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冒険の旅

寺子屋

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 この大陸ってさ、何度か言ってる通り、アトランティス大陸でさぁ、意外な事実として日本語が通用語なんだよね。
 それでもってやけに日本文化とそっくりな物が根付いて居ると言う事もあって、私はこの大陸ごとコッチに転移してしまった日本の本来の姿だったのではと想像して止まないのですが、これがね、驚いた事がもう一つ。
 孤児の扱いについても非常に日本的なんだよね。
 今私が来ているのは、孤児とか、共働きで忙しい人が子供を預けていると言う、所謂児童保育施設って奴なんだけど、ここにはかなりの人数の孤児が居て、宿舎で生活して居て、ある程度の年齢になると、丁稚として大店とかに仕事を頂いて衣食住の提供を受ける事に成る、そして大店はと言うと、子供から教育出来る労働力の提供を受ける代わりと言っては何だけど、児童保育施設へと幾何かの寄付をする、そしてその寄付でこの施設は運営されて居ると言ったシステムが、古くからあったらしい。
 で、だ、私は今、その施設へとやって来ている。
 何でかってさぁ、あんな莫大なお金あっても使い切れるもんじゃネェだろ?
 寄付しに来たんだよ、なんか可笑しな事言ってる?
 私がそんな事するのは可笑しいとか思ってる人は私を良く判って無いよ。
 私はね、自分の子を自分の手で育てる事が叶わなかった、それでも自分の子を遠くから見守って行く事は辞めなかったの、そんで、その子供、孫、更にその子供、孫って具合に何代も見守っていくしか出来なかった、だから、今本体は初めての子育てに翻弄されつつも幸せそうにして居るし、並列存在である私もそう言った子供は宝って言う持論は崩さず持って居る。
 だからね、親の居ない孤児や、そう言う子を守っていくこう言った施設は私にとって全て自分の子と同じであり、私の最も護りたいものだからネ。
 だから私は、例えば孤児院を兼ねている教会にポーションの作り方を伝授し、又は医療魔法と創造魔法である闇魔法とそれと対象となる光魔法迄をも伝授して来たり、様々なアプローチで子供達を保護して来てるんだ。
 それにしても、この施設は凄いね~。
 デカい敷地内に、宿舎と、多目的ホールみたいのと、広い運動場と言うべき場所と、何だか勉強をする場所と思しき、所謂教室と思われる場所、そして更に大きな食堂施設まである。
 聞くと大浴場迄完備して居るらしい、立派な施設だよねぇ~、創立者ってもしかしてこの国のかなりの有力者なんじゃ無いかな。
「お邪魔します、この施設の所有者と言うか、管理者の方にお会いしたいのですが。」
「あ、園長先生にお会いになりますか?それともここを作って下さったお母さんでしょうか。」
 おお、園長先生と言うのと、ここを作った人が居て、作った方はお母さんって呼ばれてるんだ、良いなぁ、私も何処かの国に作ろうかなぁ・・・
「それでは、何方にもお会いしたいと思うのですが、お時間の都合でもう一度訪問しても構いませんがどうしましょう?」
「あ、いえ、今丁度お母さんもこちらにおいでなのでお会い出来ると思います、少々お待ち下さい。」
 お母さんって呼ばれてるんだ、良いなぁ、私も呼ばれたいんだよ~。
 呼んで貰う事が無かったからねぇ~。
 あ、おばあちゃんとは呼ばせねぇから、あしからず。
「では、此方でお待ち下さい。」
 応接室みたいな所に案内されて、来客用らしき椅子に座らされてお茶を提供されました。
 お? このお茶、美味しくね?
 心成しか少し、緑と言うよりは黄色っぽい感じだし、もしかするとこれは玉露っつー奴ですかね?
「お待たせしました、私が延長の吉田松陰と申します。」
 え?マジっすか?松陰先生ってあの松陰さん???
「お待たせしました、紫式部と申します。
 あらあら、可愛らしいお嬢さん・・・じゃない?
 おいくつですか?」
「吉田松陰先生に、紫式部????
 ってか、紫式部さんって言うとあの人よね?
 源氏物語・・・ですよ、ね?
 松陰先生も存じております。」
「あら、私の書物をお読みになったの?」
「ええ、勿論です。
 松陰先生も大変立派なお方、身分を問わない子供達への教育を提唱した素晴らしい方です。」
「私の事も良く知ってるようですな、博識でいらっしゃる。」
 驚きのあまり自己紹介をして居ないのに気が付いた私は、慌てて自己紹介を・・・
「あ、すみません、驚きのあまり私の自己紹介を忘れる所でした。
 私は、エリー・ナカムラと申します、ハイエルフです。
 式部先生とは比べようもない程の木っ端ですが、作家をして居ります。
 ペンネームはリエナ・ラーカムと申します。」
「あら! まぁっ! 貴女なの? あの尊いお話を考えた激萌え作家ちゃん!」
 え・・・・?
 本体の書いたBL読んでるんかい! 紫式部さん!
 ああ、でもまぁ、源氏物語もある意味似たような方向性の物語と言えなくもねぇか・・・
「まぁ、はい、あんなのやこんなの書いてます。」
 本体とのリンクをむっちゃ強くして、今ほぼ本体が喋ってる。
 しかし、知らんかったわ~、本体のBLのファンだったとはw
 夜な夜な醸してる紫式部なんて言うある意味嫌なもんを想像してしまった・・・orz
「あ、あのね、私に、サインを一つ書いて欲しいと思うのよ?」
 うわ、コレがちなやっちゃw
「勿論喜んで、ですが保存用に一冊如何です?」
 そう言って、ストレージからサインを既にしてある物を一冊取り出した。
「こ、これは・・・宜しいの?」
「ええ、どうぞ、御近付きの記しに。」
「じゃ、じゃあわたくしも。」
 そう言うと、侍女っぽいお付きの若い子に、何やら指示をしている。
「はぁはぁ・・・それでは、この合間に本題に入ってしまいましょう、如何なご用件で?」
「ああ、そうですね、私も驚きのあまりに本題を忘れる所でした。
 私は、孤児院などに寄付をして回って居りまして、今日は、たまたま此方が近かったのでこちらへ立ち寄った次第でして、これをお納め下さい。」
 そう言ってストレージから千両箱を一つ、ゴトッと重そうな音をさせて置く。
「こ、こんなに、作家の活動で得たのですか?」
 松陰先生が訪ねて来る。
「あ、いえ、これは、私、冒険者活動もしてるんですよ、今回討伐で得た報酬です。」
「しかしこんなに頂いても宜しいのですか?」
「あ、お気にせずお納めください。
 この10倍程の稼ぎでしたので。」
「お強いのですね、そして博識でいらっしゃる、あなたは貴族ですか?華族ですか?若しくは、武家の方?」
「そのどれでも有りませんよ、私は、賢者とか聖女と呼ばれてます、本人はそんな気は更々無いんですが。」
「そうですか、武家や華族はどうにも私の教育理念とは相いれない様でして、その。」
「判ります、下々には勉学は無用と言う考えですよね、私はアレはいけないと思って居ます。
 学問の重要性は私が最も強く訴え続けている物ですから。」
「おお! 私の同志と呼べる方のようだ! 有り難い、して、エリー殿はどの様な学問を専攻しておいでですかな?」
「私は専攻するような事はして居ないの、但し、最も得意とする所は、ナノマシン等のマイクロ工学と生体工学です。」
「ま、マイクロ?? 生体工学??」
「ああ、御免なさい、未だ私のオリジナルの学問みたいな物なので、判りませんよね?
 それでは、これをご覧になって下さい。」
 そう言って義体の腕を一本取りだしてみせる。
「こ、これは?」
「これはね、ちゃんと動かす事が出来る義手です。
 これも私の生体工学の賜物、それと、肉眼で見る事は出来ませんが、現在この室内にも、私の作ったナノマシンが大気中に浮遊して居ます。
 そのナノマシンに命令を出せば、このように魔法と言う現象を引き起こす事も出来ます。」
 そう言い放つと、火を指先に灯す。
「お・・・おおお・・・もしやあなたは、最近宇都宮で起きた魔物の反乱を収めたと言う・・・」
「ああ、そんな事もあったわね。」
「やはり。」
「あ、そうだわ、松陰先生、貴方ならば信頼できます、この本を預けます。」
 そう言って預けたのは、全属性魔道大全(ネクロノミコン)、但し写本の方。
「これは?」
「これは、全属性の魔法と、その原理、そして、精霊の召喚方法、その他に、魔物を使役する、テイマーの発現方法とその原理等の全てを書いた集大成、最新改定版ですよ。」
「松陰先生は、身を守る為の方法として剣術も教えて居らっしゃるのでしょう? でしたら、此方もご利用になったら宜しいかと思うんです。
 ちなみに、松陰先生はヒューマンの割にマナ量も多いので、全属性を扱う事も、精霊召喚も可能と思います。」
 それにしても驚いたのは紫式部さんの方だ、既に500年生きて居るエルフだったよ。
 式部さんにも呼んで貰ったら良いかもね、ネクロノミコン。
 松陰先生とお話している間に、式部さんが先程指示をしていた侍女さんが戻って来た、手には、どう見ても原本としか思えない巻物の源氏物語と、色紙と筆があった。
「お待たせ、今サイン書いてしまいますわ。
 サイン色紙と源氏物語原本写しを差し上げます。
 先程の本と交換ですね。」
 何だか満面の笑みだった。
「ところで式部さんは、ハイエルフへと進化をする気は無いのです?」
「わたくし? 今の所エルフでも不自由は無いのですが、ハイエルフへと至りたいと思う気持ちはあります。」
「そっか~、無理やり進化させる方法は無い事は無いんだけど、相当きついみたいだけど、どうする?やってみる?止めとく?」
「止めておきます、私も後500年程は生きられますので、自分で進化に至ってこそだと思って居りますから。」
「そう、では、せめて、貴女も、私が松陰先生に預けた本を読んで下さい。
 進化への手助けには成ると思います。」
「ああ、そうだ、そろそろ松陰先生の授業の時間です、見学なさって行ってください。」
「有難うございます、そうさせて頂きます。」
 要するに、ここは寺子屋なのだ、寺子屋の大掛かりな物と思ったら良いのだろうね、きっと。
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