8 / 16
第八話
しおりを挟む
「こちらが、エイダです。裏庭の管理人をやっております」
「は、はい! お初にお目にかかります、エイダ・ルイスと申します!」
リュドミラ王太后は、わずかに微笑んでくれた。
「初めまして、エイダ。お話はかねがね、世話になっているデ・ヴァレスからも孫のエリヴィラからも聞いておりますわ」
「お、畏れ多いことでございます」
「このような姿をお見せしてしまってごめんなさいね。歳を取ると体が言うことを聞かないものだから、このまま失礼するわ」
「どうかお気遣いなく! 私ごとき、陛下のお声を聞かせていただけるだけで十二分に幸運でございます」
このとき、私はものすごく緊張していた。国母であるリュドミラ王太后と顔を合わせ、ましてやお声をかけていただけるなんて、一介の宮廷メイドにも裏庭の管理人にも分不相応だ。
だが、リュドミラ王太后はなぜ私を呼んだのか。その疑問は、すぐに明らかにされた。
リュドミラ王太后がさっそく本題に入ったのだ。
「お時間を取らせると申し訳ないから、手短にお伝えするわね。エイダ、あなたにお願いがあるの」
「私に、ですか?」
「ええ。あなた、結婚はしていないわね?」
「はい、独身でございます」
「では、ちょうどよかったわ。私の主治医であるトゥルトゥラ博士の嫡男、カレヴィとお見合いをしてほしいの」
あまりにも突然の話に、私は一瞬思考が停止して、それから復唱してやっと話を理解できた。
「お見合い、お見合い……私が?」
「ええ。草花の扱いに長けた女性を探していたのよ。とりあえず、会うだけ会ってみてくれないかしら」
言いたいことはいろいろあるが、リュドミラ王太后に口答えは許されないし、畏れ多い。
私はすぐに了承した。
「か、かしこまりました。では、カレヴィ様と会ってまいります」
お見合いしてすぐに結婚というわけではない、会うだけなら問題ないだろう。軽い気持ちでそう思って、私はカレヴィ・トゥルトゥラという男性と会うことになった。
「は、はい! お初にお目にかかります、エイダ・ルイスと申します!」
リュドミラ王太后は、わずかに微笑んでくれた。
「初めまして、エイダ。お話はかねがね、世話になっているデ・ヴァレスからも孫のエリヴィラからも聞いておりますわ」
「お、畏れ多いことでございます」
「このような姿をお見せしてしまってごめんなさいね。歳を取ると体が言うことを聞かないものだから、このまま失礼するわ」
「どうかお気遣いなく! 私ごとき、陛下のお声を聞かせていただけるだけで十二分に幸運でございます」
このとき、私はものすごく緊張していた。国母であるリュドミラ王太后と顔を合わせ、ましてやお声をかけていただけるなんて、一介の宮廷メイドにも裏庭の管理人にも分不相応だ。
だが、リュドミラ王太后はなぜ私を呼んだのか。その疑問は、すぐに明らかにされた。
リュドミラ王太后がさっそく本題に入ったのだ。
「お時間を取らせると申し訳ないから、手短にお伝えするわね。エイダ、あなたにお願いがあるの」
「私に、ですか?」
「ええ。あなた、結婚はしていないわね?」
「はい、独身でございます」
「では、ちょうどよかったわ。私の主治医であるトゥルトゥラ博士の嫡男、カレヴィとお見合いをしてほしいの」
あまりにも突然の話に、私は一瞬思考が停止して、それから復唱してやっと話を理解できた。
「お見合い、お見合い……私が?」
「ええ。草花の扱いに長けた女性を探していたのよ。とりあえず、会うだけ会ってみてくれないかしら」
言いたいことはいろいろあるが、リュドミラ王太后に口答えは許されないし、畏れ多い。
私はすぐに了承した。
「か、かしこまりました。では、カレヴィ様と会ってまいります」
お見合いしてすぐに結婚というわけではない、会うだけなら問題ないだろう。軽い気持ちでそう思って、私はカレヴィ・トゥルトゥラという男性と会うことになった。
19
お気に入りに追加
383
あなたにおすすめの小説
【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした
楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。
仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。
◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪
◇全三話予約投稿済みです
【本編完結】美女と魔獣〜筋肉大好き令嬢がマッチョ騎士と婚約? ついでに国も救ってみます〜
松浦どれみ
恋愛
【読んで笑って! 詰め込みまくりのラブコメディ!】
(ああ、なんて素敵なのかしら! まさかリアム様があんなに逞しくなっているだなんて、反則だわ! そりゃ触るわよ。モロ好みなんだから!)『本編より抜粋』
※カクヨムでも公開中ですが、若干お直しして移植しています!
【あらすじ】
架空の国、ジュエリトス王国。
人々は大なり小なり魔力を持つものが多く、魔法が身近な存在だった。
国内の辺境に領地を持つ伯爵家令嬢のオリビアはカフェの経営などで手腕を発揮していた。
そして、貴族の令息令嬢の大規模お見合い会場となっている「貴族学院」入学を二ヶ月後に控えていたある日、彼女の元に公爵家の次男リアムとの婚約話が舞い込む。
数年ぶりに再会したリアムは、王子様系イケメンとして令嬢たちに大人気だった頃とは別人で、オリビア好みの筋肉ムキムキのゴリマッチョになっていた!
仮の婚約者としてスタートしたオリビアとリアム。
さまざまなトラブルを乗り越えて、ふたりは正式な婚約を目指す!
まさかの国にもトラブル発生!? だったらついでに救います!
恋愛偏差値底辺の変態令嬢と初恋拗らせマッチョ騎士のジョブ&ラブストーリー!(コメディありあり)
応援よろしくお願いします😊
2023.8.28
カテゴリー迷子になりファンタジーから恋愛に変更しました。
本作は恋愛をメインとした異世界ファンタジーです✨
学園にいる間に一人も彼氏ができなかったことを散々バカにされましたが、今ではこの国の王子と溺愛結婚しました。
朱之ユク
恋愛
ネイビー王立学園に入学して三年間の青春を勉強に捧げたスカーレットは学園にいる間に一人も彼氏ができなかった。
そして、そのことを異様にバカにしている相手と同窓会で再開してしまったスカーレットはまたもやさんざん彼氏ができなかったことをいじられてしまう。
だけど、他の生徒は知らないのだ。
スカーレットが次期国王のネイビー皇太子からの寵愛を受けており、とんでもなく溺愛されているという事実に。
真実に気づいて今更謝ってきてももう遅い。スカーレットは美しい王子様と一緒に幸せな人生を送ります。
どうして別れるのかと聞かれても。お気の毒な旦那さま、まさかとは思いますが、あなたのようなクズが女性に愛されると信じていらっしゃるのですか?
石河 翠
恋愛
主人公のモニカは、既婚者にばかり声をかけるはしたない女性として有名だ。愛人稼業をしているだとか、天然の毒婦だとか、聞こえてくるのは下品な噂ばかり。社交界での評判も地に落ちている。
ある日モニカは、溺愛のあまり茶会や夜会に妻を一切参加させないことで有名な愛妻家の男性に声をかける。おしどり夫婦の愛の巣に押しかけたモニカは、そこで虐げられている女性を発見する。
彼女が愛妻家として評判の男性の奥方だと気がついたモニカは、彼女を毎日お茶に誘うようになり……。
八方塞がりな状況で抵抗する力を失っていた孤独なヒロインと、彼女に手を差し伸べ広い世界に連れ出したしたたかな年下ヒーローのお話。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID24694748)をお借りしています。
氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました
まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」
あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。
ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。
それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。
するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。
好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。
二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。
山に捨てられた令嬢! 私のスキルは結界なのに、王都がどうなっても、もう知りません!
甘い秋空
恋愛
婚約を破棄されて、山に捨てられました! 私のスキルは結界なので、私を王都の外に出せば、王都は結界が無くなりますよ? もう、どうなっても知りませんから! え? 助けに来たのは・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる