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番外編、酒飲みたちの漫遊(フレイside)
爆発(フレイside)
しおりを挟む(フレイside)
「……よしっ、俺も一肌脱ぎますか!」
リヴァイアサンが、苦痛で海面をのたうち回る。そのたびに波が激しく船体に打ち付け、船を破壊していった。既に甲板も海水に浸かっている。
カリエンタは未だ甲板に足を踏ん張らせながら、風切り音を立てて槍を巧みに振り回した。熱を帯びたマグマが切っ先から出て、ドロリと頭上に弧を描く。
カリエンタは槍を身体を一まわりするように回した。
カリエンタの周囲を取り囲む、紅く滾った熱の塊。
繋がって弧を描いていたマグマは、カリエンタの頭上でピタリと止まると、ぐにゃりと形を変えた。
紅蓮に燃える翼を左右に大きく広げ、凛々しい顔立ちに鋭い鉤爪。逞しい体躯には炎を宿す。カリエンタの周りには、複数の炎を纏った灼熱の鳥が、美しい咆哮を発している。
目は大きく、得物を逃さないとばかりにぎらつく。
灰色に荒れ狂う海に、紅い彗星のごとく、炎の猛禽類が幾つも姿を現した。
ひとしきり槍を振り回し炎の鳥を作り出すと、カリエンタはキンっという音と共に槍を止める。そのまま、片手で右に槍を薙ぎ払った。
「……爆ぜろ。」
薙ぎ払った槍を合図に、無数の灼熱の鳥は羽根を一度だけ大きく広げて暴風を掴んだ。そして、一気にリヴァイアサンへと滑空していく。
数匹の鳥が、リヴァイアサンの上空へとまっすぐに向かう。そして、大きな羽根を折り畳むと上空から下へ急降下し、灼熱のまま海面に飛び込んだ。
「……あの動きは、ハヤブサか。」
鳥類の中でも最速と言われている、空を飛ぶ速度。特に得物を狙って急降下するその姿は、さながら雷撃を思わせた。
ドゴォオオンーーーーーー!
リヴァイアサンの胴体部分が出ている水面から、高く激しい水柱が飛ぶ。霜柱のように線になった白色の水飛沫が、一気にリヴァイアサンの首元まで上がる。
瞬時に上り詰めた水柱は、その爆発の激しさが伺えた。水面は波以上に大きく揺れ、カリエンタのいる船体自体が上へと一瞬浮いた。
うわー、船酔いが激しそうだな。
なんて呑気に頭の中で考えつつ、俺はカリエンタに叫んだ。
「なんつう、威力だよ!」
「いやさぁ、前からこれ試してみたかったんだよ!」
水は、突然とてつもなく高温のモノ触れると一気に蒸発する。その蒸発の力は凄まじく、それこそ爆発を起こすらしいのだ。
ミカゲの世界では、この現象を水蒸気爆発って言うらしいぜ、とカリエンタは俺の隣に移動して教えてくれた。
激しい水柱が上がり、リヴァイアサンの胴体を白色に覆う。その合間にも、炎のハヤブサはリヴァイアサンの身体の近くで、炎となって爆ぜている。
強力な爆発は、リヴァイアサンの岩のように硬い鱗を破壊していった。
所々から血を滴らせ、鱗を緑色に染めている。
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