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【番外編】獣人一家のハロウィン
秋に獣人の恐ろしさを知る ※
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「ちょっと待ってグレン、こんなところで……」
「どうせこんな森の奥、だれも来やしない。それに、巨木の影になっているだろう」
ここは、シリルたちが住んでいた森からさらに奥へと進んだ場所だ。スケッチをするとき人がいると気が散る、というグレンの主張で、滅多に分け入らないところまでやってきた。
開けた場所に、赤や黄色の落ち葉が絨毯のように敷き詰められているので、思わず「気持ち良さそう」と寝転んだところ、グレンに押し倒されてしまったのだ。至近距離にグレンの熱っぽい瞳がある。
「ス、スケッチはどうするの?」
「あとでする。こんな自然の中でお前を抱けるなんて、そうそうある機会じゃない。堪能させてくれ」
肩の横に両手を付かれると、快晴の夏空のような青い瞳がシリルを捉える。グレンの肩越しに、木々の隙間から光が差し込み、目が眩んだ。
「綺麗だ、シリル。木漏れ日がお前に降り注いで、神々しい……」
そう言ったかと思うとぺろりとシャツをはだけられ、迷わず乳首を吸われた。肉球のある手で薄い胸板を押さえつけられ、もう片方の手で下半身を握られる。
「あ、グレン……っ」
何度もグレンと体を重ね、男だというのに胸で感じる癖がついている。それに加えて性器を服越しに刺激され、いやが応にでも体が反応してしまう。すでに硬く盛り上がったグレンのものが太腿にあたる。
(だめ、なのに……。断れない)
そのとき、「カサッ」と落ち葉を踏む音がした。
「な、なに?」
思わず身を固くする。上半身を起こし木の裏から覗くと、胴の長い猟犬を連れた人間が遠くに見えた。猟銃を手にしているところから推測すると、ハンターだろう。
「おかしいな、ここらに逃げ込んだのかと思ったが。足の速い猪だ」
シリルたちは顔を見合わせた。シリルはほとんど服を着ていないし、グレンも上半身裸だ。こんな状態で見付かったら、なにをしていたか一目瞭然だ。それに、今から慌てて服を着ると、木葉擦れの音がするだろうから、見付かってしまう。
絶体絶命とは、こういう状況を言うのだろう。
「グレン」
顔を覗うと、グレンは口元に指を一本あてた。黙っていろということらしい。
「……大きな木の裏が怪しいな。バロン、見てきてくれ」
「ワン!」
主人の命令を聞くのが嬉しくて仕方ないといった猟犬が、軽い足音で落ち葉を掻き分け、こちらに走ってくる。
(どうしよう、僕らがいるって分かっちゃう)
心臓の鼓動が激しくなる。猟犬はきっと、主人に知らせるだろうから、明日にでも噂になってしまう。
「森で若い獣人とオメガがいやらしいことをしていた」と囃し立てられる姿が目に浮かんで、血の気が引いた。
首輪に付いた飾りの音をチャラチャラと言わせ、猟犬が近付いてくる。すぐにシリルたちの姿を見付けた。体勢を低くし、唸り声を上げようとした猟犬に、グレンが諭すように囁いた。
「犬か。お前も猟犬なら、自分よりも強い者に歯向かうのは愚かなことだと知っているだろう。悪いことは言わない、騒がずに帰れ」
「ウウ……」
「まだ分からないのか。自然の掟を教えないといけないようだな……」
鼻に皺を寄せ、恐ろしい形相になったグレンが口を開けて見せた。そこには上下四本の鋭い歯が並んでいた。
「キャンッ」
尻尾を巻いて、猟犬が去って行く。そして、なにごともなかったかのように主人に明るい声を上げていた。
シリルはほーっ、と胸をなで下ろした。
「すごいね、グレンにこんな特技があったんだ」
「まあな。小さな動物相手のとき、獣人でよかったと思うな。それに……、俺も獲物を逃したくないところだったしな」
グレンの目が鋭く光った。なにごともなかったのように、上にのしかかられ首元に口付けられる。
「え。獲物って、僕のこと?」
続けざまの愛撫は、グレンからの肯定だ。その後シリルは何度も快感に体を跳ねさせ、森の王者に文字通り喰われたのだった。
【了】
「どうせこんな森の奥、だれも来やしない。それに、巨木の影になっているだろう」
ここは、シリルたちが住んでいた森からさらに奥へと進んだ場所だ。スケッチをするとき人がいると気が散る、というグレンの主張で、滅多に分け入らないところまでやってきた。
開けた場所に、赤や黄色の落ち葉が絨毯のように敷き詰められているので、思わず「気持ち良さそう」と寝転んだところ、グレンに押し倒されてしまったのだ。至近距離にグレンの熱っぽい瞳がある。
「ス、スケッチはどうするの?」
「あとでする。こんな自然の中でお前を抱けるなんて、そうそうある機会じゃない。堪能させてくれ」
肩の横に両手を付かれると、快晴の夏空のような青い瞳がシリルを捉える。グレンの肩越しに、木々の隙間から光が差し込み、目が眩んだ。
「綺麗だ、シリル。木漏れ日がお前に降り注いで、神々しい……」
そう言ったかと思うとぺろりとシャツをはだけられ、迷わず乳首を吸われた。肉球のある手で薄い胸板を押さえつけられ、もう片方の手で下半身を握られる。
「あ、グレン……っ」
何度もグレンと体を重ね、男だというのに胸で感じる癖がついている。それに加えて性器を服越しに刺激され、いやが応にでも体が反応してしまう。すでに硬く盛り上がったグレンのものが太腿にあたる。
(だめ、なのに……。断れない)
そのとき、「カサッ」と落ち葉を踏む音がした。
「な、なに?」
思わず身を固くする。上半身を起こし木の裏から覗くと、胴の長い猟犬を連れた人間が遠くに見えた。猟銃を手にしているところから推測すると、ハンターだろう。
「おかしいな、ここらに逃げ込んだのかと思ったが。足の速い猪だ」
シリルたちは顔を見合わせた。シリルはほとんど服を着ていないし、グレンも上半身裸だ。こんな状態で見付かったら、なにをしていたか一目瞭然だ。それに、今から慌てて服を着ると、木葉擦れの音がするだろうから、見付かってしまう。
絶体絶命とは、こういう状況を言うのだろう。
「グレン」
顔を覗うと、グレンは口元に指を一本あてた。黙っていろということらしい。
「……大きな木の裏が怪しいな。バロン、見てきてくれ」
「ワン!」
主人の命令を聞くのが嬉しくて仕方ないといった猟犬が、軽い足音で落ち葉を掻き分け、こちらに走ってくる。
(どうしよう、僕らがいるって分かっちゃう)
心臓の鼓動が激しくなる。猟犬はきっと、主人に知らせるだろうから、明日にでも噂になってしまう。
「森で若い獣人とオメガがいやらしいことをしていた」と囃し立てられる姿が目に浮かんで、血の気が引いた。
首輪に付いた飾りの音をチャラチャラと言わせ、猟犬が近付いてくる。すぐにシリルたちの姿を見付けた。体勢を低くし、唸り声を上げようとした猟犬に、グレンが諭すように囁いた。
「犬か。お前も猟犬なら、自分よりも強い者に歯向かうのは愚かなことだと知っているだろう。悪いことは言わない、騒がずに帰れ」
「ウウ……」
「まだ分からないのか。自然の掟を教えないといけないようだな……」
鼻に皺を寄せ、恐ろしい形相になったグレンが口を開けて見せた。そこには上下四本の鋭い歯が並んでいた。
「キャンッ」
尻尾を巻いて、猟犬が去って行く。そして、なにごともなかったかのように主人に明るい声を上げていた。
シリルはほーっ、と胸をなで下ろした。
「すごいね、グレンにこんな特技があったんだ」
「まあな。小さな動物相手のとき、獣人でよかったと思うな。それに……、俺も獲物を逃したくないところだったしな」
グレンの目が鋭く光った。なにごともなかったのように、上にのしかかられ首元に口付けられる。
「え。獲物って、僕のこと?」
続けざまの愛撫は、グレンからの肯定だ。その後シリルは何度も快感に体を跳ねさせ、森の王者に文字通り喰われたのだった。
【了】
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