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本編
パーティー
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慌ただしく準備をしている間に、あっという間にパーティー当日となった。
アルフレッドは以前"小規模なパーティー"と言っていたが、想像していた小規模とは全く違った。次々やって来る客に、貴族社会ではこれが小規模なのだろうかと疑問に思う。
また、このパーティーにはアルフレッドと共に旅をした仲間も来ているらしい。色んな意味であいつと2年もの間共に過ごせた仲間とはどんな人たちだろうと想像を膨らませた。
すると、グラスを軽く叩く音が響き、アルフレッドが壇上へ上がった。
「本日は、私達の旅の終焉から1年を祝うパーティーにお集まりいただきありがとうございます。ささやかなパーティーですが、どうぞお楽しみください。」
簡潔に挨拶を済ませたアルフレッドは、礼をして再び下へと戻る。すると同時に音楽が奏でられ始めた。
ホールの中央で踊る男女を見て、これが貴族のパーティーかと心の内で感嘆する。今は給仕も行っているのであまりじっくり見ることは出来ないが。
アルフレッドの周りにも女性陣が群がっており、やはり勇者ともなると人気があるのだな横目で見る。あるいはあの顔のせいかもしれないが。
そんなことを考えつつせわしなく動き回っていると、あるテーブルの面々に呼び止められた。他の貴族たちとは違った雰囲気のある一団に、少し気圧されつつハワードさんに仕込まれた恭しい態度で返事をする。
「やっぱり彼じゃないか?噂通りグレーの瞳だ。」
「ほんと。思っていたより可愛いのね。」
上品な雰囲気の青年と穏やかそうな女性がそんなことを話している。用事も言われずにじろじろと全身をチェックされているような状況に、居心地の悪さを感じながら指示を待つ。
「アルフレッドにいじめられてる割にはいい服を着てるな。」
「いじめを誤魔化すためでは?」
「なるほどな。俺らの前では誤魔化す必要なんか無いのに。元はと言えばこいつが先にやったんだろ?」
会話に体格の良い男性が加わった。彼らはアルフレッドと旧知の仲なのだろうか。話の内容に不穏な内容が混ざり始める。
「あ、おい!アルフレッド!」
すると、その男性が近くにいたアルフレッドに気づいて呼び止めた。アルフレッドは彼らと俺を見比べて怪訝な表情で近づいてくる。
「顔を見に来ないでどこに行ってたんだよ。」
「・・・悪い。それより何をしていたんだ?」
「彼だろう?君が昔いじめられていたのって。」
「何でそれを?」
「街で噂になってたし、昔もチラッと言ってただろう?」
「ついに見返せたんだな。なかなか追い込んでるらしいじゃないか。」
そう言って笑った面々は視線を俺に戻した。その好奇の視線に思わずたじろぐと、アルフレッドが俺を背に隠すように前に出た。
「何を言っているのかわからないが、無意味に呼び止めるのはやめろ。お前は仕事に戻れ。」
「はい・・・」
明らかに庇われたことがわかり少し悔しいが、ここを離れられることにホッとしつつ俺はテーブルを去った。
反対にアルフレッドはその席について何やら話し始めた。もう話の内容は聞こえないが、珍しく表情が硬いアルフレッドに、あまり楽しい内容ではないのだろうことが窺える。
庇われた手前その内容が気になったが、また近づいて絡まれても嫌なので、遠巻きにアルフレッドの様子を確認するに留めて仕事に戻った。
アルフレッドは以前"小規模なパーティー"と言っていたが、想像していた小規模とは全く違った。次々やって来る客に、貴族社会ではこれが小規模なのだろうかと疑問に思う。
また、このパーティーにはアルフレッドと共に旅をした仲間も来ているらしい。色んな意味であいつと2年もの間共に過ごせた仲間とはどんな人たちだろうと想像を膨らませた。
すると、グラスを軽く叩く音が響き、アルフレッドが壇上へ上がった。
「本日は、私達の旅の終焉から1年を祝うパーティーにお集まりいただきありがとうございます。ささやかなパーティーですが、どうぞお楽しみください。」
簡潔に挨拶を済ませたアルフレッドは、礼をして再び下へと戻る。すると同時に音楽が奏でられ始めた。
ホールの中央で踊る男女を見て、これが貴族のパーティーかと心の内で感嘆する。今は給仕も行っているのであまりじっくり見ることは出来ないが。
アルフレッドの周りにも女性陣が群がっており、やはり勇者ともなると人気があるのだな横目で見る。あるいはあの顔のせいかもしれないが。
そんなことを考えつつせわしなく動き回っていると、あるテーブルの面々に呼び止められた。他の貴族たちとは違った雰囲気のある一団に、少し気圧されつつハワードさんに仕込まれた恭しい態度で返事をする。
「やっぱり彼じゃないか?噂通りグレーの瞳だ。」
「ほんと。思っていたより可愛いのね。」
上品な雰囲気の青年と穏やかそうな女性がそんなことを話している。用事も言われずにじろじろと全身をチェックされているような状況に、居心地の悪さを感じながら指示を待つ。
「アルフレッドにいじめられてる割にはいい服を着てるな。」
「いじめを誤魔化すためでは?」
「なるほどな。俺らの前では誤魔化す必要なんか無いのに。元はと言えばこいつが先にやったんだろ?」
会話に体格の良い男性が加わった。彼らはアルフレッドと旧知の仲なのだろうか。話の内容に不穏な内容が混ざり始める。
「あ、おい!アルフレッド!」
すると、その男性が近くにいたアルフレッドに気づいて呼び止めた。アルフレッドは彼らと俺を見比べて怪訝な表情で近づいてくる。
「顔を見に来ないでどこに行ってたんだよ。」
「・・・悪い。それより何をしていたんだ?」
「彼だろう?君が昔いじめられていたのって。」
「何でそれを?」
「街で噂になってたし、昔もチラッと言ってただろう?」
「ついに見返せたんだな。なかなか追い込んでるらしいじゃないか。」
そう言って笑った面々は視線を俺に戻した。その好奇の視線に思わずたじろぐと、アルフレッドが俺を背に隠すように前に出た。
「何を言っているのかわからないが、無意味に呼び止めるのはやめろ。お前は仕事に戻れ。」
「はい・・・」
明らかに庇われたことがわかり少し悔しいが、ここを離れられることにホッとしつつ俺はテーブルを去った。
反対にアルフレッドはその席について何やら話し始めた。もう話の内容は聞こえないが、珍しく表情が硬いアルフレッドに、あまり楽しい内容ではないのだろうことが窺える。
庇われた手前その内容が気になったが、また近づいて絡まれても嫌なので、遠巻きにアルフレッドの様子を確認するに留めて仕事に戻った。
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