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番外編(王立騎士・魔導士団対抗武道大会)
武道大会の開幕
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金属が激しくぶつかり合う音に、ヒュンと風切り音がなる。魔法の放つ閃光や砂埃が激しく宙を舞っていた。
ここは、蒼炎騎士団の訓練場。楕円形の訓練所には観覧席もあり、日本で言う小さな球場みたいな感じだ。天井はないが、雨風も凌ぎ、魔法を用いる訓練もできるようにと結界魔法が施されている。
俺は体勢を低くして、目線辺りで日本刀を両手で構えていた。目の前にいる同じ蒼炎騎士団員の喉元に向けて、切っ先を向けピタリと止まる。
蒼炎騎士団員は体勢を崩したまま、剣を下に向けて身動きが取れないでいた。
「やめっ!」
審判員役の掛け声で、俺は切っ先を降ろす。
「ありがとうございました。」
「いや、さすがミカゲ。参った。」
お互いに剣を納めて一礼をしつつ、次の試合のために迅速に立ち去る。
俺たちは今、蒼炎騎士団メンバーの中で模擬試合を行っている。来月、国立騎士、魔導士団対抗の武道大会が行われるのだ。今日はその選抜メンバーを決めるため、蒼炎騎士団全員が模擬試合を行っていた。
この大会は、皇太子殿下が王に即位されてから、初めての公の催し物だった。
皇太子殿下は無事に王へと即位された。即位の儀の際に、第二王子の魔導士団長と、第三王子のスフェンは、兄である王の側近として、ナイアデス国を共に支えると宣言をした。
そして、公共事業を兼ねて、今回の催しものが行われるのだ。ちなみに、武道大会の観戦費用や売り上げは、全て邪神シユウの被害が大きかった村や、町などへと寄付される。
武道大会は、剣術、魔法、魔法剣術、体術の4部門に分かれて行われる。4部門での優勝者には、王から直々に褒美が与えられるのだ。各々の騎士団長は強制参加。
各部門を勝ち抜いた者は、最後に各騎士団長と対戦する流れになっている。
各魔導士団、騎士団からそれぞれの部門に、代表者4名を選出。毎年の行事ではあるが、新たな王の即位後、初の行事ということもあり、例年以上の盛り上がりを見せていた。
模擬戦の結果、剣術部門にはヒューズと他3名。魔法にはヴェスター、そして、俺にいつも『眼福です!ありがとうございます!』って言う、マルスさんという騎士と他2名。
体術部門にはツェルと他3名。そして、魔法剣術部門には、俺と他騎士3名が参加する。
どの部門も、それぞれの騎士団の得意とする部門が分かれている。
剣術は王族の護衛を主とする、紫炎騎士団が強い。魔法は言わずもがな、魔導士団が圧倒的だ。体術は街の治安維持で、常日頃から鍛えている緑炎騎士団が見事だという。
そして、魔法剣術部門は、蒼炎騎士団が一番強いとのことだ。
昨年の武道大会は、各魔導士団長、騎士団長の圧勝。それでも、この大会に臨む騎士団員や魔導士たちは、褒美と強さを求めて、大会に挑むのだ。
「ミカゲが勝ち残れば、最後に私と対戦することになる。楽しみにしているぞ。」
スフェンに、挑発的な笑みで告げられる。歴戦の猛者たちが参加する大会だ。最後まで残れるかは分からないが、心して掛からなければ。
武道大会当日。王都は祭り一色に染まった。
王都の住民だけではなく、遠方からも観覧客が訪れ、街は一層賑やかだ。
商人はこれ幸いとばかりに、露店を並べて商売に精を出し、街の宿屋は何処も満室で嬉しい悲鳴が上がっている。
街道には多くの屋台が出店して、肉の焼ける匂いが漂い、みずみずしいフルーツが売られていた。客を呼ぶ元気な声に、子供たちのキャーッとはしゃぐ声。
どの団の、誰に金を賭けるかという、大人たちの興奮した声も聞こえる。ちなみに、公的機関が主催で賭け事も行われていた。各団に賭けれることはもちろん、武道大会に参加する選手個人にも賭けることができる。
大人たちは唸り声をあげながら、トーナメント表とに睨めっこしたり、各選手のプロフィールが書かれた紙を見ながら考え込んでいた。
武道大会の舞台は、国で一番大きな闘技場がだ。
コロッセオのように円形で、どの観覧席からも戦闘が見れるようになっている。観覧席と天井には結界魔法が施され、魔法での戦闘が実施された際に、流れ弾にあたらないようにされいた。
中央には、長方形の大きなスクリーンが宙に浮き、四方に表示されている。魔道具によって投影されているスクリーンには、戦闘している選手たちの姿が映し出されるのだそうだ。
闘技場の観覧席には、満杯の人。席に座れないからと、立ち見をしている者さえもいる。
世間話やお目当ての選手についての話に興じ、選手を叱咤激励する威勢のいい声が、闘技場を埋め尽くしていた。
観覧席では食事や飲み物を売る売り子もおり、稼ぎ時とばかりに忙しく席と席の間を笑顔で移動している。
ざわめく観覧席の中で、一段と高く見晴らしの良い場所に用意された、背の高い玉座。
上品なボルドー色の座面に、玉座の足から頂点に至るまで、金色の見事な装飾。その玉座には緩慢な動作で足を組み、ひじ掛けに右肘をついた一人の男性がいた。
片方の口端だけを持ち上げ、不適に笑う姿は、
強者と雄の色香が漂う。
圧倒的な存在感と、覇気。
誰だと問うことさえ、愚問に思える。
「ナイアデス国の民よ。皆の尽力により、此度の催しが開催できることを、真に感謝する。そして、選手諸君。そなたらには大いに期待している。その戦術と雄姿をもって、国民と我を楽しませよ。……我らナイアデス国の誇りを示せ!さあ、存分に、派手に暴れるがよい!」
ナイアデス国現国王、アレクライト王が高らかに開幕を知らせる。
空気を揺るがす大声援とともに、戦いの火蓋が切って落とされた。
ここは、蒼炎騎士団の訓練場。楕円形の訓練所には観覧席もあり、日本で言う小さな球場みたいな感じだ。天井はないが、雨風も凌ぎ、魔法を用いる訓練もできるようにと結界魔法が施されている。
俺は体勢を低くして、目線辺りで日本刀を両手で構えていた。目の前にいる同じ蒼炎騎士団員の喉元に向けて、切っ先を向けピタリと止まる。
蒼炎騎士団員は体勢を崩したまま、剣を下に向けて身動きが取れないでいた。
「やめっ!」
審判員役の掛け声で、俺は切っ先を降ろす。
「ありがとうございました。」
「いや、さすがミカゲ。参った。」
お互いに剣を納めて一礼をしつつ、次の試合のために迅速に立ち去る。
俺たちは今、蒼炎騎士団メンバーの中で模擬試合を行っている。来月、国立騎士、魔導士団対抗の武道大会が行われるのだ。今日はその選抜メンバーを決めるため、蒼炎騎士団全員が模擬試合を行っていた。
この大会は、皇太子殿下が王に即位されてから、初めての公の催し物だった。
皇太子殿下は無事に王へと即位された。即位の儀の際に、第二王子の魔導士団長と、第三王子のスフェンは、兄である王の側近として、ナイアデス国を共に支えると宣言をした。
そして、公共事業を兼ねて、今回の催しものが行われるのだ。ちなみに、武道大会の観戦費用や売り上げは、全て邪神シユウの被害が大きかった村や、町などへと寄付される。
武道大会は、剣術、魔法、魔法剣術、体術の4部門に分かれて行われる。4部門での優勝者には、王から直々に褒美が与えられるのだ。各々の騎士団長は強制参加。
各部門を勝ち抜いた者は、最後に各騎士団長と対戦する流れになっている。
各魔導士団、騎士団からそれぞれの部門に、代表者4名を選出。毎年の行事ではあるが、新たな王の即位後、初の行事ということもあり、例年以上の盛り上がりを見せていた。
模擬戦の結果、剣術部門にはヒューズと他3名。魔法にはヴェスター、そして、俺にいつも『眼福です!ありがとうございます!』って言う、マルスさんという騎士と他2名。
体術部門にはツェルと他3名。そして、魔法剣術部門には、俺と他騎士3名が参加する。
どの部門も、それぞれの騎士団の得意とする部門が分かれている。
剣術は王族の護衛を主とする、紫炎騎士団が強い。魔法は言わずもがな、魔導士団が圧倒的だ。体術は街の治安維持で、常日頃から鍛えている緑炎騎士団が見事だという。
そして、魔法剣術部門は、蒼炎騎士団が一番強いとのことだ。
昨年の武道大会は、各魔導士団長、騎士団長の圧勝。それでも、この大会に臨む騎士団員や魔導士たちは、褒美と強さを求めて、大会に挑むのだ。
「ミカゲが勝ち残れば、最後に私と対戦することになる。楽しみにしているぞ。」
スフェンに、挑発的な笑みで告げられる。歴戦の猛者たちが参加する大会だ。最後まで残れるかは分からないが、心して掛からなければ。
武道大会当日。王都は祭り一色に染まった。
王都の住民だけではなく、遠方からも観覧客が訪れ、街は一層賑やかだ。
商人はこれ幸いとばかりに、露店を並べて商売に精を出し、街の宿屋は何処も満室で嬉しい悲鳴が上がっている。
街道には多くの屋台が出店して、肉の焼ける匂いが漂い、みずみずしいフルーツが売られていた。客を呼ぶ元気な声に、子供たちのキャーッとはしゃぐ声。
どの団の、誰に金を賭けるかという、大人たちの興奮した声も聞こえる。ちなみに、公的機関が主催で賭け事も行われていた。各団に賭けれることはもちろん、武道大会に参加する選手個人にも賭けることができる。
大人たちは唸り声をあげながら、トーナメント表とに睨めっこしたり、各選手のプロフィールが書かれた紙を見ながら考え込んでいた。
武道大会の舞台は、国で一番大きな闘技場がだ。
コロッセオのように円形で、どの観覧席からも戦闘が見れるようになっている。観覧席と天井には結界魔法が施され、魔法での戦闘が実施された際に、流れ弾にあたらないようにされいた。
中央には、長方形の大きなスクリーンが宙に浮き、四方に表示されている。魔道具によって投影されているスクリーンには、戦闘している選手たちの姿が映し出されるのだそうだ。
闘技場の観覧席には、満杯の人。席に座れないからと、立ち見をしている者さえもいる。
世間話やお目当ての選手についての話に興じ、選手を叱咤激励する威勢のいい声が、闘技場を埋め尽くしていた。
観覧席では食事や飲み物を売る売り子もおり、稼ぎ時とばかりに忙しく席と席の間を笑顔で移動している。
ざわめく観覧席の中で、一段と高く見晴らしの良い場所に用意された、背の高い玉座。
上品なボルドー色の座面に、玉座の足から頂点に至るまで、金色の見事な装飾。その玉座には緩慢な動作で足を組み、ひじ掛けに右肘をついた一人の男性がいた。
片方の口端だけを持ち上げ、不適に笑う姿は、
強者と雄の色香が漂う。
圧倒的な存在感と、覇気。
誰だと問うことさえ、愚問に思える。
「ナイアデス国の民よ。皆の尽力により、此度の催しが開催できることを、真に感謝する。そして、選手諸君。そなたらには大いに期待している。その戦術と雄姿をもって、国民と我を楽しませよ。……我らナイアデス国の誇りを示せ!さあ、存分に、派手に暴れるがよい!」
ナイアデス国現国王、アレクライト王が高らかに開幕を知らせる。
空気を揺るがす大声援とともに、戦いの火蓋が切って落とされた。
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