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僕は君が好き、君も僕が好き?
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キキーーッ、ドン!
「きゃーー!」
何があったのか分からなかった。僕は横断歩道を渡ろうとした途端に、誰かに突き飛ばされていた。
手に持っていたコーヒーのカップが遠くに飛ぶ。転んだ瞬間についた手が目の前に見えた。そして感じる強烈な頬の痛み。
恐る恐る体を起こす。周りからざわざわとした話し声が聞こえてきた。次第にその話し声が意味をもつものになってきた。
「警察!」
「いや救急車だ! 誰か、早く!」
「大丈夫ですか? 聞こえますか!」
何が起きた? そう思って人混みに囲まれている人物を見る。人垣の隙間から、足が上向きになって仰向けに横たわっているのが見えた。
『僕は……助けられたのか?』
「大丈夫ですか?」
道路に座り込む僕の顔を覗き込んできた男の人に頷く。会社帰りであろうその人に助けられながら、立ち上がった。
スラックスの膝が破れ、血が出ている。頬が焼けるように痛い。でも、僕は大丈夫。
「助けてもらった……?」
「ええ。あなたが駆け出した時、車が突っ込んできました。後ろにいた人が走ってきて……。」
ゆっくりと歩いて人混みに近づく。齋藤さんが「大丈夫!?」と言いながら駆け足で僕に近づいてきた。僕のビジネスバッグを持っている。どこに飛んでいたのだろう……?
右手で無意識に受け取った鞄は、ぬるりとしたもので滑って落ちた。隣の男の人が「腕を上げて。」と言っている。
左手で鞄を掴んで右手を見ると、誰の血か分からないもので真っ赤になっていた。腕の方から流れてきている。それよりもあの人混みの中に行かなくちゃ。
右手を肩のところまで上げながら、ゆっくりと歩いた。見知らぬ男の人が何かで二の腕をキツく縛った。
「すみません。」
人垣の後ろから声をかけると、ギョッとした顔の人々がサッと僕に道を空けてくれた。
ドクン!
鼓動が大きく跳ねる。靴が片方だけ脱げた状態で、紺色のスラックスを履いた男性。
ドクン! ……ドクン!
片方の腕が背中の下敷きになって、あちこちから血を流している男性。
「セイちゃん! ……どうして、どうしてっ!!」
僕の大絶叫が辺りに響き渡った。
駆け寄ろうとすると、セイちゃんの近くで跪いていた男がこちらを振り向き立ち上がった。
「ダメだ。触っては駄目だ。頭に損傷があるかもしれない。救急車を待たなくちゃ。」
「でも、でもっ!」
「脈も呼吸もある。大丈夫だ。彼は生きている。君も怪我が酷い。一緒に診てもらうといい。」
僕はなんともない。何故セイちゃんがここに? 何故僕を助けたんだ? 何故? ……何故!
最初の男性に押さえつけられながらも、無意識にセイちゃんの元へ行こうとする自分。そのうちに、どこからともなく救急車のサイレンの音が聞こえてきた。
「きゃーー!」
何があったのか分からなかった。僕は横断歩道を渡ろうとした途端に、誰かに突き飛ばされていた。
手に持っていたコーヒーのカップが遠くに飛ぶ。転んだ瞬間についた手が目の前に見えた。そして感じる強烈な頬の痛み。
恐る恐る体を起こす。周りからざわざわとした話し声が聞こえてきた。次第にその話し声が意味をもつものになってきた。
「警察!」
「いや救急車だ! 誰か、早く!」
「大丈夫ですか? 聞こえますか!」
何が起きた? そう思って人混みに囲まれている人物を見る。人垣の隙間から、足が上向きになって仰向けに横たわっているのが見えた。
『僕は……助けられたのか?』
「大丈夫ですか?」
道路に座り込む僕の顔を覗き込んできた男の人に頷く。会社帰りであろうその人に助けられながら、立ち上がった。
スラックスの膝が破れ、血が出ている。頬が焼けるように痛い。でも、僕は大丈夫。
「助けてもらった……?」
「ええ。あなたが駆け出した時、車が突っ込んできました。後ろにいた人が走ってきて……。」
ゆっくりと歩いて人混みに近づく。齋藤さんが「大丈夫!?」と言いながら駆け足で僕に近づいてきた。僕のビジネスバッグを持っている。どこに飛んでいたのだろう……?
右手で無意識に受け取った鞄は、ぬるりとしたもので滑って落ちた。隣の男の人が「腕を上げて。」と言っている。
左手で鞄を掴んで右手を見ると、誰の血か分からないもので真っ赤になっていた。腕の方から流れてきている。それよりもあの人混みの中に行かなくちゃ。
右手を肩のところまで上げながら、ゆっくりと歩いた。見知らぬ男の人が何かで二の腕をキツく縛った。
「すみません。」
人垣の後ろから声をかけると、ギョッとした顔の人々がサッと僕に道を空けてくれた。
ドクン!
鼓動が大きく跳ねる。靴が片方だけ脱げた状態で、紺色のスラックスを履いた男性。
ドクン! ……ドクン!
片方の腕が背中の下敷きになって、あちこちから血を流している男性。
「セイちゃん! ……どうして、どうしてっ!!」
僕の大絶叫が辺りに響き渡った。
駆け寄ろうとすると、セイちゃんの近くで跪いていた男がこちらを振り向き立ち上がった。
「ダメだ。触っては駄目だ。頭に損傷があるかもしれない。救急車を待たなくちゃ。」
「でも、でもっ!」
「脈も呼吸もある。大丈夫だ。彼は生きている。君も怪我が酷い。一緒に診てもらうといい。」
僕はなんともない。何故セイちゃんがここに? 何故僕を助けたんだ? 何故? ……何故!
最初の男性に押さえつけられながらも、無意識にセイちゃんの元へ行こうとする自分。そのうちに、どこからともなく救急車のサイレンの音が聞こえてきた。
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