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君はどこにもいない、僕はどこまでも探し続ける

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 月曜日から木曜日まで会社帰りに、嶺さんのマンションへと立ち寄った。3回か4回インターホンを鳴らして反応を待つ。けれどもセイちゃんが出てくることはなかった。

 仕事を早く終わらせようとするあまり、とても集中できるようになった。いつのまにかタッチタイピングまでできるようになっていて、キーボードを叩く速さも伊東さんとあまり変わらなくなったほどだ。

「お疲れ様でした。お先に失礼します。」

「ああ、ご苦労さん。」

 柿崎部長に送ったファイルにオーケーを貰って部屋を出る。今日は少し遅くなったけれど、絶対にセイちゃんに会いに行く。今日会えなかったら明日だって……。

『明日はどうしようかな。』

 2日間の休みを有効に使いたい。けれども嶺さんのマンションへ行くこと以外に何も思いつかなかった。

 そして、暗くなってから訪れたマンションの508号室には明かりが点いておらず、やはり呼び出しに応える者はいなかった。

 トボトボと歩き始める。僕のマンションまで30分以上。この1週間の疲れがどっと出てきたような気がした。

 仕事の疲れじゃない。セイちゃんと会って話をしたい。それが叶わないからに他ならなかった。途中にあった自販機で麦茶を買う。その場でゴクゴクと飲み干した。

 梅雨が明けてからますます暑くなったような気がする。都会の風は生暖かく、たまにドアが開いている店から漂ってくるエアコンの風が気持ちよかった。

『明日はどうしょうかな。』

 思考が同じところで堂々巡り。自分のマンションがもう少しで見えるところまできたけれど、何となく帰りたくないような気がした。これから2日以上、どうやって過ごしたらいいのだろう?

 マンションのエントランスに着き、キーを取り出す。305のボタンを押してカードを翳す。

「涉、無視するな。」

 いきなり後ろからかけられた言葉に、飛び上がるほど驚いた。

「セイちゃん!!」

 いつの間にか僕の後ろに立っていたのは、セイちゃんだった。ジーンズを履いて、開襟の涼しそうな白シャツを着ている。

「さっきから呼んでいるのに。まったく。」

「セイちゃん。セイちゃんこそ……!」

 何の感情か分からない。でも急に両方の目から涙が溢れ出した。

「どうした? ん? 涉、泣いているのか?」

 慌てたような声がして、大きな手で両頬を包み込まれて上を向かされた。涙が止まらない。

「せ、セイちゃん、どごにいっでだのお。」

 涙を止めようとするけど、今度は鼻水まで出てきて困った。でも、この1週間の心配がそのまま口に出てしまった。

「バカだな。会いにくるっていったろ? 泣くな。」

 気がつくと、セイちゃんの温かい体に包み込まれていた。
 


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