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冒険の旅

湖畔散策

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 ―エリーMkⅢ-
「いたたたたた・・・」
 朝だ、体中がイテェ、流石に畳の部屋に煎餅布団敷いて寝るのは慣れない、体中痛いよ。
 だが、少し標高も高いせいか、空気が清々しくて爽快な気分になる。
「ちなみにこの湖は何て名前なの?」
 布団を下げに来た仲居さんに聞いたら、五色沼って言うらしい・・・ん?
 それはもしかして印旛沼って奴です?こう見えて私は、方向音痴だけど地名等には割と明るい。
 まぁ、要するに電脳チートなだけなんだが。
 自慢では無いが、ナノマシンデータリンクでどっちがどの方向か、今歩いてるのがどの方角かの情報が無い状態にして旅したら確実に元の街に戻る自信がある。
 何処の街にも辿り着かずに、だけどな?
 あんなもの勘で何処かに辿り着ける奴はただの野生児だとすら思って居るので私自身が悪い訳では無いのでその辺は問題無い。(本当は問題しか無い)
 うっさいわ、良いじゃん、一つぐらい弱点が有った方が可愛いだろ?何か文句あるか?
 しかし、この規模で沼って言うなって言いたい位のサイズなんですけど。
 それにね、思いの外水も奇麗な気がする。
 これは、一度釣りでもしてみよう。
 なんか美味しい魚でも釣れないかなぁと思って、ボートを浮かべて釣り糸を垂らして見ると、早速何かかかった。
 釣り上げて見ると、鮭みたいな魚なんだけど、デカい・・・これでもかっつー位デカい。
 念の為鑑定をしてみると、鮭では無くて、岩魚だった。
 魔物化してたけどな。
 どんだけでけぇかって、私は全長3mのボートに乗ってたんだけど、それの上に載せても前後がはみ出す、何だこれ・・・釣り上げた瞬間にストレージで受け止めたおかげで釣り上げる事には成功したけどさ、デカすぎだろ、これ。
 他に釣れたのは、10㎝以上もある、タナゴと思われる魚、15㎝にも及ぶ大きさのワカサギ等、これでもかっつー位この湖の魚は全体的に巨大だった。
 もっとすごいの釣れそうだな、そう思った私は、更にルアーをクリエイトで作って投げていると、とんでもない引きが返って来た。
 何とかやり取りして釣り上げると、5mもあるブラウントラウトだった・・・何だこれ、デカいにも程が有るでしょ・・・
 でもまぁ、淡水魚の中でも有数の美味しい魚だった筈なので、しっかりストレージで解体して置いた。
 鮭みたいな切り身にしてあるよ、後で食べて見よう。
 湖の上から改めて温泉宿の付近を眺めてみると、湖畔の温泉だと言うのにかなり寂れた場所で、街になる部分の規模が特に小さかった。
 ああうん、何となく解っちゃ居たけど、ここってマジで寂れた温泉だったんだね。
 いや可笑しいと思ったのよ、宿のサービスはヤケに良いわ、私以外に泊まってる人も居無さそうだわ、明らかに一番景観の良さげな部屋に通されてたしな。
 その上、仲居さんにチップはずんだ私のせいかと思うんだけど、やたらにご用は無いかって来るしな。
 ん? 仲居さんは普通チップ受け取らないって?
 そうだよ?普通に渡しちゃったら受け取らないさ、ああ言う物はポチ袋に入れて、だね、皆で美味しい物でも食べてねっつって渡すんだよ。
 女将さんにも解るようにポチ袋に入れてあげるのがマナーなのです。
 何でかって、女将さんに判る様に渡してあげる事で、私は上客ですよって言うアピールに成るからなんだ。
 一段上のサービスが受けられるんだよ、知らなかった?
 一般人はそれを知らなさすぎるんだ。
 そりゃ剝き出しの現金でチップ渡されたら、仲居さんとしては怖いわなぁ、自分の体が目的なんじゃ無いかと思っちゃうでしょ?相手が女性だったとしてもそう言う趣味の人かも知れないしね。
 温泉旅館ってのはそう言う所。
 もっと言うと、ああ言うのは元々桶屋と変わらないんだ。
 だからね。女将さんに言って、あの仲居と一晩っつってお金渡すとその仲居さんを好きに出来ちゃうのが元々の宿のシステム。
 そう言う昔からの伝統が有るからこそ仲居さんは勝手にチップ受け取っちゃダメなんだ、もしそれして女将さんにバレるとキツイお仕置きが待ってたり、ってのがあの業界の常識。
 仲居さんとチップに関してのウンチク脱線はここまでにしておきましょう。
 で、だ、湖から戻って温泉街って奴を散策して見る。
 山間の温泉街なら何処にでもある鮎の塩焼きとか売ってるね、美味しそうなので一本頂く。
 うん、普通に美味しい。
 鮎って言うお魚はさ、コケを食べて育ってるので、肉の香りが瓜みたいな良い香りがするんだ。
 でね、又ウンチクで悪いんだけど、長野県の佐久の辺りで頂けるコイの洗いって奴はね、泥臭さを無くして美味しくする為に、古い井戸の中で鯉を育てる、そんでもって、古い井戸の中には苔がむして居る、それを食べさせるのでえさを与えないようにする。
 出荷近い鯉はそう言う風に鮎と同じ物食べさせているので臭みが少なくて美味しい。
 と言う事なのだそうだ。
 更に散策して行くと、鹿肉の串焼き売ってるじゃん、美味しいんだよ、あれマジで。
 ちなみに、聞いて見ると、この周囲には鹿の魔獣も結構出るそうで、又それもデケェんだ、聞いてる内にそのサイズ感がオカシイ事に気が付く。
 うん、角を落とした頭から尻尾までで、6~8mもあるらしい。この辺はデカくなるタイプの魔獣が多いんかね?
 で、この鹿肉の串焼きは、魔物化して無い奴を狩った奴らしいんだけど、十分美味しかった。
 魔物化した巨大鹿だったらさぞかし美味しいのだろう。
 今まで平均して言える事は、魔物になった物の方が美味しいと言うのがこの世界の定説。
 道理で肉にする家畜を育てる奴が少ない訳だよ。
 今までで牛育ててたセドリックさん位しか育ててる人見た事ねぇもんな。
 セドリック領の牛のお肉は実はあの国の貴族の中では割と有名らしい。
 まぁ、肉にしたら輸送する手段が無い為に、買うのなら一頭丸々生きたまま運ぶ事に成るそうなんだけどね・・・
 やっぱこの世界に冷蔵庫とか作ってやった方が商売になりそうだ、本体頑張れ?
 先ずは電力供給からやんなきゃいけないからめんどくさそうだけどな。
 それにしても思ってたよりも規模が小さい温泉街だったもんで、他に行く所が無いぞ・・・」二晩は多かったかな、イヤでももう一度ゆっくり温泉入りたいし、まぁいっか。
 このちっぽけな街では流石に探索者組合も無いし、フラフラと湖の周囲の森の中歩いてたら、突然出ました巨大鹿!
 やったぜ、私の引き強いよね、これ絶対旨い奴!
 鹿ってね、人間見かけると委縮して全身の筋肉が強張ってしまう為に血抜きが難しくなってしまって結果不味い肉になるそうで、鹿を狩る時は、向うがこっちを認識出来ない距離で、ライフルで一撃で頭を撃ち抜いてやるのが美味しい鹿肉の為の鹿撃ちの方法なんだそう。
 って事で、魔物だから委縮しない気もしないでも無いけども真似をしてみる事にする。空中からなら認識出来ねぇだろって事で、風魔法で浮遊。
 で、水深12000mから召喚した直径4㎜の水柱でキッチリ頭を背後から撃ち抜いてあげる事にした。
 クリーンヒット、流石私。
 倒した鹿を回収しに行くと、これまた見事なサイズだった。
 ヌシ?
 スタジオ〇ブリの某アニメ映画に出て来る鹿の姿の神様みたいな奴なんじゃねぇかっつー位のでかい奴だった。
 これはやらかしたかな?
 まぁ大丈夫だろ、兎に角これで旅の途中の食事の材料は確保完了したね。
 ストレージは私同士で繋がってるからあっちでも取り出す事が出来るので全部本体に取られないように、一度取り出してお肉の塊に紙で名前書いとこう・・・『mkⅢ』・・・っと、これで良し。
 後日、食べようと思ったら見当たらないのでストレージ確認したら、一枚の紙を発見、それには。
「一人で食べるなんてズルいぞ、マリイの為に寄こしなさい。」って書いた手紙だった・・・シクシク
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