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ストバーラ帝国編

緊急合同依頼

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 バチード支部に初めて来た日から3ヶ月。冬真っ只中だがこの国は1年中暖かい。さすがに朝と夜は冷え込むが、外套を羽織れば問題ない。
 僕と兄さんはいまだに勧誘を受けていた。最近はこの人達本当にめげないなと感心しているほどだ。

「アイザック!今日こそ『鋼鉄の男』に加入してもらうぞ!」
「断る」
「ルカ、『乙女連合』に入ってトップを目指すぞ!美少年枠は君しかいない!」
「お断りします」

「アルトゥロ、さすがにしつこいんじゃないか?むさ苦しい見た目同様、勧誘もスマートじゃないとは……やれやれ」
「あー?セレナお前最近ルカのストーカーってあだ名つけられてるぜ?お前には負けるわ」
「何っ!誰だそんなあだ名をつけたのは!?成敗してやる」
「そこまでは知らねーよ」

 いつ見てもアルトゥロとセレナは仲がいい。本人達は否定するが。今日も勧誘はそこそこにふたりで言い合っている。
 一見するとセレナがアルトゥロにキャンキャン噛みついているだけだが、痴話喧嘩に巻き込まれた気分だ。

「はーい、おふたりさん。そこまでにしときな。アイザック、いつもうちのリーダーがすまんな」
「別に」
「アルトゥロ、早く依頼決めるぞ」
「すまんな、エクトル。セレナのやつがな……」
「なっ!私のせいにする気か!」
「うるさい。もう行くよ」
「パウラ!あの男が!」
「後で聞く。ルカごめんね」
「パウラは気にしないで」
 痴話喧嘩の後に仲間が回収していくのも定番の流れになった。
 エクトルは『鋼鉄の男』の副リーダー。斥候で攻撃魔法も得意、なんとも器用な男だ。パーティーを陰で支えている実力者である。アルトゥロも彼には頭が上がらないようだ。

 僕達もそろそろ依頼を確認するかと動いた瞬間、入り口の扉が音を立てて勢いよく開いた。
「緊急依頼です!銀級以上のパーティーはいらっしゃいますか!」
「金級パーティー『鋼鉄の男』だ。全員揃ってる」
「銀級パーティー『乙女連合』だ。何があった?」
「オークの集落です!数は150!森の浅いところにいつのまにか集落ができてました。オークジェネラルがいる可能性もあります」
「わかった!セレナ、行くぞ」
「ああ」
 オークが150体か。オーク自体は銅級相当の強さだが群れになると厄介だ。

「よし!アイザックとルカも来てくれ!」
「は?セレナお前正気か?」
「私達の活躍を見たら、気が変わってパーティーに入りたくなるかもしれないだろ!それにアイザックはあきらかに実力者だ。お前も確かめてみたいだろ」
「まあ、たしかに。セレナお前こんな時だけ頭が冴えるな」
「お前はいつも一言余計なんだよ!」

 なんだかいきなり巻き込まれた気がする。断ってもいいが今は緊急事態だ。素直に従おう。
「兄さん、僕達も行こうか」
「そうだな」
 合同依頼は本気の魔法が使えないので、あまり受けたくなかったが仕方ない。僕は鉄級だし、戦闘は期待されてないみたいだから楽をさせてもらおう。
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