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孤児院
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翌日。
「おはよ。」
「ああ、おはよう。」
寝起きのノエルが1番に僕に挨拶をしてくれる。これが僕にとっての密かな幸せだった。
僕たちは2人でひとつの部屋を使っている。なので当然毎日1番に顔を合わせるのだ。
いっそベッドも1つしかなければよかったと思わなくもないが…それはそれで毎日僕の心臓が持ちそうもない。
「今日は街に手伝いに行くんだっけ?」
「そうだよ。マーサおばさんのところの手伝いだ。」
「そっか、あの人優しいから今日は期待できそうだな。」
今日は街に仕事の手伝いに行くのだ。孤児たちは卒院する前にこうして仕事の手伝いをし、お金の稼ぎ方を学ぶ。
今日は孤児にもよくしてくれるマーサおばさんの商店での手伝いだ。
大抵の大人は孤児だからと雀の涙程度の報酬しかくれないが、彼女は働いた分をきっちりくれる。だから僕たちにとっては有難い存在だ。
そして僕たちは街に向かった。
「カイン、ノエルよく来たね!」
「マーサおばさん、おはようございます。」
「今日はよろしくお願いします。」
笑顔で出迎えてくれた彼女に付いて、さっそく仕事を手伝う。と言っても僕たちがやるのは品物を並べたりお客さんを呼び込んだりする簡単なものばかりだ。
字や計算が分かればもっと手伝えるのだが、あいにく僕たちにはわからない。
エルマー神官なら知っているはずなのだが、教えてくれる気配もなく、頼み込んでもはぐらかされてしまうのだ。
「ねえ、あの人格好良くない?」
「本当だ、ちょっと見に行ってみようか?」
すると近くにいた女性2人組がそんなことを言って店に近づいてきた。
「カインは良い客寄せになるね!」
マーサおばさんがそう笑った。どうやら彼女たちは僕目当てで店に立ち寄ったらしい。別にノエル以外にモテても嬉しくはないのだが。
「はあ~、顔が良いと特だよな。仕方ねぇ、俺は裏方に徹しますよ。」
「まあまあ、あたしはノエルも可愛い顔してると思うよ?」
不貞腐れ気味なノエルにマーサおばさんがフォローをする。僕もノエルは可愛いと思う。
「可愛いって…フォローするなら格好良いって言ってくださいよ。」
「あんたは可愛いで十分だよ。」
ノエルはそう言ったマーサおばさんにドシドシ背中を叩かれている。
彼は「可愛いで十分ってなんだよ…」とぶつくさ言っているが、彼女に構ってもらえて満更でもなさそうだ。
そして僕はやってきたお客さんの対応をする。正直人と話すのは得意ではないので接客は苦手なのだが…
「お兄さん本当に平民?すごく格好良いわね。」
「平民ですし、孤児ですよ。」
「えー!全然見えない。どこかの貴族の庶子かもね。」
「どうでしょうね。」
どいつもこいつもそんな不確かなことどうだって良いのに。僕は半ば辟易しながら彼女たちの対応をする。
「じゃあお兄さんも16歳になったら独り立ちするんだ?君みたいに格好良い子ならうちで口利きしてあげても良いよ。」
ブティックで働いているという女性の提案に僕は初めて興味をそそられ顔をあげた。貴族御用達の店とのことなので、それなりに給料も良いはずだ。
「本当ですか?あの、友達も1人口利きしてもらえたりしますかね?」
「うーん、その友達って女?」
「いえ、男です。というかコイツです。」
そう言って僕は後ろで在庫整理をしていたノエルを引っ張り出す。
彼は「うおっ、急に何すんだ…」と言った後、まだ接客中であることを見て口をつぐんだ。
視線だけでどういう状況だと問いかけてくる。僕は女性たちの方を見直した。
「うーん、悪くはないけど…ブティックには向かないと思うなー。君1人だけでも来ない?」
「そうですか…それなら結構です。」
肩を落とした僕に何か言いたそうなノエルの視線が刺さる。
「えー残念。でも気が変わったらいつでもおいで。」
女性はそう言って名刺を渡してきた。僕は一応礼をして、いくつか商品を買ってくれた彼女たちを見送った。
「おい、カイン。お前…」
「ごめん引っ張り出して。」
「いや…」
ノエルは複雑そうな顔をして僕を見た後、また裏方の仕事に戻っていった。
「おはよ。」
「ああ、おはよう。」
寝起きのノエルが1番に僕に挨拶をしてくれる。これが僕にとっての密かな幸せだった。
僕たちは2人でひとつの部屋を使っている。なので当然毎日1番に顔を合わせるのだ。
いっそベッドも1つしかなければよかったと思わなくもないが…それはそれで毎日僕の心臓が持ちそうもない。
「今日は街に手伝いに行くんだっけ?」
「そうだよ。マーサおばさんのところの手伝いだ。」
「そっか、あの人優しいから今日は期待できそうだな。」
今日は街に仕事の手伝いに行くのだ。孤児たちは卒院する前にこうして仕事の手伝いをし、お金の稼ぎ方を学ぶ。
今日は孤児にもよくしてくれるマーサおばさんの商店での手伝いだ。
大抵の大人は孤児だからと雀の涙程度の報酬しかくれないが、彼女は働いた分をきっちりくれる。だから僕たちにとっては有難い存在だ。
そして僕たちは街に向かった。
「カイン、ノエルよく来たね!」
「マーサおばさん、おはようございます。」
「今日はよろしくお願いします。」
笑顔で出迎えてくれた彼女に付いて、さっそく仕事を手伝う。と言っても僕たちがやるのは品物を並べたりお客さんを呼び込んだりする簡単なものばかりだ。
字や計算が分かればもっと手伝えるのだが、あいにく僕たちにはわからない。
エルマー神官なら知っているはずなのだが、教えてくれる気配もなく、頼み込んでもはぐらかされてしまうのだ。
「ねえ、あの人格好良くない?」
「本当だ、ちょっと見に行ってみようか?」
すると近くにいた女性2人組がそんなことを言って店に近づいてきた。
「カインは良い客寄せになるね!」
マーサおばさんがそう笑った。どうやら彼女たちは僕目当てで店に立ち寄ったらしい。別にノエル以外にモテても嬉しくはないのだが。
「はあ~、顔が良いと特だよな。仕方ねぇ、俺は裏方に徹しますよ。」
「まあまあ、あたしはノエルも可愛い顔してると思うよ?」
不貞腐れ気味なノエルにマーサおばさんがフォローをする。僕もノエルは可愛いと思う。
「可愛いって…フォローするなら格好良いって言ってくださいよ。」
「あんたは可愛いで十分だよ。」
ノエルはそう言ったマーサおばさんにドシドシ背中を叩かれている。
彼は「可愛いで十分ってなんだよ…」とぶつくさ言っているが、彼女に構ってもらえて満更でもなさそうだ。
そして僕はやってきたお客さんの対応をする。正直人と話すのは得意ではないので接客は苦手なのだが…
「お兄さん本当に平民?すごく格好良いわね。」
「平民ですし、孤児ですよ。」
「えー!全然見えない。どこかの貴族の庶子かもね。」
「どうでしょうね。」
どいつもこいつもそんな不確かなことどうだって良いのに。僕は半ば辟易しながら彼女たちの対応をする。
「じゃあお兄さんも16歳になったら独り立ちするんだ?君みたいに格好良い子ならうちで口利きしてあげても良いよ。」
ブティックで働いているという女性の提案に僕は初めて興味をそそられ顔をあげた。貴族御用達の店とのことなので、それなりに給料も良いはずだ。
「本当ですか?あの、友達も1人口利きしてもらえたりしますかね?」
「うーん、その友達って女?」
「いえ、男です。というかコイツです。」
そう言って僕は後ろで在庫整理をしていたノエルを引っ張り出す。
彼は「うおっ、急に何すんだ…」と言った後、まだ接客中であることを見て口をつぐんだ。
視線だけでどういう状況だと問いかけてくる。僕は女性たちの方を見直した。
「うーん、悪くはないけど…ブティックには向かないと思うなー。君1人だけでも来ない?」
「そうですか…それなら結構です。」
肩を落とした僕に何か言いたそうなノエルの視線が刺さる。
「えー残念。でも気が変わったらいつでもおいで。」
女性はそう言って名刺を渡してきた。僕は一応礼をして、いくつか商品を買ってくれた彼女たちを見送った。
「おい、カイン。お前…」
「ごめん引っ張り出して。」
「いや…」
ノエルは複雑そうな顔をして僕を見た後、また裏方の仕事に戻っていった。
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