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本編

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そして、パーティーを待つこと数日、今度はついに待ち侘びていた連絡が来た。

ザックからすぐにでも準備が整うのでこの国を出ようという手紙が届いたのだ。

公爵である彼が移住するために国を出るなど容易いことではないはずだが、既に爵位の継承やら相続の話も済んでいるらしい。

根回しはしっかり行われており、一応は合法的に国を出ることができるようだ。だが王太子を始め、公爵である自分に自国にいてほしい人たちが存在するため、予定通り密かに出国することにしたという。

そのため、今のうちに準備をしておいてほしいという内容だった。

ーーあなたと同じ家で暮らす日々が待ちきれませんーー

そう締めくくられた手紙に俺も夢でも見ているのではと思うほど舞い上がってしまう。ソワソワして落ち着かず、何から手をつけて良いのか分からない。

「くくっ、この様子をアイザックに教えてやったらさぞ喜ぶだろうな」

ついヘンリーが隣にいる事を忘れていた俺はその言葉に我に返った。

「いや、これは…絶対に言うなよ?」
「考えておこう」

ニヤッとした意地悪い笑みを浮かべてヘンリーは俺から手紙を奪い取った。

「ほう、あいつもなかなかやるな。ガリ勉だったくせにこんな内容を書けるとは」
「ザックがガリ勉?」

その言葉と彼のイメージが合わなくて聞き返す。学生時代はそんなだったのだろうか。

「そうか、テイトはあいつが学生だった頃を知らないのだな」
「はい…」
「話してろやろうか?」
「ぜひお願いします」

ずっと気になっていた事を彼から話してくれるという。俺は間髪入れずにお願いをした。

すると、ヘンリーは楽しそうにザックの学生時代の話をしてくれた。

身分も明かさずにひたすら勉強をしていたこと、その危機迫る勢いが気になって理由を尋ねたら、大好きな人を幸せにするためだと言ったこと、その大好きな人は年上で、自由奔放な格好いいお兄さんだということ。

とにかくザックは口を開けば俺のことばかり語っていたらしい。

フードから見える黒髪が艶やかだったとか、別れも伝えずに留学に来てしまったので俺が自分のことを忘れてしまったらどうしようとか、名前も知らないのにどうやって探そうだとか…

その内容は聞いているこちらが少し恥ずかくなるくらいだ。

「一体どんな男前に垂らし込まれたのかと思っていたらこんな幸薄そうなやつとはな」
「幸薄そうは余計でしょう」

しみじみといった感じで俺の顔を見たヘンリーについ突っかかってしまう。

「あー、あと準備が整ったところ悪いが、せめてパーティまではいてくれないか?」
「ああ、もちろん、服まで買わせておいて放り出したりはしないよ」
「そこはそんなに気にしなくて良いんだが…まあ、助かる」

申し訳なさそうにそう言ったヘンリーに頷き返し、
俺はパーティーの日の翌日には出れるとザックに返事を書いた。すると、あいつからは今すぐにでも出たいが仕方がない、自分もそのパーティーには参加すると返事が届いた。

今更ながらヘンリーとお揃いの服にしたのはやりすぎだっただろうかと気が引けたが、もう仕立て直す時間もなくザックの反応を不安に思いつつそのまま参加することにした。
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