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第一話
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現実はかくも厳しいものなのでしょうか。
「えっ、今なんて?」
私、ユリア・ペトリは思わず聞き返しました。
険しい顔をしたベネデット——私の婚約者でありタドリーニ侯爵家嫡男である彼は、栗毛のくせっ毛が印象的なちょっとハンサムながらも普段から厳しい方でしたが、今日はより一層声を強張らせて、冷酷にもこう宣言しました。
「ユリア・ペトリ。残念だがお前との婚約は破棄する。以上だ、帰れ」
しっしと犬のようにタドリーニ侯爵家のお屋敷の玄関から追い立てられそうになって、私は涙目になりながらその理由を尋ねようとしますが、言葉になりません。
「ど、どどどどういう」
「東方の蛮族ウェンダロスに攻め込まれたペトリ辺境伯家は助からん。国王陛下はペトリ辺境伯領の放棄を決定された。つまり、ペトリ辺境伯家はこのカレンド王国にはもう存在しない」
さすがベネデット、見事な三段論法というやつでしょうか。要するに、私の実家ペトリ辺境伯家は——なくなった!?
何ということでしょう、私、貴族ではなくなってしまっていませんか!?
そう言いたいのですが、私はあいにくとおしゃべりではなく、驚きのあまり上手く舌も回りません。
私はベネデットにポイっと玄関の外へと放り出され、こう言い捨てられました。
「この俺が、平民に成り下がった女と婚約を維持するとでも? タドリーニ侯爵家を馬鹿にするのも大概にしろ」
その言葉が終わるやいなや、タドリーニ侯爵家の執事たちがやってきて、玄関の扉をパタンと閉めてしまいました。
私は呆然としていましたが——だめです、時は金なり、ぼうっとしている時間はありません。
何とかしなくては。どうやってやるのかは分からない、でも何もしないわけにはいかない。
私は覚悟を決めて、タドリーニ侯爵家を後にしました。
「えっ、今なんて?」
私、ユリア・ペトリは思わず聞き返しました。
険しい顔をしたベネデット——私の婚約者でありタドリーニ侯爵家嫡男である彼は、栗毛のくせっ毛が印象的なちょっとハンサムながらも普段から厳しい方でしたが、今日はより一層声を強張らせて、冷酷にもこう宣言しました。
「ユリア・ペトリ。残念だがお前との婚約は破棄する。以上だ、帰れ」
しっしと犬のようにタドリーニ侯爵家のお屋敷の玄関から追い立てられそうになって、私は涙目になりながらその理由を尋ねようとしますが、言葉になりません。
「ど、どどどどういう」
「東方の蛮族ウェンダロスに攻め込まれたペトリ辺境伯家は助からん。国王陛下はペトリ辺境伯領の放棄を決定された。つまり、ペトリ辺境伯家はこのカレンド王国にはもう存在しない」
さすがベネデット、見事な三段論法というやつでしょうか。要するに、私の実家ペトリ辺境伯家は——なくなった!?
何ということでしょう、私、貴族ではなくなってしまっていませんか!?
そう言いたいのですが、私はあいにくとおしゃべりではなく、驚きのあまり上手く舌も回りません。
私はベネデットにポイっと玄関の外へと放り出され、こう言い捨てられました。
「この俺が、平民に成り下がった女と婚約を維持するとでも? タドリーニ侯爵家を馬鹿にするのも大概にしろ」
その言葉が終わるやいなや、タドリーニ侯爵家の執事たちがやってきて、玄関の扉をパタンと閉めてしまいました。
私は呆然としていましたが——だめです、時は金なり、ぼうっとしている時間はありません。
何とかしなくては。どうやってやるのかは分からない、でも何もしないわけにはいかない。
私は覚悟を決めて、タドリーニ侯爵家を後にしました。
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