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冒険の旅
湖畔のダンジョン1
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極力人気の少ない場所へと思い、転移したのは神社の裏山の松茸採った場所。
序でだからもう少し採って行こうかなっと。
松茸狩りのコツはね、下から上に探す事。
斜面の上に向かって上を見ながら慎重に上へと移動しながら探すと見つけやすい。
そう言う方向で見ると、落ちた葉が不自然に盛り上がってる所とかを見つける事が出来る。
そう言う所を一つ見つけたら落ち葉をそっと退けてあげると、そこに見つかる訳なんだけど、一本見つけると、松茸は妙な生え方をする特徴があって、円を描くように生える。
だからその周囲を探して見て幾本かを見つけると円の全貌が判って来るので、円の規模や向きを認識出来たらその円は一網打尽に出来る訳。
で、私の反則技としては、落ち葉を風魔法で巻き上げる事で、円の形を見つけやすいんだ。
まぁ、それしなくても、最近じゃ鑑定スキルと遠視スキルが融合して千里眼なんてスキルが確立し始めて居るので、未だレベルは低いけどMP消費さえ気にしなければ松茸で検索しちゃうと見つかる事にさっき気付いたけどなw
取り合えず、気を取り直して松茸を回収し終えて、さっさと湖畔へと降りた私は、又しても水の上を歩いて新しい道を見つける事にした。
あったよ、どの道にも繋がって居ない、その湖湾に降りて途切れている、そこだけの道。
この道を登って行けば多分どこかに出る筈、何処に出るかは知らんがw
で、その見つけた道を登って行った私は、後悔してしまう事に成った・・・
「・・・えっと・・・
ダンジョンやんかっ!」
明らかに普通の洞窟とは思えない異様な威圧感を放つそれは、すでにダンジョンとなってから20年程は経って居そうだった。
20年か・・・いや、25年位経ってる可能性もあるな、すると、階層は120階層を超える筈。
って事は、だ、ここにも魔族がちょっかいかけに来ていたっつー事だよな?
ダンジョンマスターが何者かは知らんけど、ダンジョンコアだきゃぁ魔王が作ってる事は既に研究結果で判ってるんだ。
魔人族と言う名のホムンクルスをダンジョンマスターにしているのか、はたまた強力な魔物、例えばこの間倒した様なヌシ級の鹿さんみたいなプチ災害級の魔獣だったりする可能性もある。
こんな山の中でダンジョンが飽和して魔物が外へと氾濫し始めたりしたら、ひとたまりも無い。
この温泉の街は、お世話になったしとても気に入って居るので護ってやりたい。
気を引き締めて、ダンジョンへと入ろうとしたその時、出て来るパーティーが居た・・・え??
こんな湖まで行く道しか無い所に冒険者?
不思議に思った私は、彼らに声を掛けて見ようとしたんだけど、逆に向うから先に声を掛けられた。
「君、PTはどうした?まさか全滅したのか?」
「へ?いや、むしろ私が色々聞きたいのだけど。」
「ん?どう言う事だ?
ここは25階層の安全地帯ポイントだろ?」
「へ? 何それ、ここは五色沼の、外れ湖畔だけど?」
「へ???どう言う事だ?
ここはダンジョンの中の筈だが。」
「いや? ここは五色沼だよ? ほら、この沼の向こうを良く見て?あそこに鳥居が有るでしょう?
で、あっちにはホラ、一寸した街並みが見えるでしょう?」
「訳が分からん、俺達は平泉のダンジョンを攻略に来た探索者組合構成員だが?」
「え?平泉ってかなり距離がある筈じゃ無いの?
あそこに見える街って、那須塩原温泉郷だよ?」
「ウソだろ?平泉から相当離れているぞ?」
「ウソじゃ無いってば、私はあそこから来たんだから。」
探索者パーティーが急に戦闘態勢になる。
「貴様何者だ。」
「ん?私? 私は、御覧の通りハイエルフだよ。
旅の途中で、あの温泉で2泊して、こうして探索している内に此処に辿り着いたんだ。」
「では、道も無いのにどうやってこの場所へ来られたと言うんだ?」
スッゲェ警戒されてる。
「ああ、私達ハイエルフに掛かればこんな湖、無いに等しいからね、こうやって歩いて来たのさ。」
と言って、水の上を歩いて見せると、ぽかんと口を開けて呆れたような顔をしている。
「さては貴様、魔人族!?」
更に今にも飛び掛かって来そうな状態で抜刀までしてしまった。
ああ、この大陸ってやっぱ日本にそっくりなんだ、日本刀だね、皆。
5人の侍っぽい男女に囲まれてしまったが、慌てない。
「あのね、私がアンタらの敵だったらもうとっくに殺してるし、ここは安全地帯って触れ込みだったんじゃ無いの?
そんな所に敵が出る?
更に言うけど、こんな可愛いうら若きハイエルフの美少女に対して抜刀するってどういう気分な訳?
私武器らしいものも持って無いでしょう?」
「煩い! 惑わされるなよ! 魔人族だ、こいつは!」
「あのな、100歩譲って魔物族だったとして、こんなに会話した事あんの? 会話出来る相手とは話し合いが出来るって思わない? 私はアンタたちに勝手に敵認定されて此処で切り捨てられるって話な訳?」
「これ以上聞き耳持たん! 切るっ!」
突然飛び込んで来たリーダーらしきおっさんをひらっと躱して沼にドボンと落とす。
「はぁ、どうしても私と戦いたいのね、じゃあ纏めていらっしゃい、死なない程度に相手してやっから。」
「笑止! 我々は40階層まで潜れる強者ぞ、死なぬ程度に留めてやるのはこっちの台詞で御座る!」
2番手みたいな若い男子が何だか弱モブくせぇセリフ吐いて突っ込んで来た。
刺突ですか、そんなもんは、こう。
刀の切っ先を右手の親指と人差し指でキュッと摘まんで右側兄流し、突っ込んで来た力を利用して合気道の要領でベクトルを変え、体を回転させるように後方へ投げ飛ばす。
後の三人は女の子ばっかり。
「ねえ、あんた達は話聞いてくれる気に成ってくれたかしら?」
「くっ! 御覚悟!」
一人目が突っ込んで来て、その後に二人目、三人目が追随する様に突っ込んで来たが普通の女の子の腕力なんかで私の障壁が破れる訳が無いので、そのまま受けてやった。
その三人を相手にしている隙に、背後からリーダー君が私を背後から袈裟懸けに切り付けて来たので、ストーンウォールを展開してやった。
「なっ!?」
「何と面妖な!」
「妖術かっ!?」
なんでやねん!
「はぁ、いい加減にしてくれない? こうやって圧倒的強者が話をしようと言って居るのに殴り掛かって来るのは死にたいと言ってるようなもんだと気が付かねぇかな?」
と、魔王覇気では無く英雄覇気の方を放つ、魔王覇気ならこいつら間違い無く一人残らず失神するだろうけど、それやっちゃぁ敵認定だしな。
「なっ!?」
女の子三人は戦意喪失している。
2番手臭い兄ちゃんも、構えこそ崩さないけど既に手足が震えている。
リーダー臭い奴は、唖然としている。
「こ、これは英雄覇気と言う奴だな・・・」
へぇ、良く知ってんなこいつ。
「そうさ、私程になればこの位の芸当は容易い。」
ようやく刀を鞘に納めてくれた。
「やっと会話する気に成った?
なったのならそこに座ってくれないかな?」
土魔法で6個の椅子を作り、その上に緑魔法で蔦を這わせクッションにすると、私はその一つに座る。
そして、リーダーが全員に指示を出して、全員が私の作った椅子に座った。
「済まない、誤解だったようだ。」
「良かったよ、判って貰えて。」
「あれは本当に那須塩原なのか?」
「本当さ、何ならこれから連れてってやろうか?」
「風呂に入りたいとも思うが、生憎俺達は水の上を歩く事は出来ない。」
「歩く必要は無いさ、全員連れて飛ぶだけの事だよ。」
「飛ぶ・・・とは?」
「ああ、文字通り空を飛ばせる事も出来るけど、この場合転移だな、この場の全員をあっちの温泉街へ転移させる。」
「少し理解が及ばないのだが、転移とは?」
「一瞬で居る場所を変えるって事、魔法って奴でね。」
「魔法!?」
「兄貴!やっぱこいつ魔人族じゃ!?」
「くどいヨお前、私は魔人族じゃねぇって、ハイエルフだっつってんだろ?
魔人が英雄覇気なんか使うか?おい。」
刀に手を掛けていたのを辞めるようだ。
「ああ、そうかそうか、先ずはお互いの自己紹介でもしよう、こう言う事は礼儀からだわ、済まない失念してたよ。」
「ああ、そうだ、俺も失念して居た、俺は弥太郎、探索者組合平泉支部の探索者で、このチームのリーダーだ、チーム名は青胴剣士団だ、全員青い胴を付けて居るのがその証だ。」
「拙者、以蔵と申す。」
「私は茜。」
「私は椿。」
「私は百合。」
「私は、グローリー王国から来た、冒険者でハイエルフの、エリー・ナカムラ。
魔法と言う技術を生み出し、全ての属性と医療魔法を統べる者。
人は私を賢者と呼ぶけどね。」
「賢者?」
「うん、まぁ人によっては聖女とも呼ばれるけど。」
「聖女?」
「あ、こっちに来てからは天女って呼ばれたかな?
ああ、火加具土命とか言われて拝まれたな、一回だけだけど。」
「天女? 火加具土命?」
「済まない、君は一体何者なんだ?」
「それは初めから言ってるでしょう? 私はハイエルフだって。
それは良いんだけど、貴女、えっと、椿ちゃん?」
「あ、私?」
「あんたさ、隠してるけど怪我してるでしょ、見せなさい治してやるから。」
「え、あの、えっと・・・」
「隠してんでしょ、そのままこのダンジョン潜って行けばいつか足引っ張る事に成るから治してから行きなさいって言ってんの。」
「椿、本当なのか?」
「じ、実は・・・さっき20階層で、右足を挫いて。」
「さあ、見せなさい、すぐ直してやるから。」
「貴女は、お医者様なの?」
「違わないけど違う、かな?
言ったでしょう、私は聖女と呼ばれてたって。」
そう言いながら椿ちゃんの脚を見る為に、彼女のブーツを脱がせる。
「ほら見なさい!腫れてるじゃん!
こんなに成るまでほっといたらダメでしょ!
ちゃんと見せて!」
「す、すみません・・・」
「ありゃぁ、こりゃダメだ、これ、骨にひび入ってるよ?」
「何だと、それじゃ一休みしたら、一度戻るぞ。」
「これは挫いた訳じゃ無いね? 本当は小型の魔獣だからって油断してて突進を足でカウンターしようと蹴ったよね? 痛かったろ。でも大丈夫だ、今治してやるから。」
「「「「「え??」」」」」
「あの・・・治るの?」
「ん?そう言わなかったか? 治すからそのままじっとしてろ。」
そう言って、取り合えずそんなもん要らないけど詠唱をしてやることにした。
こう言うのは形から入った方が信憑性がな?
「かの者を癒し、活力を与えたまえ、痛みを消し、骨を接げ。
ミドル・ヒール。」
電脳ではその間、ナノマシンに骨の修復と筋肉の炎症を鎮静化させるよう指示して居る。
患部周辺が、集まった魔素によって黒い霧のようなものに覆われ、患部がその闇の中から輝いて見える。
超回復によるエネルギーで発光して居る訳だが。
「ハイ終了、治ったよ。」
もう腫れも引いている。
「え?、もう??」
「うん、治ってるよ?」
「確かに痛く無くなったけど・・・」
椿ちゃんがブーツを履いて立ち上がる。
「その場で飛び跳ねてごらん?」
言われた通りにジャンプして降りた椿ちゃんが驚きの表情を浮かべる。
「本当に何とも無い、むしろ平気だった左足の方が歩き通して踵とか痛いくらい。」
「そうね、アンタ等皆疲れてるわ、SP減ってるもんね。
特別サービスで美味いもん食わしてやるよ、情報提供もして貰ってるからね。」
と言って、この場にテーブルをクリエイトする。
「いや、そこまでして貰うのは悪い。
情報なんか提供して無いだろ?」
「いや、十分な情報提供して貰ったよ、このダンジョンを上の階層に向けて進んだら平泉に出られるんだろ?
大した情報じゃ無いか、ここからかなり離れている筈の場所にショートカットできるなんて。」
「いや、その間魔物がかなり出るんだが・・・」
「そんなもん簡単に蹴散らせるだろ? 私を誰だと思ってるんだ? 英雄覇気が使える実力者だぞ?」
「ま、まぁ、そう言われてみれば。」
こんな会話をしつつ、海ガルーダの、もとい、トリコの肉を揚げた唐揚げや、ご飯に味噌汁など、作り置きしてあった物をテーブルに並べていると、以蔵君が生唾を飲む音が聞こえて来た。
「さ、好きなだけ食べてね、御代わりあるし。」
「くっ! 毒など盛って居らぬであろうな?」
「あのな、言ってんだろ、殺す気ならもう40回は殺されてるぞ、お前。」
「うっ・・・」
「ああ、それと以蔵君、君の刀さっき摘まんじゃった時気付いたんだけど、そろそろその刀、ガタが来てるだろ?
それにはこぼれも幾つか、多分君の構え的に、示現流?
力任せにぶった切るのも悪くは無いけど、もう少し刀を大事に、修理してやるから見せなさい。」
そう言って、素早く刀を抜き去る私。
「あ、ちょ、それは武士の魂!」
「だったらもっと大事にしろっつってんの。」
その刀を、私は柳生流の変則的な下段で構えて一振りして見せる。
「ほぉ、見事なもんだな、柳生流か。」
弥太郎が言うと、ほぼ同時に、今度は私は北辰一刀流の上段構えに変える。
「え? それは俺と同じ北辰一刀流か?」
「お、弥太郎は北辰なのね、でも私は・・・と。」
更に構えを変える、今度は天然離心流一刀中段構え。
「へぇ、片手中段なんて構え、初めて見るけど、驚くほど隙が無いな。」
「まぁ、これでこの刀がどの程度に傷んでるか分かったわ、これだと、打ち直さないとダメだね。」
「そ、そんな!」
「本当さ、刀身のこの辺だな、芯に亀裂が入り始めてる、これがガタつく原因だ。
あ、直しといてやるから飯食ってのんびりしてなさい、ちょっとやんちゃな刀になるかも知れないけどな。」
創成スキル試しちゃおうかな・・・
芯にオリハルコンを封入した玉鋼とミスリルのダマスカス、普通芯だけ別の物が入るって事はあり得ないんだけど、私の創成スキルなら出来る。
ちょっと時間はかかりそうだけどな。
初めは心配そうにしていた以蔵君は、私がどうやって打ち直すのかには興味はあまり無いらしく、一口唐揚げ食ったら夢中でがっついていた。御代わりのリクエストにはストレージから目の前に出してやるって手法で対応。
「ふう、何とか出来たぞ?」
「え?もう??」
「何か?」
「いや、飯食ってる間に出来るなんてあり得ないからな・・・」
「私だから出来るのさ、出来ちゃったんだから文句言うな?」
その完成した刀を試し切りする為に、スチール製の1.7mの棒を地面に突き立てる。
「何をしてるんだ?」
「試し切りの準備だよ?」
「「「「「へ?」」」」」
「何か?」
「それって鉄!」
「そうよ?何かおかしい?」
「いやいやいや!刀折れるだろそれ!」
「そんな事無いわよ?ほら!」
と、居合切りで振り抜き、鞘に納めると。
パチンと鞘に停まる音がした瞬間、スゥっとズレるように、棒の先が落ちた。
「ふ、又詰まらぬ物を切ってしまった・・・」
このセリフを言って見たかったw
「「「「「えぇぇ~~~~!!!」」」」」
「命銘、斬鉄丸」
あえて斬鉄剣と言わない。
はい、どうぞ。
「俺も試し切りして見て、良いか?」
「どうぞ、示現流の上から振り抜く兜割でもすんの?
それだったらこれが良いかな?切る物。」
私が取り出したのは、スチールのインゴット、これをさっきの鉄の棒に固定する。
「はいどうぞ?」
「本当にこれ、斬れるんか?」
「まぁやってごらん、この刀で刃毀れとかするようなら以蔵君の腕が足りないんだろうからね。」
「く、言わせて置けば。」
「お、やる気に成ったか? まぁがんばれ。」
肩の上に突き上げるんじゃ無いかと思うような格好で構えた以蔵は、スチールインゴットを睨み付けるようにして呼吸を整えた。
「チェストぉっ!」
一気に振り抜いた。
スカッと小気味良い音を立てて切れたスチールが、ことりと地面に落ちた。
うん、刃毀れさせる程に未熟では無かったらしい。
「ど、どうだっ!」
「よし、良いんじゃないか?
でも私なら・・・」
素早く以蔵から刀を奪い取った私は、今度は示現流に構えた。
掛け声は無しで、ふっと息を吐きながら振り抜く。
そしてまた、鞘に納めると、それまで繋がって居たスチールインゴットが、すっとズレるようにして、地面に落ちる、繋がって居た訳では無く、切られたのが判って居なかったかのように。
「達人なんてもんじゃ無いな、この剣さばきは・・・」
弥太郎が称賛しつつ、息を吞んだ。
「まぁ、皆この位出来るようになったらここのダンジョンも攻略完了するんじゃ無いかな?
私なら一人でも行けるけど。」
序でだからもう少し採って行こうかなっと。
松茸狩りのコツはね、下から上に探す事。
斜面の上に向かって上を見ながら慎重に上へと移動しながら探すと見つけやすい。
そう言う方向で見ると、落ちた葉が不自然に盛り上がってる所とかを見つける事が出来る。
そう言う所を一つ見つけたら落ち葉をそっと退けてあげると、そこに見つかる訳なんだけど、一本見つけると、松茸は妙な生え方をする特徴があって、円を描くように生える。
だからその周囲を探して見て幾本かを見つけると円の全貌が判って来るので、円の規模や向きを認識出来たらその円は一網打尽に出来る訳。
で、私の反則技としては、落ち葉を風魔法で巻き上げる事で、円の形を見つけやすいんだ。
まぁ、それしなくても、最近じゃ鑑定スキルと遠視スキルが融合して千里眼なんてスキルが確立し始めて居るので、未だレベルは低いけどMP消費さえ気にしなければ松茸で検索しちゃうと見つかる事にさっき気付いたけどなw
取り合えず、気を取り直して松茸を回収し終えて、さっさと湖畔へと降りた私は、又しても水の上を歩いて新しい道を見つける事にした。
あったよ、どの道にも繋がって居ない、その湖湾に降りて途切れている、そこだけの道。
この道を登って行けば多分どこかに出る筈、何処に出るかは知らんがw
で、その見つけた道を登って行った私は、後悔してしまう事に成った・・・
「・・・えっと・・・
ダンジョンやんかっ!」
明らかに普通の洞窟とは思えない異様な威圧感を放つそれは、すでにダンジョンとなってから20年程は経って居そうだった。
20年か・・・いや、25年位経ってる可能性もあるな、すると、階層は120階層を超える筈。
って事は、だ、ここにも魔族がちょっかいかけに来ていたっつー事だよな?
ダンジョンマスターが何者かは知らんけど、ダンジョンコアだきゃぁ魔王が作ってる事は既に研究結果で判ってるんだ。
魔人族と言う名のホムンクルスをダンジョンマスターにしているのか、はたまた強力な魔物、例えばこの間倒した様なヌシ級の鹿さんみたいなプチ災害級の魔獣だったりする可能性もある。
こんな山の中でダンジョンが飽和して魔物が外へと氾濫し始めたりしたら、ひとたまりも無い。
この温泉の街は、お世話になったしとても気に入って居るので護ってやりたい。
気を引き締めて、ダンジョンへと入ろうとしたその時、出て来るパーティーが居た・・・え??
こんな湖まで行く道しか無い所に冒険者?
不思議に思った私は、彼らに声を掛けて見ようとしたんだけど、逆に向うから先に声を掛けられた。
「君、PTはどうした?まさか全滅したのか?」
「へ?いや、むしろ私が色々聞きたいのだけど。」
「ん?どう言う事だ?
ここは25階層の安全地帯ポイントだろ?」
「へ? 何それ、ここは五色沼の、外れ湖畔だけど?」
「へ???どう言う事だ?
ここはダンジョンの中の筈だが。」
「いや? ここは五色沼だよ? ほら、この沼の向こうを良く見て?あそこに鳥居が有るでしょう?
で、あっちにはホラ、一寸した街並みが見えるでしょう?」
「訳が分からん、俺達は平泉のダンジョンを攻略に来た探索者組合構成員だが?」
「え?平泉ってかなり距離がある筈じゃ無いの?
あそこに見える街って、那須塩原温泉郷だよ?」
「ウソだろ?平泉から相当離れているぞ?」
「ウソじゃ無いってば、私はあそこから来たんだから。」
探索者パーティーが急に戦闘態勢になる。
「貴様何者だ。」
「ん?私? 私は、御覧の通りハイエルフだよ。
旅の途中で、あの温泉で2泊して、こうして探索している内に此処に辿り着いたんだ。」
「では、道も無いのにどうやってこの場所へ来られたと言うんだ?」
スッゲェ警戒されてる。
「ああ、私達ハイエルフに掛かればこんな湖、無いに等しいからね、こうやって歩いて来たのさ。」
と言って、水の上を歩いて見せると、ぽかんと口を開けて呆れたような顔をしている。
「さては貴様、魔人族!?」
更に今にも飛び掛かって来そうな状態で抜刀までしてしまった。
ああ、この大陸ってやっぱ日本にそっくりなんだ、日本刀だね、皆。
5人の侍っぽい男女に囲まれてしまったが、慌てない。
「あのね、私がアンタらの敵だったらもうとっくに殺してるし、ここは安全地帯って触れ込みだったんじゃ無いの?
そんな所に敵が出る?
更に言うけど、こんな可愛いうら若きハイエルフの美少女に対して抜刀するってどういう気分な訳?
私武器らしいものも持って無いでしょう?」
「煩い! 惑わされるなよ! 魔人族だ、こいつは!」
「あのな、100歩譲って魔物族だったとして、こんなに会話した事あんの? 会話出来る相手とは話し合いが出来るって思わない? 私はアンタたちに勝手に敵認定されて此処で切り捨てられるって話な訳?」
「これ以上聞き耳持たん! 切るっ!」
突然飛び込んで来たリーダーらしきおっさんをひらっと躱して沼にドボンと落とす。
「はぁ、どうしても私と戦いたいのね、じゃあ纏めていらっしゃい、死なない程度に相手してやっから。」
「笑止! 我々は40階層まで潜れる強者ぞ、死なぬ程度に留めてやるのはこっちの台詞で御座る!」
2番手みたいな若い男子が何だか弱モブくせぇセリフ吐いて突っ込んで来た。
刺突ですか、そんなもんは、こう。
刀の切っ先を右手の親指と人差し指でキュッと摘まんで右側兄流し、突っ込んで来た力を利用して合気道の要領でベクトルを変え、体を回転させるように後方へ投げ飛ばす。
後の三人は女の子ばっかり。
「ねえ、あんた達は話聞いてくれる気に成ってくれたかしら?」
「くっ! 御覚悟!」
一人目が突っ込んで来て、その後に二人目、三人目が追随する様に突っ込んで来たが普通の女の子の腕力なんかで私の障壁が破れる訳が無いので、そのまま受けてやった。
その三人を相手にしている隙に、背後からリーダー君が私を背後から袈裟懸けに切り付けて来たので、ストーンウォールを展開してやった。
「なっ!?」
「何と面妖な!」
「妖術かっ!?」
なんでやねん!
「はぁ、いい加減にしてくれない? こうやって圧倒的強者が話をしようと言って居るのに殴り掛かって来るのは死にたいと言ってるようなもんだと気が付かねぇかな?」
と、魔王覇気では無く英雄覇気の方を放つ、魔王覇気ならこいつら間違い無く一人残らず失神するだろうけど、それやっちゃぁ敵認定だしな。
「なっ!?」
女の子三人は戦意喪失している。
2番手臭い兄ちゃんも、構えこそ崩さないけど既に手足が震えている。
リーダー臭い奴は、唖然としている。
「こ、これは英雄覇気と言う奴だな・・・」
へぇ、良く知ってんなこいつ。
「そうさ、私程になればこの位の芸当は容易い。」
ようやく刀を鞘に納めてくれた。
「やっと会話する気に成った?
なったのならそこに座ってくれないかな?」
土魔法で6個の椅子を作り、その上に緑魔法で蔦を這わせクッションにすると、私はその一つに座る。
そして、リーダーが全員に指示を出して、全員が私の作った椅子に座った。
「済まない、誤解だったようだ。」
「良かったよ、判って貰えて。」
「あれは本当に那須塩原なのか?」
「本当さ、何ならこれから連れてってやろうか?」
「風呂に入りたいとも思うが、生憎俺達は水の上を歩く事は出来ない。」
「歩く必要は無いさ、全員連れて飛ぶだけの事だよ。」
「飛ぶ・・・とは?」
「ああ、文字通り空を飛ばせる事も出来るけど、この場合転移だな、この場の全員をあっちの温泉街へ転移させる。」
「少し理解が及ばないのだが、転移とは?」
「一瞬で居る場所を変えるって事、魔法って奴でね。」
「魔法!?」
「兄貴!やっぱこいつ魔人族じゃ!?」
「くどいヨお前、私は魔人族じゃねぇって、ハイエルフだっつってんだろ?
魔人が英雄覇気なんか使うか?おい。」
刀に手を掛けていたのを辞めるようだ。
「ああ、そうかそうか、先ずはお互いの自己紹介でもしよう、こう言う事は礼儀からだわ、済まない失念してたよ。」
「ああ、そうだ、俺も失念して居た、俺は弥太郎、探索者組合平泉支部の探索者で、このチームのリーダーだ、チーム名は青胴剣士団だ、全員青い胴を付けて居るのがその証だ。」
「拙者、以蔵と申す。」
「私は茜。」
「私は椿。」
「私は百合。」
「私は、グローリー王国から来た、冒険者でハイエルフの、エリー・ナカムラ。
魔法と言う技術を生み出し、全ての属性と医療魔法を統べる者。
人は私を賢者と呼ぶけどね。」
「賢者?」
「うん、まぁ人によっては聖女とも呼ばれるけど。」
「聖女?」
「あ、こっちに来てからは天女って呼ばれたかな?
ああ、火加具土命とか言われて拝まれたな、一回だけだけど。」
「天女? 火加具土命?」
「済まない、君は一体何者なんだ?」
「それは初めから言ってるでしょう? 私はハイエルフだって。
それは良いんだけど、貴女、えっと、椿ちゃん?」
「あ、私?」
「あんたさ、隠してるけど怪我してるでしょ、見せなさい治してやるから。」
「え、あの、えっと・・・」
「隠してんでしょ、そのままこのダンジョン潜って行けばいつか足引っ張る事に成るから治してから行きなさいって言ってんの。」
「椿、本当なのか?」
「じ、実は・・・さっき20階層で、右足を挫いて。」
「さあ、見せなさい、すぐ直してやるから。」
「貴女は、お医者様なの?」
「違わないけど違う、かな?
言ったでしょう、私は聖女と呼ばれてたって。」
そう言いながら椿ちゃんの脚を見る為に、彼女のブーツを脱がせる。
「ほら見なさい!腫れてるじゃん!
こんなに成るまでほっといたらダメでしょ!
ちゃんと見せて!」
「す、すみません・・・」
「ありゃぁ、こりゃダメだ、これ、骨にひび入ってるよ?」
「何だと、それじゃ一休みしたら、一度戻るぞ。」
「これは挫いた訳じゃ無いね? 本当は小型の魔獣だからって油断してて突進を足でカウンターしようと蹴ったよね? 痛かったろ。でも大丈夫だ、今治してやるから。」
「「「「「え??」」」」」
「あの・・・治るの?」
「ん?そう言わなかったか? 治すからそのままじっとしてろ。」
そう言って、取り合えずそんなもん要らないけど詠唱をしてやることにした。
こう言うのは形から入った方が信憑性がな?
「かの者を癒し、活力を与えたまえ、痛みを消し、骨を接げ。
ミドル・ヒール。」
電脳ではその間、ナノマシンに骨の修復と筋肉の炎症を鎮静化させるよう指示して居る。
患部周辺が、集まった魔素によって黒い霧のようなものに覆われ、患部がその闇の中から輝いて見える。
超回復によるエネルギーで発光して居る訳だが。
「ハイ終了、治ったよ。」
もう腫れも引いている。
「え?、もう??」
「うん、治ってるよ?」
「確かに痛く無くなったけど・・・」
椿ちゃんがブーツを履いて立ち上がる。
「その場で飛び跳ねてごらん?」
言われた通りにジャンプして降りた椿ちゃんが驚きの表情を浮かべる。
「本当に何とも無い、むしろ平気だった左足の方が歩き通して踵とか痛いくらい。」
「そうね、アンタ等皆疲れてるわ、SP減ってるもんね。
特別サービスで美味いもん食わしてやるよ、情報提供もして貰ってるからね。」
と言って、この場にテーブルをクリエイトする。
「いや、そこまでして貰うのは悪い。
情報なんか提供して無いだろ?」
「いや、十分な情報提供して貰ったよ、このダンジョンを上の階層に向けて進んだら平泉に出られるんだろ?
大した情報じゃ無いか、ここからかなり離れている筈の場所にショートカットできるなんて。」
「いや、その間魔物がかなり出るんだが・・・」
「そんなもん簡単に蹴散らせるだろ? 私を誰だと思ってるんだ? 英雄覇気が使える実力者だぞ?」
「ま、まぁ、そう言われてみれば。」
こんな会話をしつつ、海ガルーダの、もとい、トリコの肉を揚げた唐揚げや、ご飯に味噌汁など、作り置きしてあった物をテーブルに並べていると、以蔵君が生唾を飲む音が聞こえて来た。
「さ、好きなだけ食べてね、御代わりあるし。」
「くっ! 毒など盛って居らぬであろうな?」
「あのな、言ってんだろ、殺す気ならもう40回は殺されてるぞ、お前。」
「うっ・・・」
「ああ、それと以蔵君、君の刀さっき摘まんじゃった時気付いたんだけど、そろそろその刀、ガタが来てるだろ?
それにはこぼれも幾つか、多分君の構え的に、示現流?
力任せにぶった切るのも悪くは無いけど、もう少し刀を大事に、修理してやるから見せなさい。」
そう言って、素早く刀を抜き去る私。
「あ、ちょ、それは武士の魂!」
「だったらもっと大事にしろっつってんの。」
その刀を、私は柳生流の変則的な下段で構えて一振りして見せる。
「ほぉ、見事なもんだな、柳生流か。」
弥太郎が言うと、ほぼ同時に、今度は私は北辰一刀流の上段構えに変える。
「え? それは俺と同じ北辰一刀流か?」
「お、弥太郎は北辰なのね、でも私は・・・と。」
更に構えを変える、今度は天然離心流一刀中段構え。
「へぇ、片手中段なんて構え、初めて見るけど、驚くほど隙が無いな。」
「まぁ、これでこの刀がどの程度に傷んでるか分かったわ、これだと、打ち直さないとダメだね。」
「そ、そんな!」
「本当さ、刀身のこの辺だな、芯に亀裂が入り始めてる、これがガタつく原因だ。
あ、直しといてやるから飯食ってのんびりしてなさい、ちょっとやんちゃな刀になるかも知れないけどな。」
創成スキル試しちゃおうかな・・・
芯にオリハルコンを封入した玉鋼とミスリルのダマスカス、普通芯だけ別の物が入るって事はあり得ないんだけど、私の創成スキルなら出来る。
ちょっと時間はかかりそうだけどな。
初めは心配そうにしていた以蔵君は、私がどうやって打ち直すのかには興味はあまり無いらしく、一口唐揚げ食ったら夢中でがっついていた。御代わりのリクエストにはストレージから目の前に出してやるって手法で対応。
「ふう、何とか出来たぞ?」
「え?もう??」
「何か?」
「いや、飯食ってる間に出来るなんてあり得ないからな・・・」
「私だから出来るのさ、出来ちゃったんだから文句言うな?」
その完成した刀を試し切りする為に、スチール製の1.7mの棒を地面に突き立てる。
「何をしてるんだ?」
「試し切りの準備だよ?」
「「「「「へ?」」」」」
「何か?」
「それって鉄!」
「そうよ?何かおかしい?」
「いやいやいや!刀折れるだろそれ!」
「そんな事無いわよ?ほら!」
と、居合切りで振り抜き、鞘に納めると。
パチンと鞘に停まる音がした瞬間、スゥっとズレるように、棒の先が落ちた。
「ふ、又詰まらぬ物を切ってしまった・・・」
このセリフを言って見たかったw
「「「「「えぇぇ~~~~!!!」」」」」
「命銘、斬鉄丸」
あえて斬鉄剣と言わない。
はい、どうぞ。
「俺も試し切りして見て、良いか?」
「どうぞ、示現流の上から振り抜く兜割でもすんの?
それだったらこれが良いかな?切る物。」
私が取り出したのは、スチールのインゴット、これをさっきの鉄の棒に固定する。
「はいどうぞ?」
「本当にこれ、斬れるんか?」
「まぁやってごらん、この刀で刃毀れとかするようなら以蔵君の腕が足りないんだろうからね。」
「く、言わせて置けば。」
「お、やる気に成ったか? まぁがんばれ。」
肩の上に突き上げるんじゃ無いかと思うような格好で構えた以蔵は、スチールインゴットを睨み付けるようにして呼吸を整えた。
「チェストぉっ!」
一気に振り抜いた。
スカッと小気味良い音を立てて切れたスチールが、ことりと地面に落ちた。
うん、刃毀れさせる程に未熟では無かったらしい。
「ど、どうだっ!」
「よし、良いんじゃないか?
でも私なら・・・」
素早く以蔵から刀を奪い取った私は、今度は示現流に構えた。
掛け声は無しで、ふっと息を吐きながら振り抜く。
そしてまた、鞘に納めると、それまで繋がって居たスチールインゴットが、すっとズレるようにして、地面に落ちる、繋がって居た訳では無く、切られたのが判って居なかったかのように。
「達人なんてもんじゃ無いな、この剣さばきは・・・」
弥太郎が称賛しつつ、息を吞んだ。
「まぁ、皆この位出来るようになったらここのダンジョンも攻略完了するんじゃ無いかな?
私なら一人でも行けるけど。」
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