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本編

アルフレッドのもの ⭐︎

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そのまま眠り続けていたらしい俺は、翌朝目が覚めた。体はアルフレッドが綺麗にしてくれたらしい。

・・・さすがにそれくらいはしてもらわないと困るが。

隣ですやすや眠っているアルフレッドに腹が立つ。だが、今こそ逃げるチャンスなのではないだろうか。

そう思った俺は、気怠い体をどうにか起こし、そっとベッドを抜き出して身支度を整えた。


荷物を詰め終わった俺は簡単な辞表のみ書いて、自分の使用人部屋に置いておく。屋敷を出て向かうのはもちろんベネディクトのところだ。

かなり急だが、ベネディクトについて行くことを伝えて、早めに街を出たいと伝えよう。今日すぐに発つことは無理でも、アルフレッドに気づかれる前に自分だけでもどこかへ隠れないと。そう思って俺は足を早めた。


いつもの露店に行けば、ベネディクトが元気よく仕事をしていて、その様子にひどくホッとする。

「ギルバート?どうしてここに?」

俺に気づいたベネディクトが駆け寄ってくる。

「ベネディクト、待たせてごめん。俺、お前について行くよ。」

俺は開口一番にベネディクトについて行くことを伝えた。ベネディクトは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに嬉しそうな笑顔を浮かべてくれる。

「本当に?やった!!」

「ああ、迷惑をかけると思うが、よろしく頼む。」

「迷惑だなんてとんでもない。すごく嬉しいよ。でも何で急に?」

「ああ、ちょっと色々あってな・・・出来ることなら、早めに街を出れると嬉しいんだが・・・」

「そうか、わかった。今すぐには無理だけどなるべく急ぐよ。それに何があったか聞かせて欲しいし、少し裏へ行こう。」

俺はベネディクトに案内されるように露店の裏にある林へと足を踏みれる。


「ここなら誰にも話を聞かれないよ。それで、何があったの?」

「いや、ちょっとアルフレッドと喧嘩してさ・・・逃げる様にして屋敷を出てきたから、もしかしたら追いかけて来るかもって・・・」

「なるほどね・・・・・・もし、その喧嘩がなかったらギルバートは残る気でいた?」

「それは・・・・・・」

確かに昨日突然アルフレッドに詰め寄られるまではここに残る気でいた。急な心変わりにベネディクトを振り回してしまい申し訳ない気持ちになる。

「ごめん、残る気でいた。」

俺が素直に謝ると、ベネディクトふっと力を抜いた様に笑った。

「何となくそんな気がしてたんだ。でも、そっか。じゃあ俺は喧嘩してくれたアルフレッドに感謝だな。」

「ベネディクト・・・」

「そうと決まればさっさと出る準備をしよう。アルフレッドに気づかれる前に街を出ないと・・・」


次の瞬間こちらを見たベネディクトが固まると同時に、後ろにふわっとした風が吹く。そして現れたアルフレッドに俺は襟を掴まれ引き寄せられた。

「もうとっくに気づいてる。」

「あ、アルフレッド・・・」

「あれだけ行かせないと言ったのに言いつけを守らないなんて、お前も学ばないな。」

「守る義理なんかないだろ!俺はベネディクトとこの街をでるんだ!」

掴まれていた手を振り解くとアルフレッドは冷たく目を細めた。

「へぇ、昨日俺がやったことを分かってないみたいだな。」

アルフレッドはジリジリと俺に近づいてきたかと思うと、「お仕置きだ」と言って俺の腰を抱き寄せながらその手を通して魔力を流してくる。

「あっ・・・」

途端に文字を刻まれたあそこが熱くなる。そして昨日の行為がフラッシュバックした。

「ひっ!あっ、やめっ!」

俺は1人取り乱してペタンと地面に座り込んだ。その周りにジョロロという不快な音と共に水溜りができ始める。

「あ、ああ違っ、これは・・・」

俺は混乱してベネディクトを見上げた。ベネディクトは驚いた表情で固まっていて感情は読み取れない。

(どうしよう・・・軽蔑された・・・?)

俺は恥ずかしさのあまりこれ以上ベネディクトの顔を見ることができず、唇を噛んで俯いた。


「ふ、あはははは!」

すると、突然アルフレッドが笑い出す。

「まさか失禁するなんて・・・・・・おい、ベネディクト。見ただろ?こいつはお前と一緒に旅に出られるような状態じゃない。だから諦めろ。」


そう言ったアルフレッドは俺を抱えたかと思うと、屋敷へとテレポートの呪文を唱える。去り際にベネディクトが何か言いたそうな顔をしたのが目に焼き付いた。
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