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本編
なりふり構わず
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翌日。
俺はアルフレッドから金を受け取って家へと帰った。これでまたしばらく生活ができるとはいえ、なんとも腑に落ちない。
どうにか別の稼ぎ口を見つけたいが、広まった悪評はそう簡単に拭えなくて・・・
槍の訓練だけは狩りの合間に続けているものの、傭兵の仕事には一向にありつけないでいた。
そうして1週間ほどが経ち、家賃を払ったり中古の服を購入したりしていたらあっという間に金が底をついた俺は、再びアルフレッドの家を訪ねていた。
「それで?前回同様魔法なしのハンデでいいか?」
「いや・・・やっぱり片手のハンデにしてくれ。あ、あと魔法もなしで!」
「前回と言ってることが全然違うじゃねぇか。」
「い、いいだろ。もともとお前が提案したハンデだし。」
もうなりふり構っていられなかった俺は、特大のハンデを希望した。負けてヤられるよりは大きなハンデの上ででも勝って報酬だけ受け取りたい。
問題はこれをアルフレッドが受け入れてくれるかどうかだが・・・
「まあいいけど。でも、これで負けたら言い逃れできないぞ。」
「っ!わかってる。」
承諾は得られたようだ。だが、アルフレッドの言う通り、これで負けたらもう言い訳ができない。
片手のあいつに勝てなかったら、今後何をもってしても勝つことは出来ないだろう。そんな現実を突きつけられたらもう槍を折るしかない。
俺は、前回より緊張して槍を構えた。
始まりの合図とともにアルフレッドが片手で切り込んでくる。圧倒的に手数が少なくなった攻撃に、これならば!という思いで応戦する。
アルフレッドも片手はきつかったようで、段々苦しげな表情になってきた。俺は慎重にあいつの剣を捌き、フェイントを入れて槍を振るう。
ゴンッ!!!という木と木のぶつかる鈍い音がしてアルフレッドの剣が吹っ飛んだ。俺は剣を拾いに行く隙を与えず、やつの首に槍を突きつける。
しばらく状況への理解が追いつかず唖然として背中で息をしていた俺だったが、段々と勝利の実感が込み上げる。アルフレッドも同様に唖然としていたが、数秒置いて「・・・参った。」とつぶやいた。
「・・・・・・俺が、勝った・・・」
特大のハンデ付きとはいえ勇者に勝った。その事実に、嬉しくなって拳を握りしめた。
「よっしゃあ!!やっと勝ったぞ!!!」
顔を上げれば昔の癖でついナタリエちゃんの姿を探してしまう。
今回はギャラリーはいないのだったと思い出して、地面に座って俺を見ていたアルフレッドに視線を移す。
「まあ、超ハンデ付きだし。これでも勝てない、なんてことにならなくてよかったな。」
なんだか眩しそうな顔をしていたアルフレッドだったが、そんな憎まれ口を叩きながら立ち上がった。思ったほどショックを受けていないその様子に、若干の悔しさを感じる。
「うるさいな!まあ、これで負けたらもう戦闘職は諦めて槍を捨てるところだったけどさ。あ~勝ててよかった!!」
槍を握り直してこれまで訓練を続けてきたことが無駄にならなかったことにホッと胸を撫でおろす。
「・・・・・・お前は強いよ。」
「えっ?」
勝利した余韻に浸っていた俺にアルフレッドが何かを呟いた。うまく聞き取れなかったそれをもう一度聞こうとしたが、あいつは何も言ってないとばかりに金を取ってくると一度屋敷へ入っていった。
俺はアルフレッドから金を受け取って家へと帰った。これでまたしばらく生活ができるとはいえ、なんとも腑に落ちない。
どうにか別の稼ぎ口を見つけたいが、広まった悪評はそう簡単に拭えなくて・・・
槍の訓練だけは狩りの合間に続けているものの、傭兵の仕事には一向にありつけないでいた。
そうして1週間ほどが経ち、家賃を払ったり中古の服を購入したりしていたらあっという間に金が底をついた俺は、再びアルフレッドの家を訪ねていた。
「それで?前回同様魔法なしのハンデでいいか?」
「いや・・・やっぱり片手のハンデにしてくれ。あ、あと魔法もなしで!」
「前回と言ってることが全然違うじゃねぇか。」
「い、いいだろ。もともとお前が提案したハンデだし。」
もうなりふり構っていられなかった俺は、特大のハンデを希望した。負けてヤられるよりは大きなハンデの上ででも勝って報酬だけ受け取りたい。
問題はこれをアルフレッドが受け入れてくれるかどうかだが・・・
「まあいいけど。でも、これで負けたら言い逃れできないぞ。」
「っ!わかってる。」
承諾は得られたようだ。だが、アルフレッドの言う通り、これで負けたらもう言い訳ができない。
片手のあいつに勝てなかったら、今後何をもってしても勝つことは出来ないだろう。そんな現実を突きつけられたらもう槍を折るしかない。
俺は、前回より緊張して槍を構えた。
始まりの合図とともにアルフレッドが片手で切り込んでくる。圧倒的に手数が少なくなった攻撃に、これならば!という思いで応戦する。
アルフレッドも片手はきつかったようで、段々苦しげな表情になってきた。俺は慎重にあいつの剣を捌き、フェイントを入れて槍を振るう。
ゴンッ!!!という木と木のぶつかる鈍い音がしてアルフレッドの剣が吹っ飛んだ。俺は剣を拾いに行く隙を与えず、やつの首に槍を突きつける。
しばらく状況への理解が追いつかず唖然として背中で息をしていた俺だったが、段々と勝利の実感が込み上げる。アルフレッドも同様に唖然としていたが、数秒置いて「・・・参った。」とつぶやいた。
「・・・・・・俺が、勝った・・・」
特大のハンデ付きとはいえ勇者に勝った。その事実に、嬉しくなって拳を握りしめた。
「よっしゃあ!!やっと勝ったぞ!!!」
顔を上げれば昔の癖でついナタリエちゃんの姿を探してしまう。
今回はギャラリーはいないのだったと思い出して、地面に座って俺を見ていたアルフレッドに視線を移す。
「まあ、超ハンデ付きだし。これでも勝てない、なんてことにならなくてよかったな。」
なんだか眩しそうな顔をしていたアルフレッドだったが、そんな憎まれ口を叩きながら立ち上がった。思ったほどショックを受けていないその様子に、若干の悔しさを感じる。
「うるさいな!まあ、これで負けたらもう戦闘職は諦めて槍を捨てるところだったけどさ。あ~勝ててよかった!!」
槍を握り直してこれまで訓練を続けてきたことが無駄にならなかったことにホッと胸を撫でおろす。
「・・・・・・お前は強いよ。」
「えっ?」
勝利した余韻に浸っていた俺にアルフレッドが何かを呟いた。うまく聞き取れなかったそれをもう一度聞こうとしたが、あいつは何も言ってないとばかりに金を取ってくると一度屋敷へ入っていった。
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