスピードに私の設定したよりも20km/hも速い速度に設定されてたけどな・・・
 まぁ、マカンヌの術用のナノマシンとかになら出来ない事は無いけどさ、実際にやられると驚く。
 まぁ220km/hならば問題も無いし良いけどさぁ。
 ねぇ? マカンヌが絡むと何故か私の権限無しでこうなってしまうのは何でだ?
 問題があったのはカイエンの義体だった。
 そこまで酷使するような戦い方してたっけ?この元勇者。
 ん~、もしかすると元勇者って事で残ってる称号の勇者にある隠しスキルが影響して居るのかも知れない。
 もっと上に限界が有るって事かも。
 もしそれが本当なら、勇者は本当に化け物じみた強さと言う事に成る。
 もし、私がこの魔王の称号のお陰で、現勇者と対峙する事に成った時、私は生き残る事が出来るのだろうか。
 カイエンの義体をメンテしただけでこんな変な空気になっちゃったので今は考えない事にしよう。
 それよりも、こんなに酷使すると言うのであればもう少し性能の高いナノマシンに応急メンテナンスさせる方向で考えるとしよう、新しいナノマシンを創成した私は、カイエンの義体に忍ばせて置く事にした。
 それと、もう一つ、マカンヌとカイエンの全身義体に、男性ホルモンと女性ホルモンの分泌を促す機能を付け加える為、その機能をサポートする為のナノマシンを導入させた。
 これでしばらく様子を見よう。
 私の本体から依頼されたホルモンバランスの一件もこれである程度は解消されると思う。
 まぁ、暫くは経過観察の必要があるけどね。
 バランスに問題がある様ならばナノマシンの調整も必要になるだろうから、カイエンとマカンヌのクリムゾンスパイダーに、転移ポイントを作って置く事にした。
 そんでもって、三人を帰らせる時に、キースに一言言って置く事があった。
「あ、そうだ、キース、少し待ってくれ。
 お前に一つ、こっそち教えとく事が有るんだ。」
「ん?何だ?エリー。
 あ、カイエンさん達、先に戻ってくれて良いっすよ。」
 カイエンとマカンヌがこのラボから出て行くのを確認してから、私はこの重要案件をキースに伝える。
「キース、おめでとう。」
「ん? 何だ?何の事だ?」
「まだどっちか判らんが、クリスの腹にはお前の子が居る、まぁまだクリス本人も気が付いて居ないだろうけどな。」
「ほ・・・本当か?」
「こんな事ウソ言ってどうするんだ?
 まぁ、多分来週かそこいらには何となくクリス自身が気が付くんじゃ無いかと思うけど、あまり無理させないようにな。」
「ああ、そうだな、無理させない様にしないと。」
「お前に伝えたい事は、以上だ、帰って良いぞ、あ、クリスには未だ言うなよ?
 あんまり不自然に成らないようにな。」
「ああ、普段通りって事だな、普段通り、普段通り・・・」
 ありゃ、教えるのは失敗だったか?
 変に緊張してるように見えるけど。
「なぁ、キース、それ既に普段通りじゃねぇからな?」
「あ、ああ、すまん。」
 不安が残るが、まぁ大丈夫だろ。
 帰って行くキースは、右足と右手がド同時に出る歩き方になって居た・・・やっぱ心配だな・・・
 何はともあれもう既に23時か、寝るとしよう。
 ---------------
 -朝-
「エリーさん、またね、今度の時は、攻撃魔法も教えてくださいね。」
 何故かカレイラに変な催促をされた。
 使おうと思えばカレイラなら使える筈なのに。
 実際に下位の攻撃魔法なら既に使ってるだろうに。
「カレイラ、あのね、もう使ってるよ?
 エンチャントした炎を撃ち出したそうじゃ無い、既にそれはファイアボールだからね?」
「え?そうなんですか? でも私、どんな攻撃魔法があるのかは実際に知らないし。」
「魔法って言うのはね、イメージなのよ、イメージをマナに伝えて、それを具現化させる事が、全ての魔法の共通の定義、だから、好きに作って良いのよ?」
「そうなんですか?じゃあ、頑張って色々使えるようになります、今度エリーさんに会う時までに。」
「うん、頑張ってね、カレイラの才能だったら最上級の魔法にも到達出来るかも知れない、属性次第ではね。」
 そうなれば多分、勇者の称号を受け継ぐ事が出来るかも知れない。
 カレイラが勇者に成ってくれたら私は討伐される対象には成らないだろw
「クリス、お前にもう一度行っておく、戦えるようになったからと言って前に出るのは私はして欲しくない、何故ならば回復が出来るのはお前の専売特許だ、だからこそ、お前は自衛に集中しろ、それと、バックアタックを回避するのもお前の役割なんだから、戦闘中に背後から他の魔物なんかが現れた時にお前が最前列に居たら誰が対処するんだ?
 それこそ自殺行為だ、取りこぼした奴を倒すのは認めるけど、無理に前に出るな、判ったね?」
「う、うん・・・でも師匠、私は「ダメ、無理して全滅になるとしたらお前の行動が原因になる可能性が一番高い。」・・・はい。」
 かぶせて言われてちょっとしょぼんとしちゃったクリスだけど、これからますます大事にして貰わなければいけない時期にもなる事だし、我慢して貰おう。
「キース、カイエン、マカンヌ、お前達は調子悪かったらすぐに連絡しろ、カイエンとマカンヌのスパイダーに転移ポイント作っておいたから、いつでもメンテナンスしてやるからな。」
「ああ、判った。」
「気を付けて行けよ、賢者殿。」
「エリーちゃんにもう少し色んなレシピ聞きたかったわ~。」
「ははは、マカンヌさんの要望には既に応えてあるでしょ、私のお料理のレシピは電脳に入れて有るよ?」
 相変わらず天然ボケな部分が強いな、この人は。
「さて、じゃあそろそろ行くよ、みんな元気でね。」
 私が砲塔の上部に飛び上がると、クリムゾンスパイダーがゆっくりと走り出す。
 私の横のオーブと玉藻も、手を振りながら少し寂しそうではある。
 手始めに、目指すは奈良、東大寺。
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