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本編

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そしてその日の帰り、どうにか一人で寄りたいところがあるからとカインを説得して帰ってもらい、スラムの屋敷へと立ち寄った。

しばらく空けしまったが運営は大丈夫だろうか。そう思って恐る恐る扉を開ける。
俺の心配をよそに、中には以前住んでいた時と変わらない様子で過ごす人々がいてホッと胸を撫で下ろした。

「なあ、ルイスはどこにいるか知らないか?」
「あ、テイト!戻ってきてたんだ?ルイスなら執務室にいると思うよ。」 

俺は馴染みの少年に声をかける。ルイスは執務室として使っていた部屋にいるらしい。その部屋を覗いて中にいる人物に声をかける。

「ルイス?」
「テイト!お前、久しぶりじゃないか!」
「ああ、久しぶり。ごめん、なかなか顔を出せなくて。」
「まあ色々あったってことは新聞でなんとなく知ってるけどよ。心配したんだぞ。」
「ふふ、ごめん。俺は元気だよ。それよりルイスは?他のみんなも元気にしてるか?」 
「ああ、皆変わりない。」

そうして二人で久々の再会を喜んだ。俺も兄貴分として慕っているルイスに心配されていたと知って少し嬉しい。

「それで、今日はちょっと話があってさ。」
「どうしたんだ改まって。」
「実は・・・」

そして俺は今のザックとの関係や、海外に移住するかもしれない事を話した。

「そうか・・・海外に。」
「うん、今までもこれからもルイスに任せっきりになっちゃってごめん。嫌だったら言ってくれ。」
「いいや、嫌じゃないさ。足を無くしてもう再起は無理だと思っていたが、今は人並みに働いている気分だからな。」
「ルイス・・・」

いつかのように俺の頭をくしゃっと撫でてくれるルイスの手が心地良い。昔の俺にとって唯一自分を子供として扱ってくれた人だ。

「ルイスが父親だったら良かったのにな。」
「そこは兄にしてくれよ。」
「ふふっ」

そして俺は、この屋敷の権利などをルイスに譲渡することにした。移住したらそう戻っては来れないだろうし、管理者が海外じゃ何かと不便だろうからな。

「本当にいいのか?代理人として指名するだけでも・・・」
「いいよ、今後どうなるか分からないし。」

ふと書類を書いていた手を止めて顔を上げる。

「でももし・・・移住した先でも居場所がなかったら、また受け入れてくれるか?」

ザックに見捨てられる事などないと信じているが、あまりの釣り合わなさにずっと不安が付き纏う。そうしてルイスを見上げれば彼は真剣な表情で頷いてくれた。

「ああ、その時はいつでも戻ってこい。管理者じゃなくなったってここはお前の家だ。」

そして「としてもお前がここにいてくれた方が嬉しいしな?」と言って笑った。

「根に持ってるのかよ。」

俺はそう言って笑いつつも、ルイスの言葉で心が軽くなった。いつでも帰れる場所がある。その事実に安心して、俺は権利書をルイスに預けて屋敷を去った。



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