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エディ 5 ※
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思わぬ行動にぎゅっと目を閉じる。しかしいつまで経っても唇に熱を感じることは無かった。思わず閉じた目を恐る恐る開けば、唇は爪の先ほどの距離で止められ、重ねられる事は無かった。
「・・・どうして止めたんですか」
「まだ答えを聞いてない。ここで俺が迫れば、エディは恩を感じてる所為で逆らえないだろう?」
吐息を唇に感じながら、俺はグレアムの目を見つめ返す。
緊張に乾いた目を潤す為瞬きを繰り返せば、その度睫毛がグレアムの頬に触れ彼の存在をより近くに感じる。
「恩義だと、ただそれだけだと思うんですか」
「エディの感情は、俺とは違う。初めて見たものを親と思うような、雛鳥のようなものだ」
幼い頃助けられた時。強者への憧れを恋だと勘違いしているのだと、グレアムは言いたいのだろう。
ーーー侮られている。
俺の思いを軽んじるような発言は、グレアムにとって悪気も無いのだろう。
それでも思いを否定され、彼にどう思われるか考えるより早く思考が怒りに満たされる。
ここが診療所で、さらに先生が寝かされている事さえ頭の片隅に追いやられる程の激情に促されるまま、俺は文字通りほんの目と鼻の先にある唇へと噛みついた。
少しカサついた感触に、もう後戻りは出来ないと悟る。引いていた一線をとうとう己から踏み越えてしまったのだから。
「分かっていないのはグレアムさんの方です。雛鳥だの、勘違いだの好き勝手言ってくれてるけど、俺が何年グレアムさんの事を想ってたか知らないでしょう!そんなもの、とっくに拗らせて後には引けなくなってるんですよ!」
優しく包まれていた手を外し、俺は無防備なグレアムの首元の襟を掴むと、自分の感情に動かされるまま叫んだ。
手を伸ばす事さえ恐れ多いと思っていた憧れの人の胸倉を掴んで怒鳴るなんて、今しなきゃ卒倒していただろう。
頭の冷静な部分でそう思考が過るが、それでも俺の口は止まらない。
「あんたに抱かれる妄想を何度もしたし、よこしまな目で見てるのは俺の方です!!」
言い切った。
言ってしまった。
言うつもりなんてなかった。さっさと取るに足りない気持ちだと切り捨てられれば良かった。
違う、言い訳だ。
好きだと言われて嬉しい。だけどそれ以上に、自分の感情を否定された事が苦しかった。
嘘でも勘違いでも無い。だけど冷静さを欠いた思考に促されるまま、とんでも無い事を口走った自覚はある。
胸倉を掴んだまま後にも引けず、石のように固まったまま身体を震わせるしかない。
恥ずかしい。これではまるきり子供の癇癪だ。悲しんだり怒ったり、情緒が安定しない所為で涙さえ出てきた。
身体が意思に背いて震える所為で、声まで震えを帯びる。それでも今、これだけは伝えないといけなかった。
「・・・好きです、好きなんです。どうしたら信じてくれますか?」
表面張力に耐える涙の所為で瞬きは出来ない。
涙でぼやける視界ではグレアムがどんな表情をしているのか分からなかった。困っているのだろう。喚き散らしていたかと思えば次の瞬間には泣き出して、我ながら面倒な性格だと思う。
好きだと伝える言葉さえ、震えて満足に口に出来ない。
「・・・悪かった、信じるから。そんな顔で泣くなよ」
優しい仕草でぽんと頭を撫でられる。
その拍子に思わず瞬きをすれば、涙が頬を滑り落ちたお陰で視界がクリアになる。見るのが恐ろしいと思っていたグレアムの表情は、どこか困ったような、喜色を隠しきれないような、少し戸惑った表情だった。
「あまりにも俺にとって都合が良いから意地の悪い事を言った」
「本当に、信じてくれたんですか」
「不安にさせてすまない。泣かせるつもりじゃ無かったんだ」
そっと頬に掌を重ねると、涙の跡を優しく拭われる。俺はくしゃりと顔を歪めると、グレアムの身体に勢い良く抱きついた。
「嬉しい、両思いと言う事ですよね」
「ああ」
「・・・グレアムさん、」
「待て、その先は言わなくて良い」
抱きついた尻の下、硬く熱を持った存在が主張していた。その先は言わなくて良いと言われたが、これは無視出来ないだろう。
抱きしめていた腕を放しグレアムの顔をじっと見つめれば、余裕を取り払った表情で視線を泳がせた。
「だから言ったんだ、そう言う意味を含めてエディの事が好きだと」
悔しそうな表情は初めて見るものだ。魔物を倒す時の堂々とした姿が嘘みたい、狼狽える今の姿がひどく愛しく感じられた。その余裕をもっと壊してみたい。頭をよぎった思考は、吟味するより早く行動に移していた。
開いた距離を再び詰め、ちゅ、と軽く唇を重ねる。至近距離にある目はすっと細められ、どこか剣呑で鋭い光を帯びた。予想していた動揺の仕方と異なり僅かに怖気付くが、それを誤魔化すように目の前の唇に柔く歯を立てる。
「・・・良い度胸だ」
グレアムはそう呟くと、俺の後頭部を掌で支えると深く唇を重ねてきた。
無遠慮とも取れる性急さで唇の間を暴かれ舌を捻じ込まれる。知識に無いその動きに思わず逃げようと頭を後ろへ引くが、がっちりと支えられた手の所為でそれも叶わなかった。
「!?」
好き勝手に動き回る舌が俺のものに触れると、獲物を逃がさないとでも言うかのように強引に絡め取られる。感じた事の無い柔らかさとあまりの熱さに、グレアムの肩に置いていた手に力が入る。
先程抱かれる妄想を何度もしたと宣言したが、己の思考がいかに幼稚で稚拙だったか、この口付け一つで分からせられる。
息吐く暇もない。
「っ、ま、ってくださ」
「は、止めるか?」
「ちがっ、先生、奥に・・・」
舌が回らない。それでも言いたい事は伝わったのか、不満そうな表情を隠そうともせず一度俺の身体を解放した。
グレアムとの一件で忘れかけていたが、ポーションを飲ませ眠っている先生がいつ目を覚ますとも限らない状況だ。
流石に目を覚ました時職場の部下が目の前で知り合いとまぐわっていたら卒倒してしまうだろう。
グレアムは奥の仮眠室へ先生を抱えていくと、暫くして戻ってきた。そして床で気を失っている男をついでとばかりにシーツでぐるぐる巻きにすると、満足そうな表情を浮かべ立ち上がる。
「これで構わないな」
腰に力が入らず座り込んでいた俺の身体を抱き上げると、獲物の味見をするかの如くぺろりと俺の唇を舐めた。
何度も唇を重ねられながら、そっとベッドへ寝かされる。二人分の体重に診察用の硬いベッドがギシリと音を立てた。
奥の部屋に寝かせた先生がその音で起きやしないかとひやりとするが、絡め取られた舌に思考の余裕も奪われる。
「っ、ふ」
無知な妄想では考えもしなかった奥深くまで舌に暴かれ、粘膜同士の接触で脳が溶けそうだった。深くまで差し込まれた舌に反射的に喉が動くが、その反応を不快と捉える前にすっと舌が引かれ、あやすように今度は上顎を優しく撫でられる。
別の生き物のように口内を翻弄され、唇の端から溢れた唾液が重力に沿って落ちていく事にも気付かない。
「ん、く、っ」
舌同士を絡める動作は、得体の知れない悪寒を背筋に走らせた。ぞわぞわと落ち着かない感覚は初めて感じるもので、それこそが快感なのだと知る由もない。
不意に軽くぶつかる歯がカチリと音を鳴らす事が、口付けの合間に与えられる休息のようで不思議と安堵を抱かせた。
呼吸の仕方も忘れるほど全てをグレアムの熱量によって奪われる。与えられる情報量に脳を揺らされ、知らず一筋の涙を流す。
「っは、はぁっ」
漸く唇を解放された頃には息も絶え絶えで、ひどく久しぶりに感じる新鮮な空気を肺いっぱいに頬張った。
胸倉を掴んで自分から仕掛けた先程の口付けが、そう呼ぶのも烏滸がましいと感じるほど拙いものだったのだと分からせられた。
「っ、笑っても良いですよ」
「どうして。笑うところなんて無いだろう」
「大口叩いてこれかって、情けないと思うでしょう」
「いいや、むしろ嬉しい。俺の与える全てが初めてなんだと、そう全身で伝えてくれている」
その言葉にかぁっと顔が熱を持つ。その反応さえグレアムに見透かされているのかと思えば、今すぐどこか視界の外に逃げ出したくなる。
せめて顔を隠したいと思うのに、両腕はグレアムの手によって優しく抵抗出来ないようにされている。絡め取られた指先は、恋人のようで。
否、まさしく恋人同士となったのだから"恋人のよう"と言うのはおかしいのだろう。
「っグレアムさん、もう一度・・・して」
顔を隠せないのなら、お互いの顔が見えないくらい近付くしかない。回らない頭で考えたのが、もう一度口付けをねだる事だった。
「勿論、何度でも」
「ん、んんっ」
先程とは角度を変えより深く唇が重ねられる。口内にじゅわりと広がる快感を受け止めるのに精一杯で、絡み合っていた指先が解放された事は気付かなかった。自由になった手で無意識にベッドのシーツを握り込み、閉じた目蓋の裏で弾ける熱を逃すように力を込める。
「は、あっ!?」
そうして手が自由になったのはグレアムも同じだった。快感に耐えるように僅かに反った背の隙間に掌を差し込まれ、直接素肌を腰から肩甲骨辺りまでを撫でられる。
捲り上げられたシャツの重なる皺の存在を感じながら、グレアムの手の温度と触れた空気の冷たさに驚く。
「あっ、ひ、っ!」
思わず口に力が入り、僅かに歯が閉じる。
グレアムの舌に傷を付けるほどでは無かったが、咎める様に目を細めると反対の手でボタンを一つ外し、シャツの中にグレアムの指先が潜り込む。
「ん、んんっ」
触れられる事を待ち望むように存在を主張する先端を探り当てるのは、息をするように容易い事だっただろう。
唇と同じように僅かにカサつく指先に柔く力を込められれば、小さなその場所は大袈裟な程直接的な快感を脳へ届けた。
「ーーーッんんん!」
柔らかな果実を摘むように2本の指であやされる度、びくびくと腰が浮く。相変わらず口内を蹂躙する舌の存在も相まって、訳が分からなくなるほど気持ちが良かった。
いつしか下半身を覆っていたズボンが床に落とされていた事に気付いたのは、隠す物が一切無くなった局部を包む肌の感触に目を見開いてからだ。
「ひ、ーーーっぃあ!」
繊細な硝子細工に触れるかのように優しい仕草できゅ、と力を込められーーー次の瞬間、達していた。
「っは、はあっ」
擦ってすらいない。触れられただけで暴発した下半身に頭を抱えたくなる。あまりにも情けない。しかしそんな感情を抱く余裕は、再開された指の動きの所為で一気に拡散する。達したばかりで敏感になった場所を、体液の滑りを借り素早く上下に動かされる。
「あっ!?い、あっ、止め・・・っ」
知らず自由になっていた口からは、自分の意思と関係なく嬌声が溢れ出る。快感を逃す術も知らず、目の前の存在へ無意識に助けを求めた。
シーツを握っていた手を離し、グレアムの力強い首へ両手を伸ばす。腕を回し抱きついたその相手こそ、耐え難い快感を与える張本人だと言うのに。
「いっ、いったからぁ・・・っ」
「ああ、上手に出せて偉いな。まだ頑張れるだろう?」
止めて、と言う言葉は悲鳴のような喘ぎで掻き消される。一際敏感な先端部分を止めとばかりに責められれば、2度目の吐精まであっという間だった。
脳まで痺れる快感は、足先がきゅっと丸まるだけでは耐えられなかった。大して力の入らない両足でグレアムの腰を挟めば、愛しいものを見るように溶けた視線を向けられる。
痺れて纏まらない思考では、その視線を嬉しいと思う余裕さえない。
「はあっ、はっ、」
いつしかシャツのボタンは全て外されており、忙しなく上下を繰り返す胸元が晒される。己の記憶より僅かに色を鮮やかにした胸元の先端が、酷く羞恥心を煽った。
「ッ、!」
「大丈夫、痛く無いようにするから。力を抜いて身体を委ねて」
グレアムは脇の棚から取り出した軟膏のような薬を馴染ませると、傷付けないよう細心の注意を払い狭間の穴へと指を伸ばした。
普段排泄する場所に触れられる抵抗感はあれど、グレアムが己を傷つける事への恐怖心は無かった。
だからこそ優しく宥める声の通り、呼吸を落ち着かせ可能な限り力を抜く事が出来た。
「ん、ぐ」
異物感はあるが痛みも無く耐えられる程度だ。
それより異物感を誤魔化すために与えられる愛撫の方が、敏感になった身体にはきつく感じられた。
懸命に力を抜こうと努めているが、悪戯に胸元を撫でられるたび後ろに力が入ってしまう。
「あ、あっ、っく、ああっ!?」
異物感しか感じていなかった内部に、指先がふと掠めた場所から背筋まで電流が走る。恐れを抱くほどの未知の感覚に、掻き抱いた広い背中へ思わず爪を立てる。
耳元でふっと笑い声が聞こえたが、それを咎めるより早く探り当てた秘密の場所を何度も刺激される。そうなればもう意味を持たない言葉しか発せなくなる。
「ひっ、いっ、ん、っ!ッ!」
「俺の指で感じてくれて嬉しい、これなら指、増やしても問題無さそうだな」
声と表情ばかりが優しく、内側を暴く指先はちっとも優しくない。批難がましく視線で訴えようとどこ吹く風で、許可をだす前に増えた指にさらに高い悲鳴を上げるばかりだ。
ぐちゅぐちゅと粘着質で卑猥な水音が、自分の内側から聞こえてくるなんて信じたく無い。もしも快感を受け止める器があるのならもう器は満杯で、あと2つ3つ用意しようと足りない位だ。
静止を聞かないグレアムを涙で潤む目で睨むが、表情を緩ませた顔で目元に口付けを落とされるのみで俺の意思が通じる事は無かった。いや、伝わっていてあえて無視しているのだろう。
「ひ、っ、・・・ッ!」
もう悲鳴どころか声すら上げられない。
再び重ねられた唇の所為で、口の中も胸も中も身体中全てが快感で満たされていた。
しかし頭がおかしくなるような快感も、いつしか3本に増やされていた指がぴたりと止められた事でもどかしさに襲われる。
「は、っぅ、・・・?」
どうして。
その疑問の答えを得られないまま、ずるりと指が抜き取られる。すっかり異物感に慣れた所為で、何も無くなった中が切なく収縮する。小指の先さえ入れられた事のなかった場所で、まさか物足りなさを感じる日が来るとは思わなかった。
ゆっくりとベッドに頭を委ね、ぎゅうっと抱いていた所為で強張った腕の力を緩める。
荒く整う様子の無い呼吸を何とか繰り返し、グレアムの顔を正面から見つめた。
「ぐ、グレアムさん・・・?」
「悪い、・・・顔が見たくて」
「か、お・・・」
ただでさえ回らない呂律が、手練手管で溶かされた思考の所為でさらにもたついた。かお。
ーーーグレアムの顔は俺も見たい。
精巧な顔立ちは変わらないけど、いつもより眉根が寄せられている。俺より一回り年上の、憧れの、かっこいい人。
ああ、俺はこれからこの人に抱かれる。
この辺りでは珍しい濃い色の髪も、新緑を想像させる鮮やかな目も、冒険者らしく鍛え抜かれた身体も、
「・・・好き」
グレアムの目がはっと見開かれる。眩しいものを見るように目を細めると、その口が小さく動いた。
「ーーーッあああ!」
しかしその声は、己の嬌声によって掻き消された。
感じた事の無い灼熱に、グレアムの存在を強く感じる。
腹の奥深くまで貫かれ感じたのは、痛みや苦しみ以上に喜びだった。
「っく、いい子だから、力、抜けるか・・・?このままだとすぐにイきそうだ」
「わ、分からない。何度でも俺の中で・・・いって良いから、もう早く動いて・・・!」
もう自分が何を口にしているかすら分からない。とにかく内側に燻る熱をどうにかして欲しくて訳が分からなくなっていた。
「・・・後悔するなよ」
押し殺したようないつもより低い声に、ぞくりと耳の奥が震える。
涙をぼろぼろと流しながら、その時点で漸く自分がとんでもない事を口にしたのだと気付いた。
しかしその言葉は紛れもない本心で。
少し怖気付きながら、肯定の意味を込めてグレアムの腰に足を絡めた。
「ーーーっあ!」
根元まで埋められていたグレアムのものが、抜けるギリギリまでずるりと動かされる。内臓がひっくり返りそうな感覚に思わず目を回す。
僅かに寂しさを感じる最奥は、しかし次の瞬間再び奥深くまで飲み込まされた杭によって満たされた。何度も繰り返される抽挿に、連動するように短い悲鳴が口から溢れる。
涙と汗と唾液でぐちゃぐちゃな顔面をグレアムはひどく愛しいものを見るように目を細めた。
ふとした時目を細めるのは、彼の癖だと思っていた。しかしその動作の意味が今なら少し分かる。村で初めて出会った時も、同じような目で彼は俺の事を見てきていた。
あの時から、もしかしたら俺と同じ想いだったのではないかと。そんな甘い想像も、硬い熱杭が先程指で散々感じさせられた場所を抉った所為で拡散する。
「ひっ、ぐ、ぅっ、っ!」
中を蹂躙する動きはまったく可愛く無いのに、額に汗で張り付いた髪に触れてくる手は随分と優しい。愛しい宝物に触れるようにどこか慎重で、大切に思われているのだと伝わってきた。
「好きです、グレアムさん、ッ、・・・大好き」
「ああ、俺もだ」
今度こそ聞き逃さなかったその言葉に、ふにゃりと力無く微笑む。
俺は両腕を伸ばし抱き締めると、もう一度グレアムの肩に顔を埋めた。
一際強く奥を穿たれ、耐えるように足の指先に力が入る。快感に抗わないまま、俺は3度目の精を吐き出した。
「・・・あったかい」
腹の中に吐き出される未知の熱に浮かされながら、俺は茫然と呟いた。その言葉がどんな結果わ齎すかも知らずに。
「ん、んっ?」
いとも容易く力を取り戻す存在に戸惑い顔を見上げれば、グレアムは怒ったような表情を浮かべていた。しかし表情の割に怒りの感情は伝わって来ず、ただ余裕を失っているだけなのだと悟る。
「グレアムさ、っ」
深く重ねられた唇が言葉を奪う。
まだ麻痺の落ち着かない内部を刺激されれば、足をバタつかぜずにはいららない快感が襲ってくる。
「・・・!?」
「やっぱりお前は分かってないな」
抽挿を繰り返されながら、開いた手で胸元を探られる。敏感な場所の全てに触れられ、先程までいかに手加減されていたのか漸く気付いた。
「ひっ、いっ、んんん!」
内側を刺激されながら片手で俺のものを激しく擦られると、びしゃびしゃと透明な液体が先端から溢れる。
精液でも尿でも無い、無色のこれは。
「可愛いな、エディ。好きなだけイけば良い。何度だって気持ち良くしてやる」
「ーーーっ、ま、ッあああっ!」
訳が分からなくなるくらい気持ち良くされて、何度も惜しみなく愛の言葉を与えられる。その言葉に同じように返したいのに、そんな余裕もない程何度も達して。
気を失うように眠りに落ちたのは、朝日が窓から指し、一番鳥の鳴く頃だった。
「・・・どうして止めたんですか」
「まだ答えを聞いてない。ここで俺が迫れば、エディは恩を感じてる所為で逆らえないだろう?」
吐息を唇に感じながら、俺はグレアムの目を見つめ返す。
緊張に乾いた目を潤す為瞬きを繰り返せば、その度睫毛がグレアムの頬に触れ彼の存在をより近くに感じる。
「恩義だと、ただそれだけだと思うんですか」
「エディの感情は、俺とは違う。初めて見たものを親と思うような、雛鳥のようなものだ」
幼い頃助けられた時。強者への憧れを恋だと勘違いしているのだと、グレアムは言いたいのだろう。
ーーー侮られている。
俺の思いを軽んじるような発言は、グレアムにとって悪気も無いのだろう。
それでも思いを否定され、彼にどう思われるか考えるより早く思考が怒りに満たされる。
ここが診療所で、さらに先生が寝かされている事さえ頭の片隅に追いやられる程の激情に促されるまま、俺は文字通りほんの目と鼻の先にある唇へと噛みついた。
少しカサついた感触に、もう後戻りは出来ないと悟る。引いていた一線をとうとう己から踏み越えてしまったのだから。
「分かっていないのはグレアムさんの方です。雛鳥だの、勘違いだの好き勝手言ってくれてるけど、俺が何年グレアムさんの事を想ってたか知らないでしょう!そんなもの、とっくに拗らせて後には引けなくなってるんですよ!」
優しく包まれていた手を外し、俺は無防備なグレアムの首元の襟を掴むと、自分の感情に動かされるまま叫んだ。
手を伸ばす事さえ恐れ多いと思っていた憧れの人の胸倉を掴んで怒鳴るなんて、今しなきゃ卒倒していただろう。
頭の冷静な部分でそう思考が過るが、それでも俺の口は止まらない。
「あんたに抱かれる妄想を何度もしたし、よこしまな目で見てるのは俺の方です!!」
言い切った。
言ってしまった。
言うつもりなんてなかった。さっさと取るに足りない気持ちだと切り捨てられれば良かった。
違う、言い訳だ。
好きだと言われて嬉しい。だけどそれ以上に、自分の感情を否定された事が苦しかった。
嘘でも勘違いでも無い。だけど冷静さを欠いた思考に促されるまま、とんでも無い事を口走った自覚はある。
胸倉を掴んだまま後にも引けず、石のように固まったまま身体を震わせるしかない。
恥ずかしい。これではまるきり子供の癇癪だ。悲しんだり怒ったり、情緒が安定しない所為で涙さえ出てきた。
身体が意思に背いて震える所為で、声まで震えを帯びる。それでも今、これだけは伝えないといけなかった。
「・・・好きです、好きなんです。どうしたら信じてくれますか?」
表面張力に耐える涙の所為で瞬きは出来ない。
涙でぼやける視界ではグレアムがどんな表情をしているのか分からなかった。困っているのだろう。喚き散らしていたかと思えば次の瞬間には泣き出して、我ながら面倒な性格だと思う。
好きだと伝える言葉さえ、震えて満足に口に出来ない。
「・・・悪かった、信じるから。そんな顔で泣くなよ」
優しい仕草でぽんと頭を撫でられる。
その拍子に思わず瞬きをすれば、涙が頬を滑り落ちたお陰で視界がクリアになる。見るのが恐ろしいと思っていたグレアムの表情は、どこか困ったような、喜色を隠しきれないような、少し戸惑った表情だった。
「あまりにも俺にとって都合が良いから意地の悪い事を言った」
「本当に、信じてくれたんですか」
「不安にさせてすまない。泣かせるつもりじゃ無かったんだ」
そっと頬に掌を重ねると、涙の跡を優しく拭われる。俺はくしゃりと顔を歪めると、グレアムの身体に勢い良く抱きついた。
「嬉しい、両思いと言う事ですよね」
「ああ」
「・・・グレアムさん、」
「待て、その先は言わなくて良い」
抱きついた尻の下、硬く熱を持った存在が主張していた。その先は言わなくて良いと言われたが、これは無視出来ないだろう。
抱きしめていた腕を放しグレアムの顔をじっと見つめれば、余裕を取り払った表情で視線を泳がせた。
「だから言ったんだ、そう言う意味を含めてエディの事が好きだと」
悔しそうな表情は初めて見るものだ。魔物を倒す時の堂々とした姿が嘘みたい、狼狽える今の姿がひどく愛しく感じられた。その余裕をもっと壊してみたい。頭をよぎった思考は、吟味するより早く行動に移していた。
開いた距離を再び詰め、ちゅ、と軽く唇を重ねる。至近距離にある目はすっと細められ、どこか剣呑で鋭い光を帯びた。予想していた動揺の仕方と異なり僅かに怖気付くが、それを誤魔化すように目の前の唇に柔く歯を立てる。
「・・・良い度胸だ」
グレアムはそう呟くと、俺の後頭部を掌で支えると深く唇を重ねてきた。
無遠慮とも取れる性急さで唇の間を暴かれ舌を捻じ込まれる。知識に無いその動きに思わず逃げようと頭を後ろへ引くが、がっちりと支えられた手の所為でそれも叶わなかった。
「!?」
好き勝手に動き回る舌が俺のものに触れると、獲物を逃がさないとでも言うかのように強引に絡め取られる。感じた事の無い柔らかさとあまりの熱さに、グレアムの肩に置いていた手に力が入る。
先程抱かれる妄想を何度もしたと宣言したが、己の思考がいかに幼稚で稚拙だったか、この口付け一つで分からせられる。
息吐く暇もない。
「っ、ま、ってくださ」
「は、止めるか?」
「ちがっ、先生、奥に・・・」
舌が回らない。それでも言いたい事は伝わったのか、不満そうな表情を隠そうともせず一度俺の身体を解放した。
グレアムとの一件で忘れかけていたが、ポーションを飲ませ眠っている先生がいつ目を覚ますとも限らない状況だ。
流石に目を覚ました時職場の部下が目の前で知り合いとまぐわっていたら卒倒してしまうだろう。
グレアムは奥の仮眠室へ先生を抱えていくと、暫くして戻ってきた。そして床で気を失っている男をついでとばかりにシーツでぐるぐる巻きにすると、満足そうな表情を浮かべ立ち上がる。
「これで構わないな」
腰に力が入らず座り込んでいた俺の身体を抱き上げると、獲物の味見をするかの如くぺろりと俺の唇を舐めた。
何度も唇を重ねられながら、そっとベッドへ寝かされる。二人分の体重に診察用の硬いベッドがギシリと音を立てた。
奥の部屋に寝かせた先生がその音で起きやしないかとひやりとするが、絡め取られた舌に思考の余裕も奪われる。
「っ、ふ」
無知な妄想では考えもしなかった奥深くまで舌に暴かれ、粘膜同士の接触で脳が溶けそうだった。深くまで差し込まれた舌に反射的に喉が動くが、その反応を不快と捉える前にすっと舌が引かれ、あやすように今度は上顎を優しく撫でられる。
別の生き物のように口内を翻弄され、唇の端から溢れた唾液が重力に沿って落ちていく事にも気付かない。
「ん、く、っ」
舌同士を絡める動作は、得体の知れない悪寒を背筋に走らせた。ぞわぞわと落ち着かない感覚は初めて感じるもので、それこそが快感なのだと知る由もない。
不意に軽くぶつかる歯がカチリと音を鳴らす事が、口付けの合間に与えられる休息のようで不思議と安堵を抱かせた。
呼吸の仕方も忘れるほど全てをグレアムの熱量によって奪われる。与えられる情報量に脳を揺らされ、知らず一筋の涙を流す。
「っは、はぁっ」
漸く唇を解放された頃には息も絶え絶えで、ひどく久しぶりに感じる新鮮な空気を肺いっぱいに頬張った。
胸倉を掴んで自分から仕掛けた先程の口付けが、そう呼ぶのも烏滸がましいと感じるほど拙いものだったのだと分からせられた。
「っ、笑っても良いですよ」
「どうして。笑うところなんて無いだろう」
「大口叩いてこれかって、情けないと思うでしょう」
「いいや、むしろ嬉しい。俺の与える全てが初めてなんだと、そう全身で伝えてくれている」
その言葉にかぁっと顔が熱を持つ。その反応さえグレアムに見透かされているのかと思えば、今すぐどこか視界の外に逃げ出したくなる。
せめて顔を隠したいと思うのに、両腕はグレアムの手によって優しく抵抗出来ないようにされている。絡め取られた指先は、恋人のようで。
否、まさしく恋人同士となったのだから"恋人のよう"と言うのはおかしいのだろう。
「っグレアムさん、もう一度・・・して」
顔を隠せないのなら、お互いの顔が見えないくらい近付くしかない。回らない頭で考えたのが、もう一度口付けをねだる事だった。
「勿論、何度でも」
「ん、んんっ」
先程とは角度を変えより深く唇が重ねられる。口内にじゅわりと広がる快感を受け止めるのに精一杯で、絡み合っていた指先が解放された事は気付かなかった。自由になった手で無意識にベッドのシーツを握り込み、閉じた目蓋の裏で弾ける熱を逃すように力を込める。
「は、あっ!?」
そうして手が自由になったのはグレアムも同じだった。快感に耐えるように僅かに反った背の隙間に掌を差し込まれ、直接素肌を腰から肩甲骨辺りまでを撫でられる。
捲り上げられたシャツの重なる皺の存在を感じながら、グレアムの手の温度と触れた空気の冷たさに驚く。
「あっ、ひ、っ!」
思わず口に力が入り、僅かに歯が閉じる。
グレアムの舌に傷を付けるほどでは無かったが、咎める様に目を細めると反対の手でボタンを一つ外し、シャツの中にグレアムの指先が潜り込む。
「ん、んんっ」
触れられる事を待ち望むように存在を主張する先端を探り当てるのは、息をするように容易い事だっただろう。
唇と同じように僅かにカサつく指先に柔く力を込められれば、小さなその場所は大袈裟な程直接的な快感を脳へ届けた。
「ーーーッんんん!」
柔らかな果実を摘むように2本の指であやされる度、びくびくと腰が浮く。相変わらず口内を蹂躙する舌の存在も相まって、訳が分からなくなるほど気持ちが良かった。
いつしか下半身を覆っていたズボンが床に落とされていた事に気付いたのは、隠す物が一切無くなった局部を包む肌の感触に目を見開いてからだ。
「ひ、ーーーっぃあ!」
繊細な硝子細工に触れるかのように優しい仕草できゅ、と力を込められーーー次の瞬間、達していた。
「っは、はあっ」
擦ってすらいない。触れられただけで暴発した下半身に頭を抱えたくなる。あまりにも情けない。しかしそんな感情を抱く余裕は、再開された指の動きの所為で一気に拡散する。達したばかりで敏感になった場所を、体液の滑りを借り素早く上下に動かされる。
「あっ!?い、あっ、止め・・・っ」
知らず自由になっていた口からは、自分の意思と関係なく嬌声が溢れ出る。快感を逃す術も知らず、目の前の存在へ無意識に助けを求めた。
シーツを握っていた手を離し、グレアムの力強い首へ両手を伸ばす。腕を回し抱きついたその相手こそ、耐え難い快感を与える張本人だと言うのに。
「いっ、いったからぁ・・・っ」
「ああ、上手に出せて偉いな。まだ頑張れるだろう?」
止めて、と言う言葉は悲鳴のような喘ぎで掻き消される。一際敏感な先端部分を止めとばかりに責められれば、2度目の吐精まであっという間だった。
脳まで痺れる快感は、足先がきゅっと丸まるだけでは耐えられなかった。大して力の入らない両足でグレアムの腰を挟めば、愛しいものを見るように溶けた視線を向けられる。
痺れて纏まらない思考では、その視線を嬉しいと思う余裕さえない。
「はあっ、はっ、」
いつしかシャツのボタンは全て外されており、忙しなく上下を繰り返す胸元が晒される。己の記憶より僅かに色を鮮やかにした胸元の先端が、酷く羞恥心を煽った。
「ッ、!」
「大丈夫、痛く無いようにするから。力を抜いて身体を委ねて」
グレアムは脇の棚から取り出した軟膏のような薬を馴染ませると、傷付けないよう細心の注意を払い狭間の穴へと指を伸ばした。
普段排泄する場所に触れられる抵抗感はあれど、グレアムが己を傷つける事への恐怖心は無かった。
だからこそ優しく宥める声の通り、呼吸を落ち着かせ可能な限り力を抜く事が出来た。
「ん、ぐ」
異物感はあるが痛みも無く耐えられる程度だ。
それより異物感を誤魔化すために与えられる愛撫の方が、敏感になった身体にはきつく感じられた。
懸命に力を抜こうと努めているが、悪戯に胸元を撫でられるたび後ろに力が入ってしまう。
「あ、あっ、っく、ああっ!?」
異物感しか感じていなかった内部に、指先がふと掠めた場所から背筋まで電流が走る。恐れを抱くほどの未知の感覚に、掻き抱いた広い背中へ思わず爪を立てる。
耳元でふっと笑い声が聞こえたが、それを咎めるより早く探り当てた秘密の場所を何度も刺激される。そうなればもう意味を持たない言葉しか発せなくなる。
「ひっ、いっ、ん、っ!ッ!」
「俺の指で感じてくれて嬉しい、これなら指、増やしても問題無さそうだな」
声と表情ばかりが優しく、内側を暴く指先はちっとも優しくない。批難がましく視線で訴えようとどこ吹く風で、許可をだす前に増えた指にさらに高い悲鳴を上げるばかりだ。
ぐちゅぐちゅと粘着質で卑猥な水音が、自分の内側から聞こえてくるなんて信じたく無い。もしも快感を受け止める器があるのならもう器は満杯で、あと2つ3つ用意しようと足りない位だ。
静止を聞かないグレアムを涙で潤む目で睨むが、表情を緩ませた顔で目元に口付けを落とされるのみで俺の意思が通じる事は無かった。いや、伝わっていてあえて無視しているのだろう。
「ひ、っ、・・・ッ!」
もう悲鳴どころか声すら上げられない。
再び重ねられた唇の所為で、口の中も胸も中も身体中全てが快感で満たされていた。
しかし頭がおかしくなるような快感も、いつしか3本に増やされていた指がぴたりと止められた事でもどかしさに襲われる。
「は、っぅ、・・・?」
どうして。
その疑問の答えを得られないまま、ずるりと指が抜き取られる。すっかり異物感に慣れた所為で、何も無くなった中が切なく収縮する。小指の先さえ入れられた事のなかった場所で、まさか物足りなさを感じる日が来るとは思わなかった。
ゆっくりとベッドに頭を委ね、ぎゅうっと抱いていた所為で強張った腕の力を緩める。
荒く整う様子の無い呼吸を何とか繰り返し、グレアムの顔を正面から見つめた。
「ぐ、グレアムさん・・・?」
「悪い、・・・顔が見たくて」
「か、お・・・」
ただでさえ回らない呂律が、手練手管で溶かされた思考の所為でさらにもたついた。かお。
ーーーグレアムの顔は俺も見たい。
精巧な顔立ちは変わらないけど、いつもより眉根が寄せられている。俺より一回り年上の、憧れの、かっこいい人。
ああ、俺はこれからこの人に抱かれる。
この辺りでは珍しい濃い色の髪も、新緑を想像させる鮮やかな目も、冒険者らしく鍛え抜かれた身体も、
「・・・好き」
グレアムの目がはっと見開かれる。眩しいものを見るように目を細めると、その口が小さく動いた。
「ーーーッあああ!」
しかしその声は、己の嬌声によって掻き消された。
感じた事の無い灼熱に、グレアムの存在を強く感じる。
腹の奥深くまで貫かれ感じたのは、痛みや苦しみ以上に喜びだった。
「っく、いい子だから、力、抜けるか・・・?このままだとすぐにイきそうだ」
「わ、分からない。何度でも俺の中で・・・いって良いから、もう早く動いて・・・!」
もう自分が何を口にしているかすら分からない。とにかく内側に燻る熱をどうにかして欲しくて訳が分からなくなっていた。
「・・・後悔するなよ」
押し殺したようないつもより低い声に、ぞくりと耳の奥が震える。
涙をぼろぼろと流しながら、その時点で漸く自分がとんでもない事を口にしたのだと気付いた。
しかしその言葉は紛れもない本心で。
少し怖気付きながら、肯定の意味を込めてグレアムの腰に足を絡めた。
「ーーーっあ!」
根元まで埋められていたグレアムのものが、抜けるギリギリまでずるりと動かされる。内臓がひっくり返りそうな感覚に思わず目を回す。
僅かに寂しさを感じる最奥は、しかし次の瞬間再び奥深くまで飲み込まされた杭によって満たされた。何度も繰り返される抽挿に、連動するように短い悲鳴が口から溢れる。
涙と汗と唾液でぐちゃぐちゃな顔面をグレアムはひどく愛しいものを見るように目を細めた。
ふとした時目を細めるのは、彼の癖だと思っていた。しかしその動作の意味が今なら少し分かる。村で初めて出会った時も、同じような目で彼は俺の事を見てきていた。
あの時から、もしかしたら俺と同じ想いだったのではないかと。そんな甘い想像も、硬い熱杭が先程指で散々感じさせられた場所を抉った所為で拡散する。
「ひっ、ぐ、ぅっ、っ!」
中を蹂躙する動きはまったく可愛く無いのに、額に汗で張り付いた髪に触れてくる手は随分と優しい。愛しい宝物に触れるようにどこか慎重で、大切に思われているのだと伝わってきた。
「好きです、グレアムさん、ッ、・・・大好き」
「ああ、俺もだ」
今度こそ聞き逃さなかったその言葉に、ふにゃりと力無く微笑む。
俺は両腕を伸ばし抱き締めると、もう一度グレアムの肩に顔を埋めた。
一際強く奥を穿たれ、耐えるように足の指先に力が入る。快感に抗わないまま、俺は3度目の精を吐き出した。
「・・・あったかい」
腹の中に吐き出される未知の熱に浮かされながら、俺は茫然と呟いた。その言葉がどんな結果わ齎すかも知らずに。
「ん、んっ?」
いとも容易く力を取り戻す存在に戸惑い顔を見上げれば、グレアムは怒ったような表情を浮かべていた。しかし表情の割に怒りの感情は伝わって来ず、ただ余裕を失っているだけなのだと悟る。
「グレアムさ、っ」
深く重ねられた唇が言葉を奪う。
まだ麻痺の落ち着かない内部を刺激されれば、足をバタつかぜずにはいららない快感が襲ってくる。
「・・・!?」
「やっぱりお前は分かってないな」
抽挿を繰り返されながら、開いた手で胸元を探られる。敏感な場所の全てに触れられ、先程までいかに手加減されていたのか漸く気付いた。
「ひっ、いっ、んんん!」
内側を刺激されながら片手で俺のものを激しく擦られると、びしゃびしゃと透明な液体が先端から溢れる。
精液でも尿でも無い、無色のこれは。
「可愛いな、エディ。好きなだけイけば良い。何度だって気持ち良くしてやる」
「ーーーっ、ま、ッあああっ!」
訳が分からなくなるくらい気持ち良くされて、何度も惜しみなく愛の言葉を与えられる。その言葉に同じように返したいのに、そんな余裕もない程何度も達して。
気を失うように眠りに落ちたのは、朝日が窓から指し、一番鳥の鳴く頃だった。
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