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本編
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そのまま馬車に乗せられた俺は、なぜか抱え上げられた時の体勢のままザックの膝の上に置かれている。さすがにもう18になる自分が、男の、しかも歳下の男の膝に乗っているのは居心地が悪い。
そう思って身を捩って膝から降りようとするとザックに抱え直された。
「・・・おい、ザック。下ろしてくれ。」
「ダメです。それにこの方が安定していて良いでしょう?」
「良くない。全く落ち着かない。」
そんな俺の言葉など聞こえなかったようにザックはしっかりと俺を抱えた。俺はため息を吐きながら抵抗を諦め、それならば思いっきりくつろいでやるとばかりにザックの胸に頭をもたれかける。
ザックは一瞬驚いたような顔をしたが、そのすぐ後に嬉しそうな笑みを浮かべた。
「ふふ、昔は私が膝を借りてましたよね。今度は私がこうしてあげられるなんて、嬉しいなあ。」
「俺は嬉しくない・・・お前、大きくなりすぎだぞ。」
「テイトは全然変わりませんね。」
「ぐっ」
「あ、傷付きましたか?」
「別に・・・」
嘘だ。正直傷ついた。確かに自分でも思ったほど成長しなかったとは感じていたが、ザックがここまで成長しているのを見ると少し羨ましい。せめてもの慰めはカインも同じ程度の身長だということか・・・
「ふふ。あ、ほら。見えてきましたよ。」
そんな考えを見透かされてか、ザックが笑う。
なんとも釈然としない気持ちのままザックの視線を追えば、言われた通り公爵邸が見えてきていた。
「ひぇ・・・」
「なんですかその声。」
アーデン家などよりはるかに大きな屋敷は、佇まいからして重厚な雰囲気だ。思わず自分の格好を見下ろして場違いさに緊張してしまう。
「いや、大きな屋敷だな・・・俺、自分の家以外入ったこともないから、先に言っておくけど礼儀とかも分からないぞ。」
「いいですよ、そんなこと。」
「うぅ、やっぱり帰りたい・・・」
公爵家ともなれば使用人もたくさんいるだろう。そんな中に自分のような得体の知れないやつがのこのこ入ってきたらどう思われるだろう。この体のことを知られればなおさらだ。
「テイト。」
いつの間にかフードを握っていた手をザックがそっと取る。
「嫌な思いはさせません。テイトには私の家でもくつろいで欲しいんです。」
「そんな気を遣わなくていい・・・・・・俺は大丈夫だ。」
俺の答えにザックはなんとも言えない表情をしたが、馬車が屋敷についたので俺たちは降りることにした。俺は抱き抱えられたまま馬車を降り、流石にここからは歩くと暴れることでなんとか下ろしてもらった。
そして、ザックの背に隠れるように公爵邸の門を潜る。玄関へと入れば、使用人が並んで主人であるザックを出迎えた。
「「おかえりなさいませ、公爵様。」」
想像以上に重々しい出迎えに思わず後退りした俺をザックが引き寄せる。
「今日は客人が一緒だ。大事な客人なので、くれぐれも失礼がないように。」
「「かしこまりました。」」
一糸乱れぬ返答にさすが公爵邸の使用人だと感心する。明らかに怪しい身なりの俺のことも嫌な顔一つせず迎え入れてくれる。
そうしてザックの部屋へ通されたわけだが、俺は今ザックと攻防を繰り広げている。何故そんなことになっているのかというと、食事前にローブを預かると言い出したザックに、俺が脱ぎたくないと駄々をこねているからだ。
「一生それを着ているつもりですか!」
俺のローブの裾を引っ張りながらザックがそんなことを言う。
「出来ることならそうするつもりだ!」
「ダメですよ!」
「これがないと落ち着かないんだよ!」
「徐々に慣れていきましょう?協力しますから!」
「嫌だって・・・あっ!」
俺の抵抗も虚しくザックに頭から脱がせるようにローブを持っていかれる。
「あぁ・・・」
今日はローブの下は薄手のシャツ一枚だ。空洞になっている右袖が虚しく揺れる。人前でローブを脱ぐなんていつぶりだろうか。
腕がないことが恥ずかしいことではないと分かっている、分かってはいるがやはり差別的な目で見られ続けた習慣のせいで、どうしてもローブがないと落ち着かない。
すると、ドアをノックする音がしてザックの許可を得たメイドが中へと入ってくる。彼女がこちらに視線を移したのを見て俺は咄嗟にザックの後ろに隠れた。
「テイト?」
気付けば俺はザックの服の裾を掴んでいた。
「あっ、悪い。服が皺に・・・」
「そんなことはどうでも良いんですけど・・・」
まるでカインにやっていたようにザックに頼ってしまった。年下のザックの後ろに隠れるなんて、なんとも情けなくて俺は一人勝手に俯いた。
「ほら、これに着替えて食事にしましょう。」
メイドから何かを受け取ったザックはそれをさらに俺に渡す。手にあったのは服だ。
「これ・・・」
「すいません、もともとはカインへ贈る予定だったものですが・・・サイズは同じくらいでしょうから今日はこれを着ていただけますか?テイト用にはまた別に贈りますから。」
「いや、贈らなくていい。とりあえずこの服は借りておく。」
今着ている服だけでは心許なかった俺はこれ幸いと服を受け取った。
「じゃあ、着替えるから・・・」
「手伝います。」
「いや、一人で・・・」
「手伝います。」
「・・・・・・・・・」
暖簾に腕押ししてる気分だ。同じ言葉しか返ってこないザックにこちらが折れる形で着替えを手伝ってもらうことにした。
「じゃあ・・・シャツのボタンを外してくれるか?」
「はい!」
ザックは少し屈んで俺が着ているシャツのボタンを外す。なんだか真剣にシャツを脱がそうとしているザックを見下ろしていると変な気分になる。
「できました!」
「ああ、ありがとう。後は自分で・・・」
「全部手伝いますよ?」
「あっ、待て!」
そう言ったザックにそのままシャツを持っていかれた。
「細い・・・あ、腕ってこうなって・・・」
ザックは俺の体をまじまじと見てそんなことを言う。そして指で右腕の丸みをなぞった。
「ひっ!んっ」
普段触られることない場所を触られて思わず変な声が出てしまった。俺は恥ずかしくなって慌てて口を押さえた。
「あっ、すいません。もしかして痛かったですか?」
「いや・・・くすぐったかっただけだ。生まれつきだから痛みとかはない。」
「そうですか、よかった・・・」
「それより早く服をくれ。」
「あっ、これです。」
そして俺はそそくさと着替えをすませた。なるほど白基調でまとまったその服はカインに似合いそうだ。いや、同じ顔だからその理屈だと俺も似合うはずなのだが・・・どうも違和感が拭えない。
「テイト、着替えたら食事にしましょう。」
そんなことを考えていたらザックに声をかけられた。もう夕食の時間帯だったらしい。
そして俺は今公爵家の食堂に通されたのだが・・・
用意された食事にとてつもなく感動していた。
豪華さはもちろんだが、俺でも食べやすいよう気遣われた食事ばかりなのだ。
スープや一口サイズに切られた肉、食器も右腕側にしか用意されておらず、作法を気にするまでもなくこれだけで食べられるようだ。
「さすが公爵家・・・もてなしがすごい。」
「ふふ、満足してもらえたようでなによりです。」
「ああ、正直感動した・・・」
伯爵家ではこんな気遣いは受けたことがない。客に合わせてこんな風に対応を変えられるなんて。
自分が普通に合わせないといけないと思っていた俺にとって人との食事は気の重いものだった。でもここで用意された食事は何も気にすることなく普通に食べることができた。
「ごちそうさま。」
「えっ、もう良いんですか?もしかして、口に合わなかったでしょうか・・・」
食べている俺をニコニコして見ていたザックだったが、俺があまり食べなかったのを見て表情を曇らせた。
「いや!違う、美味しかったよ。悪いな、もう腹いっぱいで。」
「そうですか、それなら良いんですけど・・・」
ここ数年で再び食が細くなってしまったので久々の美味しい食事でも量を食べることができなかった。食が細いのは節約にもなるので悪いことだとは思っていなかったが、ここまで準備してくれたザック達には少し悪いことをした。
「ありがとな、ザック。色々気を遣ってくれたんだろ?」
「これくらいは当然です。それより、テイトはもう少し食べられるようになりましょうね?」
そう言ってにっこり笑ったザックだがノーとは言わせない力がこもっていた。
「あ、ああ。」
気圧される形で頷いた俺に満足したようにザックが笑う。そして俺たちは再びザックの部屋へと戻った。
その後は風呂の世話まで焼こうとするザックをなんとか阻止して、久々に魔法を使わずに体を綺麗にした。そして気分良く風呂を出たのだが・・・
なぜか俺は今ザックのベッドに横たわっている。俺の部屋の準備ができてないからだとか言うザックだが、あの食事が用意できたのだからベッドなど公爵邸にあるものでいくらでも用意できただろうに。
「昔、中庭で一緒に寝たじゃないですか。懐かしいな~。」
「寝てたのはお前だけだろ。」
「そうでしたっけ?」
えへへと笑うザックは3年前と変わらない。
「ねぇ、テイト。今日は一緒に寝ましょう?何もしませんから。」
「何もしないって・・・当たり前だろ。それにいい大人なんだから1人で寝ろよ。」
「昔みたいに過ごしたいんです!ダメですか?」
体はデカくなったのにまるで子犬のような瞳で見つめてくるザックに思わずたじろいでしまう。
「し、仕方ないな・・・久々の再会だし、それくらいなら・・・」
「やったー!」
そうして今に至る。
隣でニコニコこちらを見つめてくるザックのせいで寝るに寝れないのだが・・・
「ザック・・・」
「はい?」
「早く寝ろ。」
「だって、明日にはテイトと婚約できると思うとワクワクしちゃって。」
「半年は考える約束だろ?」
「えっ、でも婚約は先にしても・・・」
「半年後。」
「え~!!!そんなぁ!?」
「じゃあおやすみ。」
「えっ?ちょっと待ってください。テイト~!」
俺を揺すってくるザックだが、俺は絶対に目を開けやるものかと固く瞼を閉じた。今日はずっとザックに振り回されていたので、やっとお返しができたという奇妙な満足感がある。
そして俺は、いつの間にか口元が笑っていたことにも気づかず眠りについた。
そう思って身を捩って膝から降りようとするとザックに抱え直された。
「・・・おい、ザック。下ろしてくれ。」
「ダメです。それにこの方が安定していて良いでしょう?」
「良くない。全く落ち着かない。」
そんな俺の言葉など聞こえなかったようにザックはしっかりと俺を抱えた。俺はため息を吐きながら抵抗を諦め、それならば思いっきりくつろいでやるとばかりにザックの胸に頭をもたれかける。
ザックは一瞬驚いたような顔をしたが、そのすぐ後に嬉しそうな笑みを浮かべた。
「ふふ、昔は私が膝を借りてましたよね。今度は私がこうしてあげられるなんて、嬉しいなあ。」
「俺は嬉しくない・・・お前、大きくなりすぎだぞ。」
「テイトは全然変わりませんね。」
「ぐっ」
「あ、傷付きましたか?」
「別に・・・」
嘘だ。正直傷ついた。確かに自分でも思ったほど成長しなかったとは感じていたが、ザックがここまで成長しているのを見ると少し羨ましい。せめてもの慰めはカインも同じ程度の身長だということか・・・
「ふふ。あ、ほら。見えてきましたよ。」
そんな考えを見透かされてか、ザックが笑う。
なんとも釈然としない気持ちのままザックの視線を追えば、言われた通り公爵邸が見えてきていた。
「ひぇ・・・」
「なんですかその声。」
アーデン家などよりはるかに大きな屋敷は、佇まいからして重厚な雰囲気だ。思わず自分の格好を見下ろして場違いさに緊張してしまう。
「いや、大きな屋敷だな・・・俺、自分の家以外入ったこともないから、先に言っておくけど礼儀とかも分からないぞ。」
「いいですよ、そんなこと。」
「うぅ、やっぱり帰りたい・・・」
公爵家ともなれば使用人もたくさんいるだろう。そんな中に自分のような得体の知れないやつがのこのこ入ってきたらどう思われるだろう。この体のことを知られればなおさらだ。
「テイト。」
いつの間にかフードを握っていた手をザックがそっと取る。
「嫌な思いはさせません。テイトには私の家でもくつろいで欲しいんです。」
「そんな気を遣わなくていい・・・・・・俺は大丈夫だ。」
俺の答えにザックはなんとも言えない表情をしたが、馬車が屋敷についたので俺たちは降りることにした。俺は抱き抱えられたまま馬車を降り、流石にここからは歩くと暴れることでなんとか下ろしてもらった。
そして、ザックの背に隠れるように公爵邸の門を潜る。玄関へと入れば、使用人が並んで主人であるザックを出迎えた。
「「おかえりなさいませ、公爵様。」」
想像以上に重々しい出迎えに思わず後退りした俺をザックが引き寄せる。
「今日は客人が一緒だ。大事な客人なので、くれぐれも失礼がないように。」
「「かしこまりました。」」
一糸乱れぬ返答にさすが公爵邸の使用人だと感心する。明らかに怪しい身なりの俺のことも嫌な顔一つせず迎え入れてくれる。
そうしてザックの部屋へ通されたわけだが、俺は今ザックと攻防を繰り広げている。何故そんなことになっているのかというと、食事前にローブを預かると言い出したザックに、俺が脱ぎたくないと駄々をこねているからだ。
「一生それを着ているつもりですか!」
俺のローブの裾を引っ張りながらザックがそんなことを言う。
「出来ることならそうするつもりだ!」
「ダメですよ!」
「これがないと落ち着かないんだよ!」
「徐々に慣れていきましょう?協力しますから!」
「嫌だって・・・あっ!」
俺の抵抗も虚しくザックに頭から脱がせるようにローブを持っていかれる。
「あぁ・・・」
今日はローブの下は薄手のシャツ一枚だ。空洞になっている右袖が虚しく揺れる。人前でローブを脱ぐなんていつぶりだろうか。
腕がないことが恥ずかしいことではないと分かっている、分かってはいるがやはり差別的な目で見られ続けた習慣のせいで、どうしてもローブがないと落ち着かない。
すると、ドアをノックする音がしてザックの許可を得たメイドが中へと入ってくる。彼女がこちらに視線を移したのを見て俺は咄嗟にザックの後ろに隠れた。
「テイト?」
気付けば俺はザックの服の裾を掴んでいた。
「あっ、悪い。服が皺に・・・」
「そんなことはどうでも良いんですけど・・・」
まるでカインにやっていたようにザックに頼ってしまった。年下のザックの後ろに隠れるなんて、なんとも情けなくて俺は一人勝手に俯いた。
「ほら、これに着替えて食事にしましょう。」
メイドから何かを受け取ったザックはそれをさらに俺に渡す。手にあったのは服だ。
「これ・・・」
「すいません、もともとはカインへ贈る予定だったものですが・・・サイズは同じくらいでしょうから今日はこれを着ていただけますか?テイト用にはまた別に贈りますから。」
「いや、贈らなくていい。とりあえずこの服は借りておく。」
今着ている服だけでは心許なかった俺はこれ幸いと服を受け取った。
「じゃあ、着替えるから・・・」
「手伝います。」
「いや、一人で・・・」
「手伝います。」
「・・・・・・・・・」
暖簾に腕押ししてる気分だ。同じ言葉しか返ってこないザックにこちらが折れる形で着替えを手伝ってもらうことにした。
「じゃあ・・・シャツのボタンを外してくれるか?」
「はい!」
ザックは少し屈んで俺が着ているシャツのボタンを外す。なんだか真剣にシャツを脱がそうとしているザックを見下ろしていると変な気分になる。
「できました!」
「ああ、ありがとう。後は自分で・・・」
「全部手伝いますよ?」
「あっ、待て!」
そう言ったザックにそのままシャツを持っていかれた。
「細い・・・あ、腕ってこうなって・・・」
ザックは俺の体をまじまじと見てそんなことを言う。そして指で右腕の丸みをなぞった。
「ひっ!んっ」
普段触られることない場所を触られて思わず変な声が出てしまった。俺は恥ずかしくなって慌てて口を押さえた。
「あっ、すいません。もしかして痛かったですか?」
「いや・・・くすぐったかっただけだ。生まれつきだから痛みとかはない。」
「そうですか、よかった・・・」
「それより早く服をくれ。」
「あっ、これです。」
そして俺はそそくさと着替えをすませた。なるほど白基調でまとまったその服はカインに似合いそうだ。いや、同じ顔だからその理屈だと俺も似合うはずなのだが・・・どうも違和感が拭えない。
「テイト、着替えたら食事にしましょう。」
そんなことを考えていたらザックに声をかけられた。もう夕食の時間帯だったらしい。
そして俺は今公爵家の食堂に通されたのだが・・・
用意された食事にとてつもなく感動していた。
豪華さはもちろんだが、俺でも食べやすいよう気遣われた食事ばかりなのだ。
スープや一口サイズに切られた肉、食器も右腕側にしか用意されておらず、作法を気にするまでもなくこれだけで食べられるようだ。
「さすが公爵家・・・もてなしがすごい。」
「ふふ、満足してもらえたようでなによりです。」
「ああ、正直感動した・・・」
伯爵家ではこんな気遣いは受けたことがない。客に合わせてこんな風に対応を変えられるなんて。
自分が普通に合わせないといけないと思っていた俺にとって人との食事は気の重いものだった。でもここで用意された食事は何も気にすることなく普通に食べることができた。
「ごちそうさま。」
「えっ、もう良いんですか?もしかして、口に合わなかったでしょうか・・・」
食べている俺をニコニコして見ていたザックだったが、俺があまり食べなかったのを見て表情を曇らせた。
「いや!違う、美味しかったよ。悪いな、もう腹いっぱいで。」
「そうですか、それなら良いんですけど・・・」
ここ数年で再び食が細くなってしまったので久々の美味しい食事でも量を食べることができなかった。食が細いのは節約にもなるので悪いことだとは思っていなかったが、ここまで準備してくれたザック達には少し悪いことをした。
「ありがとな、ザック。色々気を遣ってくれたんだろ?」
「これくらいは当然です。それより、テイトはもう少し食べられるようになりましょうね?」
そう言ってにっこり笑ったザックだがノーとは言わせない力がこもっていた。
「あ、ああ。」
気圧される形で頷いた俺に満足したようにザックが笑う。そして俺たちは再びザックの部屋へと戻った。
その後は風呂の世話まで焼こうとするザックをなんとか阻止して、久々に魔法を使わずに体を綺麗にした。そして気分良く風呂を出たのだが・・・
なぜか俺は今ザックのベッドに横たわっている。俺の部屋の準備ができてないからだとか言うザックだが、あの食事が用意できたのだからベッドなど公爵邸にあるものでいくらでも用意できただろうに。
「昔、中庭で一緒に寝たじゃないですか。懐かしいな~。」
「寝てたのはお前だけだろ。」
「そうでしたっけ?」
えへへと笑うザックは3年前と変わらない。
「ねぇ、テイト。今日は一緒に寝ましょう?何もしませんから。」
「何もしないって・・・当たり前だろ。それにいい大人なんだから1人で寝ろよ。」
「昔みたいに過ごしたいんです!ダメですか?」
体はデカくなったのにまるで子犬のような瞳で見つめてくるザックに思わずたじろいでしまう。
「し、仕方ないな・・・久々の再会だし、それくらいなら・・・」
「やったー!」
そうして今に至る。
隣でニコニコこちらを見つめてくるザックのせいで寝るに寝れないのだが・・・
「ザック・・・」
「はい?」
「早く寝ろ。」
「だって、明日にはテイトと婚約できると思うとワクワクしちゃって。」
「半年は考える約束だろ?」
「えっ、でも婚約は先にしても・・・」
「半年後。」
「え~!!!そんなぁ!?」
「じゃあおやすみ。」
「えっ?ちょっと待ってください。テイト~!」
俺を揺すってくるザックだが、俺は絶対に目を開けやるものかと固く瞼を閉じた。今日はずっとザックに振り回されていたので、やっとお返しができたという奇妙な満足感がある。
そして俺は、いつの間にか口元が笑っていたことにも気づかず眠りについた。
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2020/09/05
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