127 / 136
番外編、酒飲みたちの漫遊(フレイside)
冒険者登録(フレイside)
しおりを挟むざわつく周囲を尻目に、受付嬢はにっこりしながら、実に事務的な口調で俺たちに質問した。
「パーティーランクは、メンバー全員のランクが考慮されます。カリエンタ様のランクがF。このあと、すぐにランク昇任試験を受けて、実力が認められればEになります。ただ……」
受付嬢は、俺の顔をチラリと見た。
「S級のフレイ様がいたとしても、パーティーランクは、恐らくCになるかと……。それでも、よろしいですか?」
受付嬢は営業用の笑顔を絶やさないまま、俺に確認した。まあ、大抵は同等ランクか、少し下のやつとパーティーを組むのが一般的だ。
「大丈夫だ。すぐに上がる。」
「畏まりました。」
了承の返事をすると、受付嬢はテキパキと手を動かす。程なくして、カリエンタの冒険者登録が済んだ。その後すぐに、カリエンタの昇任試験が始まった。
昇任試験は、実践戦闘の訓練とも言える。ギルドの近くにある訓練所で行ったのだが、結果は余裕で合格だ。
魔法を使わなくても、圧倒的な槍術で試験相手を負かしていた。試験官もその技を見て、カリエンタが只者ではないと気づいたようだ。
試験官は偶然にも、昔に俺が世話になった冒険者だった。
現役を退きながらも、その眼光の鋭さは衰えることがない。S級冒険者だった男は、今でもそこら辺の若者には負けないだろう。
試験官は俺に近づくと、「いい相棒だな」と声を潜めて笑った。
「お前がまた、一暴れしそうで楽しみだ。」
そう言って、試験官の男は快活に笑った。
パーティー申請も試験も終わり、さっさとギルドを出ようとした、そのときだ。
「戦闘狂いのフレイも墜ちたもんだな!これからは、若者の指導に勤しむってか?」
テーブル席でたむろしていた、若手の冒険者パーティーがこちらを見てゲラゲラと笑った。そいつらの装備は、そこそこ値が張る良いものを着ている。
ただ、態度は如何せん、街の不良と似たり寄ったりだろうか。
明らかに、素行の悪そうなやつらに絡まれたな。
俺の知る顔ではない。大きな態度からして、そこそこのレベルの冒険者なんだろう。
あくまでも、一般的な目で見ての、そこそこだが。
瞬時に力量差を見抜けない冒険者など、早死にするだけだ。
それが出来ないコイツらは、所詮そこまでということだ。
俺は相手をしないで、そのまま立ち去ろうとする。
「何だよ。S級でも大したことねぇじゃん!」
俺が喧嘩を買わなかったことに、若者たちは俺が怖じ気づいたとでも思ったのだろう。先程よりも大きな声で、回りに吹聴するように叫んだ。
ヤイヤイと騒ぎ立てる若造を、俺は一瞥した。
お前らのために、教えてやるよ。
力量差とは、どんなものなのか。
途端に、俺の周囲の音が消える。ヒュッと、そこかしこで息を詰めた音が聞こえた。何人かは、カタカタと小刻みに震えている。
睨まれた若造どもは、顔面を蒼白させ口をはくはくと動かしていた。
はん。
これぐらいの殺気で、息も上手くできねぇのか。
とんだ小物だな。
コホンッと咳払いの音が、いやに大きくギルド内に響いた。受付嬢がにっこりとしながら、咳払いをしたのだ。ニコニコ笑っているが、笑顔には「揉め事を起こしたら、只じゃ済ませない。」という圧を感じる。
ギルド内での揉め事は御法度。受付嬢にヒラヒラと片手で手を振る。これ以上は何もしないという、意思表示だ。それと同時に、殺気を静めた。
恐怖で押し黙った若手の冒険者たちは、ガクガクと震えて俯いていた。俺は、ギルド内にいる全員に聞こえるように告げたのだった。
「なに、今に分かる。」
28
お気に入りに追加
2,700
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした
ナイトウ
BL
BL小説大賞にご協力ありがとうございました!!
CP:不器用受ガチ勢伯爵夫攻め、女形役者受け
相手役は第11話から出てきます。
ロストリア帝国の首都セレンで女形の売れっ子役者をしていたルネは、皇帝エルドヴァルの為に公式愛妾を装い王宮に出仕し、王妃マリーズの代わりに貴族の反感を一手に受ける役割を引き受けた。
役目は無事終わり追放されたルネ。所属していた劇団に戻りまた役者業を再開しようとするも公式愛妾になるために偽装結婚したリリック伯爵に阻まれる。
そこで仕方なく、顔もろくに知らない夫と離婚し役者に戻るために彼の屋敷に向かうのだった。
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞奨励賞、読んでくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる