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君は僕を好き、僕は君をどう思っているのだろう?

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「ね、嶺さんが亡くなったって言ったでしょ? あれは何故?」

 ゆっくりと言葉を選ぶ。「死」という言葉は使いたくなかった。少し心臓が痛い。

 セイちゃんの方を見ると、セイちゃんも僕と同じようにお茶のペットボトルを手にして顔を上げ、遠くを見ていた。

「俺も自信はない。ただ、涉と繋がることができた少し前に窓を通して見たんだ。こちらの嶺が海の中にいる様子を。」

「それから?」

 鼓動が速くなる。セイちゃんは後何を見たというのだろう?

「涉の様子。気持ちが沈んでいるのが分かった。どうしても傍に行きたくてしょうがなかった。あの窓は俺の気持ちを反映するようで、主に見えるのは涉だった。」

 ということは、まだ可能性があるのだろうか? 嶺さんが助かっていていつか戻ってくる、そんな可能性が。

「涉が好きだ。」

 突然の言葉に鼓動が1つ大きく鳴った。

「俺はいくら帰れと言われても、帰るしかないとしても、この世界に留まる。両親はいなくなった俺を心配するだろうが、妹が慰めになるだろう。でも、俺を慰められるのは世界中でただひとり、涉だけなんだ。」

 心臓の鼓動が大きくなる。何故? 聞いてみたいような、聞きたくないような……。訳のわからない灰色の感情が全身を渦巻くのを感じた。

「元の、世界の……僕は?」

 セイちゃんがゆっくりとこちらを見る。眉毛も細くなった? ますます嶺さんに重なって見える。相変わらず心臓は早鐘を打っていた。

「3月11日。就職祝いに飲みに行く約束をして、その待ち合わせの場所のすぐ近くで……俺の目の前で、車にはねられた。」

 全身に痺れが走る。その後は聞かなくても分かる。セイちゃんの元の世界の僕は……。

「ごめんな。これは言うつもりはなかった。」

「……。」

 何と言ったら良いのか分からなかった。聞いたことを後悔した。そして僅かな同情と、疑問。

「俺は涉が好きだ。同じ会社で働くことが決まって、新しく入ってくる涉は俺と同じ情報管理部。こんな幸せなことはなかった。」

 セイちゃんは真っ直ぐこちらを見たまま話し続ける。僕も目が離せなかった。何か話さないといけないと思うのに、言葉が喉の奥深くに潜り込んで出てこなかった。

「今までの幼馴染としてではなく、新たな関係を築きたいと告白しようと思ってた。その矢先の出来事だった。」

「僕は、その涉じゃない。」

 突然、言葉が躍り出る。

「分かってる。」

 セイちゃんは僕から目を離してまた、前を向いた。

「真っ暗な空間で、いくつも涉が表れ始めた時に、これは現実じゃないと言い聞かせていた。でもずっと追っていくうちに……。」

 そう言いながら、また僕の方を見たセイちゃんは今にも泣き出しそうな、そんな顔をしていた。


 
 
 
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